裁判所「SECの偽善行為は法への忠誠からではない」

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裁判所がSECの弁護士・依頼人間の秘匿特権の申し立てを却下

裁判所から大きな決定が出たので、久しぶりに投稿します。ヒンマンのフリーパススピーチに関連する電子メールチェーンの開示命令に対して、SECは「弁護士・依頼人間の秘匿特権」を主張する申し立てを行っていました。そして、今日、その申し立てが却下されました。裁判所は繰り返し文書の開示を求めていましたが、SECはこれまでその開示命令に応じず、この申し立ての前には審議過程秘匿特権を理由にそれを拒否し、それが認められないと「弁護士・依頼人間の秘匿特権」の主張を始めました。

ここで重要なことは、SECはこれまでヒンマンのスピーチが「SECのガイダンスを目的としたものではなく、ヒンマンの単なる個人的意見である」と繰り返し裁判所に主張していたにも関わらず、この「弁護士・依頼人間の秘匿特権」を主張するにあたって、スピーチが「SECの市場ガイダンスであった」と180度正反対の主張をしたことです。そして、その主張に誰もが耳を疑いました。

なぜなら、Rippleがヒンマンに証言録取を求めた際に、SECは「スピーチは個人の意見である」と裁判所に主張してヒンマンの証言録取を阻止しようとしただけでなく、ヒンマン自身もその証言録取において「スピーチは個人的な意見だった」と宣誓証言していたからです。(裁判所命令を参照)

ヒンマンの電子メールチェーンの開示命令(何回目?)の中で、ネットバーン判事は、SECの偽善は法への忠実な忠誠心からではないと強い言葉でSECの行為を糾弾しました。以下に裁判所命令の一部を和訳したものを貼り付けます。

SECは、スピーチがヒンマンの個人的な見解を反映したものであり、「明確に当局の方針ではない」ことに異論を唱えていません。ECF No.465。その代わり、SECは、スピーチ自体とその草稿には違いがあると主張しています。ヒンマンが個人の資格で(または口頭弁論でSECが述べたように、当時の企業金融局の局長としての個人の立場で)スピーチを行ったかどうかにかかわらず、草稿および編集プロセスにおいて、彼と他のSEC職員は公的資格で行動し、したがって、当局の弁護士と連絡を取る当局の職員として弁護士・依頼人特権を主張する権利があると述べています。

SECはこのプロセスを、ヒンマンが「スピーチについて企業金融局および他のオフィスや部門のSEC弁護士から法的助言を得ることによって、SECの利益を保護しようとした」ものであると特徴づけています。ECF No. 473 (SEC Br.) at 3。 (1) ヒンマンは「SECの権限に属する法的問題について、彼の職務の過程で法的助言を求めた」(同上)、(2) 文書は秘密にされ、(3) 文書の主な目的は法的助言を得るため、であることから、SECは特権により文書の大半が開示から保護され、残りは編集される必要があると主張しています。この問題についての弁論を聞き、SECの10の例証文書をインカメラで確認した結果、私は同意しません。

A. 弁護士と依頼人の関係

政府職員が弁護士-依頼人間の特権で想定されるような依頼人になり得るかどうかについては議論の余地がありません。In re Grand Jury Investigation, 399 F.3d at 534を参照。当事者の意見の相違の核心は、政府職員が助言を求める事柄が最終的に政府機関の業務ではない場合、政府職員が依頼人となり得るかどうかです。

被告は、ヒンマンは、スピーチのような外部活動に関連する助言の目的では、SECの弁護士の「依頼人」ではないと主張しています。SECは、スピーチの編集やフィードバックを行ったSEC職員が、「純粋に個人的な目的」で意見を述べるために機関の時間や リソースを使うことは禁止されているため、スピーチはヒンマンの公務の一部として作成されなければならなかったと反論しています。ECF No. 488; 5 C.F.R. § 2635.706(b)を参照のこと。口頭弁論でSECは、ヒンマンがスピーチの起草と編集中にSEC職員から受け取った情報は、私人としては利用できなかったであろうことを強調し、彼が行った編集とフィードバックを求めることができたのは、彼の職務の文脈においてのみであったことを強調しました。

この問題は、SECの訴訟戦術によって不必要に複雑化されています。SECは、証拠開示を避けるためにスピーチから距離を置き、ヒンマンがスピーチで何を言おうとSECの立場とは関係ないとして、ヒンマンの証言録取を排除しようとしました。一方では、SECが暗号通貨をどのように規制するのか、あるいはどのように規制するのかについての市場の理解にはスピーチは関係ないと主張し、他方では、ヒンマンがスピーチの起草にあたりSEC弁護士に法的助言を求めてそれを得たと裁判所に主張する偽善行為は、SECが法への忠実な忠誠からではなく、自らの望むゴールを達成するために訴訟の立場を採用していることを示唆しています。しかし、裁判所は、コミュニケーションの主要な目的が法的助言を提供することではなかったという証拠があるため、ヒンマンがSEC弁護士の「依頼人」であったかどうかを判断する必要はありません。

B. 文書の主な目的

ここでの法律は議論の余地のないものです。コミュニケーションの主目的が法的助言の要求または提供である場合、「他の “考慮事項や注意事項 “は切り離すことができず、コミュニケーション全体が特権を有します」。Fox News Network, LLC v. U.S. Dep’t of the Treasury, 739 F. Supp. 2d 515, 560 (S.D.N.Y. 2010) (In re Cnty. of Erie, 473 F.3d at 420を引用)。当事者は、問題の文書が法的助言を要求または提供するために作成されたのか、それとも政策的助言または勧告のような他の理由で作成されたのかについて争っています。

エントリー1から23について、SECは、文書がデジタル資産への証券法の適用を分析しており、「主に法的問題」であり、SEC職員の編集やフィードバックは、判例や法令などの法的権威に必然的に依存していることを意味すると主張しています。エントリー24から58について、SECは、ヒンマンが他のSEC弁護士に「コメント」を求め、文書は「スピーチに何を含めるべきか、対応する法的影響についての法的助言」で構成されていると説明しています。ECF No. 488 at 5. また、エントリー59から64について、SECは企業金融局の弁護士がスピーチの最終草稿に対して非法律的な編集と「限定的な」法的編集を行ったと主張し、法的編集を塗りつぶすよう要求しています。

私は、この文書には法的助言を要求または提供するという主目的がなかったと判断します。機密扱いの法的助言は、「将来の行動を導くため、または過去の行動を評価するため」に意図されたものでなければなりません。In re Cnty. of Erie, 473 F.3d at 419. 口頭弁論において、SECの弁護士は、スピーチは「デジタル資産に対する証券法の適用を扱った」ため、「純粋に法的」であり、したがって、スピーチに関するいかなる助言も法的助言であったに違いないと主張しました。この主張はトートロジーです。まず、スピーチは主に政策と暗号通貨規制に関するヒンマンの見解の表明であったが、スピーチは法的な領域をカバーしていたとしても何ら不思議ではありません。そもそもSECの仕事は、法律とその執行に本質的に関わるものだからです。しかし、だからといって、SECの弁護士による助言が、SECの意思決定や合法的な行動を支援するための法的助言であったとは限りません。実際、その後の口頭弁論で、SECの弁護士は、法的助言はヒンマンに法的基準を「教示」するためのものであったと示唆しました。もし、当局の弁護士のコメントの主な目的が、ヒンマンに法律について知らせることであって、当局の意思決定に助言することでなかったなら、それは保護されたコミュニケーションとは言えません。Mead Data, 566 F.2d at 253 (空軍の文書にある情報は、「空軍にその行動の法的影響に関する助言を提供するために伝えられた」ため、法的助言である(強調付加))。

次に、ヒンマンは、スピーチの内容に対する「反応を得るために」SEC職員にスピーチ の草稿を回覧したと宣誓証言しており、どのようなコメントを受け取ったかは「覚えていない」と証言してい ます。ECF No.480 Ex. B (Ds.’ Hinman Dep. Tr.) at 267:8-13; 268:8-9.を参照。ECF No.255-2 (Hinman Decl.) ¶ 13(2018年6月14日のスピーチは、デジタル資産Etherの募集と販売について「私自身の個人的な見解を述べることを意図したもの」です)も参照。公人として特定の公の発言をすることが良い考えか悪い考えかのような政策的助言、または発言が当局の立場と一致するかどうかのようなコミュニケーション上の助言は、たとえ弁護士によって提供されたとしても、保護される法的助言ではないことは、法的に確定しています。

したがって、コミュニケーションの主な目的は、SECが公務を遂行することを支援するための法的助言を提供することではありませんでした。文書は提出されなければなりません。

この裁判所命令に、私たちが聞きたいこと、そして言いたいことがすべて書いてあるので、これ以上なにも言うことはありません。SECはこのネットバーン判事の命令に対して、トーレス判事に上訴する(そして却下される)ことが予想され、その申し立ては14日以内に行われます。しかし、SECのこれまでの不誠実な(法への忠誠心からではない)行動を考えると、その期間の延長を求めてくることも予想されます。

 

ジェド売り終了と『XRP Meetup Japan』の開催

そして補足ですが、ジェド・マケーレブによるXRPの売却(通称「ジェド売り」)は、今月16日に終了します。さらに、同じく16日に『XRP Meetup Japan 2022』が開催されます。

XRP Ledger は発展を続け、今年はNFT、スマートコントラクト、AMM(オートマケットメーカー)、サイドチェーンへの対応が話題になっています。今回のミートアップでは、XRPコミュニティのメンバーやRippleから詳しい説明があるのではないかと思います。既にエンタープライズ分野で国際的な実用化が行われているXRPLで、NFTやスマートコントラクトが使われるようになるなんて胸熱ですね。当日はYouTubeでライブ配信されるので、期待して待ちましょう。

>>XRP Meetup Japanの詳細はこちら

 

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