Standard CustodyとRipple Custody

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2023年に買収したMetacoは、金融機関がデジタル資産を安全に保管・管理するための優れた技術(ソフトウェア)を持っていました。しかし、ここで一つの大きな疑問が生じます。その技術を使って実際に顧客の資産を預かるサービスを提供する場合、法律や規制上の責任は誰が負うのでしょうか。

技術ツールがあっても、法的に資産を預かる資格がなければ、金融機関向けの保管サービスを包括的に提供することはできません。そこでRipple社は2024年2月、ニューヨーク州金融サービス局(NYDFS)の監督を受ける信託会社「Standard Custody & Trust Company」の買収計画を発表し、同年6月に買収を完了しました。

技術を作る会社と資産を預かる会社

二つの買収の違いを整理すると、その狙いがよく分かります。

Metacoが提供していたのは、主に銀行などの金融機関が自社で導入して使う「保管ソフトウェア」でした。いわば、頑丈で安全なデジタル金庫を開発して販売する会社です。

一方のStandard Custodyは、法的な認可を受けた「信託会社」です。こちらは、顧客から実際に資産を預かる資格を持った会社にあたります。

銀行が一般の顧客向けにデジタル資産サービスを提供する場面を想像してみてください。暗号資産の移動に欠かせない「秘密鍵」をハッキングなどから安全に守る高度な技術基盤が必要なのはもちろんですが、それと同時に「万が一の際に誰が顧客との契約責任を負い、金融規制を遵守して資産を管理するのか」という法的な主体も欠かせません。

このように、MetacoとStandard Custodyは同じ「カストディ(資産保管)」という分野に属していながら、一方は「技術の提供」、もう一方は「法的な保管主体の提供」という、まったく異なる重要な役割を担っています。

Ripple Custodyへ

デジタル資産の保管業務において重要なのは、単に秘密鍵を隠して守ることだけではありません。「誰が送金を指示し、誰がそれを承認し、後から誰がその操作履歴を監査・確認できるか」という厳格な業務ルール(ガバナンス)を仕組みとして整える必要があります。企業の担当者が一人で勝手に多額の資産を動かせてしまうような状態では、金融ビジネスとして成り立たないためです。

こうした実務上の課題に応えるため、Ripple社は同年10月に自社の保管基盤である「Ripple Custody」の大幅な機能拡張を発表しました。このアップデートには、マネーロンダリングなどを防止するための取引審査サービスとの連携、暗号鍵を保護するハードウェアセキュリティモジュール(HSM)の選択肢の拡充、そしてXRP Ledgerを用いた現実資産(RWA)などのトークン化機能との連携が含まれています。

送金から「保管」を含めた包括的なインフラへ

創業初期のRipple社が主に取り組んでいたのは、国境を越えて「価値を遠くへ素早く移す(国際送金)」仕事でした。

これに対して、MetacoおよびStandard Custodyの買収とRipple Custodyの機能拡張は、「価値を移す前、あるいは移動させた後に、その資産をどのように安全かつ法に則って預かるか」という前後の領域へ事業を大きく広げたことを示しています。

これは従来の海外送金ソリューションを保管製品が置き換えたのではなく、企業がデジタル資産を本格的に扱ううえで不可欠となる「保管・管理」という新たな工程を、自社の提供サービスに統合したといえます。

出典・参考資料