SBIとの協業と日本市場への進出

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Ripple社が銀行との関係を築いたのは、米国だけではありませんでした。アジアへの展開において、日本の大手金融グループであるSBIホールディングスはどのような役割を担ったのでしょうか。ここでは、その提携の背景と実際の進展プロセスを整理していきます。

合弁会社の役割

Ripple社が米国などの銀行との接続を進める一方、アジア市場においては日本のSBIホールディングスとの協業が極めて重要な節目となりました。SBIホールディングスは、幅広い金融サービス事業を展開する日本の企業グループです。

2016年1月、両社は「SBI Ripple Asia」という合弁会社を設立し、日本を含むアジア地域の銀行や決済事業者に向けてRipple社の技術を提供する計画を発表しました。海外発の新しい技術をそのまま国内へ持ち込むのは容易ではありませんが、この合弁会社の誕生によって、日本の金融機関にとっては最新技術を国内の銀行実務や既存の商習慣・ネットワークと円滑に結びつけるための「頼れる窓口」ができたことになります。

試験から商用化へ進む段階

ただし、合弁会社ができたからといって、すぐに加盟銀行による商用送金が一斉に始まったわけではありません。

一般に、銀行が新しい決済インフラを導入するには多くのステップが必要です。たとえば、顧客にどのような送金サービスを提供するのかを具体的に設計し、接続先の各行とシステムを調整し、万一のシステム障害時の対応手順や法規制上のコンプライアンス(法令順守)体制を一つひとつ確かめなければなりません。そのため、たとえ多くの銀行が実証実験(PoC)へ参加したとしても、すべての銀行が同じタイミングで、まったく同じ機能を一般の顧客向けに提供開始できるわけではないのです。このように、「新しい技術への関心を示すこと」「試験的なプロジェクトに参加すること」、そして「実際の商用サービスを開始すること」は、それぞれ異なる段階の出来事として切り分けて理解することが大切です。

実際、2017年のRipple社の発表では、日本の47の銀行が同社の技術を使った取り組みを「商用段階へ進めようとしている」と説明されました。ここで注意したいのは、「商用段階へ進めようとしている」という表現は、すでに47行すべてが本番環境で日常的なすべての国際送金を処理していた、という意味ではないという点です。これはあくまで、実証実験を通じて確認した送金情報の連携などを、実際の顧客向けサービスとして安定運用できる段階へと引き上げようとする移行フェーズを指していました。

さらに重要なのは、この「47銀行」という数字は「暗号資産XRPを利用する銀行の数」ではないということです。当時進められていた銀行向けの接続技術と、のちに登場するODL(On-Demand Liquidity:旧xRapidなど)のようにXRPを直接流動性調達に用いる仕組みとでは、使われている製品も導入時期もまったく異なります。

XRP利用との距離

このように、ニュースの見出しだけでは実態を見誤りやすいため、日本市場の動向を読む際には、次の「3つの問い」を念頭に置く必要があります。

  1. どの企業、またはどの銀行が発表の主体となっているのか?
  2. Ripple社が提供する技術のうち、どの部分を利用するのか?(情報連携のみか、資産移転を伴うのかなど)
  3. その発表は「計画」「実証実験」「商用開始」のどのフェーズにあるのか?

新しいニュースに触れた際、これら3つの問いを当てはめてみることで、「SBI Ripple Asiaという合弁組織の立ち上げ」「日本の各銀行による試験的アプローチ」、そして「XRPを実際に使う送金事例」といった個別の動きを、安易にすべて「Rippleが銀行に採用された」という一つの言葉で混同してしまうのを防ぐことができます。

Ripple社の歩んできた歴史は、単に画期的な技術を発明した歴史であるにとどまらず、地域ごとの金融機関と地道に関係を構築し、既存の金融システムとすり合わせを行ってきた歴史でもあったのです。

出典・参考資料