FATFが来年6月までに仮想通貨規制ルールを発表
ロイターの報道によると、FATF(金融活動作業部会)が2019年6月までに仮想通貨交換所やウォレット提供業者などを対象とする仮想通貨規制ルールを策定する方針を発表しました。
FATFとは?
FATF(金融活動作業部会)は、1989年に開催されたG7アルシュ・サミットでの経済宣言を受けて、マネー・ロンダリング(資金洗浄)対策における国際協調を推進するため設立された政府間会合で、OECD内に事務局が置かれています。1990年に資金洗浄防止のために各国が法執行、刑事法制、金融規制の各分野で採るべき措置を『資金洗浄に関する40の勧告』として提言、2001年にテロ資金対策のために『テロ資金供与に関する8の特別勧告』を策定、2012年に『資金洗浄に関する40の勧告』と『テロ資金供与に関する8の特別勧告』が統合された新しい勧告が策定されました。これはFATF勧告と呼ばれています。
また、FATFは2015年6月に仮想通貨に対する規制の『ガイダンス(指針)』を公表していました。
今回のFATFの発表は、2015年に発表された加盟国への拘束力のない『ガイダンス(指針)』を厳格化し、加盟国の義務となる『スタンダード(基準)』への格上げを行う動きと見られます。
リップルのFATFへの取り組み
リップル社は2014年からFATFへの取り組みを続けており、現在リップル社から提供されている製品や RippleNet は FATF を含む国際的な規制に対応しています。
2014年にゲートウェイに宛てたFATFスタンダードへの準拠を促す文書
2015年のCSBS(州法銀行監督官協会)への書簡でもFATFスタンダードに言及
リップル社の製品では、金融機関が RippleNet を利用することで各種の規制をクリアできるように、コンプライアンス・スクリーニングが行われています。それらは KYC(Know Your Customer)、AML(Anti-Money Laundering)、OFAC規制、USA PATRIOT Act 320条、Dodd Frank Act 1073条などへの準拠が含まれます。
これらの国際的な規制に対応するために、Ripple では『RippleNet Committee』と呼ばれる諮問委員会を設置し、世界的な金融機関が諮問委員に就任しています。RippleNet の利用者(メンバー、ユーザー)は、ネットワークサービス合意書に署名し、ルールブックに記載されているルールと基準に準拠しなければなりません。
このようにリップル社は数年前から国際的な規制に準拠するための仕組み作りを続けてきました。リップル社の人事、ロビー活動、規制当局との連携といった取り組みはこれまで批判に晒されてきましたが、それらが暗号通貨技術を実用化する上で最も重要な取り組みであったことが近いうちに証明されるでしょう。金融機関による xRapid の商用利用が開始されていることの意味は計り知れないほど大きいです。
誰にでもできる国際送金サービス
じつは国際送金の仕組みは想像以上に簡単です。例えば私が日本とアメリカの間で国際送金サービスを始めようと思ったら、日本とアメリカにそれぞれ日本円と米ドルの資金をあらかじめ準備しておき、日本で顧客から日本円で受け取った分の米ドルをアメリカの顧客に渡すだけです。しかし、これはいわゆる地下銀行と呼ばれる違法行為で、(当然ですが)国際送金業務を行うには各国の法律に従う必要があります。
さて、地下銀行が日本とアメリカにそれぞれ1億円分の資金を準備していた場合、日本からアメリカに1億円を送ると、送った後には日本側だけに2億円の資金が残り、アメリカ側の残高はゼロになってしまいます。ここでアメリカ側の資金を補填するため銀行を介して1億円を送金すると違法業者の動きは当局に捕捉されてしまいます。
そこで登場するのがビットコインです。各国の仮想通貨取引所には前述したような規制が適用されていないため、犯罪者でも比較的簡単に国をまたいだ資金の移動ができてしまいます。もちろん地下銀行を営むこと自体は違法ですが、法律などの規制の網の目をすり抜けてそのようなことが行われているのが実態ではないでしょうか。そもそも外為法にも抵触します。
さて、仮想通貨の取引所には特別にこれらの規制や法律が適用されないのでしょうか? 私が各国に取引所を開設すれば、国際的な規制や各国の法律に従わなければいけない不便な国際送金の問題が解決されるのでしょうか?
現実はそんなに甘いものではありません。
例えば日本には犯罪収益移転防止法がありますが、この法律の適用範囲は前述の FATF勧告に基づいて決定されているため、金融機関だけではなく、非金融業者、職業的専門家(弁護士・公認会計士等)なども規制の対象となります。これに違反すれば、当然それは違法行為と見なされるでしょうし、警察の捜査の対象にもなるでしょう。そして、FATF から仮想通貨交換業者を対象とする新たな勧告が出されれば、それに従うことが参加国の義務となります。
「知らないからやっちゃった。」で済むのであれば、誰でもやっているでしょう。現在、金融庁が進めている仮想通貨交換業者に対するモニタリングの中間報告には、次のような恐ろしいことが書かれています。これはいったい何を意味するのでしょうか。
利用者が反社会的勢力と判明したにもかかわらず、一定期間、暗号資産の外部アドレスへの移転を許容している。
2014年に日本経済新聞から取材を受けたリップル社会長のクリス・ラーセンは次のように述べていました。
「ビットコインに関わる起業家たちは金融産業に革命を起こすと言う。ばかげた話だ。規制業種の金融ビジネスでは、当局と折り合いをつけていく必要があり、ビジネスの変革スピードは緩やかだ。今の多くのベンチャーのアプローチでは成功するとは思えない」
出典:日本経済新聞
リップル社はそれから長い時間をかけて、国際的な規制に準拠する RippleNet を構築しました。それがどれだけ長く険しい道のりであったのかは、当ブログの『Rippleの歴史』にまとめてある通りです。
他のブロックチェーン企業や仮想通貨交換業者は、今から同じだけの時間とお金と労力を費やして RippleNet のような仕組みを作り始めるのでしょうか。それとも RippleNet に参加して規制をクリアする道を選ぶのでしょうか。
リップルに歩み寄る仮想通貨業界
最後に仮想通貨業界の現在の動きをご紹介しておきましょう。
リップルを売りにし始めたGMOコイン
リップルを売りにし始めたビットバンク
ビットバンクさんアプリの名前変えてきた✨#bitbank #ripple #xrp pic.twitter.com/PZdSSjnwR4
— ₿クリプトん₿ (@cryptnnn) October 22, 2018
リップルと手を組む大手取引所のバイナンス
With Binance CEO @cz_binance and Ripple SVP @ethanbeard at @lcx pic.twitter.com/sX882XBOjG
— Michael Arrington (@arrington) 2018年8月16日
リップルと手を組む大手取引所のBittrex
さらに、インドの KOINEX、シンガポールの Bitrue、アメリカの DCEX、ナイジェリアの QUIDAX、カナダの CoinField などが次々と XRP を取引所の基軸通貨として採用し始めています。
リップルを本気で紹介しはじめるコインテレグラフ