SECがトーレス判事の電子メール開示命令に対する再考の申し立てを見送り!?

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SEC対Ripple訴訟において、SECにこれまでと少し違う動きがあったので、ジェレミー・ホーガン弁護士の解説を和訳して掲載しておきます。

ジェレミー・ホーガン弁護士の解説

Ripple v. SEC訴訟の簡単なアップデート:

「混乱が見られるので、ツイートします」

9月29日、トーレス判事はヒンマン電子メールの引き渡しに対するSECの反対意見を退けましたが、いつまでに引き渡さなければならないかは明言していません。

したがって、期限は判事の判決に対する上訴がいつになるかになります。裁判所は、一度書類を渡してしまうと、「元に戻す」ことができないので、このように甘いのです。

だから、その期限は基本的に60日です – 彼らが再考を求めたらもっと長いかもしれませんが、私は彼らがそうするとは思えません。

SECが判決に対して上訴した場合、その解決には長い時間-数ヶ月-がかかるでしょう。

個人的には、SECが上訴することはないだろうと思います。 悪い事実=悪い法律です。そして、これらは悪い事実です。

しかし、この点については、他の人たちは異なる意見を持っています。

しかし、これらの電子メールに書かれていることは、証券法第5条違反(XRPが証券であるかどうか)には関係ないことを心に留めておいてください。それはおそらくフェア・ノーティス・ディフェンスにのみ本当に関連するものです。

また、SECだけがフェア・ノーティス・ディフェンスに関する略式判決を求めており、リップル社は求めていないことを思い出してください。

したがって、私は、リップル社は、ディスカバリーが完了していないため、フェア・ノーティス・ディフェンスの問題についての判決に異議を唱えるだろうと考えています。その異議を勝ち取るのです。

したがって、SECがメール命令を不服としたとしても、第5条違反の問題は前進し、11月15日までに完全なブリーフィングが行われることになるでしょう。

ヒンマン電子メール問題で何が起ころうとも、遅れが出ようとも、主要な問題は判決に進むでしょう。

もし、リップル社が第5条違反で勝訴した場合、フェア・ノーティス・ディフェンスは無意味になります。 もし、リップル社が第5条違反で負けたとしても、フェア・ノーティス・ディフェンスに関する略式判決を求めることができます。

 

何が起こったのか?

まず最初に何が起こったのかですが、SECはネットバーン下級判事によるヒンマンの電子メールチェーンの開示命令について、トーレス判事に異議申し立てをしていました。しかし、トーレス判事はネットバーン下級判事の決定を支持し、SECに対して6度目の開示命令が出されました。これが決定したのが9月29日です。

XRPコミュニティでは、このトーレス判事の決定に対してSECは再考の申し立てを提出するのではないかと予想していました。なぜなら、SECが電子メールの開示をこれまでのように遅延させる方法として残された手は、

  1. 再考の申し立てをする
  2. 第二巡回区裁判所への上訴の承認を求める
  3. 第二巡回区裁判所に職務執行令状1)職務執行令状(マンダムス令状/writ of mandamus):申立人の利益を守るために上級裁判所が発する令状で、下級裁判所、政府、行政機関、公共団体に何らかの懈怠あるいは怠慢があった場合、あるいは、不作為・不履行をしている場合に、法の定めるところによりある行為の履行または行為の履行の差し止めを強制的に命じるものを求める

ぐらいしか残されていないためです。そのため多くの人は、SECがこれらの手をすべて尽くして、できる限り遅延を図るだろうと予想していたのです。

しかし、再考の申し立ての期限である10月13日になっても、SECから申し立てが提出されることはありませんでした。これまで手段を選ばず訴訟の遅延を図ってきたSECが再考の申し立てを行わなかったことで、逆にXRPコミュニティは混乱しました。そこで、ジェレミー・ホーガン弁護士が前述のような解説をツイッターで行ったわけです(あくまでもホーガン弁護士個人の見解です)。

ホーガン弁護士の説明は次のようなものでした。

  1. 9月29日の決定でトーレス判事はメール開示の期限を明言しなかったため、メール開示の期限は上訴の期限と同じく9月29日から60日以内になる
  2. 10月13日までにSECが再考の申し立てを提出すればその分だけ提出期限は延びるが、ホーガン弁護士はしないと予想
  3. SECがトーレス判事の決定を不服として第二巡回区に上訴した場合、その決定には長い時間(数ヶ月)がかかるが、ホーガン弁護士はSECが上訴しないと予想
  4. 1,2,3に関して、ホーガン弁護士は他の人達と意見が異なる
  5. 電子メールに書かれていることは証券法第5条違反(XRPが証券かどうか)には関係無く、フェア・ノーティス・ディフェンスにのみ関係する
  6. リップル社はフェア・ノーティス・ディフェンス関する略式判決を求めておらず、SECだけがフェア・ノーティス・ディフェンスの略式判決を求めている。したがって、証拠開示の未完了(電子メールが開示されていないこと)を理由にリップル社はフェア・ノーティス・ディフェンスについての判決に異議を唱える(そしてそれを勝ち取るつもり)と予想する
  7. SECが電子メールの開示命令を不服として何かをしても、第5条違反の問題はそのまま進み、11月15日に略式判決のブリーフィングは完了する
  8. リップル社が第5条違反に関する略式判決で勝訴すれば、フェア・ノーティス・ディフェンスは不要になる
  9. 仮にリップル社が第5条違反で負けたとしても、6の理由でリップル社はフェア・ノーティス・ディフェンスに関する略式判決を求めることができる

まず、1と2と3に関しては、ホーガン弁護士は他の弁護士らと意見が異なるとあえてコメントしています。通常、上訴の期限は決定から30日以内ですが、1で上訴の期限を60日以内とした理由は原告が行政機関だからだと他のツイートで説明しています(行政機関だと60日以内になる理由は謎だと言っています)。

2と3については、SECはそれらの遅延戦術をもう使わないだろうとホーガン弁護士は予想しています(そして実際にSECは2の再考の申し立てを行いませんでした)。ホーガン弁護士がそう考える理由は、おそらく7で説明されているように、電子メールの開示問題でSECが何かをしても、略式判決による最終判決のスケジュールはもう変わることがないからだと思います。

ホーガン弁護士の理論では、もしもリップル社が略式判決で証券法第5条違反の争いに負けたとしても、SECがヒンマンの電子メールチェーンを開示していないため、証拠開示の未完了を理由にフェア・ノーティス・ディフェンスについての判決に対して異議申し立てを行えることになります。言い換えれば、フェア・ノーティス・ディフェンスはあくまでもリップル社が第5条違反の争いに負けた場合(判事がXRPは証券である、または証券だった、と言った場合)の保険です。つまり、リップル社としては、最終判決までにヒンマンの電子メールチェーンが開示されれば良いので、あわてて開示させる必要が無い(勝手に遅延戦術使ってれば?)ということになります。

更に言えば、リップル社は略式判決の申し立ての中でフェア・ノーティス・ディフェンスの判決を求めていないことから、フェア・ノーティス・ディフェンス抜きでも十分に勝訴できると見込んでいるのでしょう。今回のジェレミー・ホーガン弁護士による解説の中で重要なのは、SECがメール開示問題についてもう遅延戦術を使わないだろうと予想していることです。その場合、1で説明されているとおり、電子メールの開示期限は9月29日から60日しか無いことになります。

つまり、来月末まで(正確には11月28日まで)です。問題はホーガン弁護士が、「SECは来月末までに電子メールを開示する」と言いたいのかということです。おそらくそれは無いだろうというのが私の意見です。SECは遅延戦術をやめ、来月末が電子メールの開示期限となるけれども、電子メールは開示しないつもりなのではないでしょうか。では、SECに出来ることは何なのだろうか?というのが私の疑問です。SECはここでギブアップするのでしょうか? それとも、再考の申し立てはしなかったけれど、60日の期限内に(どうせ却下されるであろう)上訴の請求をしてやっぱり無意味な遅延をするのでしょうか?

メールを開示せずに和解するにしても、和解の協議をする時間は確保しなければなりません。開示期限になってしまえば、SECには和解を協議する時間すら残されません。ジェレミー・ホーガン弁護士は、和解時期について次のようにコメントしています。

和解は彼女が判決を下すまでいつでも起こり得ますが、私は11月15日より前に起こる可能性が高いと思っています。

また、彼女は現在と将来の販売に関してのみ判決を下す可能性もありますが、その場合、初期の販売は本裁判にかけられなければならないので、私は本当に驚くでしょう。

つまり、SECは略式判決のブリーフィングが完了する11月15日よりも前に和解する可能性が高いという予想です。今、SECは何を考えているのでしょうか?

 

コインチェック

出典・脚注   [ + ]

1. 職務執行令状(マンダムス令状/writ of mandamus):申立人の利益を守るために上級裁判所が発する令状で、下級裁判所、政府、行政機関、公共団体に何らかの懈怠あるいは怠慢があった場合、あるいは、不作為・不履行をしている場合に、法の定めるところによりある行為の履行または行為の履行の差し止めを強制的に命じるもの