貿易金融への展開――構想から具体的な協業へ

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国際送金を速くするだけで、貿易に伴う資金の問題がすべて解決するわけではありません。輸出企業は商品を出荷してから代金を受け取るまで資金を待つことがあり、輸入企業や金融機関は、出荷や請求書などの条件を確かめながら支払いを進めます。貿易金融では、取引条件の確認、資金の調達、代金の決済をどう結びつけるかが重要になります。

以前から模索されていた貿易金融への応用

信用状を使う取引では、輸入企業の依頼を受けた銀行が、定められた条件に合う書類の提示を条件に代金を支払うと約束します。輸出企業は商品を出荷し、船荷証券などの書類を銀行に提示します。銀行は書類が信用状の条件に合っているかを確認し、所定の手続きに従って支払いを進めます。この方法は支払いの確実性を高める一方、書類の確認や銀行間の資金移動には時間がかかります。

Ripple社は、この分野への応用を以前から模索していました。2019年にはEuro Exim Bankと、信用状などの貿易金融に関する指図をxCurrentのメッセージに組み込む試験を計画していました。しかし、2020年にSECとの訴訟が始まって以降、貿易金融を正面から扱う同様の具体的な発表はしばらく見られませんでした。

2023年7月の重要な判決を経て、2025年8月にはSECとRipple社が双方の控訴を取り下げ、訴訟は終結しました。第12章と本章で見てきたように、Ripple社は買収や新たな製品展開によって事業領域を広げています。そして2026年、以前から模索していた貿易金融への応用についても、再び具体的な協業を発表するようになりました。

出荷の確認と支払いを結びつける

2026年3月、Ripple社はシンガポール金融管理局の「BLOOM」に参加し、貿易金融技術を提供するUnloqと、国境を越える貿易決済の実証を行うと発表しました。この構想では、Unloqの仕組みで取引上の義務や決済条件を扱い、出荷の確認など、あらかじめ定めた条件が満たされたときに支払いを実行します。決済にはXRP Ledgerと米ドル建てステーブルコインのRipple USD(RLUSD)を利用する計画です。

2019年の試験計画が貿易金融の指図を銀行間で伝えることに焦点を当てていたのに対し、この実証は、「いつ支払うべきか」という取引条件と、その支払いを連動させることを目指しています。

売掛債権と運転資金への広がり

貿易に関わる企業には、出荷後の入金を待つ間にも、仕入れや給与の支払いに使う資金が必要です。2026年10月、Ripple社と運転資金のプラットフォームを運営するC2FOは、承認済みの請求書に対する早期支払いを、XRP Ledger上でRLUSDを用いて決済する「C2FO Instant Pay」の取り組みを発表しました。参加する資金提供者が早期支払いの原資を出し、納入企業が代金を速やかに受け取れるようにする構想です。発表時点では、利用希望企業を募る段階でした。

同じ月、Ripple社とBNY(バンク・オブ・ニューヨーク・メロン)は、売掛債権などの貿易金融資産をXRP Ledger上でデジタル化し、その管理や投資家への提供に役立てる可能性を探ると発表しました。C2FOとのサプライチェーン金融に関する協業も検討対象です。

2019年には試験計画として語られていた貿易金融への応用が、2026年には、出荷条件と決済の連動、請求書に基づく早期支払い、売掛債権のデジタル化という協業へと広がりました。それぞれ実証、利用希望者の募集、検討という段階にありますが、Ripple社の事業が国際送金を起点に、貿易取引に伴う支払いと資金調達にも及び始めたことが分かります。

出典・参考資料