SEC訴訟の控訴取下げ

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2024年に下された終局判決を受け、米証券取引委員会(SEC)とRipple社はともに控訴手続きを行いました。SECは取引所などを通じた「プログラマティック販売」をめぐる地方裁判所の判断を争い、Ripple社もまた、機関向け販売など自社にとって不利とされた判断を争う姿勢を示しました。もし控訴審(上級審)が判決を下せば、地裁が下した判断の理由や法解釈が改めて評価・確定されることになります。ところが2025年に入ると、双方はこれ以上裁判を長引かせず、訴訟そのものを終結させる道を選びました。ここで一つ、大きな疑問が生じます。民事訴訟において、一度裁判所が下した「終局判決」の内容は、当事者同士が合意するだけで自由に変更できるのでしょうか。

減額の合意案と裁判所の判断

2025年5月にまとまった両者の合意案では、2024年の判決に含まれていた差止命令(将来の違反を防ぐための是正命令)を解除し、命じられていた1億2,503万5,150ドルの民事制裁金を5,000万ドルへと大幅に引き下げる内容が提示されました。この数字だけを見ると、合意によって制裁金がすでに減額されたかのように思えるかもしれません。

しかし、一度下された終局判決の内容を変更するには、必ず裁判所の正式な許可と判断が必要です。「当事者が望んで合意した和解案」と、「裁判所が公に命じた法的な効力を持つ判決」は明確に区別しなければなりません。

2025年6月26日、事件を担当するアナリサ・トーレス判事は、差止め命令の解除と制裁金の減額を認める意向を示すよう求めた当事者からの申立てを退けました。裁判所が一度下した終局判決を変更するためには、単に「双方が合意した」という希望だけでは足りず、判決の最終性(一度決まった判決の重み)や公共の利益に配慮した「特別の事情」が求められます。裁判所は、過去の登録義務違反が認められた本件において、一度下した差止めを消し去り、制裁金をここまで大きく減額するに足る十分な理由は示されていないと判断しました。その結果、合意案として示されていた5,000万ドルという金額は、法的な確定額にはなりませんでした。

控訴はどう終わったか

判決の変更が認められなかったことを受け、双方は判決内容を修正するのではなく、互いに「控訴そのものを取り下げる」という方針へと移行しました。2025年8月7日、SECとRipple社は連邦第2巡回区控訴裁判所に対して共同の取下げ書を提出しました。

SECの終結発表によれば、一連の民事法執行事件はこれにより正式に解決し、効力として残ったのは「2024年に地裁が下した終局判決」そのものでした。したがって、1億2,503万5,150ドルの民事制裁金や差止命令を含む2024年の地裁判決は一切変更されないまま、控訴手続きが終了したことになります。

今回の結末を理解する上で、特に注意すべき点が2つあります。

第1に、控訴審が本案判断(実質的な法解釈についての判断)を出さないまま終了したという点です。2023年に示された略式判決の理由は、あくまでこの裁判の当事者であるSECとRipple社を拘束する地裁レベルの判断にとどまります。上位の裁判所である第2巡回区控訴裁判所が、地裁と同じ理屈や法的判断を支持・確定したわけではない、という点には留意が必要です。

第2に、「資産そのものの性質や機能」と「その資産の販売方法」を明確に切り離して捉える視点です。XRPが国境を越える送金の中継資産として利用されること(技術的な実用性)と、Ripple社が資金調達を目的としてXRPを販売すること(資金調達行為)は、法的に全く別の経済行為にあたります。この訴訟の経緯や結果を正しく振り返る際には、資産の持つ技術的な用途と、「誰が、誰に対して、どのような契約や方法で販売したのか」という取引実態を混同しないことが極めて重要です。

出典・参考資料