みずほFG、横浜銀行、住信SBIネット銀行がRippleを採用

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みずほファイナンシャルグループがRippleを採用

昨日、日本の金融業界を震撼させるニュースが飛び込んできました。みずほファイナンシャルグループとSBIホールディングスが共同で、米リップル社が開発した Ripple Connect を利用したリアルタイム国際送金の実証実験プロジェクトを開始する旨のプレスリリースを発表しました。

『ブロックチェーンを活用した国際送金の実証実験開始について』

プレスリリースの副題に『日本発の「R3」コンソーシアムにおける協働プロジェクト』と書いてある通り、このプロジェクトはR3 CEV社が主催する米シティグループや英バークレイズ、三菱UFJフィナンシャル・グループなど国内外の主要金融機関約50社が参加する研究会と連携した取り組みで、同研究グループ内では日本の金融機関が参加する初めての実証実験プロジェクトとなります。日本経済新聞が先行して発表した記事によれば、みずほファイナンシャルグループとSBIホールディングスは同技術を利用した国際送金システムの2018年の実用化をめざすとしています。

なぜSBIホールディングスと共同なのか?

おそらくこのニュースを読んだ方のほとんどが疑問に思うのは「なぜSBIホールディングスと共同なのか?」ということでしょう。じつはSBIホールディングスは米リップル社のパートナーで、今年1月に同社の発行済み株式の17%を取得するとともに、5月には合弁会社の SBI Ripple Asia を設立しています。リップル社の発表によれば、SBI Riple Asia は日本、中国、台湾、韓国とアセアン諸国の市場を担当するようです。また、SBIホールディングスは、SBIグループで国際送金事業を手掛けるSBIレミットにおいても国際送金システムにRippleを採用することを表明しています。

Rippleって何?

では、そもそも Ripple とは何なのでしょうか? Rippleのシステム自体は、もともとはビットコイン取引所の Mt.Gox(マウントゴックス)の創業者と数名の技術者によって開発されたビットコインのブロックチェーン技術を応用した送金と両替のシステムで、後にフィンテック・イノベーターとして知られるクリス・ラーセンがプロジェクトに合流して事業化されました。ビットコインとの大きな違いはその目的で、Rippleはビットコインのようにドルや円といった法定通貨に取って代わる電子マネーを生み出すことを目的とせず、リップル・ネットワーク上で金融機関が発行する『IOU』と呼ばれる電子的な手形を交換することで送金を実現するのが主な目的です。これは現在の Ripple というシステムが、2004年に Ryan Fugger によって考案されたRippleプロトコルをベースにして、後に開発されたコンセンサス・レジャーと呼ばれるP2Pの分散型台帳と統合されて誕生したことに起因します。リップル社は2015年に世界経済フォーラムテクノロジーパイオニア賞を受賞しており、FRBもRippleの紹介動画を公開しています。

ビットコインとの関係

Rippleは前述した送金の仕組みを実現するために、ビットコインと同様にシステムの内部にXRPと呼ばれる両替と送金を媒介するためのブリッジ通貨を利用します。ここで気になるのはビットコインとの関係です。リップル社が互いに共存し得る存在だと説明する一方で、『仮想通貨革命』の著者でこの分野の第一人者でもある野口悠紀雄氏が「リップルが広く使われるようになれば、ビットコインは不要になるかもしれない」と述べている通り、Rippleはビットコインに取って代わる可能性を秘めた存在です。

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そして、リップル社が銀行市場を重視する戦略を取っているため、国家を否定するビットコインを支持する自らをリバタリアンと称するビットコインユーザーの多くは、「XRPなんて死んでも買わない」と思っている人達が多いようです。2ちゃんねるのRippleスレッドが数年間にわたりビットコイナーに荒らされ続けている現状からも、両コミュニティ間の確執が大きいことが確認できます。

世界各国の銀行の動き

みずほファイナンシャルグループが採用を表明したことでRippleの存在を初めて知った方も多いと思いますが、じつは世界各国の銀行のRipple導入に向けた動きは想像以上に速いものです。先月(6月)には、カナダの国有プライベートバンクの ATB Financial がRippleを利用した国際送金デモを実施しています。このプロジェクトに参加した金融機関は、スペイン最大の商業銀行グループのサンタンデール銀行、ユーロ圏1位のウニクレーディト・イタリアーノ、カナダ五大銀行のカナダ帝国商業銀行、スイスのUBS、UAE最大の National Bank of Abu Dhabi(NBAD)、そして今回カナダから送金が行われたドイツの ReiseBank です。特筆すべきは、このプロジェクトで利用されたシステムが SAP HANA Cloud Platform と SAP Payment Engine であることが発表されたことです。それだけではありません。バンク・オブ・アメリカも今年2月にシンガポールの情報通信開発庁が主導するRippleの実証実験プロジェクトに参加し、間もなく実証実験を終えることを発表しています。このプロジェクトには、香港ドルの発券銀行であるスタンダードチャータード銀行と旧シンガポール開発銀行のDBS銀行も参加しています。こうした世界各国の銀行の動きは今年始まったものではなく、2015年6月にはオーストラリアの四大市中銀行のうちウエストパック銀行オーストラリア・ニュージーランド銀行オーストラリア・コモンウェルス銀行の3行が共同でRippleの実証実験を開始することを発表しています。その他にもアメリカのウエスタンユニオンロイヤルバンク・オブ・スコットランド、オランダのラボバンクカナダロイヤル銀行などの大手金融機関が次々とRippleの実証実験をはじめています。

重要なのは銀行の動きではない

もちろん、こうした金融機関のRipple採用に向けた動きを見ることも大事ですが、それ以上に私が注目しているのは先ほど述べた SAP のような金融機関向けエンタープライズ製品のRipple統合の動きです。昨年10月にAccentureがRipple製品の統合でリップル社とパートナーシップを締結したことから始まり、DH Corporation(D+H)、Volante Technologies、CGI、Temenos、Expertus、IBMなどの主要な金融系エンタープライズ製品へのRippleの統合が発表されています。例えばコンビニエンスストアのセブンイレブンが、電子マネーのSuicaに対応した場合に注目するのは、セブンイレブンが利用しているPOSシステムがSuicaをサポートしたことではないでしょうか。なぜなら、コンビニの機能がPOSシステム(POSレジ)に集約されていることは、お店を利用したことがある人であれば誰でも気付くことだからです。逆に建物や店員がコンビニエンスストアのシステムの中核であると思う人は少ないでしょう。そして、ある一つのコンビニのPOSレジがSuicaに対応すれば、同じPOSレジを利用する競合他社も直ぐに追従できます。これは銀行も同じことです。Rippleをサポートした CGI の Intelligent Gateway を利用する大口の顧客はユーロクリアであり、ユーロクリアはSWIFTを作った国際決済機関です。同じく2014年に先行してRippleの採用を表明したTASグループの顧客も欧州中央銀行が利用するTARGET2です。これはつまり、世界各国の銀行がRippleを導入する準備が整いつつあることを意味します。

まとめ

前回の投稿と同様に特にまとめや結論はありませんが、今回のみずほファイナンシャルグループとSBIのニュースで初めて Ripple を知ったと言う方は、ぜひ当ウェブサイトで公開しているRippleの入門記事を読んでみてください。既に稼働しているXRPのマーケットはここから見ることもできますし、リップル社の公式サイトには日本語のドキュメントもあります。また、あなたが金融系システムを扱うエンジニアであれば、Rippleを知ることは益々重要になるのではないでしょうか。

 

追記(2016/08/22)

本投稿は約一ヵ月前のものですが、予想していた通り続々と日本の金融機関が Ripple 採用のニュースを発表してきました。日本経済新聞の発表によれば、横浜銀行、住信SBIネット銀行を含む約15の銀行が Ripple を利用するためのコンソーシアムを設立するそうです。

送金「24時間・割安」競う 横浜銀や住信SBIなど連合体

追記(2016/10/26)

SBIホールディングスとSBI Ripple Asia(SBIとリップル社の合弁会社)が主導するコンソーシアムが、りそな銀行を会長行とする邦銀42行の創立メンバーによって設立されることが発表されました。

会長行にりそな銀 新送金システム構築で42行が共同体設立

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