コア開発者が暴露したビットコインの真実

マイク・ハーンが書き残した『The resolution of the Bitcoin experiment』を和訳しました。


前書き

私は5年以上をビットコイン開発者として過ごしてきました。私が書いたソフトウェアは何百人ものユーザー、何百人もの開発者に使用されてきました。そして私が提供した話は、いくつかのスタートアップの設立に直接つながりました。私は Sky TV と BBCニュースでビットコインについて話したりもしました。私はビットコインのエキスパートと著名な開発者として繰り返しエコノミストから取り上げられました。私はビットコインをSEC(米国証券取引委員会)、銀行家、そして私がカフェで出会った普通の人にも説明してきました。

最初から私はいつも同じことを言ってきました:
「ビットコインは実験であり、すべての実験と同様に失敗する可能性があります。だから、あなたが失うことが出来ないものを投資しないでください。」
私はインタビューやカンファレンスのステージ上、電子メールでこう言ってきました。ギャビン・アンドレセンやジェフ・ガージクのような他の著名な開発者たちも同じです。

ビットコインが完全に失敗する可能性があることは分かっていたが、それが失敗したという避けることのできない結論に私はそれでも大きな悲しみを覚えます。ファンダメンタルは壊れており、短期的な価格に何が起きようとも、長期的な傾向はおそらく下向きであるはずです。私はビットコインの開発にはこれ以上関わらないし、私が持つ全てのコインは売却しました。

ビットコインがなぜ失敗したのか?
それはコミュニティが失敗したため失敗したのです。本来意図されていたのは「システム上重要な機関」も「大きすぎて潰せないもの」もない新しい非中央集権的なお金の形だが、一部の人々によって完全にコントロールされた粗悪なシステムになってしまいました。更に悪いことに、ネットワークは技術的な崩壊の危機に瀕しています。このような結果を防ぐはずの仕組みが壊れてしまったため、ビットコインが既存の金融システムよりも実際に優れていると考える理由はもはや存在しません。

考えてみてください。もしあなたがこれまでにビットコインについて聞いたことが無かったとしたら、このような支払いネットワークに興味を持つでしょうか?

  • 既存のお金を動かすことができない
  • 高くて急上昇する予想不可能な手数料
  • 客が店から出て行った後にボタンを押すだけで支払いを取り消すことができる(あなたがこの「機能」を知らないとしたら、それはビットコインがこれを出来るように変更されたばかりだからだ。)
  • 巨大な履歴と不安定な支払いに苦しんでいる
  • 中国にコントロールされている
  • 関連する企業や人々が内戦中

おそらく答えは「ノー」でしょう。

 

ブロック上のデッドロック

あなたがビットコインの現状に追いついていないかもしれないので、2016年1月現在のネットワークがどのような状況か説明します。

ブロックチェーンは満杯です。あなたは、本質的に連続したファイルがどのように「満杯」になるのか疑問に思うかもしれません。その答えは、一時的なその場凌しのぎとしてずっと昔に設定された1ブロックあたり1メガバイトの完全に人工的な容量制限が削除されなかったため、結果としてネットワークの容量が現在ほぼ完全に枯渇しています。

これはブロックサイズのグラフです。

7月のピークレベルは、「ストレステスト」と称される何者かがネットワークをトランザクションで氾濫させることを狙ったDoS攻撃中に到達しました。そのためそのレベルでは、約700キロバイトのトランザクション(または1秒あたり3回の支払い未満)がおそらく実際にビットコインが取り扱える限界でしょう。

注:あなたは上限が1秒間に7回の支払いだと考えたかもしれません。それは2011年の古い数字で、ビットコイン・トランザクションはその後もっと複雑になっています。そのため、実際の数字はそれよりかなり低くなります。

実際の限界が理論上の1000ではなく700キロバイトと思われる理由は、検証するための大量のトランザクションがあるにも関わらず、マイナーが許可されているよりも小さなブロックや場合によっては空っぽのブロックを生成しているからです。これは、中国の「グレートファイアーウォール」検閲システムからの干渉によって最も頻繁に引き起こされていると思われます。この詳細については後ほど直ぐに説明します。

詳しく見ると、2015年夏の終わりからトラフィックが増加していることがわかります。これは予想されていたことです。私は3月にビットコインの季節的な成長パターンについて書きました。

こちらは週間平均ブロックサイズです。

平均値はほぼ限界に達しています。何の不思議もないことですが、ビットコインがトランザクションの負荷に追いつかず殆ど全てのブロックが最大サイズに達しても、承認待ちの長い待ち行列が存在しています。これはサイズの列で見ることができます(750kbのブロックは、ソフトウェアを適切に調整していないマイナーからのものです)。

ネットワークが容量不足になると、信頼性が大きく損なわれます。多くのオンライン攻撃が標的のコンピュータに単にトラフィックを流すだけなのはそのためです。クリスマス前に支払いの信頼性が損なわれ始め、ピーク時には遅延が生じるのが当たり前になってきているのは間違いありません。

ビットコインを利用したビジネスの ProHashing のニュース記事を引用します。

一部の顧客からクリスに今日問い合わせがあり、ビットコインの支払いが実行されない理由を質問しました。

問題は、マイナーが大量の取引を行っただけでもネットワークの状態が劇的に変化してしまうほど過密しているため、あなたの支払いがいつ処理されるか、またはそもそも処理が本当に行われるかどうかを知るためにビットコイン・ネットワークに頼ることがもはや不可能だということです。ランダムに60分もしくは14時間待たされるようなものを誰が許容するでしょうか?

危機などないと主張してredditに投稿している人達がいるのは馬鹿げたことです。それらの人達は、自体の深刻さをなんとか伝えようとした昨日の私の投稿を批判していました。これらの人達は毎日お金を送るためにビットコイン・ネットワークを使用しているでしょうか?

ProHashingはクリスマスとニューイヤーの間にもう一つのニアミスに遭遇しました。この時は、取引所から彼らのウォレットへの支払いが遅延したことによるものでした。

ビットコインは、このような状況に対して手数料を自動的に引き上げるよう試みることで、いくらかのユーザーを締め出すようになっています。しかし、その背後にあるメカニズムは辛うじて機能しているものの、ビットコイン・ネットワークを利用するための手数料は依然として急激に上昇をしています。かつて、ビットコインは低額でときには無料の手数料という強烈な優位性を持っていましたが、現在ではクレジットカードよりも高額なマイナーに支払う手数料を求められるのが当たり前になってしまいました。

なぜ容量の上限が引き上げられなかったのか?
ブロックチェーンは中国のマイナーによってコントロールされており、そのうちたったの2人がそのハッシュパワーの50%以上をコントロールしているからです。最近開催されたカンファレンスでステージに上がった少人数の人々によって95%以上のハッシュパワーをコントロールされています。そのマイナー達はブロックチェーンの成長を阻害しています。

なぜ彼らはブロックチェーンが成長することを阻害するのか?
いくつかの理由があります。1つは、彼らが実行する”Bitcoin Core”ソフトウェアの開発者が必要な変更を実装することを拒否しています。もう1つは、マイナーが競合製品に乗り換えることを拒否していることです。彼らがそれを「背信行為」と認識しているからです。そして、彼らは「分裂」と見なされ投資家のパニックを引き起こすニュースに成り得ることをするのを恐れています。代わりに彼らは問題を無視することを選び、そのようなニュースが無くなることを願っています。

そして最後の理由は、中国のインターネットが政府のファイアウォールのせいで国境を超えたデータの移動が全く機能しないほど壊れていることです。それは常に携帯電話が提供する速度にも満たないほどです。中国全体が安ホテルの無線LANで全世界と繋がっていると想像してみてください。現在、中国のマイナーは辛うじて世界のインターネットとの繋がりを維持し、ブロックを生成するごとに25BTC(11,000ドル)の報酬を請求することができます。しかし、ビットコイン・ネットワークが普及すれば接続が非常に困難になり、彼らは収入の流れを失う恐れがあります。これは、ビットコインが普及するのを試みると同時にそれを阻むことに対する矛盾した報酬を彼らに与えます。

多くのビットコイン・ユーザーやオブザーバーは、最近までこれらの問題は彼らによって解決され、ブロックチェーンのサイズも当然引き上げられるだろうと思っていました。結局、なぜ金融の未来としてブロックチェーンを擁護してきたビットコイン・コミュニティが生まれたてのブロックチェーンを自らの手で絞め殺すのでしょうか?しかし、それが実際に起こっていることなのです。

内輪もめの結果、Coinbase(米国で最大かつ最もよく知られているビットコイン・スタートアップ)は「間違った」方を選択したとして、ビットコインの公式ウェブサイトから削除され、コミュニティ・フォーラムから追放されてしまいました。コミュニティの数人が何百万人ものユーザーにコミュニティを紹介してきた人々を道徳に反するやり方で締め出せば、あなたは常軌を逸したことが起こったと分かるでしょう。

 

誰も何が起きているか知らない

あなたがこれについてあまり耳にしたことがないなら、それはあなただけではありません。2015年に起こった最も厄介なことの1つは、投資家とユーザーへの情報の流れが枯渇したことです。

ビットコインはわずか8ヶ月の間に、透明でオープンなコミュニティから、一部のビットコイナーが過激な検閲と攻撃によってビットコイナーを支配するコミュニティへと移行しました。この変化は、私がこれまでに見た中で最も驚くべきことであり、その結果、私はもはやビットコイン・コミュニティと関わることが快適ではないと感じています。

ビットコインは投資を意図したものではなく、あなたが失う余裕がある以上のものを購入してはならない実験通貨として、いつも正確に宣伝されてきました。ビットコインは複雑ですが、投資家が望むだろう全ての情報は揃っており、書籍、カンファレンス、ビデオ、ウェブサイトのコテージ産業があったため、私は決して心配していませんでした。

それが今は変わってしまいました。

ビットコインを所有している人は、大手のメディアを通じてビットコインについて学びます。大手メディアが情報を流すたびにビットコインの価格が跳ね上がり、メディアは価格が上がったと報じ、そしてバブルが起きます。

ビットコインに関する話は簡単なプロセスを通じて新聞や雑誌に届きます:
ニュースはコミュニティ・フォーラムで開始され、より専門的なコミュニティ/技術ニュースのウェブサイトで取り上げられ、一般のメディアのジャーナリストがそのサイトの記事を見て彼らの独自バージョンを書きます。私はこれが何度も何度も繰り返されるのを見てきましたし、ジャーナリストからの取材のために頻繁にそれに参加しました。

2015年8月には、深刻な管理ミスのため、ピアツーピアネットワークを実行するプログラムを維持する「Bitcoin Core」プロジェクトが、ブロックサイズを引き上げたバージョンをリリースしないことが明らかになりました。この理由は複雑なため、後ほど詳しく述べます。しかし、明らかにコミュニティは新規ユーザーを追加する能力を求めていました。だから私を含む古くからの開発者が集まり、上限を引き上げるために必要なコードを開発しました。そのコードはBIP 101と呼ばれ、私達がBitcoin XTと名付けたソフトウェアの更新バージョンでリリースしました。XTを実行することで、マイナーは上限を変くする投票を行うことが出来ました。ブロックの75%が変更に投票することで、ルールが調整され、より大きなブロックが許可されるはずでした。

Bitcoin XTのリリースに対して、なぜか少数の人々がとても感情的になりました。そのうちの1人は bitcoin.org のウェブサイトと上位のディスカッション・フォーラムの管理者でした。彼は言論の自由を理由に、頻繁に彼が管理しているフォーラムでの犯罪行為の議論を許可していました。しかし、XTが立ち上げられたとき、彼は驚くべき決定を下しました。XTは「開発者のコンセンサス」を代表するものではなく、本当のビットコインではないと彼は主張しました。

ビットコインの偉大なことの1つは民主主義の欠如

なので、投票は忌むべき行為だと彼は言いました。だから彼はXTを完全に抹殺するためにありとあらゆることをすることを決め、ビットコインの主要なコミュニケーション・チャンネルの検閲を開始し、「Bitcoin XT」という言葉を含む投稿を彼が管理しているディスカッション・フォーラムから削除し、公式の bitcoin.org ウェブサイト上でXTについて議論することやリンクが出来ないようにしました。もちろん、他の検閲されていないフォーラムにユーザーを誘導しようとする人も締め出されました。膨大な数のユーザーがフォーラムから追放され、意見を表明することが出来なくなりました。

あなたのご想像の通り、これは皆を激怒させました。この発表に対するコメントを読んでその気分を味わってみてください。

最終的には、数人のユーザーが新しい検閲されていないフォーラムを作りました。それを読むのは悲しいことです。何ヶ月もの間毎日、検閲に対する怒りの投稿や検閲を打ち負かすという誓い、激怒を私は見ました。

しかし、XTや検閲そのものに関するニュースをユーザーに伝えることができないことは、厄介な影響をもたらしました。

初めのうち、投資家は何が起こっているのかを正確に把握する方法がありません。反対意見のビューは、システム的に抑制されています。Bitcoin Coreが行っていることに対する技術的な批判は抹消され、誤解を招くナンセンスなことが広められています。そして、ハイプ・サイクルの中でビットコインを偶然買った多くの人々は、システムが人為的な限界に近付いているのを知らないことは明らかです。

これは本当に私を悩ませました。長年に渡り、政府は有価証券や投資に関する多くの法律を制定してきました。ビットコインは証券ではなく、そして私はそれがその法律に該当するとは信じていませんが、それらの「精神」はとても単純です。誤解をした投資家たちがお金を失うと、政府の関心は頻繁にそこに向かいます。

 

Bitcoin Coreはなぜ上限を維持するのか?

人事問題です。

Satoshiが辞めたとき、彼は我々が現在「Bitcoin Core」と呼んでいるプログラムの指揮権をギャビン・アンドレセン(初期のコントリビューター)に譲りました。ギャビンは将来を見通すことができる堅実で経験豊かなリーダーです。彼の信頼できる技術的な判断は、私が(8年間近くを過ごした)Googleを辞めてビットコインのフルタイムで仕事をするための自信になった理由の1つです。たった1つだけ小さな問題がありました。Satoshiはギャビンにその仕事がしたいか尋ねたことがなく、実際に彼はしませんでした。だからギャビンが最初にしたことは、他の4人の開発者にもコードへのアクセスを許可することでした。これらの開発者は、彼に何かが起きた場合にプロジェクトを簡単に続行できるように迅速に選択されました。だから、この4人は本質的には周辺にいる使えそうな人達でした。

そのうちの1人、グレゴリー・マクスウェルは独特の見解を持っていました。彼は一度、ビットコインが数学的に成り立たないことを彼が証明したと主張しました。もっと問題なことに、彼は Satoshi のオリジナルビジョンを信用しませんでした。

プロジェクトが最初にアナウンスされたとき、Sathoshiはブロックチェーンがどのように大量の支払いに対応できるようにスケールするのかを尋ねられました。もしこのアイデアが実現したら、ダウンロードするデータ量は間違いなく計り知れないものになるのではないか? これは初期のビットコインによくあった批判で、Satoshiはそれについて質問されることを十分に予想していました。

帯域幅はあなたが思っているほど高額ではないかもしれません・・・。もしネットワークが[VISAと同じくらいの大きさ]になるとしたら、それには数年かかるでしょう。そしてそれまでに、2本のHD動画[と同じくらい]のデータをインターネットで送ることは大したことではなくなっているはずです。

と彼は言いました。それは単純な論拠です。既存の支払いネットワークが取り扱っているものを見てください、ビットコインが同じことをするようになるまでにかかる時間を見てください、そのような成長は一夜にして起こらないという指摘です。未来のネットワークとコンピューターは今よりも良くなるでしょう。実際、帯域幅だけでなく更に多くの要素を考慮しても、単純計算では実際にスケールの上限に達することはない。」と彼は私に言いました。

マクスウェルはこの考え方に賛同しませんでした。2014年12月のインタビューから

マクスウェルによると、ビットコインの成長に伴う分散化にまつわる問題は縮小しないとのことです。「ネットワーク上のトランザクションに関して言えば、スケールと分散化は本質的にトレードオフの関係です。」

問題は、ビットコインの取引量が増加するにつれて、内在するコストが原因で大企業だけしかビットコイン・ノードを実行できなくなるかもしれないことだ、と彼は言いました。

ユーザーの増加が分散化の妨げになるのでビットコインは本質的に消える運命にあるという彼の考え方は致命的です。一連のハイプにも関わらず実際の使用率は低く、ゆっくりと成長し、技術は時間の経過とともに良くなるという事実を無視しています。ギャビンと私は彼のその信念のために多くの時間を費やしてきました。そして、それは明白だが馬鹿げた結論を導くことになりました。もし分散化がビットコインを良くするものであるならば、分散化はその成長を脅かします。だからビットコインを成長させるべきではないということです。

代わりに、ビットコインはまだ開発されていない非ブロックチェーンのシステムのための決済レイヤーを担っていくべきだとマクスウェルは結論付けました。

 

デス・スパイラルの始まり

企業では、組織の目標を共有していない人は簡単な方法で対処されます。クビにするだけです。

しかし、Bitcoin Coreはオープンソース・プロジェクトであり会社ではありません。ソースコードへのコミット権限をもつ5人の開発者が選ばれ、ギャビンは彼らのリーダーになることを望まなかったので、その中から誰かを解任する手続きが存在しませんでした。また、プロジェクトの目標に本当に合意するかを確認するためのインタビューや審査プロセスがありませんでした。

ビットコインの人気が高まり、トラフィックが1MBの上限に近づき始めると、開発者の間でブロックサイズの上限を引き上げるというテーマが時折発生しました。しかし、それはすぐに感情的な批判にされられる題材になりました。批判は、上限を引き上げるのはリスキーだとか、分散化に反するとか、そんな感じのものでした。多くの小さなグループと同様に、皆は争いを避けることを好みました。そして問題は棚上げされました。

さらに複雑なことに、マクスウェルは会社を設立し、その後、他の数名の開発者を雇いました。驚くことではないが、彼らの考え方は、彼らの新しいボスと一致するように変化し始めました。

2015年5月、まだ8ヶ月の猶予がありましたが、ソフトウェアのアップグレートを調整するには時間がかかるため、ギャビンはその問題に一斉に取り組むことに決めました。彼は、上限を段階的に引き上げることに対する議論を通じ、1つの記事を書き始めました。

しかし、Bitcoin Coreの開発者たちは絶望的なことになっていました。マクスウェルと彼が雇った開発者は、上限の引き上げを考慮することを完全に拒否しました。彼らはその問題について議論しようと考えることすら嫌がりました。彼らは「コンセンサス」がなければ何もできないと主張しました。リリースを担当していた開発者は争いを恐れていたため、片方が「勝利する」という議論の余地がある話題には全く触れず、関与することを拒否しました。

従って、実際に取引所、ユーザー、ウォレット開発者、そしてマイナーは上限の引き上げを想定し、事実、そうなることを前提にビジネスを構築していたにも関わらず、5人の開発者のうち3人が上限に触れることを拒否しました。

デッドロックです。

その間にも時間は刻々と変化して行きました。

 

XTユーザーに対する大規模なDDoS攻撃

ニュースが遮断されてしまったにもかかわらず、Bitcoin XTがリリースされてから数日のうちに15%ほどのノードがそれを実行しました。そして、少なくとも1つのマイニング・プールがマイナーに対してBIP101投票の提供を開始しました。

DoS攻撃(サービス拒否攻撃)が始まったのはその時でした。攻撃は、一部の地域を丸ごとインターネットから遮断してしまうほど大規模なものでした。

私はDDoS攻撃を受けました。それは私の地域全体のISPをダウンさせてしまうほど大規模なものでした。この夏、この犯罪者たちのおかげで、5つの町の人々が数時間もの間インターネット・サービスを失いました。私はこれによってノードをホスティングする気を完全に失いました。

他のケースでは、データセンター全体が、データセンター内の単一のXTノードが停止するまでインターネットから切断されました。このようにして、約3分の1のノードが攻撃され、インターネットから排除されました。

更に悪いことに、BIP101を提供していたマイニング・プールも攻撃され、強制的に停止されました。メッセージは明確でした。ブロックサイズの引き上げを支持する者やそれらへの投票を許可するその他の人々は誰であろうと攻撃に晒されるということです。

攻撃者は依然として存在します。ローンチの数ヶ月後、CoinbaseがついにCoreに対する信頼を失ってXTを実行すると発表したときにも、彼らもまた暫くの間インターネットに接続できない状況に追い込まれました。

 

でっちあげのカンファレンス

DoS攻撃と検閲にも関わらず、XTは勢いを増していました。その結果、Coreに脅威がもたらされたため、開発者のうちの数人が「Scaling Bitcoin」という一連のカンファレンスを8月と12月に開催することにしました。掲げられた目標は、何をすべきかに関して「コンセンサス」を得ることでした。誰もが専門家のコンセンサス(合意)を好みますよね?

上限の引き上げについて会話することすら拒否している連中が心変わりするわけがないことは私には直ぐに分かりました。なぜなら、彼らがカンファレンスに出席していましたし、さらに冬の始まりに開始すれば、ネットワークをアップグレードするための期間は数ヶ月しか残っていないからです。

カンファレンスが開始されるのを待つために貴重な数ヶ月間を無駄にすればネットワーク全体の安定性をリスクに晒すことになるでしょう。実際、最初のカンファレンスは具体的な提案に関する議論が事実上禁止され役に立ちませんでした。

だから、私は行かなかったのです。

残念ながら、この戦術は驚くほど効果的でした。コミュニティは完全にそれに騙されました。マイナーやスタートアップと話をすると、「私達は12月にCoreの上限が引き上げられるのを待っています。」というのがXTの実行を拒んでいる主要な理由の1つとして挙げられました。彼らはビットコインの価格と彼らの収益を損なう可能性のあるコミュニティ分裂に関する話をメディアが取り上げるのを恐れていました。

上限を引き上げる計画なしで最後のカンファレンスが終了したとき、(CoinbaseやBTCCのような)いくつかの企業は彼らが嵌められたことに気付きました。しかし手遅れです。コミュニティが待っている間にも、一日あたりの取引件数は10万件も自然増加しました。

 

ロードマップがない

ブロックサイズの引き上げをサポートする5人のBitcoin Coreコミッターのうちの2人であるジャフ・ガージックとギャビン・アンドレセンは、どちらもコミュニティ内で傑出した評判を得ています。彼らは最近『Bitcoin is Being Hot-Wired for Settlement』(ビットコインは調停のために熱くなっている)と題された共同記事を執筆しました。

ジェフとギャビンは普段、私よりもソフトなアプローチをします。私はより思ったことをそのまま口にするタイプで、ギャビンに言わせると「馬鹿正直」とのことだ。だから、彼らの共同レターの強い言葉遣いは珍しいことです。彼らは振り上げた拳をまったく引きませんでした。

ビットコイン・コミュニティで提案され、現在も議論されているロードマップは、より多くのトランザクションに対応しようという点では良い。

だが、ビットコイン・ユーザーに対してはっきりとした説明がないうえに、重要な欠点について明らかにしていない。

コア・ブロックサイズは変更されないことになっている。この問題に関して妥協の余地はゼロだ。

最適で透明なオープンソースの環境であれば、BIPが作られたでしょう・・・。しかし、これは起こらなかった。

Scaling Bitcoinワークショップの明確な目標の1つは、混とんとしたコア・ブロックサイズの議論を秩序ある意思決定プロセスに収束させることだった。それは起こらなかった。今になって思えば、取引手数料とブロック・スペース圧力は継続的に増加しているが、Scaling Bitcoinはブロックサイズにまつわる決定を行き詰まらせてしまった。

彼らが言うところの「はっきりとした説明がない」というのは、益々当たり前のことになりました。例えば、「Scaling Bitcoin」カンファレンスでギャビンとジェフが参照したプランが発表されましたが、それによって何かが効率的にされることはなく、計算上のトリックだけ(各トランザクションのうち数バイトを計算に含まないだけ)で僅か60%程度の容量を稼いでいるだけです。それではビットコインに関連するソフトウェアのほぼ全ての部品に大きな変更を加える必要があります。簡単なことをして上限を引き上げる代わりに、長ければ数ヶ月かかるかもしれない大きな調整作業を前提とした信じられないほど複雑なことをするのを選んでいます。

 

手数料による置き換え

混雑をコントロールするために手数料を使用することの1つの問題は、支払いを行った後に待ち行列の先頭に行く手数料が変わる可能性があることです。Bitcoin Coreはこの問題に対する優れた解決策を持っている。支払いが送信された後、それらがブロックチェーンに収まるまで、変更可能としてマークを付けるのを可能にしました。本来の意図は、ユーザーが支払った手数料を調整できるようにすることだが、実際にはこれらの変更は支払いが自分自身を指すように変更できるようになりました。つまり支払いの取り消しです。

これは、たちまちビットコインを支払いの道具として使い物にならなくしてしまいました。あなたは購入者の取引がブロックチェーンに収まるのを待たなくてはならなくなるでしょう・・・。これからは混雑のために、数分ではなく数時間待たされることになります。

CoreがこれでOKだという理由は次のようなものです:
もし以前からあなたがブロックを待たずにいたなら理論上の支払い詐欺のリスクがあったため、あなたは適切にビットコインを使っていなかったということです。だからそれは大きな損失ではありません。だから、そのリスクを100%確実にすることは、実際には何も変化させません。

別の言い方をすれば、彼らはリスク・マネージメントが存在することを考慮しておらず、この変更をゼロコストと考えています。

このプロトコルの変更は、次のバージョンのCore(0.12)でリリースされるため、マイナーのアップグレード時に有効になります。これはビットコイン・コミュニティ全体から大きく非難されましたが、残りのBitcoin Core開発者は他の人々の考えを気にしないため、この変更は行われます。

もしあなたがこれを聞いてもビットコインが深刻な問題を抱えていると確信しないのであれば、他の何をもってしてもあなたは納得しないでしょう。近い将来実際の店舗で利用することができなくなったとき、いったいどれだけの人々がビットコインに数百ドルの価値があると考えるのでしょうか?

 

結論

ビットコインは異常な危険海域に入りました。マウントゴックスの破産のような過去の危機は、すべてビットコインの生態系周辺に生まれたサービスや企業に関係するものでした。しかし、これは違います。これはコアシステム、ブロックチェーンそのものに関する危機です。

より根本的には、人々が世界をどのように見ているかの深い哲学的な違いを反映した危機です。「専門家の合意」によって支配されるべきものか、または一般の人々が納得できるポリシーによってコントロールされるべきかです。

たとえ新しいチームがBitcoin Coreに置き換えられたとしても、グレート・ファイアウォールの後ろに集中している問題は残ります。10人にも満たない人々によってコントロールされている限り、ビットコインには未来がありません。そして、この問題に対する期待できる解決策はありません。誰も何の提案すらしません。ブロックチェーンについて常に心配しているコミュニティが圧政的な政府によって引き継がれるというのは、本当に皮肉なことです。

それでも、まだ全てが失われたわけではありません。このようなことが起こったにも関わらず、過去数週間にコミュニティのより多くのメンバーが私が提起した問題に取り組み始めました。Coreに対する代替案は一度、反政府勢力と見なされましたが、2つのフォークが注目を集めようとしています(Bitcoin ClassicとBitcoin Unlimitedです)。今のところ彼らはXTと同じ問題にぶつかりましたが、新たな顔ぶれが道を切り開いてくれる可能性があります。

ビットコインの世界には才能豊かでエネルギッシュな人々が沢山いて、過去5年間にそれらの人々に出会えたことは本当に嬉しかった。彼らの起業家精神やマネー、経済、政治に対する様々なモノの見方は経験するに値するほど魅力的で、このような結果になったとはいえ、私はこのプロジェクトに費やした時間を後悔していません。今朝起きたら、検閲されていないフォーラムで私が上手くやっていくことを願ってくれたり、私に残って欲しいと頼む人達がいました。でも、心苦しいけど、私は他のことに取り組み始めました。皆に次の言葉を残します。”Good luck”、”Stay strong”、そして “I wish you the best”。

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