Ripple CBDC Platformと通貨発行基盤

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Ripple Paymentsは国境を越えた送金を効率化し、Metacoの技術はその送金の前後におけるデジタル資産の安全な保管と管理を支えます。しかし、金融インフラのさらに上流には、「通貨そのものをデジタルで発行し、流通や回収を管理する」という中央銀行や政府ならではの根幹領域が存在します。Ripple社は2023年5月、Metacoの買収発表に続いて、中央銀行や金融機関向けにデジタル通貨の発行・管理を支援するエンドツーエンドの基盤「Ripple CBDC Platform」を発表しました。

中央銀行が求める要件とプライベート台帳

中央銀行が発行するデジタル通貨(CBDC: Central Bank Digital Currency)は、民間の暗号資産とは異なり、国の金融政策や通貨主権、厳格な法規制と密接に結びついています。

誰でも自由に参加して取引履歴を閲覧できるパブリックブロックチェーン(公開台帳)には高い透明性がある反面、中央銀行にとっては「取引データの機密性の保持」「参加者の身元確認と厳格なアクセス制御」「発行体自身による運用の完全なコントロール」といった要件を満たすことが困難です。

この課題に対し、Ripple社は公開台帳であるXRP Ledgerと同じコア台帳技術(高い処理性能、省エネルギー性、堅牢なセキュリティ)を活用しながらも、発行体が参加ノードや取引の公開範囲を直接管理できる「プライベート(非公開型)台帳」を基盤に採用しました。これにより、各国の主権や法規制に合わせた独立した環境でデジタル通貨を運用できるように設計されています。

発行から償還までを管理するプラットフォーム

2023年5月に発表された「Ripple CBDC Platform」は、2021年から進められていた「CBDC Private Ledger」の構想を、より包括的な商用ソリューションへと発展させたものです。

単に基盤となる台帳を提供するだけでなく、デジタル通貨のライフサイクル全体を一元的に運用できるシステムを備えています。具体的には、デジタル通貨の発行(ミント)、民間銀行などへの配分・流通、利用者が保有・送金するための決済やウォレット機能、そして通貨の回収や消却(バーン)に至る一連の工程を管理する機能を提供します。

取り扱う対象も、一般消費者が日常の支払いや送金に用いる「小売型(リテール型)CBDC」や、金融機関間の大口決済に用いる「ホールセール型CBDC」、さらには民間企業や金融機関が発行するステーブルコインの管理まで幅広く対応しています。

各国で進められた実証

Rippleは2021年、ブータン王立通貨庁とCBDCの実証に向けて協業し、パラオ共和国ともデジタル通貨の用途について検討を始めました。2023年には、モンテネグロ中央銀行がCBDCまたはステーブルコインの実証に向けた協業を表明し、コロンビアでは中央銀行などが大口決済の用途を試す計画を発表しました。また、Rippleは富邦銀行とともに香港金融管理局のe-HKD実証に参加し、ジョージア国立銀行からはデジタル・ラリ実証の技術パートナーに選ばれました。ただし、これらは技術的な実現可能性や運用課題を検証するための試験的プロジェクトであり、直ちに国家の公式通貨として恒久的に本格稼働したことを意味するわけではない点に留意が必要です。

XRP Ledgerの技術とXRPの役割

このプラットフォームを理解する上で最も重要なのは、公開台帳である「XRP Ledger」およびネイティブ資産である「XRP」との関係を混同しないことです。

Ripple CBDC PlatformはXRP Ledgerのコア技術を応用して構築されていますが、CBDC向けの構成では、発行体ごとに独立した非公開台帳を利用します。したがって、このプラットフォーム上でCBDCが発行・移転されること自体は、公開されたXRP Ledger上で取引が記録されることを意味せず、ネイティブ資産であるXRPの保有や利用を義務付けるものでもありません。一方、Ripple CBDC Platformでは、異なる通貨間の価値移転にXRPをブリッジ資産として利用できるとも説明されています。このXRPの利用は選択肢の一つであり、CBDCの発行・管理に必ず伴うものではありません。

ただし、プラットフォームの用途がすべて非公開台帳上の通貨発行に限られるわけではありません。パラオ共和国の事例は、CBDCと政府が関与するステーブルコインを区別するうえで分かりやすい例です。パラオは2023年、米ドルを裏付けとする「パラオ・ステーブルコイン(Palau Stablecoin)」の限定実証を始めました。Ripple CBDC Platformには、前述のように非公開台帳を用いるCBDC向けの構想がありますが、このパラオ・ステーブルコインは公開XRP Ledger上で発行され、発行や流通の管理にRipple CBDC Platformを利用すると発表されました。

送金を行う「Ripple Payments」、資産を安全に保管する「カストディ」、そして中央銀行・政府・金融機関向けの「Ripple CBDC Platform」と、システムの提供主体(Ripple社)、台帳の性質(公開型と非公開型)、取り扱われる資産(XRPと各国のデジタル法定通貨)を厳密に区別して捉えることが不可欠です。


出典・参考資料