Ripple PrimeのDelta One事業

XRP——
BTC——
ETH——
SOL——
FLR——
XLM——
日本円・24時間騰落率|データ:bitbank|取得中

企業が資金を海外へ送る仕事と、投資家が株式を売買する仕事は、一見するとまったく別のものであるように思えます。しかし、Ripple社が2025年にHidden Roadを買収した理由を理解するためには、投資家の取引は「注文を出して終わり」ではないという点に目を向ける必要があります。実際の取引では、資金を調達し、担保を預け、売買が成立した後に損益や株券の受け渡しを確実に行うという膨大な裏方の仕事が続きます。こうした一連の業務を支える「プライム・ブローカレッジ」と呼ばれる領域で、同社は翌年、新たな事業をスタートさせました。

株式を保有せずに、株式の値動きだけを受け取る

2026年8月27日、Ripple社はRipple Primeにおける「Delta One(デルタ・ワン)」事業を開始したと発表しました。この事業の中心となるのは、米国の上場株式、株価指数、そしてデジタル資産を対象とした「トータル・リターン・スワップ」という金融取引です。初めて耳にする方も多いと思いますので、順番に噛み砕いて考えてみましょう。

たとえば、ある投資家が「特定の株式の値上がり益や配当金だけを受け取りたい」と考えたとします。このとき、実際にその株式を自分で買い付けるのではなく、金融機関との契約を通じて「株の全体的な収益に連動した金額」を受け取り、その代わりに自分は資金の調達費用などを支払うという方法があります。これがトータル・リターン・スワップの仕組みです。もちろん、株式の価格が下がれば損失が発生しますし、契約している相手の信用力や、担保が正しく管理されているかどうかも非常に重要なポイントになります。

一方の「デルタ」とは、対象となる資産の価格が変動したときに、契約の価値がどれくらい変化するかを示す言葉です。Delta Oneとは、対象資産の損益におおむね1対1で連動する取引の分野を指しています。ただし、「株が1ドル値上がりすれば、手取りが必ず正確に1ドル増える」という単純な話ではなく、さまざまな費用や契約条件を差し引いたうえで最終的な投資家の損益が決まる仕組みになっています。

Hidden Roadの買収は、どこにつながったのか

Ripple社は2025年にHidden Roadの買収を完了し、その事業を「Ripple Prime」へと改称しました。Hidden Roadが元々持っていたのは、機関投資家による複雑な取引や清算、資金調達を、さまざまな市場をまたいで支えるための強固な仕組みです。買収の翌年にこの「Delta One」が加わったことで、同社の窓口は従来の枠組みを超え、株式や株価指数の取引領域にまで大きく広がりました。今回の発表時点ですでにサービスは実際に稼働しており、単なる将来の計画を掲げたものではありません。

このサービスを利用するのは、ヘッジファンドや資産運用会社といったプロの機関投資家たちです。複数の市場で取引を行おうとすると、取引先との契約や資金、担保、そして清算の管理が非常に複雑になってしまいます。Ripple Primeは、これらを一つの取引関係の中でまとめ上げ、異なる資産をまたいだ効率的な担保管理を提供しているのが特徴です。つまり、Ripple社が「国際送金」という従来の強みの外側に、本格的な投資取引を支える金融インフラを持つようになったことこそが、このニュースの大きな意味と言えます。

ここで整理しておくと、企業の支払いを扱う「Ripple Payments」に対し、投資家の取引を支えるのが「Ripple Prime」です。どちらも同じRipple社が提供している事業ではありますが、今回のDelta Oneにおけるスワップ取引のすべてが「XRP Ledger」に記録されたり、XRPトークンを使って決済されたりすると発表されたわけではありません。同社の事業範囲が広がっていくにつれ、今後は「Ripple社が提供するサービスそのもの」と「XRPが使われる取引」をしっかりと区別して読み解く視点がますます重要になっていきます。


出典・参考資料