2025年時点の製品体系

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2025年のRipple社では、長年続いていた訴訟の控訴が取り下げられたことで法的な不透明感が和らぎ、事業の展開領域が一段と広がりました。

では、創業当初に国際送金のネットワーク構築を主軸としていた同社は、この年にどのような価値を提供する企業へと進化したのでしょうか。

国境を越えて代金を支払う企業の現場をイメージしてみると、業務の流れが掴みやすくなります。企業が海外送金を行う際には、送金前の資産をどこで安全に保管するか、必要な通貨や資金をどのように調達するか、そして送金した後の残高や財務状況をどう管理するかといった一連のプロセスが、途切れることなく連続して発生します。

2025年のRipple社は、こうした支払いの前後に関わる一連の課題を自社のサービス群で網羅するため、矢継ぎ早に企業の買収を進めました。その歩みを順を追って見ていきましょう。

2025年のRippleの事業領域。国際決済、デジタル資産の保管、機関向け取引、企業財務、ウォレット運用の五分野を示し、RLUSDは別にステーブルコインとして表示した図
2025年に広がったRippleの事業領域。買収発表・完了・製品統合はそれぞれ別の段階です。

保管から取引へ広がる仕事

まず基盤となるのが、決済と資産保管の役割分担です。現在、Ripple Paymentsは企業や金融機関向けの国際決済を担い、Ripple Custodyは暗号資産やトークン化された資産を安全に保管・管理するサービスを提供しています。ここでよく話題に上る米ドル連動型ステーブルコイン「RLUSD」は、特定のシステム製品名ではなく、こうした決済や流動性供給の現場で実際に利用されるデジタル資産そのものを指しています。

この保管領域を強化するために行われたのが、2つの買収でした。2023年に買収したMetacoは金融機関向けの高度な保管ソフトウェア技術を持ち、2024年に買収したStandard Custodyはニューヨーク州金融サービス局などの監督を受ける正規の信託会社でした。つまり、前者は「保管するための仕組みや技術」を提供し、後者は「法的な規制に則って業務を行う体制やライセンス」を担保する存在です。

一方で、機関投資家が大口の資金を取引する際には、単純な送金や売買注文だけでは完結しません。取引に伴う資金調達、担保の管理、さらには取引後の決済や受け渡しといった包括的な支援が不可欠です。

そこでRipple社は2025年4月、機関投資家向けにそうした一連の業務を包括して提供する「プライムブローカー」であるHidden Roadを、12億5,000万ドルで買収すると発表しました。買収完了後、この事業は「Ripple Prime」という名称で展開されることになります。これにより、Ripple社は従来の銀行送金インフラとは異なる、機関投資家向けの市場インフラそのものを自社の製品ラインナップに組み込むこととなりました。

支払いと企業財務へ

続いて同年8月、Ripple社はステーブルコインを用いた企業間決済を手がけるRailを2億ドルで買収すると発表しました。Railが備えている仮想口座の生成や入出金処理の仕組みは、企業が暗号資産を使って決済を行う際に、複雑な運用基盤をゼロから自前で構築する手間や負担を大きく軽減します。

さらに10月には、企業の資金繰り(キャッシュマネジメント)、為替リスク、財務管理全般を支援するGTreasuryを10億ドルで買収すると発表しました。GTreasuryが扱うのは、たとえば海外に複数の現地法人を持つ企業が「今、世界中のどの銀行口座にいくらの資金があり、いつどこへ支払う必要があるか」を一元的に可視化・計画するような領域です。これにより、Ripple社の事業は「送金を実行する瞬間」にとどまらず、その前段階にある企業の総合的な資金計画や財務管理にまで大きく裾野を広げました。

加えて11月には、ウォレットインフラを提供するPalisadeの買収も発表されています。Palisadeは、企業が大量のウォレットを迅速に発行し、日々の頻繁な入出金を円滑に処理するための技術に強みを持っています。この買収には、強固で厳重な長期保管を重視するRipple Custodyの仕組みと、日常的な決済で素早く動かせるウォレットの利便性を組み合わせ、保管から利用までをスムーズにつなぐ狙いがあります。

なお、ここで挙げた各社の買収発表、正式な買収完了、そして実際のRipple製品への機能統合はそれぞれ段階的に進行するものであり、すべてが同一のタイミングで完了しているわけではない点には留意が必要です。

評価額400億ドルをどう読むか

2025年11月、Ripple社はFortress Investment GroupやCitadel Securitiesの関連ファンドなどが主導する、5億ドルの戦略的投資を受け入れると発表しました。この取引の際に示された同社の企業評価額は400億ドルに達しています。

ここで注意したいのは、「400億ドルの新規資金がRipple社の口座に入った」わけではないという点です。実際に会社へ払い込まれた投資額は5億ドルであり、400億ドルという数字は、その出資比率や条件に基づいて算出された「取引時点における会社全体の市場価値の評価」を表しています。

この2つを明確に区別して捉えることで、調達した資金額の規模と、外部の有力な投資家が同社の将来性に下した事業価値の評価を、それぞれ客観的に見極めることができます。もちろん、実際の収益性や個々のプロダクトがどれほど利用されているかという実績については、評価額とは別の財務指標や利用統計を手掛かりに確かめていく必要があります。

旧製品とのつながり

同社が以前展開していた「xCurrent」「xRapid」「xVia」という製品群を覚えている方も多いかもしれません。これらはそれぞれ、銀行間の情報交換と決済の連動(xCurrent)、暗号資産XRPを活用した即時流動性の供給(xRapid)、そして一般企業が送金ネットワークへ接続するための窓口(xVia)という、当時の国際送金プロセスにおける各工程に個別に対応していました。

その後、ネットワーク全体を指す名称として「RippleNet」が使われるようになり、xRapidに由来するXRPを用いたオンデマンド流動性の仕組みは「ODL(On-Demand Liquidity)」として整理され、決済機能全体は現在の「Ripple Payments」へと統合・発展していきました。

今回取り上げたデジタル資産の保管、ステーブルコイン、プライムブローカレッジ、そして企業の財務管理といった機能は、すべてその後に加わった新しい領域です。過去の製品名を現在の各サービスに1対1で機械的に当てはめようとするよりも、「創業期の送金プロセスで培われたどの課題解決が引き継がれ、どのような新しい機能が加わって企業向けの包括的な金融プラットフォームへと成長していったのか」という文脈で捉える方が、同社の現在地をより自然に理解できるでしょう。

次章では、2026年におけるRipple Paymentsの累計処理額や、各事業の最新発表を手掛かりにしながら、この事業拡大が具体的にどこまで進展したのかを検証していきます。

出典・参考資料