事前に現地通貨を用意する理由

XRP——
BTC——
ETH——
SOL——
FLR——
XLM——
日本円・24時間騰落率|データ:bitbank|取得中

日本からフィリピンへ送金し、受取人が現地通貨のペソを受け取る場面を想像してみてください。もし、送金事業者が依頼を受けるたびにゼロからペソを調達していては、受取人を長く待たせてしまうかもしれません。そこでよく使われるのが、現地の提携先にあらかじめペソを置いておき、送金の依頼が届いたらその用意してある残高からすぐに支払うという方法です。これが「事前資金(プレファンディング)」と呼ばれる仕組みです。銀行が送金を行う場合には、海外の提携銀行に開設した「ノストロ口座(当方勘定)」などを利用することもあります。前節で確認したように、この同じ口座を資金を預かっている現地の銀行側から見ると「ボストロ口座(先方勘定)」と呼びます。

この事前資金を用意しておく方法には、明確なメリットがあります。すでに現地に支払い可能な資金があるため、受取人へのスピーディーな支払いを開始しやすいからです。しかし一方で、「置いてある資金は、実際に送金で使われるまで他の用途に回せない」という大きなデメリットもあります。世界中の多くの国へ送金サービスを提供する事業者であれば、各国の通貨をそれぞれどれくらい保有しておくべきか、常に予測しなければなりません。もし準備した資金が少なければ送金人の需要に応えられませんし、逆に多すぎると、手元の貴重な資金をただ寝かせておくだけになってしまいます。

また、為替市場の営業時間も大きく関係してきます。日本で送金依頼を受け付けた時点で、時差の影響により受取国の銀行や通貨市場はすでに閉まっているかもしれません。為替レートは常に変動するため、送金人に事前に提示した受取額と、後から実際に事業者が通貨を調達する際の価格との間に差額が生まれるリスクがあります。あらかじめ資金を現地に配置しておくことは、こうした「時間のずれ」による価格変動リスクに備える役割も果たしているのです。ただし、国際送金にはさまざまな経路が存在するため、すべての事業者が全く同じように口座へ資金を配置しているわけではありません。

従来の国際送金で各国に置く事前資金と、送金時にXRPを介して現地通貨を調達するODLの比較図
事前資金と、必要時に通貨を調達するODLの違い。

のちにRipple社が「オンデマンド・リクイディティ(必要な時に必要なだけの資金を動かせる仕組み)」というコンセプトを掲げたのは、まさにこうした非効率な資金の配置方法を見直すためでした。送金が必要になったその瞬間に、暗号資産である「XRP」を価値の橋渡し役として使い、即座に受取国の通貨を調達できれば、世界中で通貨ごとに抱えていた事前資金を大幅に減らせる可能性があります。もちろん、この仕組みを実現するためには、通貨を交換するための市場や取引相手、そして現地で受取人に払い出すための経路が引き続き必要になります。必要な通貨をその場でスムーズに調達できるかどうかは、対象となる国や通貨の種類、取引の量、そして価格帯によって大きく左右されます。だからこそ、この仕組みの真価を評価する際には、「本当に事前資金をどれだけ削減できたのか」、そして「受取人はいつお金を使えるようになるのか」という実用的なポイントを、具体的な送金経路ごとにしっかりと見ていく必要があります。

次章では、少し視点を変えてみたいと思います。このように銀行口座へ置かれたり、受取人の口座にデジタルな数字として記帳されたりする「お金」とは、そもそも「誰の約束」に基づいているのでしょうか。実はこの根源的な問いこそが、開発者のライアン・フッガーが考案した初期のシステム、「RipplePay」の誕生へとつながっていくのです。

出典・参考資料