Rippleが解決する現実の問題

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支払いと決済の違い

リップル社が主導するRippleNet(リップルネット)は、クロスボーダー決済を実現するためのネットワークです。クロスボーダー決済とは、「国境を超えた決済」という意味です。しかし、一般的に『決済』という言葉の意味を理解している人が少ないため、「クレジットカードやSuicaがあるからリップルはいらない」などという誤解が生じています。そこで、ここでは最初に決済とはどういうものなのかを簡単に説明してみようと思います。

決済システムにおける決済の実行プロセスは、次に説明する3つのプロセスに分類されます。この支払いから決済までの一連のプロセスはペイメント=>クリアリング=>セトルメントの順番で行われます。ここでは説明を分かり易くするためにクリアリングを最後に説明します。

  1. セトルメント(決済)
    お金(現金、預金残高)を実際に移動すること。例えばお店で現金の支払いをすると、お店にお金が移動します。これがセトルメント(決済)です。
  2. ペイメント(支払い・取引)
    ペイメントとは、お金(現金、預金残高)の移動が伴わない支払いのことです。例えばお店でツケ払いをすると、実際にはお金のやり取りをすることなく支払いが完了します。この身近な例は、クレジットカードやSuicaでの支払いです。クレジットカードやSuicaで支払いを受けたお店は、決済日までお金を受け取ることができません。
  3. クリアリング(清算)
    AさんとBさんがお互いにツケ払い(ペイメント)を繰り返した場合、月末などのタイミングで決済(セトルメント)をする必要があります。決済のために帳簿上でお互いの支払い履歴から、実際に支払う差額を計算するプロセスをクリアリング(清算)と呼びます。

 

国内の銀行間決済

それでは国境を超えた決済である『クロスボーダー決済』の問題点を理解するために、次に国内の銀行間決済がどのように行われているかを見てみましょう。日本国内での銀行間決済は、全国銀行協会(全銀協)傘下の全国銀行資金決済ネットワークが運営する全国銀行データ通信システム(全銀システム)と日本銀行が運営する日本銀行金融ネットワークシステム(日銀ネット)という2つのシステムが連携することで行われています。

  1. ペイメント
    この一連の処理の中で、仕向銀行が支払人から受取人への資金振込を依頼する振込指図を被仕向銀行宛てに送付して、被仕向銀行がこれを受け取るプロセスがペイメント(支払い)に該当します。この仕向銀行と被仕向銀行間のやり取りは全銀システムを介して行われます。
  2. クリアリング
    全銀システムでは、複数の仕向銀行から送付される多くの振込指図を集計し、最終的に受け取る(または支払う)べき差額を算出するクリアリング(清算)のプロセスが実施されます。
  3. セトルメント
    全銀システムのクリアリングで算出された差額について、各銀行が日本銀行に開設している当座預金口座間で資金振替を行うことによりセトルメント(決済)が行われます。このプロセスは日銀ネットにより実施されます。

ここで重要なことは、銀行間の資金決済が中央銀行を介して行われていることです。

 

国際送金とコルレス銀行

コルレス銀行は、外国に送金する際にその通貨の中継地点となる銀行です。銀行間の内国為替取引の場合には、銀行間の決済は両行が自国中央銀行に開設している当座預金勘定でそれぞれの銀行間の資金決済を行いますが、外国為替(国際間の取引)では日本銀行のような中央銀行がありません。そのため、銀行は海外の銀行との間で口座(コルレス口座)を開設しあい、その口座で資金を振り替えることによって決済を行います。コルレス銀行が最終の支払相手ではない場合、他行への口座の振替えは中央銀行を通じて決済が行われます。

ここで為替(かわせ)という言葉が出てきました。為替は、為替手形や小切手、郵便為替、銀行振込など、現金以外の方法によって、金銭を決済する方法の総称です。為替には内国為替と外国為替があり、証券決済に対してこれらは資金決済に分類されます。内国為替とは、国内の債権債務の決済や送金(資金移動)のことで、私たちが普段利用するものには振込や口座振替があります。外国為替とは、国際間の債権債務の決済や送金(資金移動)および決済に伴う通貨の両替のことを言います。

銀行を介した送金で、顧客(送金人)から送金や振込の依頼を受け資金を送付する銀行を仕向銀行(しむけぎんこう)、資金を受け取る銀行を被仕向銀行(ひしむけぎんこう)と呼びます。仕向銀行と被仕向銀行にコルレス契約がない場合には、原則的に共通のコルレス契約がある他の銀行を介して取引を行うことになります。それらのコルレス銀行の中でも為替取引のための決済勘定(預金勘定)を置いている銀行をデポコルレス銀行(デポ銀行)と呼びます。下図の例では、デポコルレス銀行内の仕向銀行口座と被仕向銀行口座の資金振替をすることで資金の決済を行います。

 

マイナー通貨ペアの問題

しかし、現実には上述したようなスムーズな送金ができるのは日本円と米ドルのようなメジャーな通貨間の取引に限られます。例えばメキシコーフィリピン間のようなマイナー通貨ペアの国際送金では、複数の中継銀行を経由してバケツリレーのように送金が行われます。そのため、中継銀行を経由するたびに両替のスプレッドと送金手数料が上乗せされ、利用者は高い手数料を支払うことになります。

また、この仕組みを実現するためにSWIFT加盟行のうち約7,000行が合計130万件のコルレス関係を持ち、グローバルな流動性のために約5兆ドルがノストロ口座に死蔵されています。そして、このコルレス銀行を利用した既存の送金の仕組みでは送金がたびたび失敗し、利用者が最終的な損失を被ることになります。グローバル決済における失敗率は4%に達します。

しかし、このコルレス銀行を利用する銀行間決済の方式には、あらゆる通貨ペアのクロスボーダー決済に対応できるという大きなメリットもあります。

 

ヘルシュタットリスクとCLS決済

コルレス銀行方式の外国為替取引では、通貨の最終的な受渡しは決済日に通貨発行国で行われるため時差の分だけ受渡しにタイムラグが生じ、相手方の銀行が破綻する等により、通貨の引渡しは終えているのに交換する通貨を受け取れないという時差から生じる決済リスクがあります。この決済リスクは、1974年に西ドイツのヘルシュタット銀行が破綻した際に顕在化したことからヘルシュタットリスクと呼ばれるようになりました。

例えば、日本の銀行がアメリカの銀行に日本円を支払い、その対価としてアメリカの銀行から米ドルを受け取る外為取引を行う場合、次のような2つのステップで資金決済が行われることになります。

  1. 日本の銀行が日本にあるアメリカの銀行の預金口座に日本円を振り込む
  2. アメリカの銀行がアメリカにある日本の銀行の預金口座に米ドルを振り込む

この2つの資金決済はそれぞれの国の決済システムによって行われるため、アメリカの銀行は決済日当日の日本時間14時半に日本円を日本で受け取り、日本の銀行は日本時間の翌日夕刻に米ドルをアメリカで受け取ることになります。このように資金の支払いと受け取りにタイムラグが生じるため、日本の銀行がアメリカの銀行に日本円を支払った後にアメリカの銀行が破綻すると、日本の銀行は米ドルを受け取ることが出来ないため大きな損失を被ることになります。2008年に起きたリーマン・ショックは、このリスクが顕在化した1つの事例です。

このようなリスクを回避するために、2002年に世界の主要民間銀行の出資によってニューヨークにCLS銀行が設立され、世界的に多通貨を同時に決済するためのCLS決済という仕組みが作られました。CLSとは、多通貨同時決済を意味する Continuous Linked Settlement の略で、CLS銀行は外国為替決済において中央銀行のような役割を果たす各国中央銀行に口座を持つCLS決済のための銀行です。CLS銀行では、売渡通貨と買入通貨の決済を同時に行うPVP(Payment versus Payment)と呼ばれる仕組みによって外国為替決済を行うことでヘルシュタットリスクを防止しています。CLS決済は2019年3月時点で18通貨に対応しています。

【CLS決済に対応する通貨】

オーストラリア・ドル カナダ・ドル ユーロ
日本円 スイス・フラン イギリス・ポンド
アメリカ・ドル シンガポール・ドル スウェーデン・クローナ
ノルウェー・クローネ デンマーク・クローネ 香港ドル
韓国ウォン ニュージーランド・ドル 南アフリカ・ランド
メキシコ・ペソ イスラエル・シェケル ハンガリー・フォリント

2008年のリーマン・ショックを背景に起きた世界金融危機では、世界の外国為替市場における決済が一時的に出来なくなるような危機的な状況が発生しましたが、PVP決済を提供するCLS銀行がその危機の拡大を防止するうえで非常に重要な役割を果たしました。これにより、国際機関や中央銀行などからのCLSに対する評価が高まりました。そして、BIS規制を行うバーゼル銀行監督委員会は、2013年2月に「外為取引の決済に関連するリスクを管理するための監督上の指針」を公表しました。この指針の中でバーゼル銀行監督委員会は、外国為替取引における元本リスク(元本取りはぐれリスク)の削減を目的としてPVP決済の利用を促しました。PVP決済方式を採用したクロスボーダーの多通貨同時決済システムはCLS以外に存在していなかったことから、これは事実上、世界の金融機関に対してCLS銀行の利用を義務付ける内容の指針となりました。

コルレス銀行方式は、個々の銀行が外国為替取引の決済の必要性に応じて相手国の銀行との間で任意に構築できる相対の個別決済システムのため、比較的容易にシステム構築ができるというメリットがありました。CLS決済ではPVPという仕組みでヘルシュタットリスクを防ぐことができる一方で、この仕組みを実現するためにはCLS銀行が取り扱う各国の通貨全ての国内決済システムが共通の時間帯に稼働していなければいけないことや、このシステムに参加する各国の金融機関がCLSという特定の決済専門機関を利用しなければいけないといった厳しい条件をクリアしなければなりません。そのため、CLS決済で世界各国の通貨に対応するのはコルレス銀行方式ほど容易ではありません。更にCLSのPVP決済では、あらかじめ定められた特定の時間帯に各国の国内決済システムを通じて売渡通貨と買入通貨の決済を同時に行う仕組みであるため、リアルタイムのクロスボーダー決済を実現することが出来ません。

 

RippleNetによる即時クロスボーダー決済

(この項目は執筆中です)

リップル社が主導するRippleNetでは、インターレジャー・プロトコル(ILP)を利用することでヘルシュタットリスクを回避するとともにリアルタイムのクロスボーダー決済を実現しています。ILPはインターネットで情報通信を可能にしているTCP/IPと呼ばれるプロトコルをモデルに作られました。TCP/IPではルーターと呼ばれる機器が目的地まで情報を中継することで通信を実現していますが、ILPはこれをモデルに価値を送ることに可能にした技術です。特定の資産の価値が記録されている台帳をILPで相互接続することで、あらゆる物の価値を送受信することが可能になります。例えば金を保有している人が金の価値を送り、受取人はそれを日本円や米ドルで受け取ることも可能です。RippleNetでは、ネットワークメンバーの銀行や国際送金業者が価値の移動を中継するルーターの役割をすることでクロスボーダー決済を実現しています。

RippleNetでは、複数の銀行に為替取引のための決済勘定を置くネットワークメンバーの金融機関が流動性プロバイダーとなり、ILPを利用した失敗のないリアルタイムの送金と送金コストの削減を実現します。これを実現するのはリップル社が開発するxCurrentと呼ばれる金融機関向けのエンタープライズ製品です。この仕組みを利用すればサードパーティーの流動性プロバイダーを利用することで、コルレス関係を結ばない銀行間での外為決済が可能になります。更にリップル社はxRapidと呼ばれる製品をRippleNetのネットワークメンバーに提供しています。xRapidは主にマイナー通貨ペアの取引での利用を想定したXRPと呼ばれるデジタル資産を活用する製品で、オンデマンドの流動性調達を実現します。これを利用することで、コルレス銀行方式では複雑だったマイナー通貨ペアの外国為替取引でもたった1回の両替で決済を行うことが可能になります。

xCurrent や xRapid などのリップル社のエンタープライズ製品については、リップル社が公式動画で詳しい解説を行っています。下記のページに和訳を掲載しています。

 

貿易金融とリップル

リップルについて調べていると、よく『Trade finance』という言葉が出てきます。これは日本語に訳すと『貿易金融』のことです。”Ripple”と”Trade Finance”というキーワードで検索すると、たくさんのニュースが出てくることが分かります。その歴史は長く、ニュースを追って行くと2015年まで遡ることができます。

このように2019年にもxRapidの採用を発表したユーロエクシム銀行が、RippleNetを貿易金融に応用するためのテストを実施していることが発表されています。

では、なぜ貿易金融なのでしょうか? そこで貿易金融と銀行間決済について調べてみました。

輸入業者と輸出業者の間の支払いは、銀行が発行する信用状(L/C)を用いて行われます。輸入業者の商品の受取と輸出業者の代金の受取に大きなタイムラグが生じるため、それぞれがリスクを回避するためにこのような仕組みが使われています。そこで、輸入業者側の銀行による L/C の発行から輸出業者への通知までの流れを図にしてみました。

発行から通知までの流れは次のようになります。

  1. 輸入業者と輸出業者が売買契約を行います
  2. 輸入業者が開設銀行にL/Cの発行を依頼します
  3. 開設銀行がL/Cを発行し、輸出業者側の通知銀行に送付します
  4. 通知銀行から輸出業者に通知されます

このL/C取引では、輸入業者を申請者(Applicant)、輸出業者を受益者(Beneficiary)と呼びます。L/Cには輸出業者が契約通りに商品を船積みしたことを証明すれば代金が支払われるという条件が記されています。これにより、輸出業者は商品の発送後すぐに銀行から代金の支払いをしてもらうことができます。

次に輸出業者の商品の発送から輸入業者の商品受け取りまでの流れを見てみます。(先ほどの絵とは左右が反転して輸出業者が左側なので注意。)

  1. L/Cの通知を受けた輸出業者は商品を船積みします
  2. 船会社から輸出業者に船荷証券(B/L)が発行されます
  3. B/Lを含む船積書類を買取銀行に提示し、為替手形を振り出します
  4. 銀行はL/Cに記載された契約条件を満たしていることを確認して代金を支払います
  5. B/Lを含む船積書類と為替手形が開設銀行に送付されます
  6. 輸入業者が為替手形に対して支払いを行います
  7. (開設銀行と買取銀行の間で銀行間決済が行われます)
  8. 支払が完了すると輸入業者は開設銀行からB/Lを含む船積書類を受け取れます
  9. 輸入業者は船会社にB/Lを提示します
  10. 船会社から輸入業者に商品が受け渡されます

このようにL/Cを利用した支払いでは、輸出国と輸入国の間で書類が物理的に行き来する関係上、決済が完了するまでに時間がかかります。Amazonで買い物をして決済が自動で完了する時代に、貿易金融の世界ではこのような煩雑な手続きを手動で行っているのが現状です。もしもAmazonで買い物をした後にわざわざ銀行の窓口やウェブに行って支払いの手続きをしなければならなかったらと考えると、当事者にとってこれがどれほど苦痛な作業か想像できると思います。

さらに悪いことに、輸出業者が商品を船積みして船荷証券(B/L)を受け取ったにも関わらず、銀行に信用状(L/C)の買取を拒否されることがあります。このような事故はL/Cが発行された国の経済が不安定な場合などに発生するため、マイナー通貨ペアでの決済時に起こりやすいと言えます。事故が起きた場合には、代金が受け取れない輸出業者は貿易保険を利用することになります。こうした決済リスクの問題を解消するためには、マイナー通貨ペアの銀行間決済をリアルタイム化する必要があります。まさにRippleNet(とくにxRapid)の出番と言えるでしょう。

ここで紹介した貿易金融の事例は RippleNet が解決する問題の一つの例に過ぎません。現実世界では様々な支払いサービスの裏で銀行間決済が行われています。その銀行間決済の問題を解決することで、より良い支払いサービスの提供を可能にするのが RippleNet とリップル社が提供するエンタープライズ製品です。

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