CBDCがあればXRPはいらないんじゃないの?
先日投稿した『【嘘大爆発】コインテレグラフのYouTube動画を検証』という記事に関してアンゴロウさんからYouTube上で名指しで回答を求められました。
これは、私が当該記事で「2017年のXRP高騰と翌年1月からの下落はジャスティン・サンや中国市場の影響ではない」としたことに関して、アンゴロウさんから
「でも、2018年12月15日を基準にするとXRPはビットコインなどよりパフォーマンスが悪いよね?」
という趣旨の反論を頂いたものです。このご指摘に関しては、当該記事の内容とは直接関係がないことと、暗号資産価格の変動に関しては様々な原因とそれに対する考察(例えば基準日を変えるとXRPの方が他の暗号資産よりパフォーマンスが良いなど)があると思いますので、それについて個別に言及することは差し控えたいと思います。
そしてもう1点、
「中央銀行デジタル通貨(CBDC)が登場してもブリッジ通貨は必要なの?」
という質問に関してですが、「必要である」というのが私の見解です。なぜ必要であるかは、当ブログの『Rippleが解決する現実の問題』や電子書籍版の『Ripple総合まとめ:ユニコーン企業はこうして誕生した』に解説記事を掲載しているのでそちらを参照してください。手短に話すとRippleNetはILP(インターレジャー・プロトコル)という技術を応用したクロスボーダー決済システムです。
ILP(インターレジャー・プロトコル)とは:
ILPはHashed-Timelock Contracts(HTLC)などの技術を応用することで、複数の異なる台帳上の残高を同時に振り替えることを可能にするための標準化された手順を定めたプロトコルです。各国の中央銀行はILPを利用するRippleNetやHyperledgerの実証実験を行っています(例:日銀・ECB、イングランド銀行、MAS)。参考リンク:『Hashed-Timelock Agreements (HTLAs)』| interledger.org
※リップル社はHyperledgerプロジェクトと協業し、ILPの技術供与を行っています。同社はJava言語で実装されたHyperledger Quiltのメインコントリビューターです。
RippleNetではブリッジ資産を介して通貨の両替が安全に行われます。そのブリッジ資産にはXRPも含まれます。この仕組みが成立するのは、XRPがILPをサポートしているからです。その他のUSDなどの民間銀行が発行する預金通貨に対応するイシュアンス(IOU)も同様にILPに対応しています。つまり、RippleNet上で利用されるイシュアンスやXRPには元々クロスボーダー決済で利用されることを目的とした様々な機能が実装されているため、それが実現できているわけです。CBDCにはそのような機能が存在しないだけでなく、そもそもパブリックな市場でブリッジ資産として取引される目的で開発されているものではありません。(例えば、ILPがバージョンアップしたときにCBDCがそれをサポートするでしょうか?)Hashed-Timelock Contracts(HTLC)の応用でILPを利用する優位性については、日本銀行と欧州中央銀行が主導する分散型台帳技術に関する共同調査プロジェクトの『プロジェクト・ステラ』が次のように結論づけています。
「複数パターンの決済の同期の実験が行われ、成功裡に終わった。この中にはDLT台帳間、中央集権型台帳間、DLT台帳と中央集権型台帳の間でILPを用いた場合の決済の同期が含まれている。ILPはInterledgerのホワイトペーパーで紹介されている送金プロトコルの仕様である。ILPを用いないDLT台帳間の決済の同期も実現可能なため、決済の同期にILPの使用は必ずしも必要ではない。それにもかかわらず、ILPは異なる種類の台帳の抽象化を助け、それゆえ標準化の利点をもたらしうる。」―出典:日本銀行
民間人は保有できないCBDC
念のため補足しておきますが、アンゴロウさんが動画中で言及している
「コロナショックによってキャッシュレス決済の需要が伸びて、各国の政府がデジタル法定通貨の発行に向けて動いている。そして、最近デジタルドルプロジェクトがホワイトペーパーを公開・・・」
の部分に関してですが、ご指摘の根拠とされているこのホワイトペーパーは政府によって公開されたものではありません。これは『The Digital Dollar Project』によって公開されたものです。
そして、このホワイトペーパーで提案されたデジタルドルの構想は、下記のコインデスクの記事にもあるように『二層構造』の通貨供給システムを前提としたものです。(中国政府などが進めるCBDCも同様に二層構造モデルを前提としたものです。)
つまり、ここで言う中央銀行によって発行されるデジタルドルとは民間人や民間企業によって利用されるものではなく、従来の中央銀行口座で管理される残高と同等のものです(通貨制度上、中央銀行に口座を保有できる民間人や民間企業は存在しません)。これはWholesale CBDC(W-CBDC)と呼ばれるもので、従来の中央銀行口座の残高に相当するものです。例えば、カナダ中央銀行が主導するProject Jasperとシンガポールの中央銀行(MAS)が主導するProject Ubinが共同でW-CBDCとDLTをクロスボーダー決済に応用する実験をしていますが、複数の台帳を接続するにはブリッジ通貨などの仕組みが必要だと結論づけています。
「Hashed-Timelock Contracts(HTLC)は理論的には3つ以上のネットワークをまたがるアトミック・トランザクションに使用できますが、2つのDLTネットワークをまたがるアトミック・トランザクションのみをテストした現在の概念実証ではこれはテストされていません。このような取引には、ブリッジ通貨を使用した外貨取引(例えばSGD-USD-CADのような取引)または投資家が現地通貨を外貨に両替して外貨建ての証券を購入するDvPvP取引など、考えられるユースケースがあります。」
ですから、このデジタルドル(W-CBDC)というのはそもそもアンゴロウさんがYouTubeでおっしゃっている「個人や企業がそれぞれウォレットを持って契約相手に直接デジタルドルを送金できる」という用途のものではありません。もちろん、預金通貨と法定通貨の兌換性を保証するために現在の現金紙幣にあたるものを保有・交換できる仕組みは必要だと思いますが、その用途と送り先はデジタルウォレットによって制限されたものにすべきというのがDigital Dollar Projectのホワイトペーパーの説明であり、それを何にでも使えるというものではありません。二層構造モデルを破壊しないというのが大前提なのです。
「ホールセール型のCBDCは、分散型台帳技術と組み合わせることで、証券取引やデリバティブ取引の決済の効率性を向上させ得る。もっとも、これまでホールセール決済について提案された応用事例は──性能、効率性や頑健性の面で既存の中央銀行システムの要件をベースとしたものであることから──既存のインフラと概ね類似しており、特筆すべきメリットは見出せない。将来的には異なるシステムの設計に基づく実証実験も登場するかもしれないが、中央銀行が新技術を用いてホールセール型のCBDCを安全に導入できるようになるまでには、より多くの実験や経験が必要となるだろう。」―出典:日本銀行
これに対し、個人や企業が保有できるCBDCはGeneral purpose CBDCと呼ばれますが、こちらは実用化のハードルが高く現実的ではないと言われています。
「CBDCは国際的にも2つに分けて考えることが標準となっています。1つは、国際決済銀行(BIS)が「general purpose CBDC」と言っている、一般の人が現金の代わりに使えるCBDCです。もう一つは「wholesale CBDC」で、元々デジタル化されている中央銀行当座預金に、ブロックチェーンなどの新しい技術を応用する大口決済専用のCBDCです。分けて議論をする理由はいくつかありますが、一番大きな理由は、general purpose CBDCは技術よりも制度や法律の面で、乗り越えるべきハードルが高いということです。現在、中央銀行に預金口座を保有できるのは銀行などに制限されていますが、general purpose CBDCを発行することは、企業や家計が中央銀行に直接に預金口座を持つことと近くなります。そうなると、中央銀行の取引先に関する政策を根本から見直す必要が出てくるわけです。また、企業や家計がCBDCを直接に持てるようになると、金融システムに不安が生じた場合の預金取り付けが、現在より急速に進むことへの懸念もあります。更に、中央銀行がCBDCにマイナス金利も含めて金利をつけるべきかどうかという、金融政策上の課題も出てきます。一方、wholesale CBDCについては、中央銀行当座預金は既にデジタル化されていますので、制度、あるいは金融政策や金融安定の観点からのハードルはgeneral purposeほど高くないと考えられます。」―出典:野村総合研究所
上記の対談の中でIMF日本理事代理、日銀金融市場局長、日銀決済機構局長、バーゼル銀行監督委員会委員、BIS市場委員会委員などを歴任した山岡浩巳氏も言及している通り、二層構造モデルを前提とした外国為替市場で取引されているされているのは基本的に民間銀行により発行された預金通貨です。そもそも『為替』という言葉自体が現金以外の決済手段の総称です。これもRipple総合まとめで解説している通りです。民間銀行により信用創造された預金通貨と中央銀行が発行するベースマネーを1対1で交換してくれる市場があるのなら、民間銀行は喜んで自分が発行した預金残高と1対1で交換するでしょう。それが可能なら民間銀行は無限に信用創造ができるのではないでしょうか。パブリックな為替市場で取引可能なXRPのようなブリッジ資産が求められる理由もここにあります。
Digital Dollar Projectのホワイトペーパーが指摘しているとおり、従来のコルレス銀行モデルのクロスボーダー決済システムには問題があります。その問題と現状の解決策についても、さきほど紹介した『Rippleが解決する現実の問題』で解説済みです。CBDCが利用可能になれば、ここで解説しているCLS決済(Continuous Linked Settlement)のような仕組みがより効率的になる可能性はあると思います。それはCLS決済が中央銀行の当座預金勘定(つまり中央銀行通貨)の振り替えによって成り立つ二層構造を維持する仕組みであり、それを中央銀行デジタル通貨を応用することで効率化することが可能かもしれないからです。しかし、システムが効率化されたとしてもCLSの仕組み上、現在と同様に対応できる通貨数は限られるのではないでしょうか。それではRippleNetが解決する課題を解決することはできません。
現金はデジタル化されるのか?
これはほぼ間違いなくデジタル化されると思います。次の私のツイートは2016年1月にリップル社会長のクリス・ラーセンも参加したダボス会議でのドイツ銀行CEOの発言を取り上げたものです。
ドイツ銀行CEOのJohn Cryanが10年後にキャッシュは存在しないと発言しました。https://t.co/Oc0bgo6YAw
— GiantGox (@GiantGox) January 22, 2016
それ以降も私は現金がデジタル化される前提でRippleNetに関する話をしてきました。もちろん、それをもってRippleNetが必要なくなると私が思っていないことは言うまでもありません。
世界の中銀がキャッシュからデジタル通貨に移行しようとしているのはほぼ間違いないでしょう。リップルを含め、そのための仕組み作りが急ピッチで進められているようです。
— GiantGox (@GiantGox) April 14, 2017
既に説明したとおり、現金にあたるデジタル通貨であるGeneral purpose CBDCの実現には超えなければいけない高いハードルがあります。W-CBDCは中央銀行の当座預金残高にあたるもので民間人や民間企業はそれらを利用することはできません。これは私達が中央銀行に口座を持てないのと同じことです。一方、General purpose CBDCというのは中央銀行から発行される民間人が利用するデジタル通貨で、これは私達がこれまで利用してきた現金にあたるものです。しかし、General purpose CBDCを民間人が保有可能にするということは、実質的には民間人が中央銀行に口座を持てるのと同じことになってしまいます。つまり、
「銀行いらないじゃん」
となってしまうわけです。これが意味することは、General purpose CBDCが発行された途端に取り付け騒ぎが起こって国の経済が崩壊する可能性があるということです。もちろん、国がそんな馬鹿なことをするわけはありません。この1つの解決策として考えられているのは、W-CBDC(銀行のためのCBDC)を保有する民間銀行が、民間人や民間企業が利用するデジタル通貨を発行する方式(ハイブリッド型)です。この場合、発行されたデジタル通貨は民間銀行の口座間だけでやり取りされることになります。
米国の2層構造の銀行システムでは、FRBが一般向けの銀行券と銀行システムのための準備金を発行します。我々が提案するデジタルドルは、2層の分配構造を維持します。商業銀行(および潜在的にはFRBにアクセスできるその他の規制された仲介業者)は、現在彼らがATMを通じて顧客に現物のキャッシュを発行しているような方法で、準備金をデジタルドルに交換します。
出典:The Digital Dollar Project: Exploring a US CBDC(The Digital Dollar Project)
しかし、デジタル通貨に関する政策は各国ごとに異なり、General purpose CBDCを実用化しようとしている国もあります。その場合には、前述のような問題があるため、民間人が保有できる金額や送金先を制限する必要があります。
10月にCBDCを使い始めたカリブ海のバハマ中銀は小口の個人の保有額を500ドル(約5万2500円)、企業では年商の20分の1か8千ドルまでとした。日本でもバハマと同じように保有額を1人あたり5万円までとすれば、最大6兆円程度がCBDCに振り替わる計算だ。
出典:日本経済新聞
分かり易く言えば、Suicaのようなイメージです。つまり、規制されたウォレット間だけでやり取りできる電子マネーのようなものにすることで問題を解決しようという方法です。いずれにしても中央銀行が発行するデジタル通貨というのは、多くの人が想像している「中央銀行がパブリックなブロックチェーン上に発行する中央銀行版ビットコイン」というようなイメージのものではありません。
また、日銀はCBDCの実現のためには「ユニバーサル・アクセス(Universal access)」や「強靭性(Resilience)」といった要件を満たすための技術的な課題があるとしています。
中銀デジタル通貨(CBDC)が現金同等の機能を持つためには、「誰もがいつでも何処でも、安全確実に利用できる決済手段」であることが求められる。したがって、CBDCを検討する際には、CBDCが「ユニバーサル・アクセス(Universal access)」と「強靭性(Resilience)」という2つの特性を備えることが技術的に可能かどうか検討することが重要なテーマとなる。
ユニバーサル・アクセスの観点からは、多様なユーザーが利用可能な端末の開発が重要となる。強靭性に関しては、通信・電源途絶への耐性を備えたオフライン決済機能を備えることが望ましい。スマートフォンを用いたケースでは、オフライン決済に必要な機能の多くに既存技術を転用可能とみられる一方、実用化に際しては、機能の安定性や処理性能の確保、コストの面などにおいて課題も残る。ユニバーサル・アクセスの確保に関しては、スマートフォンを保有していないユーザー向けの端末の開発も検討課題となろう。
ブリッジ通貨は必要なのか?
ブリッジ通貨(ビークルカレンシー)は従来のインターバンク市場においても存在するもので、RippleNet固有の概念ではありません。ブリッジ通貨の存在意義は技術的な問題を克服することではなく、クロスボーダー決済にともなう両替の通貨ペア数を減らすことです。これも『Ripple総合まとめ』で既に解説しているのでここで詳しい説明はしませんが、従来のインターバンク市場ではUSDがブリッジ通貨として利用されてきました。そして、それに起因する問題についても『Rippleが解決する現実の問題』で解説していることですが、どうしても記事を読んで頂くことはできないようです。何がそうさせているのでしょうか。
どうしても読んで頂けないようなので、ここで手短に解説します。USDをクロスボーダー決済のブリッジ通貨として利用するということは、アメリカの銀行口座間で資産の移動が起こることを意味します。それは民間銀行の口座であれ、デジタルドル(CBDC)を含む中央銀行(FRB)の口座であれ同じことです。つまり、送金元と送金先が第三国であってもその取引にはアメリカの規制が適用されることになります。911テロ以降、アメリカの金融規制は非常に厳しくなっています。そのためアメリカの銀行は、本来は自分たちのビジネスとは関係の無いそれらの送金を取り次ぐために多大な時間とコスト(コンプライアンス・スクリーニングなどにかかるコストなど)をかけています。そして、規制に違反してしまった場合には政府から多額の罰金の支払いを命じられているのが現状です。これはアメリカの銀行にとっては採算の取れないビジネスであるため、アメリカの銀行はそうした第三国(とくに新興国)の銀行に対してコルレス銀行サービスの提供を停止し始めています。これは金融業界では『デ・リスキング』問題と呼ばれています。これにより新興国の企業が銀行から提供される貿易金融サービスを利用できなくなりビジネスに深刻な問題が及んでいます。これがUSD以外のブリッジ通貨が必要とされる理由です。
「デ・リスキング(de-risking) とは、銀行が、顧客が自行に持っている為替送金のためのコルレス口座を停止する、または国外送金を受け付けないなどにより、その銀行が送金等により背負う可能性のあるマネーロンダリング及びテロ資金送金(AML/CFT) リスクを最小化しようとする行為のことである。 国際的な金融活動を行う銀行がデ・リスキングを進める動きは、ここ数年間で顕著に拡大している。世界銀行が金融活動理事会(FSB) 及びG20のマンデートにより調査し、2015年10月に公表した報告書によれば、調査対象になった世界の190金融機関のうち、半数以上がコルレス取引関係を縮小し、送金業者の3割近くが銀行サービスにアクセスできなくなったと答えている。 デ・ リスキングが進む理由は、AML/CFT規制の厳格化により、 銀行がコルレス取引先の銀行の先の顧客の属性まで知ること(Know-Your-Customerʼs-Customer: KYCC) が慣行化しつつあり、KYCCを怠った場合には金融監督当局等から巨額の制裁金を課されるなどの例が相次いでいるからである。2014年に仏系金融機関が米国当局のOFACからAML/CFT規制違反により、9.63億ドルの史上最高の制裁金を課されたことは記憶に新しい。」
XRP/RippleNetは不要になるのでは?
「〇〇があればXRPはいらない」のXRPの部分について、なぜXRPだけがターゲットにされるのでしょうか?
リップル社が主導するRippleNetでXRPがクロスボーダー決済のブリッジ資産に使用されることは暗号資産としてのXRPに付加価値を与えるものであり、それ以外の暗号資産としての性質はビットコインや他の暗号資産と基本的には何も変わらないはずです。それにも関わらず、なぜ暗号資産のうちXRPだけが不要になるという話になってしまうのでしょうか?なんとも不思議な話です。そもそも現実に存在すらしない決済システムの話をでっちあげ、それをぶつけることで「RippleNetはいらないのではないか?」という議論をする意味が分かりません。
そんな話がしたいのであれば、むしろ
「SWIFTに代わる決済システムが登場して銀行が採用すればSWIFTはオワコンです」
「ビットコインよりも優秀な暗号資産が登場して世界中の人々がそれを使うようになったらビットコインはオワコンです」
という話をすれば良いのではないでしょうか?(絶対しないけどね)
結局のところ、この話は妄想でしかないということです。
「もしもトヨタより優れた自動車会社が出てきて皆がそっちを買うようになったらトヨタはオワコンです」
「もしもアップルより人気のコンピュータが作られるようになったらアップルはオワコンです」
「もしもアマゾンより便利なネット通販サービスが登場して皆に使われるようになったらアマゾンはオワコンです」
シェアを伸ばし急成長する企業について、延々とそんなことを言っている人を見たらどう思うでしょうか?実在しない架空のシステムの話をするよりも「各国の中央銀行がリップル社と協業し、世界中の金融機関が既にRippleNetを実用化し、RippleNetではブリッジ資産としてXRPを採用している」という話をする方が現実的だとは考えないのでしょうか。
そして、マネーグラムなどの大手国際送金会社がXRPを利用した国際送金システムを実用化していることには目を向けようとは思わないのでしょうか。
現実に世界中の金融機関が採用を進めているRippleNetについて「これから使われなくなると思います」と言うのは、さすがに無理があるのではないでしょうか。
回答の場を与えて頂けなかったことについて
本件について、私は話が長くなるのでYouTubeやDiscordで直接お話し頂くか本ブログのコメント欄を利用して欲しいとお願いしたのですが、アンゴロウさんに丁重にお断りされてしまいました。
Discordには参加できませんか?それかYouTubeでお話する感じでも大丈夫です。
— GiantGox (@GiantGox) June 29, 2020
しっかり議論できる場で回答するとした私の提案を断った理由について、アンゴロウさんは「私はリップル専門で飯を食っているわけではないので、リアルタイムで専門家の方と議論するのはまだ早すぎます」とか「私は昔から理屈っぽく議論も好きですが、理詰めで議論して相手をキレさせてしまうことがあります。相手のプライドを傷つけないように気を付けてはいますが、そうならないために大勢が観ている中で2人で議論はなるべくしないようにしています。」とおっしゃっています。しかし、このようなお互いの前提知識も異なる難しいトピックについて、文字数制限のあるツイッターで話をすることが現実的でないことは明らかです。
ツイッターでそんな細かい話をされてもあなたがどんなモデルを想定しているのか私に伝わるわけがないでしょう。^^; だからDiscordで話しましょうと言っているのにどうしてそうしないのですか?それとあなたが今話していることは私が書いた記事とは全然関係ないじゃないですか。何がしたいのですか?
— GiantGox (@GiantGox) July 4, 2020
結果的に、ツイッターでああ言えばこう言うというやり取りが続き、私からの回答について「でも、こうだよね?」ということを言われるたびに、私は記事に前提知識を追記する形で回答することになりました。こうなった経緯に関してアンゴロウさんは「当初チャットで議論をするつもりはありませんでしたが、私の要望への回答が記事の追記ではなくツイートで返ってきたためチャットでの話になりました」とおっしゃっていますが、前述のとおり私は最初からブログにコメント欄があるのでそちらを利用してくださいとはっきり伝えていました。ブログ上でのやり取りを希望している私の要望に応じて頂けなかったにも関わらず、私がブログで回答しないから仕方なくツイッターで議論したというのは一体どういう論理なのでしょうか。ブログのコメント欄が何のためのものなのかすら理解できないということでしょうか。ブログでのやり取りもダメ、YouTubeでのやり取りもダメ、Discordでのやり取りもダメ、そして返事が返ってくるのは私がやめてくれとお願いしているツイッターだけ、それが私が置かれた状況です。
補足しておきましたよ。https://t.co/s92ElbOJro
何度も言いますが、議論したいのであれば私はいつでもオープンなDiscord上でお話しします。今からでも構いません。ご都合の良い日時をお伝え下さい。
— GiantGox (@GiantGox) July 4, 2020
また、アンゴロウさんがYouTubeで抜粋している中央銀行の資料も自分で探して一部和訳して掲載しました。最終的に長い文章を書くことになったため、こちらに個別の記事として掲載することにしました。私が和訳した限りアンゴロウさんの説明とは対照的に、JasperとUbinによる実験では「3つ以上のネットワークをまたがるアトミック・トランザクションにはブリッジ通貨が必要である」というのが論考(まとめ)であり、ブリッジ通貨は必要ないなどとは書いてありませんでした。尚、Project Ubinを主導するシンガポールの中央銀行にあたるMASはリップル社と協業していますし、Project Jasperを主導するカナダ中央銀行が運営するPayments Canadaもリップル社が主催するSWELLに参加しています。
@mocozworld リップルです。
— 北尾吉孝 (@yoshitaka_kitao) 2016年11月18日
リップル社の公式見解
リップル社のEmi Yoshikawaさん(国際事業部門シニアディレクター)は「CBDCとXRPは競合するのではないか?」という質問に対しては次のように回答しています。
「CBDCやステーブルコインについても、ブリッジ通貨としてのXRPは競合ではなく補完的な関係にあり、お互いにデジタルであることによって、さらに相乗効果が生まれると考えています。XRPは法定通貨を代替するというよりは、法定通貨やそのデジタル版の変換をより効率化することを目指しているため、これらの新たなプロジェクトは共存するものであると考えています。」
出典:CoinPost
「暗号資産にはいろんなタイプのものがありますが、XRPの国際決済におけるブリッジアセットとしての役割はステーブルコインやCBDCとは競合するものではなく、逆に相互補完するものだと考えています。様々なステーブルコインやCBDCを、独立した暗号資産であるXRPがブリッジすることによって流動性問題に対応し、シナジーを生むものだと考えています。」
出典:FXcoin
また、リップル社はCBDCの実用化に関して中央銀行と協業していることを以前から明らかにしています。
リップル社は、国際決済ネットワークのリップルネットを構築した経験を活用し、規制当局や中央銀行と協力してCBDCのサポートに使用できるオープンで相互運用可能なプロトコルを開発および実装しています。
出典:リップル社
まとめ
要約すると
- 複数の台帳を接続するクロスボーダー決済にブリッジ通貨は必要
- 中央銀行デジタル通貨(W-CBDC)はパブリックに交換できるブリッジ通貨にはなり得ない
- 利用される技術とは無関係にUSDに代わるブリッジ通貨は必要である
- RippleNetはXRPをブリッジ通貨として利用するシステムである
- 実際に金融機関が採用を進めているRippleNetが「これから使われなくなる」という話には無理がある
- CBDCとXRPは競合しないというのがリップル社の公式見解
以上が私の個人的な意見です。
※本記事を読んで頂いた人達にははっきりと伝わったと思いますが、経験的に私がこうして回答をしたところでそれがまともに紹介されることは無いと思っています。