第2章 お金は誰のIOUか――信用創造と通貨制度

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財布に一万円札が一枚、銀行口座にも一万円があるとします。私たちは普段、どちらに対しても「一万円を持っている」と言います。しかし、よく考えてみると、紙幣を発行したのは日本銀行であり、口座の数字を記帳したのは私たちの取引銀行です。もし明日、この一万円を別の銀行にいる家族へ送るとしたら、いったい誰が誰に何を渡しているのでしょうか。Rippleの初期構想を読む前に、普段はあまり意識することのない、この違いを確かめておきたいと思います。

第1章では、送金人の預金が減り、受取人の預金が増えるまでの仕組みを追いかけました。そもそも預金とは、銀行の帳簿に記された「約束」のようなものです。現金を手渡しする場合と違って、別の銀行へお金を送るときには、二つの銀行の間でも支払いを完結させなければなりません。私たちが普段は一つの「円」として何気なく使っているものの裏側には、いくつもの発行者や帳簿が存在していることが見えてきます。

そこで、この章では「IOU」という言葉を手掛かりにしていきます。これは英語の「I owe you(私はあなたに借りがある)」を縮めたもので、借用証書を意味する言葉です。個人の借用証書も、銀行の預金も、発行者が誰かに対して負っている「義務」であるという点ではよく似ています。しかし、その証書を誰が受け取り、どこで支払いに使えて、どのように返済(償還)されるのかは、それぞれ大きく異なります。イングランド銀行の分かりやすい説明を頼りに、その違いを一つずつ確かめながら、銀行が融資によって預金を生み出すプロセスまで歩みを進めていきましょう。

世の中にあるお金の量を考えるときには、銀行による融資だけでなく、中央銀行の金融政策や、国家が定める通貨制度なども深く関わってきます。たとえば、日本における「銀行券ルール」は、長期国債の買入れを通じたベースマネーの供給と関わっていました。一方、民間銀行に課される国際的な健全性規制とは、対象も目的も異なります。この章では、こうした制度が「いつ、誰の行為を、何のために制約したのか」をたどっていきます。そのうえで、ライアン・フッガーが抱いた「お金はIOUである」という着想が、既存の銀行制度とどこで重なり、どこで違うのかを考えてみましょう。

この章の節

  1. お金はIOU――銀行券と預金の発行者
    銀行券と銀行預金を、誰が支払いを約束するお金なのかという視点から説明します。
  2. ライアン・フッガーの「お金はIOU」
    人と人との信用関係を記録するRipplePayの発想につながる、フッガーの考えを紹介します。
  3. 銀行融資は預金を生み出す――信用創造
    銀行が融資を行うと預金が生まれる信用創造の仕組みをたどります。
  4. 内生的貨幣供給理論をどう読むか
    貸し出しと預金の関係から、貨幣の供給が経済活動に応じて変わる考え方を説明します。
  5. 国定信用貨幣論と法定通貨
    法定通貨が国家の制度や納税とどう結び付くかを整理します。
  6. 中央銀行は通貨供給をどう調節するか
    金利や準備預金などを通じて中央銀行が通貨供給に働きかける仕組みを説明します。
  7. 銀行券ルール、国内制度、国際規制を区別する
    長期国債の買入れとベースマネーの関係を、国内外の制度との違いも含めて説明します。
  8. 金融政策と景気循環
    物価が動く背景を需要と供給から考え、資金が届くまでの時間とRippleの課題意識へつなげます。

出典・参考資料