リップル社が『Liquidity Hub』を発表
2021年11月9日に予定されていた『Swell 2021』の開幕と平行し、リップル社から新たなソリューションが発表されました。
Ripple to launch crypto service for financial companies amid legal battle with the SEC https://t.co/PRxgof4YS2
— CNBC (@CNBC) November 9, 2021
以下にリップル社からの発表の和訳を掲載します。
世界は「クリプトファースト」の未来に向かって急速に進んでいます。すべての企業が、暗号資産、トークン化された資産、スマートコントラクトなどを活用して価値を移転し、グローバルなデジタル取引や商取引の増加を促進するための戦略を持つようになるでしょう。流動性とは、瞬時に、シームレスに、手頃な価格で資産を交換できる能力のことで、この大胆な未来のビジョンを現実のものにする鍵となります。
消費者によるデジタル資産の取引を通じて流動性をサポートする取引所は数多くありますが、企業の参加なくして真のクリプトファーストの世界は実現しません。
フォードやボルボのような大手の自動車メーカーがいなければ電気自動車の普及が不可能なように、主流の暗号資産には金融機関の参加が必要です。
これを可能にするために、当社は本日、企業が広範なクリプト市場からデジタル資産を簡単かつ効率的に調達するための画期的な新しい方法である Ripple Liquidity Hub の計画を明らかにしました。企業向けに構築された暗号資産の流動性プラットフォームとして、市場内の深い流動性にアクセスする可能性を解き放ち、暗号資産へのシフトを加速させます。
金融機関向けのターンキーソリューションとして設計された Ripple Liquidity Hub は、スマート・オーダー・ルーティングを活用して、マーケットメーカー、取引所、OTCデスクから最適な価格でデジタル資産を調達します。企業は、Ripple Liquidity Hub を使用して、エンドユーザーに対して、さまざまな取引所でデジタル資産を最適な価格で購入、売却、保有する機能を簡単かつシームレスに提供します。
Ripple Liquidity Hub は、企業顧客の特定のペインポイントを独自に解決し、合理化されたAPIによって長くてリソースのかかるインテグレーションを回避し、他の多くのサービスとは異なり、運転資金を自由にするために事前の資金調達の要件を排除します。
XRPレジャーとXRPは今後も当社の技術スタックの一部であり続けるでしょうが、リップル社は、相互運用性の実現が暗号資産の真の可能性を引き出すための鍵であると考えています。ネットワーク間で暗号資産を相互運用することができれば、参入障壁を取り除き、より大きな競争と包括を可能にします。このため、Ripple Liquidity Hub は当初、BTC、ETH、LTC、ETC、BCH、XRPをサポートし(可用性は地域によって異なります)、時間をかけて追加のデジタル資産を追加する予定です。将来的には、リップル社はステーキングやイールドジェネレーション機能などの機能を追加する予定です。
RippleNetのゼネラルマネージャーであるアシーシ・バーラは、次のように説明しています。「私たちは約2年間、リップル社のオンデマンド・リクイディティ(ODL)製品をサポートするために、この同じ暗号資産調達技術を使って成功を収めてきました。今回、お客様のご要望にお応えして、リップル社はこの実績のあるリソースを2022年以降もお客様向けの製品として提供していきます」
バーラは、「私たちは、簡単で効率的な流動性管理の必要性を十分に理解しています。暗号資産と金融機関は我々のDNAに組み込まれています。クリプトファーストの世界に備えて、当社のお客さまが、当社が金融機関との間で幅広く展開しているのと同じように、信頼できるワンストップの暗号資産の売買・保有サービスを利用したいと考えるのは、非常に理にかなっていると思います」と述べています。
本製品のアルファ版の最初のパートナーとして発表されたのは、米国で初めてビットコインATMのライセンスを取得し、米国内に数千カ所の拠点を持つCoinme社です。Coinme社は当初、Liquidity Hubの基本的なテクノロジー・プラットフォームを利用しますが、今後、利用可能になった機能を追加していく予定です。
出典:ripple.com
『Ripple Liquidity Hub』とは何なのか?(考察)
念のため前置きしておきますが、これはリップル社の発表を見た個人の単なる感想です。リップル社は公式サイトでの発表の中で、Ripple Liquidity Hubについて次のように説明しています。
金融機関向けのターンキーソリューションとして設計された Ripple Liquidity Hub は、スマート・オーダー・ルーティングを活用して、マーケットメーカー、取引所、OTCデスクから最適な価格でデジタル資産を調達します。企業は、Ripple Liquidity Hub を使用して、エンドユーザーに対して、さまざまな取引所でデジタル資産を最適な価格で購入、売却、保有する機能を簡単かつシームレスに提供します。
つまり、これは暗号資産の取引を行う企業のシステムに、SOR注文を実現する機能を提供するソリューションであることが分かります。SOR注文とは、スマート・オーダー・ルーティング注文の略で、複数の取引所などから最良の価格を提供しているものを自動的に選択し、売買を執行する形の注文のことです。つまり、Ripple Liquidity Hubを利用するユーザー(システム)は、暗号資産を取引するときに、複数の市場から最適な価格を提案してもらえることになります。
発表によれば、ここで価格を提案するのは、マーケットメーカー、取引所、OTCデスクの3種類であるということです。例えば、今回パートナーとして発表されたCoinme社であれば、ビットコインATMで Liquidity Hub を利用することで、ビットコインATMを利用する顧客に対して他社よりも有利な価格を提案できることになるでしょう。また、取引所が Liduidity Hub を利用することで流動性を調達することも可能ではないでしょうか。
また、RippleNetのゼネラルマネージャーは次のようにツイートしています。
We’ve been using this product internally for nearly 2 yrs to source XRP liquidity from the broader market for ODL flows and now making it available to our customers, as well as any enterprise ready to be part of the inevitable crypto-first future. 2/3
— Asheesh Birla (@ashgoblue) November 9, 2021
「私たちは2年ほど前からODLフローのために広範な市場からXRPの流動性を調達するためにこの製品を内部で使用していましたが、今、私たちの顧客だけでなく、不可避のクリプトファーストの未来に参加する準備ができているすべての企業が利用できるようになります」
つまり、これまでODLがXRPの流動性を調達するために『Ripple Liquidity Hub』を利用してきたという説明です。このことから、当初この製品がODLにXRPの流動性を供給するツールとして開発されたことは間違いないでしょう。RippleNet GMの言う「私たちの顧客」とはODLユーザーのことで、他のデジタル資産にも応用範囲を拡大してRippleNetユーザー以外のクリプト企業にも提供するというのがリップル社の説明だと思います。これが意味することは、今回リップル社から発表された『Ripple Liquidity Hub』は、同社のXRP流動性戦略の要となる製品だということです。さらにCNBCの記事には次のように書かれています。
リップル社は、金融パートナーがLiquidity Hub用の口座に事前に資金を投入する必要がないように、XRPを通じたLine of Creditも提供すると述べました。
『Line of Credit』とは、ODLを利用する顧客がXRPを取得する際にリップル社が与信枠を設定することで、手元に資金が無くてもXRPの購入を可能にするサービスとして昨年発表されたものです。そして、CNBCへのリップル社の説明では、Liquidity Hubの利用者(企業)も、このLine of Creditを利用することが可能になるということです。これは、XRPの流動性を供給する側の企業とODLのユーザーとしてその恩恵を受ける側の企業の両方が、『Line of Credit』を利用することで、手元にある資金以上のXRPの取引が可能になることを意味するのではないでしょうか。
リップル社はRipple Liquidity Hubの正式版の一般提供を2022年から開始すると発表しています(パートナーには既にアルファ版を提供)。来年からリップル社がこの製品を正式に展開し、利用が拡大すれば、XRPの流動性が飛躍的に向上することが予想されます。