銀行券ルール、国内制度、国際規制を区別する

XRP——
BTC——
ETH——
SOL——
FLR——
XLM——
日本円・24時間騰落率|データ:bitbank|取得中

日本銀行がかつて用いていた「銀行券ルール」は、金融調節のために買い入れた長期国債の保有残高を、銀行券の発行残高以下に抑えるという運用上の目安でした。ここで注目したいのは、国債の買入れが銀行の持つ日本銀行当座預金を増やし、ベースマネーの供給につながることです。まず、その仕組みとルールの役割を確認しましょう。

銀行券ルールが直接制限していたのは、日本銀行が金融調節のために保有する長期国債の残高です。紙幣を発行できる法定上限や、ベースマネー全体の上限ではありません。一方、日本銀行が国債を買い入れると、その代金の支払いによって銀行が日本銀行に持つ当座預金が増えます。日銀当座預金は銀行券とともにベースマネーを構成します。したがって、長期国債の買入れに設けられた歯止めは、この経路を通じたベースマネーの拡大にも関わるものでした。

日本銀行は、銀行券発行残高を目安に国債保有額を抑えることで、国債買入れが政府の財政赤字を際限なく埋める手段と受け取られないよう、金融政策の規律を示していました。これは国債買入れという一つの経路に対する自主的な制約であり、中央銀行のあらゆる資金供給や民間銀行の預金・貸出を制限するものではありませんでした。

2013年、日本銀行は物価上昇率2%を目指す量的・質的金融緩和を始め、銀行券ルールの適用を一時停止しました。これは長期国債の買入れを大幅に増やし、ベースマネーを拡大する政策の一環でした。ただし、一時停止から近年の物価上昇までを単純な一本の因果関係として説明することはできません。物価への影響は、次節で需要と供給の動きとともに見ていきます。

さらに歴史をさかのぼって、国内の通貨制度を見てみましょう。かつては、金や銀と交換できることを約束したお札(兌換銀行券)が使われていました。この時代は、中央銀行が金や銀を金庫にどれだけ持っているかが、お金を発行する制度の中心だったのです。しかし、現在の日本銀行券は、金や銀との交換を約束していません。今のお金でお買い物ができる(購買力がある)のは、金庫に同じだけの金が置かれているからではなく、日銀の金融政策や国の通貨制度に対する「人々の信用」があるからです。ですから、昔の金銀との交換制度と、2013年までの国債買入れの規律だった「銀行券ルール」を、どちらも同じ「発行上限」だとひとくくりにしてしまうと、それぞれの制度の本来の目的も、時代背景も見えなくなってしまいます。

一方、国際的な銀行の規制は、これらとはまったく異なるものを対象としています。たとえば、国際決済銀行(BIS)に設けられた「バーゼル銀行監督委員会」が定める世界的な基準があります。これは、民間の銀行が思わぬ損失を出したときに備えるための資金(自己資本)や、急にお金が引き出されても耐えられるだけの現金の余裕(流動性)、そして長期的に安定してお金を集める仕組みなどを定めたものです。専門用語で「流動性カバレッジ比率」と呼ばれるものは短期的な資金の流出に備えるため、「安定調達比率」と呼ばれるものはより長い期間の資金繰りの構造に関わります。これらは、銀行が安全に融資や決済を続けていくための「経営の健全性」には大きく影響しますが、日本銀行券の世界共通の発行枚数を決めるような基準では決してありません。

また、国境を越えた国際送金を行う銀行や事業者には、こうした経営の健全性だけでなく、誰が送金しているかの確認(顧客確認)や、経済制裁への対応、さらには各国の細かな送金ルールも関わってきます。たとえ新しいテクノロジーによって送金の指示が速くなったり、事前に用意しておくべき資金が少なくて済むようになったりしても、こうした法律やルールを守る責任がなくなるわけではありません。

ここまでで、銀行券ルールが国債買入れを通じてベースマネーの供給とどう関わるかを見ました。次節では、金融政策が景気や物価に及ぼす影響と、需要が増えても供給がすぐに追いつかない理由を考えます。

出典・参考資料