米裁判所、Ripple訴訟の最終判決で不当利得返還の請求を却下

- Category - Ripple

最終判決でリップル社が勝利!

8月7日、リップル社が最終判決でSECから更なる勝利を得ました。リップル社CEOのブラッド・ガーリングハウスは X で次のようにコメントしました。

ブラッド・ガーリングハウス:
SECは20億ドルを要求しましたが、裁判所は SEC が要求額をやりすぎたと認め、要求額を約94%減額しました。当社は裁判所の決定を尊重し、今後も会社を成長させていく方針を明確にしています。これはリップル社、業界、そして法の支配の勝利です。XRPコミュニティ全体に対する SEC の逆風は消え去りました。

また、リップル社最高法務責任者のスチュアート・アルデロッティも次のように裁判所の判決を尊重するとコメントしました。

スチュアート・アルデロッティ:
最終判決です。裁判所は、リップル社が無謀な行動をとったという SEC の主張を却下し、この訴訟には詐欺や意図的な不正行為の申し立ては含まれておらず、判事は金銭的損害を受けた者はいないことを SEC に再認識させました。また、判事は罰金と罰則として20億ドルという SEC の不合理な要求を却下しました。裁判所が、高度な知識を持つ第三者への特定の過去の販売に対して課した1億2,500万ドルの罰金を尊重します。

 

なぜこの判決がリップル社の勝利なのか!?

関係者のコメントの通り、裁判所はSECが最終判決で求めた合計20億ドルの罰金と罰則の要求を却下しました。それでは、1.25億ドルの罰金の支払いを認めた最終判決が、なぜリップル社にとっての勝利と言えるのかをここで簡単に説明します。

SECはリップル社による過去のXRP販売は証券法第5条に違反しているとして、販売によって得た利益の吐き出しを求めました。販売は3つのカテゴリに分類されました。

  1. 機関向け販売:7億2800万ドルを獲得
  2. プログラム販売:7億5700万ドルを獲得
  3. その他の分配:報酬などで6億900万ドル相当を分配

このうち 2 と 3 は投資契約に該当しないとして略式判決でSECの主張は却下されました。これでSECは訴訟の3分の2を失いました。

略式判決後、SECは投資契約とされた 1 の機関向け販売について、リップル社に対して次の支払いを行う命令を出すように裁判所に求めました。

  1. 不当利得返還:8億7630万ドル
  2. 判決前利息:1億9815万ドル
  3. 民事罰金:8億7630万ドル

そして、最終判決で、リップル社がXRPの販売によって得た利益は不当利得に該当しないとして、1 と 2 の請求は完全に却下されました。更に、3の民事罰金についてもSECの請求額は認められず、罰金は1億2503万ドルに減額されました。

つまり、SECは略式判決で3分の2を失い、さらに金額ベースで残り3分の1のうちの 93.6% を失いました。これは全体で見れば 97% をSECが失ったことを意味します。この他にSECは役員2人に対する訴訟も取り下げているため、スコア的にはリップル社が 99:1 で勝利したと言えます。

リップル社は XRP が証券ではないことを SEC が認めればすぐに和解すると公式に表明していました。私が推測するに、和解すればリップル社は軽く5億ドルの罰金を支払っていたでしょう。代わりにSECは訴訟費用にも満たない1億2503万ドルの罰金を手に入れました。対してリップル社は、過去のXRP販売による利益を失うことなく、今後も問題なく事業を継続できることが確実になりました。

これは「支払う罰金が20億ドルから1.25億ドルに減った」という単純な話ではありません。裁判所が、判例に基づき、リップル社が過去のXRPの販売によって得た利益が不当利得ではないことを明確にしたことが重要です。これはSECがトークンの販売について5条違反を証明しても、販売によって得た利益を没収できないことを意味するからです。

裁判所はそれを単なる「登録忘れ」として扱い、それに対する罰金の支払いを命じるだけです。そして、訴訟を行えば今回のRipple訴訟のように、SECが受け取る罰金額よりもそれに費やす訴訟費用の方が高くなってしまうでしょう。 それでは何のために訴訟をするのか分かりません。最初からただの「登録忘れ」として罰金の支払いを求めれば良いだけではないでしょうか。

また、裁判所はリップル社に5条違反の差し止め命令を出しましたが、これは今後リップル社がXRPを販売する場合には証券法第5条に違反しないように販売する必要があるというもので、XRPの販売そのものを禁止されるわけではありません。この結果は、本判決に対する控訴だけではなく、今後のSECの他の訴訟にも深刻な影響を与えるでしょう。

 

SECの不当利得返還請求はなぜ却下されたのか?

SEC請求が却下された理由は、端的に言うと「XRPを購入した顧客が金銭的損失を被っていないから」です。まず、不当利得の一般的な言葉の意味を Google で検索して確認してみましょう。

このように、不当利得の一般的な定義は「他人の損失と引き換えに得た利益」であることがわかります。連邦地裁のトーレス判事は、最高裁判例を引用し、不当利得返還(Disgorgement)の法的基準を次のように説明しています。

不当利得返還は衡平法上の救済であり、違法行為者の純利益を超えず、被害者に支払われる場合にのみ認められる

衡平法上の救済(equitable remedy)は、法的救済の一種で、主に公正さや正義を目的として提供されるもので、金銭的な損害賠償とは異なる手段として用いられます。衡平法は、厳格な法律の適用だけでは正当な結果が得られない場合に、公正な解決を図るための裁判所の判断基準に基づきます。要するに裁判所が被害者の「殴られ損」を無くすためのものです。もしも被害者が金銭的損害を被っていないにも関わらず資産を没収することが出来てしまえば、衡平さとは無関係に第三者を富ませることを目的にこのルールを悪用することができてしまいます。これについて裁判所は、控訴裁判所の判例を引用し次のように説明しました。

78u(d)(5)条における「被害者」とは、証券詐欺によって金銭的損害を被った者である

衡平法上の救済は現状を回復すること、つまり不当利得返還の文脈においては資金を被害者に返還することを目的としている

金銭的損害を被っていない詐欺被害の投資家が不当利得返還の収益を受け取ることを認めることは、取引の利益を受けた者に過剰な利益を与えることになる

XRPを購入したリップル社の顧客は詐欺の被害者でもなければ金銭的損害を被った事実もありません。SECは顧客が金銭的損害を被ったことを証明できなかったため、拘束力のある控訴裁判所の判例に基づき、SECによる不当利得返還(と判決前利息)の請求は却下されました。

 

判決が今後のODL取引に及ぼす影響

結論から言うと何も影響はないと思います。Ripple訴訟のYouTube解説で有名なジェレミー・ホーガン弁護士は、最終判決が及ぼす影響について次のようにコメントしています。

ジェレミ・ホーガン弁護士:
この(第5条違反の)差止命令がODL販売にどのような影響を与えるかについて、多くの質問が寄せられています。以下の理由により、私はこの命令によって現状がまったく変わるとは思いません。

  1. リップル社が述べているように、同社の XRP および ODL の販売の大半は米国管轄外であり、この判決の対象ではありません。それらの販売はこれまでも続けられており、今後も継続可能です。
  2. リップル社は、登録免除の下で販売する限り、XRP を機関向けに販売できます。主な免除は5つほどあり、企業に販売する場合には免除に当てはめるのが非常に簡単です。私がすぐに思いつく実行可能な選択肢は2つあります。
  3. 判事は SEC が望んでいた ODL の文言を与えなかったため、もしSECがリップル社に命令違反があると感じた場合、SECは侮辱罪の適用を申請し、違反の証拠を提出しなければなりません。これにより、リップル社は、XRP がほんの一瞬しか保持されない場合、利益は期待できないという主張を展開できるようになります(それは私にとっての勝利の理論です)。
  4. リップル社の法務チームは、1年以上前から略式判決を受けており、それに従うために XRP の販売方法を変更したと断言できます。彼らが(判事が言うように)「境界線に近づきすぎた」かどうかは、侮辱罪の審理が行われなければ分からないでしょう。

他にも忘れていることがあるかもしれませんが、今はひどい熱があるので、思いつくのはそれくらいです。

まとめ:リップル社はODL製品を必ず使用できるようになると思います。ただし、その方法には注意が必要です。しかし、昨年の7月からずっとそうなっているということです。

私も概ねホーガン弁護士の意見に同意します。なぜなら、リップル社が既にODL販売の方法を変更していることは、略式判決後の裁判資料から明らかになっているからです。少なくともリップル社はODL顧客との契約に「XRPを投資目的では購入してはいけない」という条文を追加し、ODL顧客は登録免除の対象となる適格投資家に該当する機関に限定されていることが分かっています。

実際、裁判所は最終判決の5条違反を差し止める命令の中でも次のように述べています。

明確に述べれば、裁判所は今日、リップル社の訴状提出後の販売が第5条に違反しているとは判断していません。

このように、過去の販売が5条違反と認められたとしても、今後の販売も5条違反になるわけではないことが判決によって明確になったことは重要です。

また、リップル社は今後、RLUSDと呼ばれるステーブルコインをローンチすることを発表しており(既にベータ版が稼働中)、規制当局による承認待ちであることを明かしています。同社は略式判決後に旧RippleNetに XRP Ledger DEX を統合した Ripple Payments を発表していることから、この RLUSD を活用することが考えられます。つまり、リップル社はその気になれば米国内で XRP を販売する代わりにステーブルコインを販売し、DEX上で XRP に返還して送金する仕組みに ODL の送金ロジックを変更することも可能なはずです。

これらのことを総合的に考えれば、今後SECが控訴したとしても(またSECが控訴審で逆転勝利したとしても)、リップル社は何らかの方法でODL取引を継続できるでしょう。何よりも、リップル社は顧客に米国の規制に対応したサービスを提供する責任があるため、判決で決定したルールに対して何もしないということは考えられないでしょう。より具体的な方針については、今年の Ripple Swell までに発表されるのではないかと予想しています。

 

コインチェック