Interledger Protocolと異なる台帳の接続

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送金に参加する銀行や決済事業者が、それぞれ異なる帳簿を使っている場合はどうでしょうか。ここで直面する大きな課題は、「帳簿ごとの境界を越えて、いかにスムーズに価値を届けるか」という点にあります。

一つの台帳では足りない理由

仮にXRP Ledgerがどれほど優れた性能で稼働していても、世界中の銀行や決済事業者がすべて同じ台帳に移行するとは限りません。金融機関はそれぞれ独自の勘定系システム(帳簿)を長年運用しており、国ごとに決済制度や法規制、営業体制も大きく異なります。

どれか一つの台帳が単独でどれほど高速に動いたとしても、送金側の口座と受取側の口座がそれぞれ別々の仕組みにとどまり続ける限り、台帳と台帳の間をつなぐ架け橋が不可欠です。そこでRipple社の技術者たちは、「全世界の台帳を一つに統合する」という非現実的な道ではなく、「異なる台帳同士を相互につなぎ、支払いをリレーする」という現実的なアプローチを模索しました。

こうして2015年に考案されたのが、Interledger Protocol(略称:ILP)です。当時Ripple社に在籍していた開発者のステファン・トーマス(Stefan Thomas)とエヴァン・シュワルツ(Evan Schwartz)が初期論文を発表し、異なる台帳間に安全な支払い経路を構築する構想を提示しました。後のInterledger Foundationも説明しているように、ILPが目指すのは、異なる事業者のメールサーバー間でメールが届く仕組み(SMTPなど)と同じように、異なる金融ネットワークの間で価値を自在にやり取りできる世界です。

これを「線路」にたとえてみましょう。A銀行の帳簿上では「円」という線路が敷かれ、B社の帳簿上では「ドル」という線路が敷かれているとします。それぞれの線路の中だけであれば列車を走らせることができますが、線路の規格が異なれば、直通運転はできません。積荷(価値)を目的地へ届けるには、駅や中継地点でどのように貨物を受け渡すかというルールが必要になります。

ILPの発想はまさにこの「中継」にあります。接続を担う中継者がそれぞれの帳簿に口座を持ち、隣り合うネットワーク同士の支払いをバケツリレーのように連ねていきます。全員に一つの巨大な共通台帳を使うよう強制するのではなく、経路上の各ステップで価値を順次受け渡していくことで、境界を越えた支払いを実現しているのです。

異なる送金側と受取側の台帳をInterledger Protocolの共通ルールでコネクターが中継する図。XRP LedgerやXRPは経路で使う場合があるが必須ではない
ILPは異なる台帳をつなぐ共通ルールです。XRPの利用は経路に応じた別の選択です。

初期の論文と現在の仕様

ただし、中継者を増やして経路をつなげば、それだけで自動的に安全な送金ができるわけではありません。現実の決済では、途中の参加者が資金を受け取ったまま次へ渡さないリスク(持ち逃げ)や、相手側の帳簿システムが突然停止するトラブル、決済途中で為替レートが急変してしまう危険などが存在します。

そのためILPの設計では、各中継段階に暗号学的な条件、有効期限、支払いの完了確認を組み合わせることで、中継者が負うリスクを極力抑える仕組みが採られました。さらに現在のILPの仕様では、一度にまとまった額を送るのではなく、データを小分けにして送るインターネットの仕組みのように、少額の支払いを小さな「パケット」に分割して連続送信する方向へと進化しています。初期論文から現在の第4版(v4)に至る過程で、支払いを運ぶ具体的なアプローチも洗練されてきました。

ここで特に初心者が混同しやすい重要なポイントがあります。それは、「ILPはXRP Ledgerと同義ではない」ということです。

Interledger Foundationの現在の公式な説明でも明記されているとおり、ILPは特定のブロックチェーンや特定の暗号資産に依存しない、オープンで中立的な標準規格です。Ripple社の2017年の製品説明では、銀行向けソリューションである「xCurrent」の基盤技術としてILPが言及されていますが、これは「ILPを使う送金では必ずXRPが使われる」という意味ではありません。「異なる帳簿をつなぐ通信プロトコル(約束事)」と、「その送金経路上で実際にどの資産を動かすか」という問題は、明確に切り離して整理する必要があります。

XRPを使うかは別の選択

この「通信プロトコル」と「使用する資産」の区別を理解しておくと、その後に登場するRipple社の各種製品の位置づけが格段に分かりやすくなります。

  • xCurrent: 銀行同士が送金メッセージや支払い条件を照合・交換し、ILPを用いて台帳間の決済を連動させる仕組み
  • xRapid: 送金経路において、XRPを活用してオンデマンドで流動性(資金)を調達する仕組み
  • xVia: 一般企業や資金移動業者が、標準化されたAPIを通じて送金を依頼するための仕組み

このように、各製品は国際送金におけるまったく異なる工程や課題を担当しています。ILPが目指したのは、これら個別の商用製品の枠組みを超えた、「異なる台帳同士をどのようにまたぐか」というプロトコル層の根本課題を解決することでした。

製品群とオープンなプロトコルは、生まれた母体や時期こそ近接していますが、その管理主体や現在の位置づけは決して同一ではありません。基盤となる共通言語(ILP)と、それを応用した商用サービスや資産(XRP)を整理して捉えることが、Rippleの技術エコシステムを正しく読み解くための重要な鍵となります。

出典・参考資料