『価値のインターネット』とニューエコノミー

ヤクブーツはやめろのSHOさんが仮想通貨投資をラップで解説!

信用創造とは

お金(通貨)には2種類あります。1つは中央銀行から発行されるお金で、現金や日銀当座預金の残高です。もう1つは民間銀行が発行する預金残高です。この民間銀行が発行する預金残高にはクレジット(信用)としての性質があります。クレジットとは、簡単に言うとクレジットカードのクレジットと同じ意味です。クレジットカードを持っていると手元にお金を持っていなくても支払いができます。クレジットカード会社はクレジットを発行してお店に支払います。クレジットを受け取ったお店は決済日にクレジットカード会社からお金を受け取ることができます。このようにクレジットカード会社は信用創造をしています。

信用創造とは英語で『クリエイション・オブ・クレジット』(クレジットの創造)と呼ばれます。つまり、クレジットを作ることを信用創造と呼びます。銀行は民間人や民間企業が銀行からお金を借りるときに預金残高をクレジットとして発行します。そのため、私たちは3000万円のお金を持っていなくても、家を買うときに銀行が通帳に3000万円分の残高を無から発行することで支払いが行われます。これが民間銀行による信用創造です。

 

お金が作られる仕組み

イングランド銀行は、2014年に『現代の経済における貨幣創造』(Money creation in the modern economy)という論文でお金が作られる仕組みを説明しました。お金が作られる仕組みは手品のようなものであり、これを解説することはマジシャンが手品の仕掛け(タネ)を教えてしまうようなものです。イングランド銀行はそのお金が作られるカラクリを2014年に公表してしまったわけです。

この論文の中でイングランド銀行は、銀行が民間企業や民間人の銀行預金を原資として貸し出しを行っているというのは通俗的な誤解だと説明しています。信用創造の仕組みを知っていれば、銀行による貸出しが借り手の預金口座への記帳だけによって行われており、銀行は無から預金通貨を作り出していることが分かります。つまり、銀行は預金を元に貸し出しを行っているのではなく、逆に貸し出しによってお金を作っているのです。これは私たちが使っているお金の実態が『負債』であることを意味しています。このように、民間の需要に応じて銀行によってお金が供給されるとする理論は『内生的貨幣供給理論』と呼ばれています。

日本では準備預金制度によって準備預金率が設定されているため、民間銀行は預金の一定割合の資産を中央銀行に預け入れなければいけません。そのため、民間銀行による信用創造の上限が中央銀行により設定されています。中央銀行が準備預金率を引き上げれば銀行は中央銀行に保有している預金残高を増やす必要が出てくるため、銀行は企業に融資していた資金などを回収して民間への貸し出しを減らします。逆に準備預金率を下げれば信用創造によってマネーサプライが増加します。このように、ベースマネーが増えなければ民間銀行による信用創造は無限に行えない仕組みになっています。

 

お金は無限に増えるのか?

では、中央銀行から供給されるベースマネーは無限に増やすことができるのでしょうか。中央銀行は政府と銀行のための『銀行の銀行』であるため、日銀当座預金は銀行と政府だけが持つことができます。つまり、年金基金や保険会社などの非銀行金融会社や民間人は日銀に預金を持つことができません。そのため、銀行は日銀当座預金を民間企業や国民に貸すことができません。経済産業省の中野剛志氏によれば、信用創造には国の債務による次のようなもう一つの信用創造の仕組みがあります。(以下、『富国と強兵』(中野剛志)より抜粋)

  1. 銀行が国債を購入すると銀行の日銀当座預金が政府の日銀当座預金勘定に振り替えられる。つまり、政府は国債を発行することで、民間銀行から日銀当座預金残高を借りる。
  2. 政府は日銀当座預金を担保に『政府小切手』を発行することができる。政府は財政出動の際に公共事業の請負企業に政府小切手で代金を支払う。
  3. 企業は政府小切手を銀行に持ち込み、政府からの代金の取り立てを依頼する。
  4. 取り立てを依頼された銀行は、それに相当する金額を企業の口座に記帳する(ここで新たに民間預金が生まれる)。これと同時に代金の取り立てを日銀に依頼する。
  5. 日銀は政府の日銀当座預金の該当額を銀行の日銀当座預金勘定に振り替える。
  6. 銀行はこの戻ってきた日銀当座預金で再び国債を購入できる。(1に戻る)

参考:【三橋貴明】国家のお金の発行と国債発行の仕組み | 「新」経世済民新聞

この一連の流れの中で銀行は①で購入した国債を一度も売っておらず、⑤で戻ってきた預金で再び国債を購入できます。そして、中央銀行がお金を刷り民間銀行から国債を買えば民間銀行の資産は倍増します。このように信用創造は民間銀行が担っており、中央銀行は政府の財政赤字で信用創造を民間銀行にさせています。これをぐるぐると繰り返せば無限にお金を作り出せます。しかし、日銀が設定する『銀行券ルール』(日銀券ルール)により、日銀が引き受けられる長期国債の上限は、日本銀行券の流通残高以下に収めるという政策目標が定められているため、日銀は無限に国債を買い入れることが出来ません。

ところが、日銀は2013年に金融政策決定会合で、この銀行券ルールの一時停止を決定しました。これは、景気対策のためにインフレに誘導したい日本政府の意を汲んだものだと思われます。つまり、現在は一時的にベースマネーを無限に増やすことができる状況です。そして、アメリカなどの他国でも同様の金融政策が取られています。リップルネットが登場した1つの時代背景として、このようなことを知っておいても良いかもしれません。

 

平常時の通貨供給量の制御

インフレとデフレは需要と供給のバランスの変化により起こります。好景気の場合には需要が増え、需要に対して供給(生産)が追いつかずにインフレになります。需要が増えると企業は生産を拡大し、供給が軌道に乗ると生産過多になり(つまり、供給が需要を上回り)デフレになります。デフレというのはお金が強い状態です。物価が下がり続ければ消費者は貯金をしようとします。すると需要が減り、企業は生産を縮小し賃金が下がります。賃金が安くなると消費がさらに減りデフレが進行します。そのため、中央銀行は通貨供給量をコントロールする必要があります。

通常は中央銀行が民間銀行に融資する際の政策金利を変動させることで通貨の供給量がコントロールされています。景気が良いときには政策金利を上げ、民間銀行の預貯金やローンの金利が上がることで貸し出しが減って通貨の供給量(信用創造)が抑えられます。逆に景気が悪いときには、中央銀行が政策金利を下げることで通貨の供給量を増やします。しかし、大不況になると政策金利をゼロにまで引き下げる『ゼロ金利政策』がとられるような事態が発生します。政策金利がゼロになってしまうと、それ以上金利を下げることで通貨の供給量を増やすことが出来なくなってしまいます。このような事態になると、中央銀行は金利の引き下げ以外の方法で通貨供給量を増やさなければならなくなります。そこで行われるのが『量的緩和政策』(QE)です。

 

量的緩和に関する誤解

日本では日銀が円を刷り民間銀行が保有する国債を買うことが量的緩和と言われています。これは『買いオペ』とも呼ばれます。しかし、イングランド銀行は前述の論文の中で「量的緩和が効果を発揮するのは銀行以外から中央銀行がお金を刷って資産を購入した場合のみ」と説明しており、この買いオペには量的緩和の効果がありません。なぜなら、BIS規制(バーゼル規制)により国際業務を行っている銀行は自己資本比率を縛られているため、貸し出しを増やせない(信用創造の上限が設定されている)からです。銀行が日銀当座預金で国債を買っても預金が国債に変わるだけで資産総額は変わらず、日銀が円を刷り銀行から国債を買っても国債が円に戻るだけで銀行の資産総額は変わりません。つまり民間銀行による信用創造の上限は同じままです。これに対し、銀行以外の非銀行金融会社(年金基金や保険会社など)が日銀に国債を売ると、非銀行金融会社は国債の売却益を得ます。非銀行金融会社は日銀当座預金残高を持たないため、この売却益が取引を仲介した民間銀行に預けられることで預金残高が増えるというのがイングランド銀行の見解です。そのため、政府と中央銀行は最終的には財政出動で国債を発行してベースマネーを増やすことで景気対策を行います。

 

ニューエコノミーの再来

ベースマネーが増えれば消費が増え、消費に対して生産が追いつかなくなることでインフレが発生します。これは消費が行われてから部品会社や農業生産者にお金が届くまでに時間がかかり、需要にあわせた供給ができるようになるまでに時間がかかるため、需要と供給を一致させることが難しいからです。しかし、このような従来の経済(オールドエコノミー)に対して90年代にアメリカで生まれた『ニューエコノミー』とよばれる経済理論では、コンピュータやインターネットを使う産業が発達することで、企業は顧客の需要に一致する適切な供給ができるようになるとしています。リップル社が参加するFRB主導の『ファスター・ペイメント・タスクフォース』の共同議長を務めたジェローム・パウエルは、2018年2月に連邦準備制度理事会(FRB)の議長に就任しました。

そして、同年8月に行われた国際経済シンポジウム(ジャクソンホール会議)のスピーチの中で、同氏はニューエコノミーの下ではインフレ率が低いままでも高成長が続く可能性について言及しました。

ジェローム・パウエル:
「グリーンスパン議長は、深刻なインフレリスクを伴わずに、生産性の向上により生産高が伸び失業率が低下するという『ニューエコノミー』の妙を米国が経験していると直感的に感じていた。同氏は、FOMCは利上げを控えるべきだと主張した。自身の大いなる不屈の精神のおかげで、グリーンスパン氏は勝利した。」

出典:連邦準備制度『Monetary Policy in a Changing Economy』

パウエル氏は講演で1990年代後半の「ニューエコノミー論」を取り上げ、インフレ率が低いままでも高成長が続く可能性を指摘した。

出典:日本経済新聞

パウエルFRB議長、グリーンスパン氏の不屈さを称賛-不確実性の中

出典:ブルームバーグ

しかし、ニューエコノミーにより景気循環が消滅するという説は、2000年代初頭のITバブルの崩壊によって事実上否定されていました。パウエル議長はこの需要と供給を一致させるための秘策か何かが存在するとでも考えているのでしょうか。重要なのは、生産性を飛躍的に上げるための技術と仕組み作りです。リップル社CEOのブラッド・ガーリングハウスは、同社が掲げる『価値のインターネット』が目指すものを次のように語っています。

「リップルが目指すのは『価値のインターネット化』だ。情報がインターネットを通じて低コストで送れるようになったように、価値を低コストで送れるようにする。これまで大口の送金でなければ割に合わなかった少額の送金なども可能になる。価値を動かすコストが飛躍的に低下する」

「例えば何かを利用、消費したときにリアルタイムで価値を移動できる。これまで自動車は部品会社が自動車メーカーに納入し、消費者はメーカーに代金を支払っていた。将来は消費者が部品メーカーにも相応の代金を直接支払えるようにしたい。コーヒーならば、消費者がレストランで支払ったお金がそのままコーヒー栽培農家にも送金されるようになる」

出典:日本経済新聞

決済の効率化は生産性に直結するため、本当にこれを実現することができればニューエコノミー論に基づく需要と供給の一致も夢ではなくなるかもしれません。需要と供給が一致すれば、急激なインフレとデフレが起こらなくなり景気循環が消滅します。つまり、『価値のインターネット』を応用して生産性を上げることで、インフレ率が低いままでも高成長を維持できる経済を実現することが可能になるかもしれないわけです。

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