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XRPに気付いたきっかけ
座談会メンバー:
GiantGoxさんがXRPに気付いたのはいつ頃ですか?
GiantGox:
2014年の中旬頃だったと思います。
座談会メンバー:
何かきっかけがあったのですか?
GiantGox:
きっかけはテレビですね。2013年にビットコインが暴騰して話題になっており、2014年2月にマウントゴックス事件が起きてテレビがビットコインをディスっていました。
座談会メンバー:
ディスっていたのでダメなのではないですか?
GiantGox:
私はいつも逆に考えるようにしています。その時もテレビがディスっていたので逆に何かあるのではないかと思いました。インターネットで調べたところ、ビットコインがブロックチェーンと呼ばれる画期的な分散型台帳技術のプロトタイプであることを知りました。しかし、残念ながらスケーラビリティの問題でプロジェクトは暗礁に乗り上げ、考案者のサトシ・ナカモトは既にプロジェクトを去っていました。そして暗号通貨コミュニティはビットコインの技術を改良したビットコイン2.0のようなものを作る方向にシフトしていました。
座談会メンバー:
なるほど。それでビットコイン以外の仮想通貨が作られ始めたのですね。
GiantGox:
Ethereumプロジェクトもその一つですが、これはビットコインの性能問題を解決するためのものではなく、ブロックチェーンを利用してスマートコントラクトを実現するためのプロジェクトでした。
座談会メンバー:
Ethereumはヴィタリック・ブテリンが主導するプロジェクトとして有名ですね。
GiantGox:
2013年の夏頃、当時まだ学生だったヴィタリックは、ウォータールー大学のコーオプ教育プログラムでリップル社に就職することを希望していて、BitcoinJSの開発者としても知られるリップル社のステファン・トーマスが面倒を見ていたそうです。しかし、リップル社はまだ設立後9ヶ月しか経っておらず、ビザの発給要件である設立1年に満たなかったことからビザが発給されなかったため、リップル社はヴィタリックの雇用を断念せざるを得なかったそうです。そのような経緯から、ヴィタリックはEthereumプロジェクトを発足することになりました。
座談会メンバー:
あのヴィタリック・ブテリンも当初はリップル社で仕事をすることを希望していたのですね。
GiantGox:
他にもライトコインやピアコインなどいくつかのプロジェクトがありましたが、その中で最も有望だと感じたのがクリス・ラーセン達が創業したオープンコイン社(現リップル社)が主導していた XRP Ledger で、当時はカナダのライアン・フッガーが考案したリップル・プロトコルを統合したリップル・コンセンサス・レジャー(RCL)と呼ばれていました。
座談会メンバー:
そういえばインターレジャー・プロトコル(ILP)が統合される以前は、XRP Leger は RCL と呼ばれていましたね。
GiantGox:
当初は単一の台帳にリップル・プロトコルのすべての機能を実装する方式だったため、ILP を統合した現在の XRP Ledger内に実装されているデジタル資産(XRP)の名前の由来にもなっています。
分散型台帳とは
座談会メンバー:
先ほどビットコインは分散型台帳技術の先駆けであるというお話でしたが、『分散型台帳』とはどのようなものなのですか?
GiantGox:
台帳とは簡単に言うとデータを保存するためのデータベースのことです。従来は複数人で一つの台帳を共有する場合、中央で管理されている一つのコンピューター上のデータベースを共有する必要がありました。その従来の方式では、データベースを管理している個人や法人がデータを改竄(かいざん)しないことを信用しなければいけません。つまり中央がある仕組みです。
座談会メンバー:
なるほど。それで仮想通貨業界では『非中央集権』というキーワードがよく登場するわけですね。
GiantGox:
ビットコインはこの問題をプルーフ・オブ・ワークとブロックチェーンという技術を使って克服しようというアイデアを提案しました。これはビットコインのネットワークに接続する人達がそれぞれの手元に個別に台帳を持ち、自分の手元の台帳を書き換えると同じネットワークに接続している世界中の人達の台帳もまったく同じように書き換わるというシステムです。
座談会メンバー:
それは凄い発明ですね。ビットコインはそれで何を実現しようとしたのですか?
GiantGox:
ビットコインに限らず分散型台帳の目的は、基本的には二重支払いを防止することです。例えば私がAさんに現金で1万円を渡したのに、自分の手元にも同じ現金1万円が残っているということは物理的に起こりません。しかし、コンピュータで管理されているデータはいくらでも複製することができてしまいます。ワードやエクセルのデータを想像すると分かり易いと思います。電子メールでワードやエクセルのデータを相手に送っても、自分の手元にはオリジナルのデータは残ってしまいます。通貨システムのようなものをコンピュータで実現しようとする場合、このようなことが起こってしまうと都合が悪いわけです。
座談会メンバー:
確かに1万円を送って相手に1万円が届いても、自分の手元にも1万円が残っていたら合計2万円に増えてしまいますよね。その問題をビットコインは克服しようとしたわけですね。
GiantGox:
はい。しかし実際にビットコインを作ってみると、そのやり方にはいくつかの問題があることが分かりました。
座談会メンバー:
どのような問題があったのですか?
GiantGox:
ビットコインではネットワークの参加者が取引を承認するのですが、取引を承認した人には報酬としてビットコインが発行されて与えられる仕組みです。参加者のうち誰が取引を承認するかと言うと、ビットコイン自体が参加者に難しいクイズを出して、その質問に答えられた人が取引を承認して報酬を受け取れるようになっています。その質問に答えるにはコンピュータによる計算が必要で、より早く回答を出せた人がビットコインを貰えます。計算をしてビットコインの報酬を貰うことをマイニング(採掘)と呼びます。
座談会メンバー:
処理能力が高いコンピュータを持っている人が報酬を受け取れるわけですね?
GiantGox:
はい、実際には処理能力が高いコンピュータを沢山持っている人ですね。しかし、ここで問題になるのは電気代です。処理能力が高いコンピュータを沢山動かせば、それだけ電気代がかかります。そして、同じコンピュータを動かして競争したとしても、アメリカと中国では電気代が安い中国の方が有利になってしまいます。
座談会メンバー:
難しい問題ですね。具体的にはどういうことが起こるのでしょうか?
GiantGox:
1BTCが100円だった頃のことを考えると、1BTCを得るために100円以上の電気代が掛かってしまうと赤字になってしまいます。ですから、この競争が始まった頃から、電気代が安い中国人がビットコインのマイニングを独占し始めました。ビットコインから出される質問は回答をするコンピュータの処理能力に応じて変化する仕組みのため、マイニングの処理が集中すればするほどマイニングにかかる電気代も高くなり、さらに中国人が有利になっていきました。結果的にビットコインの分配は中国に偏り、取引の承認も実際には4~5人の中国人によって行われるようになってしまいました。
座談会メンバー:
それでビットコインの中央集権化が問題になっているわけですね。
GiantGox:
それとよくビットコインの送金が高速だという話をする人がいますが、これも間違っています。先ほど取引を承認して報酬をもらう人がクイズを解く必要があると説明しましたが、ビットコインはプログラム的にその問題を10分程度で解ける難しさに調整する仕組みになっています。つまり取引が承認されるには最低でも10分程度待たなければならず、ファイナリティがないビットコインでは取引が確定したと見なすために実際には1時間ほど待たされます。さらに、ブロックサイズの制約から、1秒間に3~4回の取引しか処理できないことが分かっています。
座談会メンバー:
なるほど。つまりビットコインの分配の偏り、取引承認の中央集権化、10分という処理時間と処理能力の問題があるわけですね。
GiantGox:
XRP Ledgerはビットコインとは異なる独自のアルゴリズムを採用することで、これらの問題を克服することに成功した次世代の分散型台帳というわけです。XRP Ledgerの取引承認時間はわずか2~3秒で、XRP Ledger単体で1秒間に処理できる取引数は1500回以上です。さらにリップル社が提供するエンタープライズ製品を組み合わせることで1秒間に5万回の送金まで対応できるようになります。例えば世界的に利用されているVISAカードのネットワークでは1秒間に4000回から1万回の取引が行われているため、そのような決済ネットワークを構築するエンタープライズ分野でリップル社の製品が注目されているわけです。
なぜXRPが有望だと思ったのか
座談会メンバー:
リップル社の製品を世界中の銀行が採用し始めています。なぜリップル(Ripple)がこれほど普及すると予想したのですか?
GiantGox:
多くの人は技術とユースケースをごちゃ混ぜに考えています。技術というのは所詮技術でしかありません。IT業界のイノベーションというのはクリス・ラーセンのようなイノベーターが特定の技術のユースケースを見出し、それを実用化することで起こります。そして実用化するだけではなく、その技術を普及させるためには標準化という作業がとても重要になってきます。例えば90年代にAlphaという64ビットの非常に高速なRISC CPUがありましたが、普及することなく終わってしまいました。他にも富士通のFM-Townsのように日本で初めてCD-ROMドライブを標準搭載した画期的なパソコンも存在しましたが、そうしたメーカーの独自規格のパソコンは全て消えてしまいました。しかし、業界では多くの人達がそのような流れになることは当時から気付いていたのです。
座談会メンバー:
なぜそのようなことに気付けるのですか?
GiantGox:
独自規格のパソコンが消えたということに関しては、IBMが80年代からオープンアーキテクチャの戦略にシフトした影響が大きいです。現在私たちが使っているPCと呼ばれるパソコンは、もともとはIBM PC/ATの規格を採用したPC AT互換機と呼ばれるものでした。当時、コンパックや他のアメリカの大手パソコンメーカーはPC AT互換機という業界標準の規格を採用しており、独自規格のパソコンが広く普及しないことは明らかだったのです。そしてIBMはPCのオペレーティングシステム(OS)にマイクロソフトの製品を採用しており、マイクロソフトのOSはインテル社のCPUで動くように出来ていました。
座談会メンバー:
リップル社もILPの標準化を進めていますね?
GiantGox:
リップル社は2015年10月にW3C(ワールド・ワイド・ウェブ・コンソーシアム)のインターレジャー・ペイメント・コミュニティ・グループの発足と同時に議長に就任し、ILPの標準化のための作業を積極的に行っています。例えばウェブの世界では HTTP/2 という次世代のHTTP規格がありますが、これの前身も Google が開発した SPDY(スピーディー)です。Googleがこのようなウェブの標準技術の開発に力を入れているのは、同社が実現しようとしているサービスにはこのような技術的な基盤が不可欠だからです。いくら電車が時速500キロで走れても、それを走らせる線路がなければ実用化できないのと同じことです。リップル社がILPを標準化しようとしているのも、ILPという基盤が無ければ同社が開発する xRapid のようなエンタープライズ製品を実用化することが出来ないからです。これまで様々な技術が普及する過程を見てきましたが、世の中に広く普及して私たちが利用している技術は、規格争いに勝って標準化に成功したものが殆どです。リップル社はその作業を数年前から地道に続けてきました。
座談会メンバー:
なぜ数あるブロックチェーン企業の中でリップル社のプロジェクトだけがトントン拍子に進んだのでしょうか。
GiantGox:
創業者のクリス・ラーセンの影響が大きかったのだと思います。XRPを開発した3人の技術者は、会社を設立するにあたってプロの経営者としてクリス・ラーセンを迎え入れました。そして、彼が設立した会社に開発者たちが保有していたXRPの8割を寄贈しました。
座談会メンバー:
クリス・ラーセン氏は現在リップル社の会長を務めていますね。何者なのですか?
GiantGox:
クリス・ラーセンはアメリカで初めてソーシャルレンディング・サービスを開始したプロスパー(Prosper)の共同創業者で元CEOです。このソーシャルレンディング・サービスは、日本ではクラウドファンディングという呼び名で広く知られています。プロスパーは2005年に創業されたフィンテック企業ですが、同氏はそれ以前にも1997年に E-Loan というオンライン初のモーゲージ・ローン・プラットフォームを提供する会社を創業しています。つまり、彼はフィンテックという言葉すら存在しなかったインターネットの黎明期からフィンテックに取り組み、クラウドファンディングを世に広めた人物でもあります。
座談会メンバー:
クラウドファンディングなら私も聞いたことがあります。それを世に広めた人物がリップル社の共同創業者だったわけですね。
GiantGox:
特定分野で高度な技術を持っているエンジニアが会社の経営や営業活動を始めて失敗してしまうケースは昔からよく聞きますが、彼らはその古典的な失敗をしませんでした。私自身も元エンジニアですが、技術者というのはある意味では職人のような人種でもあると思うんです。でも、職人がプレイヤーとして優秀かどうかは分かりません。これは音楽で例えれば、ストラディバリウスを作れるストラディバリさんが世界一のバイオリン奏者(プレイヤー)になれるわけではないのと同じです。そうやって昔から職人や技術者は自分達が作ったものを最高のプレイヤーに託してきました。
座談会メンバー:
なるほど、良い例えですね。
GiantGox:
自動車だって技術者がF1レースのドライバーをしているわけではないですよね。これはコンピューター業界でも同じなんです。どんなに優秀な技術を持っていたとしても、1位になりたければ優秀なプレイヤーにそれを託さなければなりません。XRPの開発者たちは、クリス・ラーセンという最高のイノベーターに彼らのプロジェクトの運命を託しました。傍から見れば簡単なことに見えるかもしれませんが、ブロックチェーン業界でこれが出来た有望なプロジェクトがリップルしか存在しなかったのも事実です。
2014年のこと
座談会メンバー:
2015年からILPの標準化作業が始まったとのことですが、GiantGoxさんは2014年からXRPに投資することを決定していますよね? 2014年から既にリップル社の事業が軌道に乗ると予想できた理由は何ですか?
GiantGox:
リップル社は2014年4月にワールド・コミュニティ・グリッドでのXRPの無償配布を終了することを発表し、翌月に共同創業者のジェド・マケーレブがリップルのプロジェクトから撤退することを発表しました。このときリップル社はドイツのフィドール銀行との提携を発表し、更に調べてみると6月に同社が NACHA のメンバーになったことが分かりました。NACHAは、アメリカの小口決済ネットワークであるACH決済システムなどの電子取引分野の運用ルールや業務上のベストプラクティスを策定する非営利団体です。ACHを運営する Fed と TCH は NACHA によって策定された業界ルールに基づき自社独自の内規を策定し、参加者との合意の基にサービスを提供しています。これにより同社が本格的に銀行市場への参入を決定したことが分かりました。その後も同年9月にアメリカのクロスリバー銀行やCBW銀行がリップル社との提携を発表しました。
座談会メンバー:
そんなに早い時期から銀行市場に舵を切っていたのですね。
GiantGox:
判断材料として最も大きかったのは11月のアースポート社とTASグループとの提携です。アースポートのリサーチをしたところ、2013年12月に同社とバンク・オブ・アメリカ・メリルリンチ(BoAML)がFXソリューションとクロスボーダー決済を統合するための戦略的合意を交わしたことが分かりました。1)”Bank of America Merrill Lynch and Earthport Sign Strategic Agreement“, Bank of America Merrill Lynch, 2018年7月16日閲覧。 つまり、BoAMLのクロスボーダー決済システムがアースポート社を通じてリップル社のソリューションを利用することが予想できました。そして、同じ月にTASグループがヨーロッパの TARGET2 と T2S で中核的な役割を担っている同社の TAS Network Gateway にリップルを統合すると発表しました。2)”Real-time cross-border funds settlement for financial service businesses“, TAS Group, 2018年7月16日閲覧。これによりリップル社の銀行市場への参入という目標が絵に描いた餅3)絵に描いた餅:「計画や企画だけは立派だが、実行が伴わない」という意味。実際には食べることができない上手に描かれたお餅から転じて。ではなく現実になることを確信しました。
座談会メンバー:
2014年からそんなに細かいことを把握していたのですか?
GiantGox:
はい。インターネットの匿名掲示板でこれらのリサーチした結果を日本の暗号通貨コミュニティの人達と共有しましたが、ほとんどの人達が拒否反応または否定的な反応を示しました。私と同時期かそれより先にXRPに投資していた数人だけが、このようなリサーチ結果に興味を示してくれました。
座談会メンバー:
その事実が否定された理由は何だったのですか?
GiantGox:
いろいろな人達がいましたが、一つは暗号通貨コミュニティでインフルエンサーとなっている反国家主義・反政府主義を掲げる人達によるものです。彼らは銀行を潰すことが目標だったようで、リップル社が銀行市場に参入すること自体に拒否反応を示していました。また、彼らはそのような形でXRPのような暗号通貨技術に基づいたデジタル資産が世界的に普及することはないと信じていました。
価値のインターネットとXRP
座談会メンバー:
リップル社が提唱している『価値のインターネット』とはどのようなものなのですか?
GiantGox:
リップル社が分散型台帳技術を利用して実現しようとしているのは、私たちがインターネットで電子メールなどを利用して簡単に情報を送っているのと同じように、インターネットで世界中にお金を送れる仕組みを作ることです。
座談会メンバー:
発想はとてもシンプルなのですね。
GiantGox:
彼らがやりたいことは誰でも理解できるシンプルなものです。そしてそれを実現するための分散型台帳技術もリップル社によって既に開発されています。難しいのは現実的な課題をクリアしなければ、それを実現できないことだと思います。
座談会メンバー:
クリアしなければいけない現実的な課題とはどのようなものだと思いますか?
GiantGox:
根本的な問題は、私たちが普段送ったり受け取ったりしているお金が民間銀行により発行されているものだということです。多くの人はお金が中央銀行によって発行されているだけだと思っているのですが、じつは私たちが給料の支払いなどで銀行を通じて受け取っているお金の大半は、信用創造という仕組みを使って民間銀行により発行されているものです。これは私たちが送りたいお金、そして受け取りたいお金が民間銀行によって管理されていることを意味します。ですから、価値のインターネットでお金を送る仕組みを作りたいと言った場合、世界中の民間銀行の協力が不可欠になるということです。そして、そこには法律や規制の問題も立ちはだかります。
座談会メンバー:
それは考えただけでもやっかいな問題ですね。つまりリップル社は価値のインターネットを実現するために、その問題に取り組んでいる会社だということですね。ところで価値のインターネットの中でXRPはどのような役割をするのでしょうか?
GiantGox:
インターネットで情報を送るとき、私たちはパケットに文字や動画などの情報を乗せて送っています。価値のインターネットを実現するためにリップル社が開発している xRapid と呼ばれるXRPを利用する送金システムでは、XRPは価値を運ぶパケットのような役割をします。例えばA取引所とB取引所を通じてお金を送金したい場合、XRPはA取引所とB取引所の間を行き来して価値を運んでくれます。A取引所からB取引所への送金では、XRPはA取引所で買われてB取引所に送られます。だから、私たちはその価値を移動するパケットの役割をするXRPに投資していることになります。
座談会メンバー:
情報を運ぶパケットではなく、価値を運ぶパケットの役割をするのがXRPということですね。でも、なぜXRPの価値(価格)が上がっていくのですか?
GiantGox:
大前提としてXRPの発行数量は有限(1000億XRP)で、総発行量が増えないことがプログラムによって数学的に保証されています。先ほどの説明でXRPがA取引所とB取引所の間を行き来すると説明しましたが、送金経路が増えればXRPは更に多くの取引所間を行き来することになります。これはXRPが送金によって複数の取引所に分散して、1取引所あたりが保有するXRPの数量が減っていくことを意味します。100カ所を行き来するようになれば、1つの取引所が保有できるXRPの数量は単純計算で100分の1になります。これとは逆にA取引所から送金できる送金先が100倍になればXRPの流動性は増加します。同時にB取引所、C取引所などからの送金先も増加するため、送金ネットワークの拡大によってXRPの流動性は指数関数的に増加することになります。その流動性がXRPの価値(価格)を押し上げるわけです。
RippleとXRPの違い
座談会メンバー:
RippleとXRPの違いを教えてください。
GiantGox:
まずXRPについてですが、これは XRP Ledger 内に存在する暗号資産の名称です。XRP Ledger は、ジェド・マケーレブ、デイビッド・シュワルツ、アーサー・ブリットという3人の天才技術者によって開発されたISCライセンスで公開されている無償のオープンソース・ソフトウェアです。そして、リップル(Ripple)というのは主に XRP Ledger を利用する製品・サービスを提供する会社で、私たちはこれを区別するためにリップル社と呼んでいます。
座談会メンバー:
XRP Ledgerは、元々はリップル社によって開発されたものではないのですね?
GiantGox:
はい、リップル社の前身となったオープンコイン社が設立されたのは2012年9月ですが、3人によって XRP Ledger の開発が始まったのは2011年3月頃です。リップル社は、このオープンソースの XRP Ledger を活用するエンタープライズ製品を開発する会社として、クリス・ラーセンとジェド・マケーレブによって設立されました。創業期のメンバーには、デイビッド・シュワルツとアーサー・ブリット以外にもBitcoinJSの開発者としてビットコイン・コミュニティで主導的な役割を果たしていたステファン・トーマスも含まれます。
座談会メンバー:
なるほど。オープンソース・ソフトウェアの XRP Ledger の開発者たちを中心に、それを活用する製品とサービスを提供するために設立された会社がリップル社ということですね。
GiantGox:
このようなオープンソース・ソフトウェアを活用するビジネスモデルは、IT業界ではよくあることです。例えば、同じISCライセンスで開発・公開されている BIND というソフトウェアがあります。多くの皆さんは利用している実感がないと思いますが、BINDはインターネットシステムを構築するためには必要不可欠なソフトウェアです。この開発を主導しているのはUNIXベンダーで、BINDは主にUNIXベンダーが販売しているUNIX上で動作しています。つまり、UNIXベンダーのBIND開発チームが実質的にはオープンソースのBINDの開発を主導しているわけです。これはリップル社のXRP開発チームがオープンソースの XRP Ledger の開発を主導しているのに似ています。
座談会メンバー:
オープンソース・ソフトウェアをビジネスに活用すること自体は、IT業界では一般的なことなのですね。そうした企業がオープン・ソースソフトウェアを利用するメリットとは何なのですか?
GiantGox:
オープンな仕組みを利用する例は、なにも無料のオープンソース・ソフトウェアに限られたことではありません。複数の企業が同じ規格のソフトウェア(または同じソフトウェア)を自社のハードウェアやソフトウェア上で動かしたい場合があります。有名なのは私たちが使っている『PC』と呼ばれるパソコンです。これは以前にも話しましたが、私たちが今利用しているパソコンはもともとIBM PC/ATの規格を採用したPC AT互換機と呼ばれるものでした。パソコンを製造する各社は、自社のハードウェア上で他社と同じソフトウェア(MS-DOSやWindowsなど)を動かしたいためオープンな共通の規格を必要としていました。そこで、パソコン市場で世界的なシェアを獲得していた IBM は、自社のパソコンの規格をオープンなものにし、世界中の企業が自由に使えるようにしました。これはオープンアーキテクチャとして知られています。これにより、私たちはどこのメーカーのパソコンを買ってもマイクロソフトのWindowsやオープンソースのLinuxなどが利用できるようになったわけです。
座談会メンバー:
同じ規格のソフトウェアを複数の企業が使いたい場合に、そのようなオープンな仕組みが利用されるわけですね。
GiantGox:
先ほどのBINDの例で言えば、BINDはUNIXという規格のOS(オペレーティング・システム)の上で動作します。UNIXベンダーは各社がUNIX規格の商用オペレーティング・システムを販売していますから、この共通の規格の上で動くBINDのようなソフトウェアを利用することにメリットがあります。
座談会メンバー:
そのメリットとは何ですか?
GiantGox:
インターネットというのは、企業にとっては様々な商用製品やサービスを提供するためのインフラですから、この仕組みを実現するためのソフトウェアの開発で競合することには意味がありません。そこでインターネットシステムを構築するために使われている商用UNIXを開発・販売する複数のベンダーが、BINDという一つのオープンソース・ソフトウェアの開発で協力体制を作っているわけです。
座談会メンバー:
各社の製品やサービスの提供に不可欠となる共通のインフラを構築するためのソフトウェア開発で協力しているわけですね。
GiantGox:
よく誤解されていることの1つが、RippleNet というのがリップル社1社によって構築されている仕組みだという間違った認識です。RippleNetは複数の金融機関や企業によって構成されるクロスボーダー決済を実現するための共通の決済ネットワーク(インフラ)です。だから、この仕組みを利用したい企業が XRP Ledger という1つのオープンソース・ソフトウェアの開発に取り組んでいるんです。
座談会メンバー:
でも、リップル社がXRPの総発行量の8割を XRP Ledger の創設者から譲渡されて販売していることが批判されていますね。
GiantGox:
その批判は誤解から生じたものだと思いますよ。リップル社は Xpring(スプリング)というイニシアチブを通じてXRPを無償で配布していますから。
座談会メンバー:
え!?無償ということはXRPをタダで配っているということですか?
GiantGox:
はい、タダ(無料)で配っています。XRP Ledger はビットコインなどのようにマイニング(採掘)を行うシステムと違って、システム内部で使われる暗号資産のXRPは、XRP Ledger が創設された時点で総発行量の1000億XRPが全て発行されました。これは XRP Ledger がビットコインで使われているプルーフ・オブ・ワーク(PoW)というアルゴリズムではなく、より効率的な処理を行うために『コンセンサス』と呼ばれる独自のアルゴリズムを採用したためです。そのため、必然的に誰かがXRPの配布の役割を担うことなります。XRP Legerの創設者達からその役割を託されたのが、世界で最初に XRP Ledger を活用する製品・サービスを提供するリップル社だったわけです。
座談会メンバー:
そんな壮大な計画だったんですね。
GiantGox:
ですから、XRP Ledgerを活用する製品やサービスの開発を行っている企業に対しては、Xpringイニシアチブを通じて無償でXRPが配られているんです。Xpringイニシアチブについては、また別の機会に話そうと思います。
2015年のこと
座談会メンバー:
リップル総合まとめの年表を見ると2015年には色々なことがあったみたいですね。2015年はどのような年だったと思いますか?
GiantGox:
2015年はとくに2つの大きな出来事がありました。1つはアメリカの規制当局の動きで、リップル社は5月にFinCEN(金融犯罪取締ネットワーク)から銀行秘密法違反で70万ドルの罰金の支払い命令を受けました。カリフォルニア州も3月に AB 1326 という仮想通貨ライセンスプログラムを発表し、イギリスの財務省も仮想通貨取引に対する規制の実施を発表しました。これは、法的な扱いが不明だった仮想通貨やそれを利用した仮想通貨取引所のようなビジネスに対して、規制当局がなんらかの規制を実施するという最初のメッセージのようなものでした。仮想通貨というのは技術的な細かい話を除けば台帳上の単なる数字ですから、それがポケモンカードのようなモノという扱いなのか、なんらかの既存の法律の規制を受けるものなのかが不明だったわけです。こうした動きによって、リップル社がこのようなビジネスを継続するためには規制当局との十分な話し合いが必要だということが分かってきました。
座談会メンバー:
罰金で70万ドルというのは凄く大きな金額ですね。それでもXRP投資から撤退しようとは思わなかったのですか?
GiantGox:
リップル社はその後も規制当局からの指導に従ってマネーサービス事業(MSB)の登録を行い、積極的な姿勢を見せていたのでそれほど大きな心配はしませんでした。むしろ、2015年の早い段階から資金調達、人事、金融機関とのパートナーシップといった形でリップル社の戦略の具体的な方向性が見えてきていました。その一つは各国の ACH(Automated Clearing House)を相互接続するための送金手順の標準化に取り組む国際団体の IPFA(International Payments Framework Association) にリップル社が3月に加入したことでした。そして、現在リップル社のCEOを務めるブラッド・ガーリングハウスが同社のCOO(最高運営責任者)に就任したり、同社がオーストラリアのシドニーにApacオフィスを開設し、ディリップ・ラオが代表に就任したのも同時期でした。
座談会メンバー:
リップル社の人事はよく話題になりますが、この頃からの取り組みが実っているわけですね。
GiantGox:
リップル社はこの頃からコンプライアンス部門の拡大にとくに力を入れ始め、同社のアドバイザーにはニューヨーク共和党の財政委員会会長を務めたマシュー・メロン氏、DTCC前CEOのドナルド・ドナヒュー氏、ドッド=フランク・ウォール街改革・消費者保護法の成立に重要な役割を果たした元財務省次官補のマイケル・バー氏などの金融の専門家を集めていました。
座談会メンバー:
そのあたりの人事を見ただけでもリップル社が当時から本気でこの事業を成功させようとしていた意気込みが伝わってきますね。
GiantGox:
これは大きな流れになると感じたいくつかの出来事は、まず4月に当時CEOだったクリス・ラーセンが世界最大の国際送金業者の一つであるウェスタン・ユニオンとの協業を明かしたこと、5月に同社がシリーズAで2800万ドルを調達したこと、6月にオーストラリア四大市中銀行のオーストラリア・コモンウェルス銀行、オーストラリア・ニュージーランド銀行、ウエストパック銀行の3行が共同でリップルの実証実験を開始したこと、同じく6月にスコットランド王立銀行がリップルの実証実験を始めたこと、そしてリップル社がFRB(連邦準備制度)が主導していたアメリカの次世代送金システムの標準技術を選定するファスター・ペイメント・タスクフォースに参加したことなどです。そして8月に同社は世界経済フォーラムでテクノロジー・パイオニアに選ばれました。
座談会メンバー:
凄い・・・。その頃の仮想通貨界隈でのXRPの評判はどうでしたか?
GiantGox:
正直そのようなファンダメンタル的なことを議論している人は殆どいませんでしたし、今みたいにツイッターでリップルやXRPに関する情報交換をしている人は誰もおらず、主に2ちゃんねるで細かい値動きなどの情報交換がされていました。2014年末にアースポートとの提携でXRPの価格は3円台に高騰しましたが、2015年3月に日本のXRPの主要な取引所の1つだったリップル・トレード・ジャパンが顧客資産の持ち逃げ事件を起こし、さらにリップル社が5月に FinCEN からの罰金支払い命令を受けたことで、むしろお葬式のようなムードでした。
しかし、実際には前述したような大きなニュースが度々見られるようになっており、私は近いうちに何か大きなことが起こるのではないかと予感するようになっていました。そこで過去に出たそれらのニュースを一覧にして6月頃から2ちゃんねるで共有を始めました。それが『Ripple総合まとめ』の前身です。
座談会メンバー:
確かにそれだけまとまった情報を掴んでいれば何かあるかもしれないと期待するでしょうね。その後はどうなりましたか?
GiantGox:
リップル社は10月にインターレジャー・プロトコル(ILP)という世界中の金融機関の台帳と分散型台帳を接続する革新的な国際送金のためのプロトコルを発表しました。これが2015年の2つ目の大きな出来事です。この発表と同時にリップル社は社名を Ripple Labs, Inc. から現在の Ripple, Inc. へと変更し、W3C(ワールド・ワイド・ウェブ・コンソーシアム)がインターレジャー・ペイメント・コミュニティ・グループを発足、リップル社の エイドリアン・ホープ・ベイリーが議長に就任しました。そして、アクセンチュア、CGI、DHコーポレーション(D+H)、ヴォランテ・テクノロジーズなどが開発するコアバンキングと呼ばれる銀行の基幹システムへのリップルの統合が一斉に発表され、バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチ、ウエストパック銀行、サンタンデール銀行、カナダロイヤル銀行、トロント・ドミニオン銀行などの世界中の主要銀行がリップルの採用と実証実験の開始を発表しました。更に12月にはシンガポール情報通信開発庁(IDA)が主導するプロジェクトでスタンダードチャータード銀行とDBS銀行(シンガポール開発銀行)がリップルの実証実験を開始しました。
座談会メンバー:
つまりGiantGoxさんの予感が当たったわけですね。それで2014年末のようにまたXRPは高騰したんですか?
GiantGox:
いいえ、全くと言って良いほど反応しませんでした。代わりにインターネット上でリップルとXRPに関する大規模な風説の流布が始まりました。「リップル社は送金にILPを使うのでもうXRPは使われない。」とか「銀行は送金にXRPを使わない。」などといったものです。このような風説の流布は2014年から続いていたもので、例えばリップル社がアースポート社と提携した際には「アースポート社はリップルをフォークしたものを使っている。」などという嘘の情報が流されていました。それが各国の金融機関が次々とリップル社との提携を発表するごとに、風説の流布は日に日に悪質なものへと変わっていきました。リップル社の公式サイト上のフォーラムも荒らされてしまい、スレッドが凍結されるほどの被害規模でした。その結果、仮想通貨を取引している人達の多くが「XRPはもう使われないから無価値なのだ。」と認識するようになっていきました。
座談会メンバー:
いったい誰がそんなことをしていたのですか?
GiantGox:
分かりません。2015年当時、日本でリップルやXRPに関する情報交換は主にネット上の匿名掲示板で行われていましたから、誰がそういうことをしているのか全く知ることが出来なかったんです。でも、私は仮想通貨の業界関係者が深く関与しているのではないかと疑っていました。
なぜガチホ投資をするのか
座談会メンバー:
GiantGoxさんはXRPをトレードせずにガチホ4)ガチホ:ガチ(本気)でホールド(保有)し続けること。していますが、トレードをしない理由を教えてもらえますか?
※ガチホ投資とは長期投資のことです。
GiantGox:
いくつか理由はありますが、まず投資の目標をどこに置いているかということが重要です。例えば、「100万円を投資して10倍にしたい」または「100倍にして1億円にしたい」という目標を設定したときに、何をすればそれを確実に実現できるのかということです。私は2014年にXRP投資を始めたときに、XRPは少なくとも100倍~1000倍にはなると考えていました。私の目標としてはXRP投資で資産を100倍~1000倍に出来れば十分だと考えていたため、あえてリスクをとってトレードをする必要はありませんでした。仮想通貨バブルはしばしば2000年代初頭のITバブルと比較されますが、ITバブルのときも有望な投資先、例えばYahoo、Amazon、Appleなどに長期投資していた投資家は数百倍のリターンを得ることが出来ました。もちろん、短期的なトレードを繰り返すことでそれ以上の利益を得た投資家もいましたが、統計的に見てそのような手法で結果を残せた人達はごく一部のプロトレーダーだけでした。逆に言えば、長期投資をすれば誰でも儲けられた相場だったにも関わらず、トレードをしていた殆どの人達が結果を残せなかったということです。
座談会メンバー:
確かに投資で十分な利益を出せるのは市場全体の20%にも満たないとよく言われますね。
GiantGox:
正直なところ2014年~2015年の時点においては、私はメジャーな通貨に長期投資していればどれでも同じようなリターンを得られるだろうと予想していました。実際、当時から一緒に仮想通貨投資をしてきた古参の仲間には、とくにXRPに拘る必要はなく、ETHなどの有望銘柄をガチホしていれば確実にリターンを得られるだろうと話していました。ただ、私は当時からXRPとリップル社のリサーチを始めており、より長期的に有望なのはXRP投資だろうと思っていました。
座談会メンバー:
先ほどトレードにはリスクがあるというお話をされていましたが、トレードで利益を出すことの難しさ以外にはどのようなリスクがあるのですか?
GiantGox:
一番の問題は税金です。株式投資やFX(外国為替証拠金取引)の場合、法律で特例として申告分離課税が認められており、所得税15%、住民税5%などの固定税率が定められていますが、分離課税というのは一部の特例であるため仮想通貨には適用されないだろうということが分かっていました。この場合、仮想通貨取引による所得には総合課税が適用されるため、最大で所得税45%+住民税10%の合計55%が雑所得に対する税金として課税されることになります。仮想通貨はボラティリティが非常に大きいため、ある通貨が100倍になり、もう一つの通貨でさらに100倍の利益を出すことが出来れば1万倍のリターンを得ることが出来ます。しかし、これは逆に短期間で資産を100分の1に減らしてしまうリスクにもなります。つまり、50万円からトレードを始めてある年に1万倍の50億円を利益確定したものの翌年すぐに100分の1に減らしてしまった場合、前年分の税金(25億円以上!)が払えなくなる可能性があります。更に悪いことに、仮想通貨で大きな利益を出して株式投資やFXで逆に大きな損失を出した場合であっても損益通算されず、仮想通貨の利益分だけ課税されてしまうという悲惨なケースも考えられます。
座談会メンバー:
仮想通貨は他の投資と異なり最大税率が非常に高いのですね。そういえば、FXも以前は申告分離課税ではなかったため「億万長者だと思っていたらじつは破産していた」という人達が沢山出たと聞いたことがあります。
GiantGox:
仮想通貨の場合、最大税率55%のリスクはそれだけではありません。XRPのような長期的に有望な通貨を運よく0.5円ほどの安値で100万円分仕込むことができ、利益確定をせずに数百倍になったままホールドし続けていたとしましょう。その場合、含み益は数億円になっています。そこで100万円分だけXRPをトレードして遊んでみたいと考える人がいますが、ここに大きな落とし穴があります。XRPが200円のときに100万円分追加で買った場合、多くの人がその取得単価が200円だと錯覚するのですが、その人が0.5円で最初に100万円分を仕込んでいたとすれば4億円分のXRPを取得単価0.5円で保有しているので、新たに追加購入したXRPの取得単価も計算上1円以下ということになります。それを知らずに100万円で追加購入した分のXRPを売れば、計算上は90%以上が利益になってしまいます。この売買を10回または100回繰り返してしまったら、いったいいくら課税されることになるのでしょうか。実際には仮想通貨の中には数千倍になった銘柄もあり、それらをプログラムで自動売買していて大変なことになったケースもあるようです。ですから、XRPのように長期的にも有望な通貨で大きな含み益を出している場合には、それをあえてトレードするのはあまり現実的ではありません。含み益を抱えてただ待っているのが暇ということであれば、ガチホしていない他の通貨をトレードした方が良いでしょう。
XRP投資の出口戦略について
座談会メンバー:
XRP投資の出口戦略はどのようなものですか? やっぱり海外移住でしょうか?
GiantGox:
ガチホ投資をしている人が税金対策で海外移住をするメリットはほとんど無いと思います。トレードで利益確定を繰り返している人達は毎年巨額の税金を払うことになりますが、ガチホしている人達は利確するまで税金を支払う必要がないからです。
座談会メンバー:
「儲かったから何か買いたい!」という人も結構いるんじゃないですか?
GiantGox:
高級外車やマンションを一括で購入するのでもなければ、XRPを一気売りする必要もないでしょう。実際、リップラーには高級外車を購入している人達もいますが、皆さんローンで購入されていて月々の支払いはそれほど大きなものではありません。おそらく年間100万円もあれば足りてしまうと思います。
座談会メンバー:
確かに冷静に考えてみれば普通に車や家を買う分にはそれで十分かもしれませんね。
GiantGox:
単純計算で195万円以下の雑所得にかかる税金は所得税5%+住民税10%ですから30万円にも満たないです。多くの人は15%程度の税率には納得するでしょうし、195万円を超えても雑所得が330万円以下なら住民税を含めても税率は20%です。他人に贈与する場合は1年間あたり110万円まで贈与税は非課税です。ただし仮想通貨を贈与した場合、贈与時の時価を贈与した側の雑所得の収入に計上する必要があるので注意が必要です。
※贈与については贈与した側が利益確定と見なされる可能性があるので税務署や税理士などの専門家に確認をしてください。
※※2019年12月27日追記:税理士から「みなし譲渡所得課税の課税繰延」が出来ないとの報告が上がっています。
例えば、XRPを100万円贈与した場合、贈与した側が100万円の収入を計上することになります。税率が10%ですと、100万円×10%=10万円の税金が発生します。
売却したわけではないので、日本円は増えませんよね。それでも税金は日本円で払わないといけないわけです!!
資金繰りに注意しましょう。 3/3
— 礒部 雄大@リップラー税理士 (@yudai_isobe) December 24, 2019
座談会メンバー:
なるほど。売らない場合、XRPはどのように運用される予定ですか?
GiantGox:
国内外のいくつかの取引所がXRPのレンディングサービス(貸仮想通貨サービス)を提供しています。このサービスを利用して取引所にXRPを預けておくと、年率5%程度の手数料を受け取ることが出来ます。
座談会メンバー:
そんなサービスがあるんですか!?
GiantGox:
株式の場合は証券会社が貸株サービスというものを提供していて、自身が保有している株式を証券会社に貸して定期的に貸株金利を受け取れるのですが、それの仮想通貨版のようなものです。仮想通貨のレンディングは貸株に比べて利率が高いため、仕込むタイミングさえ間違えなければとても利回りが良い投資先になります。私はXRPに投資を始めた当初から、将来的にこのようなサービスが登場してインカムゲインを得られるようになると予想していました。現在はまだ高額の資産を安心して預けておける取引所が少ないですが、将来的には仮想通貨の先物取引市場やカストディサービスの登場によって安心して仮想通貨を預けておける環境が整うのではないでしょうか。
投資の目標額はいくら?
座談会メンバー:
先ほど「投資の目標をいくらに設定するか」という話がありましたが、現実的にはいくらになったら良いと思いますか?
GiantGox:
1億円になれば十分ではないでしょうか。
座談会メンバー:
え!?それはちょっと少なくないですか?
GiantGox:
1億円ですよ。少ないですか?
座談会メンバー:
だって、首都圏で家を買えば3千万円ぐらいはするでしょうし、それに車を買って子供の学費を払って・・・
GiantGox:
いやいや、それは典型的な失敗パターンじゃないですか。アメリカで一番稼ぐスポーツ選手はアメリカンフットボールの選手で年間数十億円を稼ぐそうです。でも、統計ではアメフトのプロ選手たちの70%が引退後5年以内に破産するそうです。メジャーリーグの選手たちも60%以上が同じように破産するそうです。
座談会メンバー:
えー!そんなにたくさんの選手が破産しているんですか!?
GiantGox:
原因は「稼いだお金を使ってしまうから」という単純なものです。
座談会メンバー:
でも、生活のためには使わないといけませんよね?
GiantGox:
2013年あたりにビットコイン長者がたくさん誕生して、よくテレビで見かけたのは儲かったお金でマンションを一括で買ったとかそういう話でした。
座談会メンバー:
確かにそういう人の話を聞きました。3000万円儲かったから家を買ったとかそういう話だったと思います。だから1億円ではちょっと少ないのかなと思いました。
GiantGox:
簡単な計算ですが、1億円を預けるか不動産などに投資して毎年5%の利回りがあるとします。不動産投資なら平均6~7%の利回りが見込めるはずですが、税金の問題もありますし切りが良い数字なのでここでは5%ということにします。それでも1億円の5%ということは毎年500万円の収入になります。年間500万円ということは10年間で5000万円になりますから、使わないでちゃんと運用していれば10年ローンで5000万円の家を買えるんですよ。
座談会メンバー:
なるほど!20年ローンなら1億円の家が買えますね。そう考えると高額な年俸を受け取っていたプロスポーツ選手たちが破産してしまうケースが逆に異常に感じられますね。
GiantGox:
税金とか金利とか、そういう簡単な計算すらしないでお金を使ってしまうからですね。生活費なんて今どきウーバーイーツ(Uber Eats)などでも簡単に稼げますし、ちゃんと資産運用さえしていれば、それこそ牛丼屋のバイトでも5000万円の家でゆったり暮らすことが出来ますよ。アメリカでロナルド・リードさんというガソリンスタンドの店員や百貨店の清掃の仕事しかしていなかった人が、92歳で亡くなったときに10億円近い遺産を残して家族が驚いたという話があります。彼は働いて稼いだお金を全部使わずに、少しずつ株を買って運用に回していたのですね。
座談会メンバー:
株式の分割や値上がり、それと複利でどんどん増えて行って気付いたら10億円近くに膨らんでいたわけですね。
GiantGox:
はい、『複利』は重要ですね。先ほどは元金1億円で年利5%を受け取るという凄く単純な話でしたが、複利計算をすればもっと上手に運用できることが分かります。試しに複利計算をしてみてください。多くの人が家を30年ローンとかで買うと思いますが、1億円の元手がある人が30年間複利で運用し続けると、複利周期を1年として年利5%でも30年後には資産は4億3千万円を越えます。もっと上手に運用して7%の利回りで運用すれば7億6千万円以上になります。つまり、元金5000万円でも上手に運用すれば30年後には3億8千万円にはなるので、それなりの家を買ってゆったりとした生活をすることは出来るということです。
座談会メンバー:
いやぁ、儲かったらランボルギーニを買うことしか考えていませんでした。
GiantGox:
5000万円のランボルギーニを買っても利回りはありませんよね。でも、利回り5%以上の5000万円の不動産を一括で買って貸せば、少なくとも年間250万円の利益が出ます。その利益で、購入した不動産を担保にもう一軒の不動産をローンで購入すれば、5000万円の元手で1億円分の不動産を手に入れることが出来ます。2件分の不動産収入は500万円以上になりますから、短期間でローンの返済ができます。不動産投資に限らず、このような資産運用を繰り返せば、お金がお金を稼いでくれるようになります。
2016年のこと
座談会メンバー:
2016年はどのような年でしたか?
GiantGox:
2016年は良い意味でも悪い意味でもXRPが1円以下の価格帯に留まる最後の年になりました。
座談会メンバー:
XRPの価格が1円以下に停滞した原因は何だったのでしょうか?
GiantGox:
一つはリップル社が RippleTrade と呼ばれるXRPのウォレット兼取引ツールの公開を3月に停止したことです。これは前年にリップル社が規制当局から指導を受けたことが影響しており、取引ツールを同社から提供し続けることが事実上、不可能となったからです。RippleTrade は、もともと XRP Ledger を活用するためのウェブウォレットのリファレンス実装としてリップル社がウェブ上で公開していたものですが、アメリカの規制当局が2015年5月から仮想通貨取引業者の監査を開始したことから規制に引っかかったようです。これによりリップル社から提供されていた全てのウォレットプログラムの配布が停止されることになりました。RippleTrade の停止後は任意で GateHub という取引所にアカウントを移行することが出来ましたが、取引ツールが日本語に対応していなかったことと、日本円の入出金に国内の別の業者を利用しなくてはならず使いにくかったことから、日本のユーザーには定着しませんでした。
座談会メンバー:
XRPの取引自体が一般の利用者にとってはハードルの高いものになってしまったわけですね。
GiantGox:
はい。でも、このとき私にとって重要だったのはXRPの取引が難しくなったということではなく、銀行市場に参入したリップル社の事業が計画通りに進んでいるかどうかを知ることでした。国内の取引所の問題は他の業者が参入することでいずれ解決することが予想できたからです。
座談会メンバー:
具体的にはどのような進捗があったのですか?
GiantGox:
2016年は世界中のメジャーな銀行がリップルの実証実験を開始を発表しました。具体的には、バンク・オブ・アメリカ(アメリカ)、スタンダードチャータード銀行(イギリス)、シンガポール開発銀行(シンガポール)の3行が2月に、そしてATBフィナンシャル(カナダ)、サンタンデール銀行(スペイン)、ウニクレーディト・イタリアーノ(イタリア)、UBS(スイス)、ライゼバンク(ドイツ)、カナダ帝国商業銀行(カナダ)、アブダビ国立銀行(アラブ首長国連邦)の7行が6月にリップルの共同実証実験を発表しました。そして11月にはシンガポールの中央銀行であるシンガポール金融管理局が主導する国際送金実験のプロジェクトにバンク・オブ・アメリカ・メリルリンチ(アメリカ)、三菱東京UFJ銀行(日本)、クレディ・スイス(スイス)、シンガポール開発銀行(シンガポール)、HSBC(イギリス)、JPモルガン(アメリカ)、オーバーシー・チャイニーズ銀行(シンガポール)、ユナイテッド・オーバーシーズ銀行(シンガポール)などが参加することが発表され、SBIホールディングスの北尾社長が同プロジェクトにリップルが利用されるとツイッターでコメントしたことから様々な憶測が流れました。また、9月にはGPSG(Global Payments Steering Group)と呼ばれるリップルを利用する世界初のインターバンク・グループが、バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチ、カナダロイヤル銀行、サンタンデール銀行、スタンダードチャータード銀行、ウニクレーディト・イタリアーノ、ウエストパック銀行の6行により設立され、DTCCの元CEOでリップル社のアドバイザーを務めるドナルド・ドナヒュー氏が会長に就任しました。そして、同じく11月にカナダ帝国商業銀行も同グループへの参加を表明しました。その他にも11月にスカンジナビスカ・エンスキルダ銀行がリップルの採用を発表し、銀行以外では6月に国際送金業者の MoneyGram がリップルの利用でアースポート社との提携を発表しました。
座談会メンバー:
2016年には各国の四大銀行やバンク・オブ・アメリカ・メリルリンチ、UBS(旧スイス銀行)、クレディ・スイスなどのバルジ・ブラケットと呼ばれる国際的な大手金融機関までもがリップルに取り組み始めていたことが分かりますね。
GiantGox:
もう一つの大きな出来事は、1月にSBIホールディングスがリップル社の発行済み株式の17%を取得し、5月に両社が出資する合弁会社の SBI Ripple Asia が設立されたことです。SBIホールディングスと SBI Ripple Asia は10月にリップルを活用する『内外為替一元化コンソーシアム』を発足し、みずほフィナンシャルグループ、三井住友信託銀行、りそな銀行、新生銀行、イオン銀行、千葉銀行、広島銀行を含む邦銀42行がこのコンソーシアムに参加することが発表されました。
座談会メンバー:
日本の金融機関にも大きな動きがあったのですね。それにしてもコンソーシアムの発足時に42行が一斉に参加したとは驚きです。Ripple総合まとめの年表を見ると他にも沢山の出来事が記されていますが、他にはどのような動きがあったのでしょうか?
GiantGox:
2015年にリップルの採用を発表していた CGI やヴォランテ・テクノロジーズに続き、Expertus、デロイト、Temenos などが開発するコアバンキング(勘定系システム)へもリップルが統合されることが発表されました。11月にはリップル社のクリス・ラーセンが CEO(最高経営責任者)を退任して2017年1月から取締役会長に就任し、後任として2015年4月から同社の COO(最高運営責任者)を務めてきたブラッド・ガーリングハウスが CEO に就任することが発表されました。この時点で、銀行市場に参入したリップル社の事業が完全に軌道に乗ったことを確信しました。そして、リップル社は6月にXRPの販売・管理に関してニューヨーク州金融サービス局(NYDFS)からビットライセンスを取得し、日本でも5月に仮想通貨の規制が盛り込まれた改正資金決済法が参院本会議で可決されたことから、XRPのようなデジタル資産を取り扱うための法的な環境も整いつつあることが分かりました。更に11月に仮想通貨取引所のコインチェックがXRPの取り扱いを開始したことで、日本国内でのXRPの取引環境に関する問題は解消しました。
座談会メンバー:
年初に懸念されたXRPの取引環境の問題がいずれ解決するというGiantGoxさんの読みが当たったわけですね。でも、クリス・ラーセン氏がリップル社の CEO を退任することに関して悲観する人もいたのではないですか?
GiantGox:
これにはリップル社の事業の好調さを裏付ける興味深い事情がありました。先ほど、リップル社がSBIグループと共同でアジア地域を管轄する SBI Ripple Asia を日本に設立したことをお話ししましたが、3月にはイギリスのロンドンに、そして6月にはユーロ圏の金融センターとして知られるルクセンブルクにもオフィスが設立されました。これによりリップル社は本社があるアメリカのサンフランシスコとニューヨーク以外に、オセアニア地域を管轄するシドニー(オーストラリア)、アジアを管轄する日本、ヨーロッパを管轄するロンドン(イギリス)、欧州連合の金融関連機関が集中するルクセンブルクにそれぞれの地域の本部を持つことになりました。クリス・ラーセンは CEO を退く理由を、7才と9才になる2人の子供とより長い時間を過ごしたいけれども、多国籍企業となったリップル社の CEO としてそれを両立することが難しいからだと説明しました。私がXRPに投資を始めた頃は、リップル社は従業員30人程度の小さな会社でしたが、クリス・ラーセンはこの短期間に同社を世界中の金融機関を顧客に持つ多国籍企業に成長させたことになります。
座談会メンバー:
これだけの材料が出ながらまだXRPの価格が上がらなかったのは何故なのでしょうか?
GiantGox:
2016年頃は仮想通貨に関する情報交換は主に2ちゃんねる(インターネットの匿名掲示板)を中心に行われていました。XRPを購入する人達も2ちゃんねるの『Ripple総合』というスレッドで質問や情報交換を行っていました。しかし、反社会的な活動をしている人達による風説の流布が日に日に酷くなり、この頃になると荒らしを目的とした投稿が多すぎて掲示板上で正しい情報交換を行うことが事実上、不可能になっていました。そこで私は2ちゃんねるでの情報交換を諦め、ツイッターで仲間たちと情報共有を始めることにしました。最初は5人ほどで『リップラー座談会』というプライベートのグループを作り、6月頃にはメンバーが10人ほどに増えていました。
座談会メンバー:
リップラー座談会でのGiantGoxさんの役割のようなものはあったのですか?
GiantGox:
座談会ではメンバーが主にここで話したような情報を持ち寄って、技術や投資などに関する話をしていました。私は現役のエンジニアではありませんから、ブロックチェーンや分散型台帳技術に関する専門的な話は出来ませんでした。代わりに私は皆が持ち寄った情報を収集・分析して、技術とは別の観点から個人的な考察や予想を皆に伝えていました。そのような活動をしている中でメンバーの一人から私が収集・分析している情報をブログにまとめて欲しいという要望があったため、それまで2ちゃんねるのWikiに書き留めていた一部の情報とあわせて『Ripple総合まとめ』というブログにまとめました。6月末から書き始めて、おおよそ1週間程度で現在のブログの原型が出来上がっていたと思います。
座談会メンバー:
なるほど。『Ripple総合まとめ』というのは、2ちゃんねるのRipple総合スレッドのまとめという意味だったのですね。
GiantGox:
正確にはRipple総合スレッドからの避難民が作ったまとめですけどね。(笑)
XRPの分配について
座談会メンバー:
リップル社は2018年8月1日現在、約600億XRPを保有しています。XRPを否定する人達の中にはXRPの分配の偏りを指摘する人がいますが、それらの意見についてはどう思いますか?
GiantGox:
これは本当に馬鹿げた話です。私が知る限りリップル社は2014年から2017年初頭にかけて、かなりの長期間に渡ってXRPをタダ同然で直接販売してきました。ですから3年間もの間、誰もが公平に単価1円以下でXRPを手に入れることが可能だったわけです。しかし、XRPは中央集権的にコントロール可能で価値が無いという大規模な風説が組織的に流されたことで、多くの人がXRPを購入することに消極的になりました。つまり、XRPの分配に偏りを生じさせた最大の原因はXRPを貶している人達が流した風説なのです。
座談会メンバー:
それは酷い。公平な分配が出来ないように邪魔をしていたわけですね。
GiantGox:
しかし、リップル社はXRPの分配の問題を解決するために、2018年5月に Xpring(スプリング)と呼ばれるイニシアチブを立ち上げました。イニシアチブに参加してXRPを活用するスタートアップは、無償でXRPによる出資を受けることが出来ます。イニシアチブ設立に先立ち、オンデマンド貸し倉庫サービスを手掛ける Omni やブロックチェーン・キャピタル傘下のベンチャーファンドがリップル社や同社の共同創業者等から2500万ドル相当のXRPによる出資を受けました。その他にもSBプロジェクトの創始者でジャスティン・ビーバーのマネージャーとして知られるスクーター・ブラウンへの出資も発表されています。また、リップル社はXRPの分配により得た収益を慈善団体を通じて世界中の貧困に苦しむ人々に寄付する活動を行っています。例えば2018年5月には、映画『スティーブ・ジョブズ』でスティーブ・ジョブズを演じた俳優で投資家としても有名なアシュトン・カッチャー氏との協力のもと、アメリカの国民的な人気トーク番組『The Ellen Show』(日本の徹子の部屋のような番組)の放送中に同番組を主催するエレン・デジェネレスが運営する自然保護基金にリップルで400万ドルが寄付されました。同年6月には、リップル社はユニバーシティ・ブロックチェーン・リサーチ・イニシアチブを設立し、世界トップ17の大学に5000万ドルを寄付しました。
座談会メンバー:
XRPを無償で配布するだけでなく、販売による利益も慈善団体に寄付しているわけですね。それにしても凄い金額です。
GiantGox:
このような慈善団体との協力を通じた同社の活動は Xpringイニシアチブが発足した2018年に突発的に始まったものではなく、同社は2017年10月に発展途上国の銀行口座を持てない貧困層を支援するためのモバイル決済プラットフォーム『Mojaloop』の開発でビル&メリンダ・ゲイツ財団と提携することを発表していました。また、2018年7月にはポップスの女王として知られる歌手のマドンナさんが、アフリカ・マラウイ共和国の孤児のための基金を募るためにリップル社との提携を発表しています。このようにXRPの分配による利益がそれに携わる当事者だけではなく、世界中の貧困層に分配される仕組み作りがリップル社を中心に行われています。
座談会メンバー:
リップル社がXRPを一度に大量に売ることで価格が暴落すると指摘する人達もいますが、それについてはどう思われますか?
GiantGox:
XRPに投資を始めた当初から毎月配布されるXRPの数量を記録し続けていますが、リップル社が説明している通り価格に影響を与えるような大量のXRPが一度に配布されたことはありません。具体的には、一月あたりのXRPの平均配布数量は2014年が約3億9千万XRP、2015年が約1億6千8百万XRP、2016年が約2億XRP、2017年が約2億2千万XRPで、高騰後の2018年は6月末時点で平均約4千3百万XRPです。4千万XRPと聞くと多いように感じますが、10万XRPをホールドする人が世界中で400人と考えればそれほど大きな数字でないことは分かると思います。また、リップル社は暗号エスクローという機能を使い全発行数量の半数以上のXRPをプログラム的にロックアップし、同社が1ヶ月間に取り扱えるXRPの数量に制限をかけています。
座談会メンバー:
それではリップル社から売却されるXRPが市場価格に大きな影響を与えることは考えにくいわけですね。
GiantGox:
リップル社CTOのデイビッド・シュワルツはツイッターで
「非現実的なほど悪い仮定に基づいて私が簡単な計算をしたところ、リップル社によるXRPの配布速度は一月あたり0.2セント以下の価格を押し下げます。」
と言っています。
座談会メンバー:
リップル社によってXRPの公平な分配の仕組み作りが行われていることがよく分かりました。
ビットコインの中央集権化
座談会メンバー:
GiantGoxさんは以前からビットコインには問題があるとおっしゃっていましたね。それはどのような問題なのですか?
GiantGox:
ビットコインのもともとのコンセプトでは、本来はビットコインというのは買って使うものではなく、PoW(プルーフ・オブ・ワーク)という仕組みを使ってネットワークに参加するメンバーに平等にBTCが無償で分配されるというものです。リップル社がXRPの分配を販売という方法で行っていることが批判される理由がそこにあります。
座談会メンバー:
なるほど。でも、現実を見る限り、ビットコインは無償で平等には分配されていませんよね。これはどういうことなのでしょうか?
GiantGox:
ビットコインのマイニング(採掘)が一部の人達によって中央集権的に行われるようになってしまったのがその原因ですね。
座談会メンバー:
ビットコインはPoWを採用しているのでネットワーク参加者が平等にマイニングができるというのが先ほどのお話でしたが、それがなぜ中央集権的に出来てしまうのですか?
GiantGox:
それにはビットコインのマイニングに利用されているある特許が関係しています。
座談会メンバー:
特許!? 特許とはどういうことでしょうか。ビットコインはオープンな仕組みなので、ここで『特許』という言葉が出てくるのは物凄く違和感があります。それはどのような特許なのですか?
GiantGox:
ASICBoost(エイシック・ブースト)という手法を利用したものです。ASICBoostは、ティモ・ハンケとセルジオ・デミアン・レナーによって考案されたとされるビットコインの仕組みの脆弱性を利用してマイニングを約20%高速化する技術です。これを利用したマイニングはチートマイニング(いかさま採掘)とも呼ばれています。そして、ここに中国人が関与してきます。
座談会メンバー:
ここまでのお話を聞いて凄く悪い予感がするのですが、もしかして・・・。
GiantGox:
はい、その「もしかして」です。ジハン・ウーという中国人が創業したBitmain社が、考案者の承諾なくこれを同社の特許として取得してしまったのです。Bitmain社は世界最大のビットコインのマイナーで、ハッシュレートの大部分をこのBitmain社の子会社である BTC.com と AntPool が占有しています。
座談会メンバー:
それでもBitmain社が占有するハッシュレートはネットワーク全体の半分には届きませんよね?
GiantGox:
ところがビットコインコア開発者のグレゴリー・マクスウェルが同社が開発・販売する Antminer と呼ばれるASIC(マイニング専用のチップ)をリバースエンジニアリングしたところ、Antminerがこの技術を用いてビットコインのマイニングの計算を高速化していることが発覚しました。Antminerは、Bitmain社傘下のマイナーが利用しているだけではなく、ビットコインマイニング用のASICの世界市場の70%以上を独占しています。
座談会メンバー:
つまりビットコインのマイニングの70%が同社のAntminerと特許技術を使用して行われていることになりますね。それは完全なマイニングの中央集権化だと思うのですが、Bitmain社や同社の製品を採用するマイナーが独占的にビットコインをマイニングしているわけですから、多くの人はそれに反対しないのでしょうか? GiantGoxさんがおっしゃったように、誰もが非中央集権的な仕組みで無償でビットコインを手に入れられるのが本来のビットコインのコンセプトであり魅力なのですよね。マイニングが中央集権化してしまえば、マイニングを独占する人達からビットコインを買うという選択肢しかなくなってしまいますよね。
GiantGox:
う~ん、それが実はそうでもないのです。個人でも彼らの中央主権的なマイニングに参加する仕組みがあるんです。
座談会メンバー:
それはどういうことですか???
GiantGox:
先ほど、Bitmain傘下には BTC.com と AntPool という2つのマイナーが存在すると言いましたよね。BTC.comはBitmain社が独自に(自分だけで)ビットコインのマイニングを行う会社です。しかし、AntPoolというは、いわゆるマニングプールと呼ばれるものです。マイニングプールとは、複数のマイナーが結託してマイニングを行い報酬を分配する仕組みです。つまり、皆でお金を出し合って設備投資を行い電気代を負担することで疑似的に高いハッシュレートを有する1つのマイナーを作るわけです。そうすることで資金力が無い個人でも独占的なマイニングに参加することができるようになります。そして、そのAntPoolに参加するにはBitmain社が販売するAntminerを購入する必要があるわけです。
座談会メンバー:
・・・。
GiantGox:
だから、Bitmain社からAntminerを購入して中国人と一緒に独占的にビットコインを採掘して販売している人達はこの状態を維持したいわけです。だからビットコインには電気代の価値がある、、、というわけです。
座談会メンバー:
もし本当にそんな中央集権的なマイニングの仕組みに参加している人達が「ビットコインは非中央集権」などと、何も知らない一般の人達に説明しているのであれば誠実とは言えないですね。
GiantGox:
チートマイニングができないようにビットコインが修正されない理由もここにあります。チートマイニングをしている人達がビットコインのネットワークを支配しているのでアップデートしようにも出来ないわけです。とにかく、このPoWを利用した『マイニング』と呼ばれる仕組みでは、このような寡占化が起こってしまうことが明らかになり、コンセンサス(Consensus)という別のやり方で生み出された暗号資産がXRPというわけです。
座談会メンバー:
結局、こういう問題が明るみになってしまったら困る人達がいるわけですね。それでチートマイニングを行っている自分達に矛先が向かないように、ガス抜きとしてXRPを批判する(批判させる)ように誘導しているわけですね。
GiantGox:
但し、ASICBoostの仕組みを使ってマイニングを行うことや特許を取得することを一概に悪いと言えるかどうかは微妙なところですね。それらが法律やビットコインのルールに則って行われているのであれば、もはやビットコインというのはそういう(中央集権的な)ものだと認めるしかないからです。例えそれがサトシ・ナカモトが提唱したビットコインの当初のコンセプトに反するものであってもです。
座談会メンバー:
端的に言えば、ビットコインのやり方は失敗してしまったということなのでしょうね。
2017年のこと
座談会メンバー:
2017年はXRPが年末に400円を超えたことでも大きな話題になった年ですが、GiantGoxさんにとってはどのような年でしたか?
GiantGox:
この年は、リップル社のエンタープライズ製品の実用化が始まった印象的な年でした。まず、3月に SBIグループとリップル社の合弁会社である SBI Ripple Asia が主導する『内外為替一元化コンソーシアム』が、Ripple を統合した外国為替と内国為替を一元的に扱う決済プラットフォームの『RCクラウド』の構築完了と実証実験を実施したことを発表しました。更に同コンソーシアムは4月に仮想通貨を利用した送金実験の開始を発表し、6月にはSBIグループ傘下の国際送金サービスを提供するSBIレミットが日本とタイとの間でリップルを利用した国際送金を開始しました。そして7月までに三菱UFJ銀行、ゆうちょ銀行、三井住友銀行、スルガ銀行、東京スター銀行、三菱UFJ信託銀行、商工組合中央金庫、農林中央金庫などが『内外為替一元化コンソーシアム』に参加し、同コンソーシアムの参加銀行は60行を超えました。
座談会メンバー:
2016年10月にコンソーシアムを発足してから翌年6月までに国際送金での実用化まで行われていたとは驚きですね。
GiantGox:
これらのニュースの一部は新聞やテレビなどでも報道され、5月までにXRPの最高値は45円にまで達しました。そして、リップル社は8月に xCurrent、xRapid、xVia と名付けられた ILP を統合するエンタープライズ製品のラインナップを発表し、これらの製品を統合して構築された国際送金ネットワークを RippleNet と名付けました。xCurrent は既存の銀行間送金の仕組みに ILP を統合して効率的な国際送金を実現する製品で、xRapid はデジタル資産のXRPを利用することで更なる送金の効率化を実現する製品です。xVia はこれら2つの製品によって構成された RippleNet に、国際送金をしたい事業会社、送金業者、銀行などが接続するためのスタンダードな API を提供する製品です。リップル社の試算によれば、金融機関は国際送金にかかるコストを xCurrent を利用することで30%、そして xRapid を利用することで最大60%削減することが可能になります。
座談会メンバー:
最大60%ですか? 国際送金市場の規模を考えると年間数兆円のコストがリップルで削減できることになりますね。
GiantGox:
9月には韓国のデイリーフィナンシャル グループが SBI Ripple Asia と提携し、日本と韓国間での仮想通貨を利用した国際送金実験を開始することを発表し、10月にはアメリカとメキシコで事業を展開する非銀行金融サービス機関の Cuallix が、アメリカとメキシコ間でXRPを利用した実送金のパイロットを開始しました。さらに11月にはシンガポールのスタンダード・チャータード銀行、インドのアクシス銀行、アラブ首長国連邦(UAE)の RAKBANK との間で RippleNet を利用した国際送金が開始され、12月には『内外為替一元化コンソーシアム』の参加銀行と韓国のウリィ銀行、新韓銀行が RippleNet を利用した国際送金のパイロットを開始しました。
座談会メンバー:
2017年10月にはXRPを使った実送金まで始まっていたのですね。
GiantGox:
リップル社は10月に『SWELL』と呼ばれる RippleNet を利用する世界中の金融機関が集まる最初のカンファレンスも開催しました。世界中の銀行が SBI Ripple Asia やリップル社との提携を発表し、11月には RippleNet の参加行が100行を超えたことがリップル社から発表されました。そして、12月15日に放送されたBSジャパンの『日経モーニングプラス』で、SBI Ripple Asiaの沖田社長によってリップルが統合された銀行のスマホアプリを使った送金のデモンストレーションが行われました。この放送の翌日からXRPの価格が徐々に上がり始め、12月27日にリップル社CEOのブラッド・ガーリングハウスが CNBC とブルームバーグの生放送に出演してXRPについての同社の戦略を語ったことで、年末までに XRP価格は280円を超えました。
座談会メンバー:
なるほど。送金アプリのデモンストレーションやリップル社CEOのテレビ出演といった複数のファンダメンタル的な要因が12月後半に重なったことが、2017年末のXRP価格の高騰を招いたわけですね。
GiantGox:
はい。この年のXRP価格の暴騰には、XRPを上場していた仮想通貨取引所のコインチェックが、12月から人気お笑い芸人の出川哲朗さんを起用したテレビCMの放映を開始したことも大きく関係していたと思います。また、4月に改正資金決済法が施行されたことで仮想通貨の法的な扱いが明確になっていたことも一つの要因だったと思います。そういう意味では、2017年は仮想通貨が合法化された年だったとも言えるかもしれません。そしてこの年、リップル社はムンバイ(インド)とシンガポールにも新たにオフィスを開設しました。
座談会メンバー:
年表には中央銀行のことについても記載がありますね?
GiantGox:
イングランド銀行は3月にグローバルRTGS向けのブロックチェーンの実証実験にリップルを採用することを発表し、7月にリップル社との共同実験の結果と次世代RTGSの計画概要を発表しました。リップル社は2016年1月に開催されたイングランド銀行が主催するRTGSイニシアチブの発足を祝う晩餐会にも出席しており、個人的にはその頃からイギリスの中央銀行と協業を始めていたのではないかと予想していました。また、11月にはリップル社が世界の24ヵ国を超える中央銀行が参加する中央銀行サミットを開催したことが IMF(国際通貨基金)とリップル社から発表されました。一方で、これらは2017年のXRP価格の動きとはまったく関係がなかったと感じています。
座談会メンバー:
これほど大きなニュースがXRP価格の動きとはまったく関係がないのですか? むしろ2017年で一番大きなニュースだったのではないですか?
GiantGox:
数年間、毎日XRPという一つの銘柄に張り付いて調べ続けてきたことで、相場の動きに関して一つだけはっきり分かったことがあります。それは、どんなに大きなニュースであろうと新聞やテレビなどに取り上げられなければ価格には殆ど影響しないということです。実際、中央銀行サミットに関するニュースが流れたときにもXRP価格は微動だにしませんでした。新聞・テレビが価格に大きく影響するというのは株式投資などでは一般的に知られていることですが、これは仮想通貨投資に関しても同じことのようです。逆に言えば、大きな材料があってもテレビや新聞にまったく取り上げられない有望な仮想通貨に今から投資しておけば、将来的に大きなリターンを得られるチャンスがあるということかもしれません。
xRapidの仕組み
座談会メンバー:
送金にXRPを利用するという xRapid の仕組みについて、リップル社からはまだ詳細な情報が出ていません。仮想通貨に投資する人の中には xRapid が利用されるようになってもXRPの価格は上がらないと言っている人達もいます。xRapid ではXRPを使ってどのように送金が行われるのでしょうか?
GiantGox:
基本的な仕組みはとても単純です。例えば銀行が1000万円を送る場合、取引所で1000万円分のXRPが買われて送られるだけです。
座談会メンバー:
えーっ!?それだけですか???
GiantGox:
はい、基本的にはそういうことです。もう少し詳しい説明が必要な場合は、金融庁の公式サイトで『Ripple: Enabling the Internet of Value』というリップル社の公式ドキュメントが公開されているので、そちらの16ページで xRapid とXRPを利用した国際送金の流れが解説されています。
座談会メンバー:
なるほど、この図はとても分かり易いですね。
GiantGox:
この説明では、送金者と受取人は xRapid を介してお金のやり取りをします。内部的には送金は次の3つのステップで行われます。
- 金融機関の法定通貨がXRPに両替される
- デジタル資産の取引所間でXRPが送付される
- XRPが受取人側の法定通貨に両替される
座談会メンバー:
驚くほどシンプルですね。多くの人がXRPはごく少額の手数料にしか使われないので価格が上がらないと思っているようですが、この仕組みなら流動性が上がればXRPの価格が上がるという理屈が分かります。
GiantGox:
風説の流布によって「XRPの価格が上がらない仕組み」という先入観を植え付けられてしまったため、多くの人が逆説的に「上がらないのだから、きっとこういう仕組みなんだ。」という誤解を抱いてしまっているようです。本来であれば仕組みを知ることが先で、その仕組みを知ればXRPの流動性が価格に影響を与えることが理解できます。
座談会メンバー:
なるほど。「上がらない」という結論を先に出してしまっているために本来の仕組みを知ることが出来ないわけですね。
GiantGox:
他にも「XRPは買われて売られるからプラマイゼロで上がらない」なんていう話もありますね。
座談会メンバー:
でも、どうしてこんなに簡単な仕組みなのに「XRPは買われて売られるからプラマイゼロ」なんて話を信じてしまうのでしょうか。
GiantGox:
あれは典型的な『アキレスと亀』の論法を利用した話術なんですよ。
座談会メンバー:
『アキレスと亀』というのはどういう話なのですか?
GiantGox:
足の速いアキレスと亀が競争する話です。ハンデとして、アキレスは亀より後方からスタートします。アキレスが亀のスタート位置まで走る間に、亀は数メートル先に進んでいます。 その亀の位置までアキレスが走る間に、亀はさらに前へ進んでいます。これを繰り返すので、アキレスは亀に永遠に追いつけないという話です。
座談会メンバー:
そんな馬鹿馬鹿しい話は誰も信じませんよね。だって1秒間にアキレスと亀がそれぞれ進む距離を考えたら、あっという間にアキレスが亀を追い抜くことは明白じゃないですか。
GiantGox:
そうなんですが、この話に騙されてしまう人がいるんです。騙されてしまう人は、その”1秒間に”という大事な要素が抜けていることに気付かないんです。もっとも、『アキレスと亀』の話は一般的な”かけっこ”の話なので流石に騙される大人は殆どいませんが、実際にはいろいろな詐欺でこうした論法が使われて多くの人が騙されてしまうんです。
座談会メンバー:
リップルに関する風説を流している人達もその論法を利用しているのですね。
GiantGox:
彼らはA取引所からB取引所へのたった一つだけの一方通行の送金の話を持ち出して、XRPは買われても売られてしまうからプラスマイナスゼロで上がらない仕組みだと言っているんです。
座談会メンバー:
それは本当に馬鹿げた話ですね。
GiantGox:
実際には送金は双方向からされますし、XRPが1秒間に1500回以上の取引が出来るように設計されていることを考えれば、1秒間の送金回数がたったの1回という前提だっておかしいと気付きます。実送金を考えた場合XRPの性能はそれでもまだ足りないので、オフレジャー技術を使って1秒間に5万回の取引が出来るように設計されているんです。
座談会メンバー:
1秒間に5万回ですか! 世界各国からの国際送金の需要を考えたらそれぐらいの性能が必要なのですね。
GiantGox:
現在のVISAネットワークが繁忙期に秒間1万回の取引を処理しているそうです。そこまで大きな話ではなくても、両方向からそれぞれ100万円の送金が1秒間にたった10回発生しただけでも、両方向から1000万円分のXRPが買われることになります。まあ、この話にしたって送金先がA取引所とB取引所のたった2つしか存在しないという現実にはあり得ない前提なので、送金先が仮に100カ所に増えれば送金ボリューム自体も100倍に増えることになるのですけどね。
座談会メンバー:
国際送金の仕組みは複雑なので、そういう怪しい話に引っかかってしまう人も多いのですね。
GiantGox:
リップル社が各国の規制当局との話し合いなどを通じてデジタル資産の実用化への取り組みを進めていますが、このような形で多くの人の知る機会が失われてしまうのは本当に残念です。
Ripple総合まとめを書き続ける理由
座談会メンバー:
以前に伺った話では、Ripple総合まとめは2016年の6月頃に座談会メンバーと情報共有のために始めたということでしたね?
GiantGox:
そうですね。主に私が集めていたリップル社の動向や投資のために必要となる最低限の技術的な情報をまとめました。
座談会メンバー:
客観的に見ても、Ripple総合まとめには既に十分過ぎるほどの情報がまとめられていると思います。
GiantGox:
確かに当初私が作った10人から20人程度が参加する座談会の仲間が参照するには十分な情報が集まったと思います。これは一緒に情報収集をしてくれた皆さんの協力があってこそ出来たことです。これを見れば、リップルとXRPに関して過去から現在に至るまでの経緯も把握できます。そして、2017年以降は世界各国の主要なメディアがリップルのニュースを大々的に報道するようになりましたから、これまでのように私たちが自力で情報を集める必要もなくなりました。それで座談会のメンバーも一度解散して、2017年になってからは個人での情報発信をやめる人達もいました。
座談会メンバー:
ゴックスさんは何故それ以降もRipple総合まとめで情報発信を続けたのですか?
GiantGox:
2017年の初め頃に旧座談会のメンバーの一人からある相談を受けたんです。その方は末期癌を患っていて医師から余命宣告を受けられたそうです。
座談会メンバー:
投資をしている人達にもいろいろな方がいらっしゃるのですね。
GiantGox:
それで、その方が自分が生きているうちに奥さんと子供に何とかして資産を残したいのだけど、XRPはそれまでに上がると思うかと私に聞かれました。
座談会メンバー:
それでゴックスさんは何と答えたのですか?
GiantGox:
「きっと上がると思う」と言いました。もちろん投資は自己責任なのですが、それからXRP投資に関して私には道徳的な一定の責任があると考えるようになりました。
座談会メンバー:
2017年初め頃と言うとXRPの価格は0.5円まで低迷して本当に大変な時期だったのではないでしょうか。
GiantGox:
大変でしたね。とくに価格低迷の原因が業界関係者が結託して流している風説に起因するものだったので、私はそれと徹底的に戦うことにしました。個人が発信する情報でどれだけのことが出来るかは分かりませんでしたが、流されている風説が嘘である証拠を一つ一つ突きつければ、それを信じていた人達も彼らの流す情報に少なからず疑問を持ち始めるだろうと思いました。
座談会メンバー:
新聞や雑誌から情報を得られない時期に証拠を積み上げる作業は大変だったのではないでしょうか。
GiantGox:
リップルとXRPの情報を共有しているのは我々ぐらいしかいませんでしたし、当時の状況では私が一人でやるしかありませんでした。そもそも仮想通貨業界自体がとても小さな業界で、彼らを敵に回すこと自体がリスクでしたから誰かが協力してくれることも期待できませんでした。取引所の関係者ですら、そういう犯罪行為に手を染めている連中とヘラヘラして付き合っている状況でしたが、幸運にも2017年の3月末からXRPは予想通りに高騰してくれました。それで一緒にXRP投資をしていた病気の方からは「安心した」というお礼の連絡を頂きました。
座談会メンバー:
本当に良かったですね。そうした活動のおかげで、最近は徐々にリップルとXRPに関する誤解が解けてきているのではないでしょうか。
GiantGox:
投資をしている人達は様々ですよね。とくに日本は大きな自然災害を経験したばかりで、まだまだ大変な状況の人達が沢山いると思います。災害や事故が原因で重い病気や障害を負ったり、一家の大黒柱の旦那さんが亡くなられたり、そういう状況でもXRPに限らず仮想通貨への投資で何とかしようと頑張っている人達も沢山いるはずです。だから大変ではあったけれども、今はそういう活動を続けてきたことにはそれなりに意味があったのではないかと思っています。
座談会メンバー:
仮想通貨に対する法整備と規制が進んでいますから、今後の仮想通貨業界の自浄作用に期待したいですね。
4万5千円のギターを買った話
座談会メンバー:
エレキギターを始められたそうで?
GiantGox:
はい、最初はアコギ(アコースティック・ギター)を始めようかと思っていたのですが、リップラー座談会(放送)でトシ君からギターについていろいろと教えてもらい、弦が細いエレキギターの方が初心者が始めやすいということでエレキギターを購入することにしました。妻の専門が音楽なので知り合いに聞いたところ Ibanez(アイバニーズ)のギターを勧められ、狙っていたギターが1年ほどして値下がりした頃に4万5千円で買いました。
座談会メンバー:
趣味に4万5千円というのは、一般的にはそこそこ大きな買い物ですよね。実際に買ってみてどうですか?
GiantGox:
手元に届いたときは最高に嬉しかったですよ。もともと6万円で販売されていたギターがモデルチェンジされたため、生産完了特価で1万5千円引きで買えたんです。モデルチェンジと言っても赤から青に色が変わっただけなんですけどね。Ibanez RG370FMZというモデルです。でも、1ヶ月触ってみて、やっぱり安物なんだなとは感じますね。
座談会メンバー:
ギター経験1ヶ月でもそんなことが分かりますか?
GiantGox:
私はブロックチェーン技術に関しても素人ですし、何でも素人なりの調べ方というのがあると思うんです。エレキギターといえども基本的には木製の楽器なので、ブリッジやピックアップなどのハードウェア的な要素を除けばベースは木材だと思います。そんな感じで「5万円のギターは何故5万円なのか」ということをまず考えました。このギターに関しては最初に見たときにネックに『板目』の木材が使われていたので、安い原因の一つはそこだろうと・・・。木取り5)木取り:原木や大型の木材から,必要な寸法,品質の木材を製材すること。には大きく分けて板目(いため)と柾目(まさめ)の2種類があって、柾目のほうが木目が平行で乾燥収縮による変形が少ないのですが、板目に比べると大きな材が取りにくいので同じ種類の木材でも柾目の方がずっと高価なんです。ギターのネックには弦を張るため数十キロの負荷がかかりますから、ここに変形しやすい木材を利用するのは不利なはずです。我が家に1万円で買ったヤマハのギタレレが置いてありますが、そちらのネックにも安い板目の木材が使われていました。ですから、特別な塗装や特殊な杢目(もくめ)の入った高級木材を利用したり装飾に凝っているなどの製品を除けば、おそらく10万円を超えるギターのネックには柾目の木材や集成材が使われているのではないかと思います。
座談会メンバー:
「5万円のギターは何故5万円なのか」ですか。確かに値段が高いものは良い部品を使っているということは分かりますが、その部品がなぜその値段なのかというところまでは殆どの人は考えませんよね。趣味と言えどもそういう目線で物事を見られているのが何だかGiantGoxさんらしいですね。
GiantGox:
なぜ安いのかが分からないと、逆に値打ちのあるものを安く買うことも出来ませんからね。以前、世界的な投資家のジム・ロジャーズ氏も、大衆がイメージだけで安いと評価してしまっているものに投資のチャンスがあると言っていました。『安い理由もなく安いもの』に投資しろということですね。まさにXRPなどはその典型です。大規模な風説が流されたことで多くの人が「〇〇だからXRPは安い。」ということを言っているのですが、Ripple総合まとめの『Ripple/XRPに関する風説』にも書いてある通り、調べてみるとそれらの評価がすべて誤解や嘘に基づいたものだということが分かります。逆に誤解や嘘に基づいたイメージだけで高いものも存在します。BTCの「非中央集権が・・・」なんていうのがその最たるもので、調べてみたら実際にはまったく非中央集権化されていないという・・・。こういうのは取引所が「〇〇は非中央集権化されていて・・・」などと顧客に説明して取引させていたとすれば、取引所を監督する規制当局なりから指導されてもおかしくないと個人的には思っています。
座談会メンバー:
印象操作の力というのは凄いですね。
GiantGox:
まあ、ブランドイメージなどで高く売られているものは世の中には沢山ありますよね。以前、実家で飼っていたウサギが大麦若葉(牧草)のペレット(家畜飼料)を食べていましたが、まさかああいうものから新しい商売が生まれるとは思いませんでしたし。やっぱり表向きの印象が人の判断に与える影響というのはとても大きいのだと思います。昔、『おぼっちゃまくん』という超大金持ちの子供が主人公の漫画に“貧ぼっちゃま”というキャラがいたのですが、表向きは超大金持ちの格好をしていて家も正面から見ると大豪邸なんですよ。でも、後ろから見るとお尻丸出しで、正面から見ると豪邸に見える家も玄関を開けて中に入ると崖っぷちに建っている小屋なんです。仮想通貨の世界でも立派なウェブサイトとホワイトペーパーをネタにICOで数十億円を集めたプロジェクトが、じつは実態が伴っていなくて世界中で大きな問題になりました。ああいうのを見たときは“貧ぼっちゃま”の家を思い出してしまいました。
座談会メンバー:
玄関を開けて中に入った人達は崖下に真っ逆さまですね。
GiantGox:
ほとんどの人にとってこういうことは馴染みがないかもしれませんが、私は新興国の不動産投資に興味があるのでこういうのは外国ではよくある話だということは知っています。マンション投資の『プレビルド物件』と呼ばれるものは、建物を建てる前に購入すると完成したときに高く売れるんです。ウェブサイトにアクセスすると、それこそ日本の〇〇ハウスとか〇〇建設のような立派なウェブサイトが表示されて、建物の設計図やCADで作られた完成イメージまでしっかりしたものが載っているんです。でも、そういうものの多くが実際には最初からマンションを建設する予定がなく、お金だけ集めて逃げるのが目的だったりするんです。日本人に限らず先進国の人達はそういうものに対する免疫力がありませんから、ICO詐欺のような手口に簡単に引っかかってしまうのでしょうね。
座談会メンバー:
そういう意味でも普段からモノの価値を見定める力を養っておくのはとても大事なことですね。ところでギターの話に戻りますが、そう考えると柾目の材料を使ったギターの方が本質的には価値がありそうですね?
GiantGox:
いや、実はそうでもないんじゃないかと。(^^;
座談会メンバー:
GiantGoxさん、おっしゃってることが・・・。(笑)
GiantGox:
本当に高価なビンテージのギターとかを見るとネックにも杢目が入った木材を使っていますから、そうなると価値という意味ではもはや柾目とか板目とかは関係ないってことになっちゃうじゃないですか。あくまでも実用性ではなく価値という意味では、ですが。それにギターのネックには中心にトラスロッドと呼ばれる湾曲した金属の棒が入っていて、それを伸縮させてネックの反りを修正できる機能があるんです。でも、裏を返せば金属のロッドが夏場・冬場の温度変化で伸縮してしまえば木のネックは多かれ少なかれ反ってしまうのではないかと思うんです。もちろんそれは完全に私の素人考えなのですが、実際ユーチューブなどで有名なギター講師の方々の話を聞いても「反るときは反るから気にしない方が良い。」ということを言っているんです。まあ、その辺りの理屈はさておき、私なんて40過ぎてこれからギターを始めるド素人ですから、ドレミファソラシドや基本的なコードを弾いているだけでも凄く楽しいんです。そういう意味でもこれぐらいのお値段のギターが丁度良いのだと思います。
座談会メンバー:
モノの価値を測る尺度というのは結局人それぞれなのだということですね。
GiantGox:
はい。結局、4万5千円のギターで『自分がどれだけ楽しめるのか』が一番重要なのだと思います。上手に弾けるようになったらもっと高いギターを買おうと思っていれば、それがまた目標というかモチベーションにもなりますし。いきなり数百万円するギターを買って頂点を極めてしまったら、それ以上の楽しみが無くなって虚しいだけですからね。例えば、普段からご馳走ばかり食べていたら友達と外食に出かけても料理のおいしさを共感できなくなってしまって、逆に人生の楽しみが減ってしまいますよね。だから、そういう趣味にかけるお金というのは楽器に限らず自動車でも何でも程々のところで留めておかないと、『物事を楽しむ価値』という本質的なものを見失ってしまう原因にもなりかねないと思うんです。そもそも欲しいものが欲しいのであって、高いものが欲しいのではありませんしね。それに幸福というのは、じつは自分が欲しいものをどれだけ手に入れられたかよりも、むしろ不安などの自分が欲しくないものや嫌なものをどれだけ取り去ることが出来るかに依存していると思うんです。だから派手な生活はしていないけれども幸せそうにしている人というのは、じつはそういうことにお金を使っているんだと思います。
座談会メンバー:
なるほど。先ほどおっしゃっていた「実はそうでもない」という意味がなんとなく分かりました。
GiantGox:
だから、この4万5千円のギターも私にとっては最高のギターなんです。
XRPの価格予想
座談会メンバー:
ずばりお聞きしますが、XRPの価格は将来的にいくらぐらいまで上がると予想していますか?
GiantGox:
XRPを送金に利用するリップル社のエンタープライズ製品の xRapid が本格的に稼働すれば、理論上は数千円になると予想しています。
座談会メンバー:
数千円というのはさすがに夢物語のようにも聞こえるのですが、何か根拠はあるのですか?
GiantGox:
XRPがまだ殆ど知られておらずリップル社が国際送金のエンタープライズ製品を発表する以前、当時同社の CEO だったクリス・ラーセンは日本の取引所(ゲートウェイ)に「まずは1ドルを目指したい。」と語っていました。それは、スタートラインがその程度の価格になるというのが当時のリップル社の予想だったのだろうと私は捉えています。ですから、私も当初は数百円を目標にしてXRP投資を始めました。
座談会メンバー:
その目標が一桁上がった理由は何ですか?
GiantGox:
リップル社が目標通り銀行市場に参入することに成功し、XRPを国際送金に活用するためのエンタープライズ製品の実用化が実際に始まったからです。以前、Reddit の r/Ripple板に「数学的に言うと、潜在的にリップルの最高値はいくらに達する可能性があるか?」という質問が投げられたことがあります。この質問にリップル社のデイビッド・シュワルツは「リップルが現在起こっている高摩擦の国際送金の価値を捕らえた場合、将来的に送金やその促進のためにXRPを保有する人々からの追加の需要を考慮すれば20ドルからその数倍になるだろう。」と回答しました。
座談会メンバー:
それは夢のある話ですね。
GiantGox:
XRPを保有している私が「XRPは将来いくらになる。」なんて話をすれば、それはただのポジショントークになってしまうのであくまでも『夢の話』ということに留めておきますが、デイビッド・シュワルツは同じ質問に対して次のようにも答えています。
「リップルが摩擦の減少によって増加する国際送金ボリュームの価値を捕らえた場合、120ドルからその数倍になるかもしれない。」
もちろん、これは What if(もしも~なら)というまだ起こっていない仮定の話で、他にも「もし世界の経済規模が3倍になって国際送金のボリュームが増大して、リップルがその全てを捕らえたら・・・」とか「人々がその他のことにもリップルを使い始めたら・・・」とか「私たちが他の惑星に経済を拡大して、そこでXRPが使われたら・・・」といったユニークな話もありました。
座談会メンバー:
それはかなりユニークですね。でも、前半の話は凄く現実味のある話にも聞こえました。
GiantGox:
この手の話でよくあるのは「現在の国際送金の時価総額が〇〇だから、それを基準に計算すると・・・」というものですが、そういう話をするのは本当にナンセンスなことです。90年代のインターネットの黎明期に「電子メールが郵便の手紙のシェアの〇〇%を取得すると・・・」みたいな話がありましたが、まさにそれと同じようなことを言っているように聞こえます。リップルが普及して LINE や Facebook のようなアプリで簡単に国際送金が出来るようになれば、国際送金の需要自体が増大することは明らかだからです。新興国の一般的な人の月収は数千円ですが、現在は出稼ぎの外国人労働者が母国に小額のお金を送りたくても一回当たり5000円を超える高額な手数料のせいで気軽に国際送金が出来ません。リップルはまさにそのような今は存在しない国際送金の需要を取り込もうとしているのです。
価値のインターネットとニューエコノミー
座談会メンバー:
2018年10月に開催されるリップル社主催の SWELL で、ビル・クリントン元アメリカ大統領が基調講演を行うと発表されました。SWELLは SWIFT が主催する Sibos のRipple版とも言える世界中の金融機関が集まるカンファレンスですが、同氏が SWELL で登壇することについてどうお考えですか?
GiantGox:
若い人にはあまり馴染みがないかもしれませんが、ビル・クリントン政権における同氏の大統領任期は1993年から2001年までで、同政権の副大統領は2007年にノーベル平和賞を受賞したアル・ゴアが務めました。ビル・クリントンは、私たち最初のインターネット世代にとっては最も親しみのあるアメリカ大統領で、マイクロソフトのビル・ゲイツらと共に90年代に提唱されたニューエコノミー6)ニューエコノミー:需要と供給が一致している経済構造のこと。一般に、需要が供給を上回るとインフレになり、供給が需要を上回ると失業率が上がる。もし、需要と供給が一致していればインフレも失業も起きない。従来の経済(つまりオールドエコノミー)では、需要にあわせた供給ができるようになるまで時間がかかり、需要と供給の一致はむずかしかった。好景気のときには需要に供給が追いつかずインフレになり、供給が軌道に乗ると供給過多になるほど製造して景気の後退を招き、結果として供給能力を縮小するためのリストラを行うということを繰り返してきた。しかし、コンピュータやインターネットを使う産業が発達することで、企業は顧客の需要に一致する適切な供給ができるようになった。アメリカの情報通信産業を中心とした好景気と失業率の低下が、こうした経済構造を背景としていると分析され、「ニューエコノミー」ということばが1990年代の末に登場した。 ―日本大百科全書(ニッポニカ)よりを支えた人物です。
ビル・クリントン政権で副大統領として活躍したアル・ゴアは上院議員だった1991年に『High Performance Computing and Communication Act of 1991』という法案を作成し、この法案が1991年12月9日に可決され、National Information Infrastructure(NII)が生まれました。これがアル・ゴアによって提唱された『情報スーパーハイウェイ』の構想で、後に民間主導のインターネットへと発展することになりました。アル・ゴアは2003年にGoogleのシニアアドバイザーとAppleの取締役に就任し、現在もAppleの取締役として活躍しています。2)
座談会メンバー:
ビル・クリントン政権とインターネットの歴史にそのような繋がりがあったとは驚きです。
GiantGox:
ビル・クリントン元アメリカ大統領とともにSWELLで登壇するリップル社取締役のジーン・スパーリング氏も1993年から2001年までアメリカ合衆国国家経済会議(NEC)の副議長・議長を務め、彼らと共に90年代のニューエコノミーの時代を支えてきた人物の一人です。同氏はオバマ政権で2011年から2014年まで再びNEC議長を務め、2015年にリップル社の取締役に就任しました。おそらく同氏ほどインターネットと経済の関係に詳しく、リップル社の取締役に相応しい人物はいないでしょう。
つまり90年代から現在に続くニューエコノミーを支えてきた中心人物とも言える2人が2018年の SWELL で基調講演を行うことになりました。2人が「ニューエコノミーはこれから始まる。」とでも言うのではないかとワクワクしています。2017年10月に開催された最初の SWELL では、ワールド・ワイド・ウェブの考案者であるティム・バーナーズ=リーと前FRB議長のベン・バーナンキが登壇したことで世界中の注目を集め、年末から年始にかけてXRPは400円の最高値を付けました。
座談会メンバー:
2017年末のXRP価格の高騰は注目を集めましたね。騒ぎに乗じて理由もなくXRP投資に参入してきた人達も多かったのではないでしょうか。
GiantGox:
ニューエコノミーと価値のインターネットの繋がりはそれだけではありません。先ほどご紹介したマイクロソフト創業者のビル・ゲイツが設立した慈善団体のビル&メリンダ・ゲイツ財団も2017年10月に発展途上国の銀行口座を持てない貧困層を支援するためのモバイル決済プラットフォーム『Mojaloop』の開発でリップル社と提携していますし、ウェブブラウザのMosaicやNetscapeの開発者として知られるマーク・アンドリーセンが設立したベンチャーファンドのアンドリーセン・ホロウィッツは2013年4月に既にリップル社に出資していました。アル・ゴアが参画する Apple も既に同社の製品に ILP を統合し、スペインのサンタンデール銀行が Apple Pay とリップルを統合した iPhone の国際送金アプリを2018年第一四半期に実用化しています。
座談会メンバー:
確かにこうしてお話を伺っているとITバブルの立役者とも言える人達が続々とリップルのもとに集結しようとしているように見えますね。
GiantGox:
ニューエコノミーというのは、需要が供給を上回るとインフレになり供給が需要を上回ると失業率が上がるという従来の経済(オールドエコノミー)に対し、コンピュータとインターネットを使う産業が発達した社会では企業が顧客の需要に一致する適切な供給ができるようになり、インフレと失業が起きない経済構造を作り出すことができるとする経済理論です。しかし、実際には2000年代初頭のITバブルの崩壊とともに景気後退が始まり、ニューエコノミーにより景気循環が消滅するという説は事実上、否定されることになりました。私はその一つの要因が支払い機能を持たない現在のインターネットの不完全性であり、リップル社が提唱している『価値のインターネット』がそれを克服する鍵になるのではないかと考えています。
座談会メンバー:
インターネットと世界の経済構造にはそれほど強い結びつきがあるのですね。
GiantGox:
私は経済の専門家ではないので難しいことは分かりませんが、アメリカの経済学者で女性として史上初めてジョン・ベイツ・クラーク賞を受賞したスーザン・アティがリップル社のアドバイザーを経て、2014年4月に同社の取締役に就任しています。彼女は現在もスタンフォード大学経営大学院の教授を務めており、Rippleのような仮想通貨技術が経済に及ぼす影響について専門家の視点で解説しています。『Susan Athey: The Economics of Bitcoin & Virtual Currency』というタイトルの動画が YouTube でも公開されているので、ご興味があれば視聴してみることをお勧めします。7)Susan Athey: The Economics of Bitcoin & Virtual Currency
座談会メンバー:
経済学の世界ではジョン・ベイツ・クラーク賞はノーベル経済学賞より受賞が難しいと言われていますね。その受賞者の言葉であれば説得力がありますね。
GiantGox:
経済の専門家でリップル社が提唱する『価値のインターネット』に注目しているのは彼女だけではありません。先ほども述べたように2017年10月に開催された第一回の SWELL では、前FRB議長のベン・バーナンキが基調講演を行いました。これは『価値のインターネット』を中心に起こるイノベーションがいかに大きなものであるかを専門家が評価していることの表れだと思います。
出典・脚注
1. | ↑ | ”Bank of America Merrill Lynch and Earthport Sign Strategic Agreement“, Bank of America Merrill Lynch, 2018年7月16日閲覧。 |
2. | ↑ | ”Real-time cross-border funds settlement for financial service businesses“, TAS Group, 2018年7月16日閲覧。 |
3. | ↑ | 絵に描いた餅:「計画や企画だけは立派だが、実行が伴わない」という意味。実際には食べることができない上手に描かれたお餅から転じて。 |
4. | ↑ | ガチホ:ガチ(本気)でホールド(保有)し続けること。 |
5. | ↑ | 木取り:原木や大型の木材から,必要な寸法,品質の木材を製材すること。 |
6. | ↑ | ニューエコノミー:需要と供給が一致している経済構造のこと。一般に、需要が供給を上回るとインフレになり、供給が需要を上回ると失業率が上がる。もし、需要と供給が一致していればインフレも失業も起きない。従来の経済(つまりオールドエコノミー)では、需要にあわせた供給ができるようになるまで時間がかかり、需要と供給の一致はむずかしかった。好景気のときには需要に供給が追いつかずインフレになり、供給が軌道に乗ると供給過多になるほど製造して景気の後退を招き、結果として供給能力を縮小するためのリストラを行うということを繰り返してきた。しかし、コンピュータやインターネットを使う産業が発達することで、企業は顧客の需要に一致する適切な供給ができるようになった。アメリカの情報通信産業を中心とした好景気と失業率の低下が、こうした経済構造を背景としていると分析され、「ニューエコノミー」ということばが1990年代の末に登場した。 ―日本大百科全書(ニッポニカ)より |
7. | ↑ | Susan Athey: The Economics of Bitcoin & Virtual Currency |
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