機関向け販売についての判断

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前節で見たように、裁判所は「XRP」というトークンそのものの性質だけでなく、「それがどのような場面・方法で販売されたのか」という取引の実態に目を向けました。

その最初の類型として検討されたのが、Ripple社が買い手と直接契約書を交わし、自らXRPを販売した取引(機関投資家等への直接販売)です。買い手が会社から事業や将来性について説明を受け、直接その会社へ代金を支払った場合、購入者は一体何に期待して資金を投じたといえるのでしょうか。当時の状況を整理して見ていきましょう。

直接契約で買った人には何が見えたか

SEC(米国証券取引委員会)が主張したこの「機関向け販売」の取引額は、約7億2,890万ドルにのぼります。

この取引において、購入者はXRPの対価として法定通貨などを支払い、Ripple社はその受け取った資金を自社の事業展開や運営のために使いました。

裁判所は、Ripple社が買い手に対して行っていた用途開発や市場拡大、さらには価格上昇につながるような説明・宣伝活動を重視しました。これらを踏まえると、合理的な投資家であれば「Ripple社が事業努力を重ねることでXRPの価値が上がり、将来的な利益を得られる」と期待して購入したと認められる、と判断したのです。

さらに、実際の契約内容には、購入後すぐに市場で売り払えないようにする「転売制限」や「売却制限(ロックアップ条項など)」が盛り込まれているケースもありました。こうした取引全体の文脈や契約条件を総合的に考慮した結果、裁判所は「この直接販売は、未登録の投資契約(有価証券)の募集・販売に当たる」と結論づけました。

「機関向け」と呼ぶ理由

ここで誤解してはならない重要なポイントは、「買い手が大手企業や機関投資家だったから」という肩書だけで投資契約と見なされたわけではない、という点です。

裁判所が着目したのは、あくまで次のような具体的な取引環境です。

  • Ripple社と直接契約を交わしていたこと
  • 買い手に対して事業計画や将来性に関する説明が直接示されていたこと
  • 支払われた資金が会社の事業資金として使われていたこと
  • 転売制限などの特別な販売条件が付いていたこと

もちろん、「相手が専門知識を持つ洗練された投資家であったため、会社の資料や発言の意図を十分に理解できた」という点も検討材料のひとつには含まれています。しかし、本質は属性ではなく「どのような契約と情報提供のもとで購入されたか」にあります。したがって、「法人が買ったXRPはすべて投資契約になる」といったように、他の取引へ短絡的に当てはめることはできません。

「公正な通知(Fair Notice)」をめぐる主張

裁判の中で、Ripple社は「連邦証券法上、何が違法行為となるのかについて事前かつ十分な通知(公正な通知)を受けていなかった」とも主張し、手続きの不当性を訴えました。

しかし、この機関向け直接販売に関して、裁判所はRipple社の抗弁を退けました。有価証券該当性を判断する歴史的な最高裁判例である「Howey基準」や、その後に積み重ねられた数々の裁判例を見れば、こうした直接契約による販売が投資契約に当たるかどうかを判断する基準はすでに示されていた、と判断されたためです。

なお、後述する他の販売類型(取引所等を通じた販売)においては、そもそも「投資契約」の成立要件を満たさないと判断されたため、この「公正な通知があったかどうか」という論点自体に踏み込んで検討する必要はありませんでした。

では、Ripple社と直接契約を結ばず、会社からの直接的な説明も受けていない一般の買い手にも、同じような「会社の努力に対する利益の期待」が生じたといえるのでしょうか。

次節では、取引所などを通じて売り手と買い手がお互いの素性を知らないまま行われた販売類型(プログラム販売)について詳しく見ていきます。

出典・参考資料