個々の銀行との接続が増えると、一件ごとの個別開発では対応しきれなくなります。取引先の金融機関を探し、支払い条件をあらかじめ共有し、送金が今どのような状態にあるのかを追いかけるための共通の仕組みが必要になるからです。Ripple社は、こうした事業の広がりを、2017年に「RippleNet」という名称で発表しました。
つながるのは金融機関の業務
「RippleNet」という名前を聞くと、まるで1つの巨大なデジタル台帳に世界中のすべての銀行が資金を預け合っている姿を想像するかもしれません。しかし実際のRippleNetは、銀行や送金事業者がスムーズに国際支払いを扱うための「商用ネットワーク」全体を指す名称です。参加している金融機関は、自分の顧客が本人かどうかを確認し、送金相手の機関と安全に情報を交わし、支払い条件や進捗状況を確かめ合います。つまりこのネットワークは、異なる金融機関同士の業務をつなぎ合わせ、利用者である顧客にとっては「ひとまとまりの確実な送金」として見せるための仕組みでした。
2017年の命名をどう読むか
2017年のRipple社の発表によると、同社はすでに構築を進めていた国際的なネットワークに対して「RippleNet」という新しい名前を付けました。この同じ発表の中では、「xCurrent」「xRapid」「xVia」という個別の製品群もあわせて説明されています。したがって、RippleNetという名前が発表された日と、あらゆるシステムや接続が初めて実際に稼働した日を同じものとして捉えないほうが自然です。これは、すでに銀行向けに進めていた取り組みを、複数の製品を利用できる1つのネットワークとして分かりやすく説明し直す意図があったと読み取れます。
同年10月、Ripple社はRippleNetに参加する金融機関が100社を超えたと発表しました。この数字は事業の拡大具合を知る大きな目安になりますが、具体的に「何を数えた数字なのか」には注意が必要です。参加している機関の中には、情報交換や決済の連携を目的としてネットワークに接続しているところも含まれていました。つまり、参加しているすべての機関が、当時から常に「XRP」を橋渡し資産として使っていたわけではありません。実際に「xRapid」の商用提供が発表されるのは2018年になってからです。そのため、ネットワークの参加者数をそのまま「XRPを使った商用送金の利用者数」として扱ってしまうと、歴史的な年表の順序が崩れてしまいます。
後のRipple Paymentsへ
その後、2023年にRipple社は、従来のRippleNetを発展させた新しい企業向けサービスとして「Ripple Payments」を発表しました。2026年の資料を見ると、法定通貨だけでなくステーブルコインの受け取り、保有、交換、払い出しまでをトータルで扱う機能が説明されています。ここから分かるのは、過去に作ったネットワークに単に新しい名前を貼り付けたわけではなく、提供方法や機能そのものが時代に合わせて進化してきたということです。そのため、2017年のRippleNetについて説明するときは当時の製品群に沿って考え、現在のRipple Paymentsについて説明するときは現行の公式資料に沿って説明するべきです。