銀行コインとRippleの関係を予想する
今日は既に発表されているMUFGコインやみずほマネーなどの銀行コインと Ripple の関係について、2018年にどのような形で私たちの前に登場するのか私なりの予想を書いてみたいと思います。
日本国内で利用される Ripple を利用した送金アプリは、日経モーニングプラスで SBI Ripple Asia の沖田社長によってデモンストレーションが行われました。
このデモンストレーションでは、スマホアプリのユーザーインターフェースをはっきりと確認することができます。
SBI Ripple Asia CEO @OKITATakashi appeared on @Nikkei Morning Plus today and demonstrated Japan Bank Consortium’s new payments app powered by @Ripple‘s blockchain technology, which enables real-time payments using a phone number or QR code. #IOV #BlockchainTechnology pic.twitter.com/lQmLjE1yBE
— Ripple (@Ripple) 2017年12月15日
2018年春にローンチ!?
SBIホールディングスによれば、3メガバンクと地銀が参加する企業連合の新送金システムは今春から利用が開始される予定です。
新たな送金システムは、SBIホールディングスのほか地銀や3メガバンクが参加する企業連合が運営する。口座番号での入力のほか、電話番号やQRコードによる送金にも対応する。
出典:日本経済新聞
そしてSBIホールディングスからは、Ripple の xCurrent を統合した RCクラウド2.0 の構築完了がアナウンスされました。
このアナウンスの中で気になるのは携帯電話番号やQRコードで送金ができる共通アプリの存在です。
本コンソーシアムでは「RCクラウド2.0」に加え、参加金融機関の開発負荷を軽減するために、オープンAPIを活用した接続を可能とする「共通GW(ゲートウェイ)」や、銀行口座番号の他に、携帯電話番号やQRコードでの送金を実現する「共通アプリ」の開発も行っております。
出典:SBIホールディングス
共通アプリとは!?
この共通アプリについて、金融庁のウェブサイトにアップされている全国銀行協会の資料には富士通のプレスリリースからの図説が抜粋されています。(24ページ)
ここで紹介されている共通アプリの画面イメージは、日経モーニングプラスで SBI Ripple Asia の沖田社長によってデモンストレーションされたものと一致します。そして、この共通アプリを利用した送金の仕組みを説明するために富士通のウェブサイトから次の図が抜粋されています。
この図では、X銀行とY銀行という異なる銀行間で利用者がスマホアプリを使って送金する様子が描かれています。
Jコイン(共通コイン)の構想
そして SBI Ripple Asia の共通アプリを予想する上で、一つ気になっているのがJコインの存在です。
個人がインターネットやお店などでの支払いに使える新しい仮想通貨の創設へ向けて、みずほフィナンシャルグループやゆうちょ銀行、数十の地銀が手を組む。円と等価交換できる仮想通貨「Jコイン(仮称)」を扱う新しい会社を設立。
出典:日本経済新聞
決済レイヤーと清算レイヤーの分離
資金決済において支払いは取引(ペイメント)、清算(クリアリング)、決済(セトルメント)の3ステップで実施されます。
私の予想は、共通アプリを利用した送金システムでは、取引(送金)と清算にJコインを利用し、決済にRCクラウドを利用するのではないかというものです。先ほどの富士通の図で説明すると次のようなイメージです。
AさんがX銀行からJコインをスマホアプリに出金(チャージ)してBさんに送り、Bさんがスマホで受け取ったJコインをY銀行の口座に入金すると、X銀行とY銀行の口座間でRCクラウドを利用して決済(セトルメント)が行われるのではないでしょうか。
2018年5月6日追記:
SBIホールディングスは2018年4月26日に行われた2018年3月期決算説明会で共通アプリ『MoneyTap』が xCurrent を統合したRCクラウド2.0に接続されると説明しています。
新型ATMの登場
しかし、利用者はJコインを銀行口座からどうやってスマホに出金(チャージ)するのでしょうか? 私は年内にJコインの出金に対応した新型ATMが全国に配備されると予想しています。その根拠の一つは、2016年の朝日新聞の報道です。
同行は、コインを取り込んだスマホをかざせば現金を引き出せる新型ATMの開発も進めており、2018年春から順次、配備する予定。実現すれば、同行に口座を持たずとも、スマホに取り込んだコインをATMで現金化できるようになる。
出典:Yahoo!ニュース
朝日新聞は2017年にも同様の報道をしています。
スマホをかざせば現金を引き出せる新型の現金自動出入機(ATM)を来春から配備することも検討する。システムの地方銀行への提供も検討する。
出典:朝日新聞
そして、このシステムは既に去年の5月から銀行内で試験運用されています。
実験はまず、5月に役員ら200人で始めて、7月には1千人超に広げる。年末には全行員が使えるようにする。行員同士の送金や行内のコンビニでの支払いなどに使い、来春にも一般向けに発行する方向だ。
出典:朝日新聞
銀行の仮想通貨取引所
さらに三菱UFJフィナンシャル・グループは、この銀行が発行する仮想通貨を取引するための仮想通貨取引所を2018年度中に開設する計画であることを発表しています。
邦銀による仮想通貨の発行や取引所開設は初めてで、2018年度中の実現を目指す。
出典:毎日新聞
もし三菱UFJフィナンシャル・グループが仮想通貨取引所を開設するのであれば、年内にも金融庁に仮想通貨交換業者の届け出が出されるのではないでしょうか。
銀行コインと何を交換する取引所になるのかはとても興味深いところです。
まとめ
ここで述べたことは記事中で紹介した企業が公式に発表したことではなく、すべて私の個人的な予想に過ぎません。そもそもMUFGコインとJコインが共通のものであるかどうかも分かりません。しかし、富士通の発表では
株式会社みずほフィナンシャルグループ(注1)様、株式会社三井住友フィナンシャルグループ(注2)様、株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ(注3)様と共同で、ブロックチェーン技術を活用した個人間送金サービスの実証実験を、2018年1月から約3カ月間実施することで合意
出典:富士通
と、メガバンク3行の合同の取り組みであることが発表されており、MUFGコインとJコインが共通の仕組みである可能性は十分に考えられると思います。そして、三菱UFJフィナンシャル・グループからも
システムの地方銀行への提供も検討する。各地銀の独自ブランドで発行する形にする。
出典:朝日新聞
と、MUFGコインのシステムを他行に提供することが発表されています。
いずれにしても個人の予想の域を出るものではなく、SBI Ripple Asiaなどが発表している送金システムがどのようなものになるのかは、実際にシステムが稼働するまでは分かりません。ただ、私は自分の予想が外れたとしても、大変なことが起こるのは間違いないと思っています。