XRPの時価総額の考え方

時価総額は200億円ではない

とあるリップラーから Ripple の時価総額について意見を求められた際に、私は coinmarketcap.com に掲載されている時価総額は適当ではないと答えました。そこに掲載されている時価総額の約2億ドルはXRPの単価にXRPポータルで公表されている配布済みXRPの数量を掛けたものです。もう一つの重要な数字は rippleCharts.com に表示されている6億ドルという時価総額で、これはXRPの単価にXRPの全発行数量である約1000億を掛けたものです。前者と後者で時価総額が約400億円も異なります。では、実際のところ私たちが知りたい数字はどちらなのかということですが、冒頭に書いた通り私はどちらも使い物になる指標ではないと思っています。

なぜ使いものにならないのか

これは単純な話で、リップル社が公表するXRPの配布量自体があてにならないからです。2016年7月14日現在、XRPポータルで公表されている350億XRPという配布済み数量には Ripple の創設者の取り分である200億XRPが含まれており、これらは私たちがXRPの売買を行っている市場には流通していません。さらにリップル社が2013年11月にWCGを利用して一般向けに初めてXRPの配布をはじめる以前に創設者の取り分とは別に既に70億XRPが配布されていました。両者を足し合わせただけでも270億XRPの食い違いが出ます。かと言って rippleCharts のXRPの単価に全発行数量を掛けた時価総額は、実際の市場規模とはまったく関係のない数字です。

何が正しい数字か

では何が正しい数字なのでしょうか。答えは簡単で、ユーザーがゲートウェイに入金した総額が市場規模そのものです。これはIOUの発行総額として rippleCharts のトップページにも表示されています。

Issued_Value_20160714

現時点でおよそ980万ドル(約10億円)です。AUDやCADなどの通貨は含まれませんが、少なくとも中国アメリカ日本といった主要な市場で入金された総額は、たったの10億円というのが現実です。これは coinmarketcap.com の時価総額ランキングでいえば20位以下の通貨と同じ市場規模ということになり、単純計算で100万円投資している人が1000人しかいない計算になります。もちろん、先ほども述べたように rippleCharts に含まれない通貨や暗号通貨取引所で売買されているものも考慮すれば、もう少し大きな数字になるでしょう。それでもせいぜい20億~30億円が良いところでしょう。直感的にこれがわかるのがゲートウェイで実際にXRPを売買したときです。50万円程度の少額の売買でも価格が1割以上も上下してしまうのではないでしょうか。このようなことは時価総額ランキング上位の他の暗号通貨では起こりません。仮に時価総額が1兆円のビットコインの価格を1割動かそうとすれば大金が必要になります。

なぜ他の通貨と違うのか

時価総額に関する結論はもう出ていますが、ではなぜ他の暗号通貨と異なる考え方をしなければいけないのでしょうか。これはリップル社が説明しているように、XRPとIOUがバランスシート上の資産と負債の関係で成り立つのがもともと Ripple の仕組みだからです。確かにXRPの発行上限は1000億XRPです。しかし、発行上限や流通量がいくらであろうと、バランスシート上に記載された時価総額は変わりません。仮に明日突然、リップル社が発行上限を1兆XRPに引き上げたとしても、それで Ripple の時価総額がいきなり10倍になってしまうなどということはないのです。それは株式を10分割してもその会社の時価総額が10倍にならないのと同じです。

XRPの流通量

IOUの発行総額がわかるのであれば、XRPの流通量もわかりそうなものです。先ほどのIOU発行総額をXRPの単価(時価)で割ってみると15億程度だということがわかります。これは正確な数字ではありませんが、おおよその流通量はこれで推測できます。15億XRPというと随分少ないように感じますが、これも私たちが本当に知りたい数字とはかけ離れています。なぜなら日本のゲートウェイである東京JPYが発行しているIOUは約4800万円分しかないからです。これをXRPの単価で割ると、たったの7000万XRPしか流通していないことがわかります。もちろん Mr.Ripple を利用しているユーザーもいるので、日本市場全体で流通しているXRPはもう少し多いでしょう。しかし、それでもツイッターや掲示板などで議論されている数字よりは遥かに小さいのではないでしょうか。

最後にひとこと

リップル社がWCGで一般向けにXRPの配布をした期間は2013年11月から2014年4月までの短期間です。ここで約1.6億XRPが無償で配布され、日本のゲートウェイでも取引が行われ始めました。この時点での取引価格は0.5円~1.5円で平均取得価格は0.72円でした。これはXRP価格の推移を見れば一目瞭然です。だから何だということではないのですが、多くの人は専門家が「○○だ」と言っていれば「ああ、そうなんだ。」と簡単に思ってしまうものです。実際のところ、リップル社が公表している配布量にある日突然、創設者分の200億XRPが加算されたときにも誰も疑問を投げかける人はいませんでした。時価総額が200億XRP分も増えたにもかかわらずです。直感的に何かおかしいと感じたり、少額の売買で価格が1割も動いてしまう話のように『感覚的なズレ』みたいなものを感じたときは、自分自身を信じることも大事なのではないかと思います。

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