リップラー座談会『一問一答』

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XRPに気付いたきっかけ

ゴックスさんがXRPに気付いたのはいつ頃ですか?

2014年の中旬頃だったと思います。

何かきっかけがあったのですか?

きっかけはテレビです。2013年にビットコインが急騰して話題になり、翌年2月にマウントゴックス事件が起きてテレビはビットコインに対して否定的な論調でした。

テレビが否定していたのでダメだと思わなかったのですか?

いつもテレビとは逆に考えるようにしています。その時も逆に何かあるのではないかと思いました。インターネットで調べたところ、ビットコインがブロックチェーンと呼ばれる画期的な分散型台帳技術のプロトタイプであることを知りました。しかし、残念ながらスケーラビリティの問題でプロジェクトは暗礁に乗り上げ、考案者のサトシ・ナカモトは既にプロジェクトを去っていました。そして暗号資産のコミュニティはビットコインの技術を改良したビットコイン2・0のようなものを作る方向にシフトしていました。

なるほど。それでビットコイン以外の暗号資産が作られ始めたのですね。

はい。イーサリアムもその一つですが、これはビットコインの性能問題を解決するためのものではなく、ブロックチェーンを利用してスマートコントラクトを実現するためのプロジェクトでした。

イーサリアムはヴィタリック・ブテリンが主導するプロジェクトとして有名ですね?

2013年の夏頃、当時まだ学生だったヴィタリックはウォータールー大学のコーオプ教育プログラムでリップル社に就職することを希望し、ビットコインJS(BitcoinJS)の開発者としても知られるリップル社のステファン・トーマスが面倒を見ていたそうです。しかし、リップル社はまだ設立後9ヶ月しか経っておらず、ビザの発給要件である設立1年に満たなかったことからビザが発給されなかったため、リップル社はヴィタリックの雇用を断念せざるを得なかったそうです。そのような経緯から、ヴィタリックはイーサリアム・プロジェクトを発足することになりました。

あのヴィタリック・ブテリンも当初はリップル社に就職することを希望していたのですね。

じつはリップル総合まとめの記事のソースでリップル社を紹介する一番古い記事はヴィタリック・ブテリンによって書かれたものです。他にもライトコインやピアコインなどいくつかのプロジェクトがありましたが、その中で最も有望だと感じたのがクリス・ラーセン達が創業したリップル社が主導していたXRPレジャーで、当時はカナダのライアン・フッガーが考案したリップル・プロトコルを統合したリップル・コンセンサス・レジャー(RCL)と呼ばれていました。

「僕はずっと前(2013年の中旬)にリップル社のインターンになろうとしましたが、会社が設立後9ヶ月しか経っておらず、最小要件が1年だというアメリカのビザのやっかいな問題が僕を阻みました。」(ヴィタリック・ブテリン2019年4月14日のツイートより)

そういえばインターレジャー・プロトコルが統合される以前は、XRPレジャーはRCLと呼ばれていましたね。

当初は単一の台帳にリップル・プロトコルを実装する方式だったため、ILPを統合した現在のXRPレジャー内に実装されている暗号資産(XRP)の名前の由来にもなっています。多くの人がXRPの名前の由来がリップルという会社だと考えていますが、じつはXRPもリップル社も、どちらもリップル・プロトコルが名前の由来です。そもそもXRPレジャーが誕生したときにはまだリップル社は存在していませんでした。

分散型台帳とは

先ほどビットコインは分散型台帳技術の先駆けであるというお話でしたが、分散型台帳とはどのようなものなのですか?

台帳は簡単に言うとデータを保存するためのデータベースのことです。従来は複数人で一つの台帳を共有する場合には、中央で管理されている一つのコンピューター上のデータベースを共有する必要がありました。その従来の方式では、データベースを管理している個人や法人がデータを改竄しないことを信用しなければいけません。つまり中央がある仕組みです。

なるほど。それで仮想通貨業界では非中央集権というキーワードがよく登場するわけですね。

ビットコインはこの問題をプルーフ・オブ・ワークとブロックチェーンという技術を使って克服しようというアイデアを提案しました。これは分かり易く言うと、ビットコインのネットワークに接続する人達がそれぞれの手元に個別に台帳を持ち、自分の手元の台帳を書き換えると同じネットワークに接続している世界中の人達の台帳もまったく同じように書き換わるというシステムです。これが暗号学的に保証されているため暗号通貨とも呼ばれます。

それは凄い発明ですね。ビットコインはそれで何を実現しようとしたのですか?

ビットコインに限らず分散型台帳の目的は、基本的には二重支払いを防止することです。例えば、私がAさんに現金で1万円を渡したのに自分の手元にも同じ現金1万円が残っているということは物理的に起こりません。しかし、コンピュータで管理されているデータはいくらでも複製することができてしまいます。ワードやエクセルのデータを想像すると分かり易いと思います。電子メールでワードやエクセルのデータを相手に送っても、自分の手元にはオリジナルのデータは残ってしまいます。通貨システムのようなものをコンピュータで実現しようとする場合、このようなことが起こってしまうと都合が悪いわけです。

確かに1万円を送って相手に1万円が届いても、自分の手元にも1万円が残っていたら2万円に増えてしまいますね。その問題をビットコインは克服しようとしたわけですね。

はい。しかし実際にビットコインを作ってみると、そのやり方にはいくつかの問題があることが分かってきました。

どのような問題があったのですか?

ビットコインではネットワークの参加者が取引を承認するのですが、取引を承認した人には報酬としてビットコインが発行される仕組みになっています。参加者のうち誰が取引を承認するかと言うと、ビットコイン自体がネットワーク参加者に難しい問題を出して、その問題に最初に答えられた人が取引を承認して報酬を受け取れるようになっています。その問題に答えるにはコンピュータによる計算が必要で、より早く回答を出せた人がビットコインを貰えます。計算をしてビットコインの報酬を貰うことをマイニング(採掘)と呼びます。

処理能力が高いコンピュータを持っている人が報酬を受け取れるわけですね?

はい、実際には処理能力が高いコンピュータを沢山持っている人ですね。しかし、ここで問題になるのは電気代です。処理能力が高いコンピュータを沢山動かせば、それだけ電気代がかかります。そして、同じコンピュータを動かして競争したとしても、アメリカと中国では電気代が安い中国の方がコスト的に有利になってしまいます。

難しい問題ですね。具体的にはどういうことが起こるのでしょうか?

例えば1BTCが一万円だった頃のことを考えると、1BTCを得るために一万円以上の電気代が掛かってしまうと赤字になってしまいます。ですから、この競争が始まった頃から電気代が安い中国人がビットコインのマイニングを独占し始めました。ビットコインから出される問題の難易度は回答をするコンピュータの処理能力に応じて変化する仕組みのため、マイニングの処理が集中すればするほどマイニングにかかる電気代も高くなり、さらに中国人が有利になっていきました。結果的にビットコインの分配は中国に偏り、取引の承認も実際には数人の中国人によって行われるようになってしまいました。

それでビットコインの寡占化が問題になっているわけですね。

それとよくビットコインの送金が高速だという話をする人がいますが、これも間違っています。先ほど取引を承認して報酬をもらう人が問題を解く必要があると説明しましたが、その問題は10分程度で解ける難しさに自動的に調整される仕組みになっています。つまり取引が承認されるには最低でも10分程度待たなければなりません。更に仕組み上、ファイナリティ(決済が確定される状態)がないビットコインでは取引が確定したと見なすために、実際には1時間ほど待たされます。これはブロックチェーンに1つのブロックが書き込まれても、そのブロックチェーンが正しいチェーンだということが技術的に保証されていないからです。場合によっては100ブロック以上が巻き戻る可能性もありますから、1時間待てば絶対に安心ということもありません。さらに、ブロックサイズの制約から1秒間に数回の取引しか処理できないことが分かっています。

なるほど。つまりビットコインには分配の偏り、取引承認の中央集権化、長い待ち時間、処理能力の限界などの問題があるわけですね。

XRPレジャーはビットコインとは異なる独自のアルゴリズムを採用することで、これらの問題を克服することに成功した次世代の分散型台帳というわけです。XRPレジャーの取引承認時間は僅か3〜4秒で、XRPレジャー単体で1秒間に処理できる取引数は1500回以上です。さらにリップル社が提供するエンタープライズ製品を組み合わせることで1秒間に5万回の取引まで対応できるようになります。例えば世界的に利用されているビザカードのネットワークでは1秒間に4千回から1万回の取引が行われているため、そのような決済ネットワークを構築するエンタープライズ分野でリップル社の製品が注目されているというわけです。

なぜXRPが有望だと思ったのか

リップル社の製品を世界中の金融機関が採用し始めていますね。なぜリップルがこれほど普及すると予想したのですか?

多くの人は技術とユースケースをごちゃ混ぜに考えています。技術というのは所詮技術でしかありません。IT業界のイノベーションというのはクリス・ラーセンのようなイノベーターが特定の技術のユースケースを見出し、それを実用化することで起こります。そして実用化するだけではなく、その技術を普及させるためには標準化という作業がとても重要になってきます。例えば90年代にアルファ(Alpha)という64ビットの非常に高速なCPUがありましたが、普及することなく終わってしまいました。他にも富士通のFMタウンズのように日本で初めてCDーROMドライブを標準搭載した画期的なパソコンも存在しましたが、そうしたメーカーの独自規格のパソコンは全て消えてしまいました。しかし、業界では多くの人達がそのような流れになることは当時から気付いていました。

何故そういう流れに気付くことができたのですか?

独自規格のパソコンが消えたということに関しては、IBMが80年代からオープンアーキテクチャの戦略にシフトした影響が大きいです。現在、私たちが使っているPCと呼ばれるパソコンは、もともとはIBMPC/ATの規格を採用したPC/AT互換機と呼ばれるものでした。当時、コンパックや他のアメリカの大手パソコンメーカーはAT互換機という業界標準の規格を採用しており、独自規格のパソコンが広く普及しないことは明らかだったのです。そしてIBMはPCの基本ソフト(OS)にマイクロソフトの製品を採用しており、マイクロソフトのOSはインテル社のCPUで動くように作られていました。

リップル社もILPの標準化を進めていますね?

リップル社は2015年10月にワールド・ワイド・ウェブ・コンソーシアム(W3C)のインターレジャー・ペイメント・コミュニティ・グループの発足と同時に議長に就任し、ILPの標準化のための作業を積極的に行っています。例えばウェブの世界ではHTTP/2という次世代のHTTP規格がありますが、これの前身もグーグルが開発したSPDY(スピーディー)です。グーグルがこのようなウェブの標準技術の開発に力を入れているのは、同社が実現しようとしているサービスには、このような技術的な基盤が不可欠だからです。いくら電車が時速500キロで走れても、それを走らせる線路がなければ実用化できないのと同じことです。リップル社がILPを標準化しようとしているのも、ILPという基盤が無ければ同社が開発するエックスラピッドのようなエンタープライズ製品を実用化することが出来ないからです。

これまで様々な技術が普及する過程を見てきましたが、世の中に広く普及して私たちが利用している技術は、規格争いに勝って標準化に成功したものが殆どです。リップル社はその作業を数年前から地道に続けてきました。

なぜ数あるブロックチェーン企業の中でリップル社のプロジェクトだけがトントン拍子に進んだのでしょうか。

創業者のクリス・ラーセンの影響が大きかったのだと思います。XRPを開発した3人の技術者は、会社を設立するにあたってプロの経営者としてクリス・ラーセンを迎え入れました。そして、設立された会社に開発者たちが保有していたXRPの8割を寄贈しました。

クリス・ラーセン氏は現在リップル社の会長を務めていますね。何者なのですか?

クリス・ラーセンはアメリカで初めてソーシャルレンディング・サービスを開始したプロスパー(Prosper)の共同創業者で元CEOです。このソーシャルレンディング・サービスは、日本では『クラウドファンディング』という呼び名で広く知られています。プロスパーは2005年に創業されたフィンテック企業ですが、同氏はそれ以前にも1997年にイーローン(EーLoan)というオンライン初のモーゲージ・ローン・プラットフォームを提供する会社を創業しています。つまり、彼はフィンテックという言葉すら存在しなかった90年代のインターネット黎明期からフィンテックに取り組み、クラウドファンディングを世に広めた人物でもあります。

クラウドファンディングなら自分も聞いたことがあります。それを世に広めた人物がリップル社の共同創業者だったわけですね。

特定分野で高度な技術を持っているエンジニアが会社の経営を始めて失敗してしまうケースは昔からよく聞きますが、彼らはその古典的な失敗をしませんでした。私自身も元エンジニアですが、技術者というのはある意味では職人のような人種です。でも、その職人が必ずしもプレイヤーとして優秀かどうかは分かりません。これは音楽で例えれば、ストラディバリウスを作れるストラディバリさんが世界一のバイオリン奏者になれるわけではないのと同じです。世界一のバイオリンも世界一の奏者に弾いてもらってなんぼなわけです。そうやって昔から職人や技術者は自分達が作ったものを最高のプレイヤーに託してきました。

なるほど、それは分かり易い例えですね。

現代の自動車だって技術者がF1レースのドライバーをしているわけではないですよね。それはIT業界でも同じなんです。どんなに優秀な技術を持っていたとしても、1位になりたければ優秀なプレイヤーにそれを託さなければなりません。XRPの開発者たちは、クリス・ラーセンという最高のイノベーターに彼らのプロジェクトの運命を託しました。傍から見れば簡単なことに見えるかもしれませんが、当時ブロックチェーン業界でこれが出来た有望なプロジェクトがリップルしか存在しなかったのも事実です。

2014年のこと

2015年からILPの標準化作業が始まったとのことですが、ゴックスさんは2014年からXRPに投資することを決定していますよね?2014年から既にリップル社の事業が軌道に乗ると予想できた理由は何ですか?

リップル社は2014年4月にIBMのワールド・コミュニティ・グリッドでのXRPの無償配布を終了することを発表し、翌月に共同創業者のジェド・マケーレブがリップルのプロジェクトから撤退することを発表しました。このときリップル社はドイツのフィドール銀行との提携を発表し、更に調べてみると6月に同社がNACHAのメンバーになったことが分かりました。NACHAはアメリカの小口決済ネットワークであるACH決済システムなどの電子取引分野の運用ルールや業務上のベストプラクティスを策定する非営利団体です。ACHを運営するFedとTCHは、NACHAによって策定された業界ルールに基づき自社独自の内規を策定し、参加者との合意の基にサービスを提供しています。これにより同社が本格的に銀行市場への参入を決定したことが分かりました。

その後も同年9月にアメリカのクロスリバー銀行やCBW銀行がリップル社との提携を発表しました。

そんなに早い時期から銀行市場に舵を切っていたのですね。

判断材料として最も大きかったのは11月のアースポート社とTASグループとの提携です。アースポート社のリサーチをしたところ、2013年12月に同社とバンクオブアメリカ・メリルリンチがFXソリューションとクロスボーダー決済を統合するための戦略的合意を交わしたことが分かりました。このことからバンクオブアメリカ・メリルリンチのクロスボーダー決済システムがアースポート社を通じてリップル社のソリューションを利用することが予想できました。そして、同じ月にTASグループがヨーロッパのTARGET2とT2Sで中核的な役割を担っている同社のTASネットワーク・ゲートウェイにリップルを統合すると発表しました。これにより、リップル社の銀行市場への参入という目標が絵に描いた餅ではなく現実になることを確信しました。

2014年からそこまで把握していたのですね。

インターネットの匿名掲示板でこれらの情報を日本の暗号通貨コミュニティの人達と共有しましたが、当時ほとんどの人達が拒否反応または否定的な反応を示しました。私と同時期かそれより先にXRPに投資していた数人だけが興味を示し、結果的にXRP投資で成功することができました。

拒否反応を示すというのは不思議ですね。そこまでの事実が把握できていたのに、それらが否定された理由は何だったのでしょうか?

いろいろな人達がいましたが、一つは暗号通貨コミュニティでインフルエンサーを自称している人達による反国家主義、反政府主義的な思想によるものです。彼らは銀行を含む各国の法定通貨のシステムを破壊することが一つの目標だったようで、リップル社が銀行市場に参入すること自体に強い拒否反応を示していました。また、彼らは金融機関が利用するブリッジ通貨のような形でXRPが普及することはないと思っていたようです。

価値のインターネットとXRP

リップル社が提唱している『価値のインターネット』とはどのようなものなのですか?

リップル社が分散型台帳技術を利用して実現しようとしているのは、私たちがインターネットで電子メールなどを利用して情報を送っているのと同じように、インターネットを介して世界中にお金を送れる仕組みを作ることです。リップル社はこんなことを言っています。

「現代の世界が抱える本当の問題に目を向けると、多くの人々がグローバリゼーションは人のために機能していないと指摘しています。私たちの考えは違います。機能していないのではなく、進行中で未完了の機能なのだと考えています。だから、相互運用性があれば真のモビリゼーションは可能なのです。」

『価値のインターネット』のビジョンはとてもシンプルなのですね。

彼らが実現しようとしている目的は分かり易くシンプルなものです。そして、それを実現するためのILPやXRPといった分散型台帳技術もリップル社によって既に開発されています。難しいのは現実的な課題をクリアしなければ、それを実現できないことだと思います。

「現在の世界ではILPやXRPを組み合わせた価値のインターネットは間違いなく可能です。摩擦なく迅速に処理できるこのシステムがあれば、経済は大きく変化します。さらに、50セントを送金したい何十億もの人々だけでなく、1万分の1セントを送金する必要のあるデバイスやプログラムは何兆もあるでしょう。私たちの取り組みによって、それすらも可能になります。」「ビジョンとしては、国際送金をウェブサイトの検索と同じくらい安価かつ簡単にすることです。仕組みや費用、運営会社などを気にすることなく送金できるくらいにしたいと考えています。」(リップル社のユーチューブ動画『Ripple and XRP Part 2: The Internet of Value(2018)』2018年3月9日より)

クリアしなければいけない現実的な課題とはどのようなものですか?

根本的な問題は、私たちが普段送ったり受け取ったりしているお金が民間銀行により発行されているものだということです。多くの人はお金が中央銀行だけによって発行されていると思っていますが、じつは私たちが給料の支払いなどで銀行を通じて受け取っているお金の大半は、信用創造という仕組みを利用して民間銀行により発行されているものです。つまり、これは私たちが送りたいお金や受け取りたいお金が民間銀行によって管理されていることを意味します。ですから価値のインターネットでお金を送る仕組みを作りたいと言った場合、世界中の民間銀行の協力が不可欠になるということです。そして、そこには法律や規制の問題も立ちはだかります。

それは考えただけでもやっかいな問題ですね。つまりリップル社は『価値のインターネット』を実現するために、その問題に取り組んでいる会社だということですね。ところで『価値のインターネット』の中で暗号資産のXRPはどのような役割をするのでしょうか?

インターネットで情報を送るとき、私たちはパケットに文字や動画などの情報を乗せて送っています。『価値のインターネット』を実現するためにリップル社が開発しているエックスラピッドという金融機関向けの製品では、XRPは価値を運ぶパケットのような役割をします。例えばA取引所とB取引所を通じてお金を送りたい場合、XRPはA取引所とB取引所の間を行き来して価値を運んでくれます。A取引所からB取引所への送金では、XRPはA取引所で買われてB取引所に送られます。だから、私たちはその価値の移動のためのパケットの役割をする暗号資産に投資していることになります。

情報を運ぶパケットではなく、価値を運ぶパケットの役割をするのがXRPということですね。でも、XRPの価格が上がる仕組みが分かりません。

XRPの総発行量は1000億XRPで、総発行量が増えないことが数学的に保証されています。先ほどの説明でXRPがA取引所とB取引所の間を行き来すると説明しましたが、送金経路が増えればXRPは更に多くの取引所間を行き来することになります。これはXRPが送金によって複数の取引所に分散して、1つの取引所が保有するXRPの数量が減っていくことを意味します。100カ所を行き来するようになれば、1つの取引所が保有できるXRPの数量は単純計算で100分の1になります。これとは逆にA取引所から送金できる送金先が100箇所に増えればXRPの流動性は増加します。同時にB取引所、C取引所などからの送金先も増加するため、ネットワークの拡大によってXRPの流動性は指数関数的に増加することになります。その流動性がXRPの価値を押し上げる仕組みです。

リップルとXRPの違い

リップルとXRPの違いを教えてください。

まずXRPですが、これはXRPレジャー内に存在する暗号資産の名称です。XRPレジャーは、アーサー・ブリット、ジェド・マケーレブ、デイビッド・シュワルツという3人の天才技術者によって開発されたISCライセンスで公開されている無償のオープンソース・ソフトウェアです。そして、リップルというのはXRPレジャーを利用する金融機関向けの製品とサービスを提供するアメリカの会社で、日本ではリップル社と呼ばれています。

XRPレジャーは元々はリップル社によって開発されたものではないのですね?

リップル社が設立されたのは2012年9月ですが、XRPレジャーの開発が始まったのは2011年3月頃で、XRPは2012年6月頃に発行されました。リップル社はこのオープンソースのXRPレジャーを活用する製品とサービスを開発する企業として、クリス・ラーセンとジェド・マケーレブによって設立されました。創業期のメンバーには、デイビッド・シュワルツとアーサー・ブリット以外にもビットコインJSの開発者としてビットコイン・コミュニティで主導的な役割を果たしていたステファン・トーマスも含まれます。

なるほど。オープンソース・ソフトウェアのXRPレジャーの開発者たちを中心に、それを活用する製品とサービスを提供するために設立された会社がリップル社ということですね。

このようなオープンソース・ソフトウェアを活用するビジネスモデルは、IT業界ではよくあることです。例えば、同じISCライセンスで開発・公開されているBINDというソフトウェアがあります。多くの皆さんは利用している実感がないと思いますが、BINDはインターネットを構築するためには必要不可欠なソフトウェアです。この開発を主導しているのはUNIXベンダーで、BINDは主にUNIXベンダーが販売しているUNIX上で動作しています。つまり、UNIXベンダーのBIND開発チームが実質的にはオープンソースのBINDの開発を主導しているわけです。これはリップル社のXRP開発チームがオープンソースのXRPレジャーの開発を主導しているのに似ています。

XRPレジャーのようなオープンソース・ソフトウェアをビジネスに活用すること自体は、IT業界では一般的なことなのですね。そうした企業がオープン・ソースソフトウェアを利用するメリットとは何なのですか?

オープンな仕組みを利用する例は、無料のオープンソース・ソフトウェアに限られたことではありません。複数の企業が同じ規格のソフトウェアを自社のハードウェアやソフトウェア上で動かしたい場合があります。有名なのは私たちが使っているPCと呼ばれるパソコンです。これは以前にも話しましたが、私たちが今利用しているパソコンはもともとIBMのPC/ATの規格を採用したAT互換機と呼ばれるものでした。パソコンを製造する世界中のパソコンメーカーは、自社のハードウェア上で他社と同じソフトウェア(ウィンドウズなど)を動かしたいためオープンな共通の規格を必要としていました。そこで、パソコン市場で世界的なシェアを獲得していたIBMは、自社のパソコンの規格を公開して世界中の企業が自由に使えるようにしました。これは『オープン・アーキテクチャ』として知られています。

これにより、私たちはどこのメーカーのパソコンを買ってもマイクロソフトのウィンドウズやオープンソースのリナックスなどが利用できるようになったわけです。

同じ規格のソフトウェアを複数の企業が使いたい場合に、そのようなオープンな仕組みが利用されるわけですね。

先ほどのBINDの例で言えば、BINDはUNIXという規格のOS(基本ソフト)の上で動作します。UNIXベンダーは各社がUNIX規格の商用OSを販売していますから、この共通の規格で動くBINDのようなソフトウェアを利用することにメリットがあります。

そのメリットとは何ですか?

インターネットというのは企業にとっては様々な商用製品やサービスを提供するためのインフラですから、この仕組みを実現するためのソフトウェアの開発で競合することには意味がありません。そこでインターネットシステムを構築するために使われている商用UNIXを開発・販売する複数のベンダーが、BINDという一つのオープンソース・ソフトウェアの開発で協力体制を作っているわけです。

各社の製品やサービスの提供に不可欠となる共通のインフラを構築するためのソフトウェア開発で協力しているわけですね。

多くの人がリップルネットという国際送金ネットワークがリップル社1社によって構築されている仕組みだと誤解しています。リップルネットは複数の金融機関や国際送金を行いたい企業によって構築されている決済ネットワークです。だから、リップルネットを決済インフラとして利用したい企業がXRPレジャーという1つのオープンソース・ソフトウェアの開発で協力しているんです。

でも、リップル社がXRPの総発行量の8割をXRPレジャーの創設者から譲渡されて販売していることが批判されていますね。

その批判は誤解から生じたものだと思いますよ。リップル社はスプリング(Xpring)と呼ばれるイニシアチブを通じてXRPを無償で配布していますから。

無償ということはXRPをタダで配っているということですか?

はい、タダで配っています。XRPレジャーはビットコインなどのようにマイニングを行うシステムと違って、システム内部で使われる暗号資産のXRPはXRPレジャーが創設された時点で総発行量の1000億XRPが全て発行されました。これはXRPレジャーが二重支払いの防止にビットコインで使われているプルーフ・オブ・ワークではなく、より効率的な処理を行うためにコンセンサスと呼ばれる独自のアルゴリズムを採用したためです。そのため、必然的に誰かがXRPの配布の役割を担うことなります。XRPレジャーの創設者達からその役割を託されたのが、世界で最初にXRPレジャーを活用する製品とサービスを提供するリップル社だったわけです。

そんな壮大な計画だったんですね。

ですから、XRPレジャーを活用する製品やサービスの開発を行っている企業に対しては、スプリングを通じて無償でXRPが配られているんです。

2015年のこと

『リップル総合まとめ』の年表を見ると2015年には色々なことがあったみたいですね。2015年はどんな年だったのですか?

2015年は2つの大きな出来事がありました。1つ目はアメリカの規制当局の動きで、リップル社は5月に金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)から銀行秘密法違反で70万ドルの罰金の支払い命令を受けました。カリフォルニア州も3月にAB1326という仮想通貨ライセンスプログラムを発表し、イギリスの財務省も暗号資産の取引に対する規制の実施を発表しました。これは法的な扱いが不明だった暗号資産や暗号資産取引所のようなビジネスに対して何らかの規制を実施するという規制当局からの最初のメッセージのようなものでした。暗号資産というのは技術的な細かい話を除けば台帳上の単なる数字ですから、それがポケモンカードのような『物品』という扱いなのか、既存の何らか規制が適用されるものなのかが不明だったわけです。こうした動きによって、リップル社がこのようなビジネスを継続するためには規制当局との十分な話し合いが必要だということが分かってきました。

罰金で70万ドルというのは凄く大きな金額ですね。それでもXRP投資から撤退しようとは思わなかったのですか?

リップル社はその後も規制当局からの指導に従ってマネーサービス事業(MSB)の登録を行い、積極的な姿勢を見せていたのでそれほど大きな心配はしませんでした。むしろ、2015年の早い段階から積極的な資金調達や人事、金融機関とのパートナーシップといった形でリップル社の戦略の具体的な方向性が見えてきました。その一つは各国のACHを相互接続するための送金手順の標準化に取り組む国際団体のIPFAにリップル社が3月に加入したことでした。そして、現在リップル社の最高経営責任者(CEO)を務めるブラッド・ガーリングハウスが最高運営責任者(COO)に就任したり、同社のオーストラリア支部の代表に金融技術の第一人者であるディリップ・ラオが就任したのもこの時期でした。

リップル社の人事はよく話題になりますが、その頃からの取り組みが実っているわけですね。

リップル社はこの頃からコンプライアンス部門の強化にとくに力を入れ始めました。具体的な人事としては、1月に前年までバラク・オバマ政権で国家経済会議(NEC)の議長を務めたジーン・スパーリングを取締役に迎え入れ、3月には元アメリカ合衆国国務次官特別顧問のアンジャ・マヌエルがアドバイザーに就任し、5月にはニューヨーク共和党の財政委員会会長を務めたマシュー・メロンが同じくアドバイザーに就任しています。さらに6月にDTCC前CEOのドナルド・ドナヒュー、7月にドッド=フランク・ウォール街改革・消費者保護法の成立に重要な役割を果たした元財務省次官補のマイケル・バーがともに同社のアドバイザーに就任しています。このようにリップル社は2015年に経済および金融分野の専門家たちを積極的に役員やアドバイザーとして迎え入れるとともに、FRBやSEC(証券取引委員会)、DTCCなどで法務責任者を務めたノーマン・リードを法務担当役員(ジェネラル・カウンセル)としてコンプライアンス部門の責任者に就任させました。

そして、11月にもFRBのカウンセルとして法務を担当したジェシー・チェンが副法務担当役員(副ジェネラル・カウンセル)に就任しています。

そのあたりの人事を見ただけでもリップル社が当時から本気で事業を成功させようとしていた意気込みが伝わってきますね。

これは大きな流れになると感じたいくつかの出来事は、まず4月に当時CEOだったクリス・ラーセンが世界最大の国際送金業者の一つであるウェスタン・ユニオンとの協業を明かしたこと、5月に同社が投資ラウンドのシリーズAで2800万ドルを調達したこと、6月にオーストラリア四大市中銀行のオーストラリア・コモンウェルス銀行、オーストラリア・ニュージーランド銀行、ウエストパック銀行の3行が共同でリップルの実証実験を開始したこと、同じく6月にスコットランド王立銀行がリップルの実証実験を始めたこと、そしてリップル社がFRBの主導していたアメリカの次世代送金システムの標準技術を選定するファスター・ペイメント・タスクフォースに参加したことなどです。さらに8月に同社は世界経済フォーラムでテクノロジー・パイオニアに選ばれました。

凄い。その頃のXRPの評判はどうでしたか?

正直そのようなファンダメンタル的なことを議論している人は殆どいませんでしたし、今みたいにツイッターでリップルやXRPに関する情報交換をしている人は誰もおらず、主に2ちゃんねるで細かい値動きなどの情報交換がされていました。2014年末にアースポート社との提携でXRPの価格は一時3円台まで高騰しましたが、2015年3月に日本でXRPを取り扱う主要な取引所の1つだったリップル・トレード・ジャパン(RTJ)が顧客資産を持ち逃げする事件を起こし、さらにリップル社が5月に金融犯罪取締ネットワークからの罰金支払い命令を受けたことで、むしろお葬式のようなムードでした。しかし、実際には前述したような大きなニュースが度々見られるようになっており、私は近いうちに何か大きなことが起こるのではないかと予感するようになっていました。

そこで過去に出たそれらのニュースを一覧にして6月頃から2ちゃんねるで共有を始めました。それが『リップル総合まとめ』の前身です。

確かにそれだけまとまった情報を掴んでいれば何かあるかもしれないと期待するでしょうね。その後はどうなりましたか?

リップル社は10月にインターレジャー・プロトコル(ILP)という世界中の台帳を相互接続してクロスボーダー決済を実現する革新的な技術を発表しました。これが2015年の2つ目の大きな出来事です。この発表と同時に同社は社名を当時のリップルラボ社から現在のリップル社へと変更しました。そして、ワールド・ワイド・ウェブ・コンソーシアム(W3C)がインターレジャー・ペイメント・コミュニティ・グループを発足し、リップル社のエイドリアン・ホープ=ベイリーが議長に就任しました。さらにアクセンチュア、CGI、DHコーポレーション、ヴォランテ・テクノロジーズなどが開発するコアバンキングへのリップル・ソリューションの統合が一斉に発表され、バンクオブアメリカ・メリルリンチ、ウエストパック銀行、サンタンデール銀行、カナダロイヤル銀行、トロント・ドミニオン銀行などの世界中の主要銀行がリップル社の技術の採用と実証実験の開始を発表しました。

12月にはシンガポール情報通信開発庁(IDA)が主導するプロジェクトでスタンダードチャータード銀行とDBS銀行がリップルの実証実験を開始しました。

それでは予感が当たったわけですね。それで2014年末のようにまたXRPの価格は高騰したんですか?

いいえ、全くと言って良いほど反応しませんでした。代わりにインターネット上でリップルとXRPに関する大規模な風説の流布が始まりました。「リップル社は送金にILPを使うので、もうXRPは使われない」とか「銀行は送金にXRPを使わない」などといったものです。このような風説の流布は2014年から続いていたもので、例えばリップル社がアースポート社と提携した際には「アースポート社はXRPレジャーをフォークしたものを使っている」などという嘘の情報が流されていました。それが各国の金融機関が次々とリップル社との提携を発表するごとに、風説の流布は日に日に悪質なものへと変わってゆきました。リップル社の公式サイト上のフォーラムも荒らされてしまい、スレッドが凍結される事態にまで発展しました。その結果、暗号資産を取引している人達の多くが「XRPはもう使われないから無価値なのだ」と認識するようになってしまいました。

いったい誰がそんなことをしていたのですか?

分かりません。2015年当時、日本でリップルやXRPに関する情報交換は主にネット上の匿名掲示板で行われていましたから、誰がそういうことをしているのか全く知ることが出来なかったんです。でも、私は取引所や業界関係者が深く関与していたのではないかと疑っています。今でも一部の取引所がXRPだけを頑なに取り扱わないなど不自然な行動も見られますから、最悪はそういった取引所の関係者がしていた可能性もあると考えています。

取引所が関わっていたとしたら大変な問題ですね。

もしそうなら消費者を騙しているようなものですから大問題です。

なぜガチホするのか

ゴックスさんはXRPをトレードせずにガチホしていますが、トレードをしない理由を教えてもらえますか?

いくつか理由はありますが、まず投資の目標をどこに置いているかということが重要です。例えば、「百万円を投資して十倍にしたい」または「百倍にして1億円にしたい」という目標を設定したときに、何をすればそれを確実に実現できるのかということです。私は2014年にXRP投資を始めたときに、XRPは少なくとも百倍〜千倍にはなると考えていました。XRP投資で資産をそれぐらい増やせれば十分だと考えていたので、あえてリスクをとってトレードをする必要はありませんでした。暗号資産バブルはしばしば2000年代初頭のITバブルと比較されますが、ITバブルのときも有望な投資先、例えばヤフー、アマゾン、アップルなどに長期投資していた投資家は数百倍のリターンを得ることが出来ました。もちろん短期的なトレードを繰り返すことでそれ以上の利益を得た投資家もいましたが、統計的に見てもそのような手法で結果を残せた人達はごく一部のプロトレーダーだけでした。

逆に言えば、長期投資をすれば誰でも儲けられた相場だったにも関わらず、トレードをしていた殆どの人達が結果を残せなかったということです。

(※ガチホとは売らずに保有し続けることです。)

確かに投資で十分な利益を出せるのは市場全体の20%にも満たないとよく言われますね。

正直なところ2014年〜2015年の時点においては、私はメジャーな暗号資産に長期投資していればどれでも同じようなリターンを得られるだろうと予想していました。実際、当時から一緒に投資をしてきた古参の仲間には、とくにXRPに拘る必要はなくETHなどの有望銘柄をガチホしていれば確実にリターンを得られるだろうと話していました。ただ、私は当時からXRPとリップル社のリサーチを始めており、より長期的に有望なのはXRPだろうと思っていました。

先ほどトレードにはリスクがあるというお話をされていましたが、トレードで利益を出すことの難しさ以外にはどのようなリスクがあるのですか?

一番の問題は税金です。株式投資やFXの場合、法律で特例として申告分離課税が認められており、所得税15%、住民税5%などの固定税率が定められていますが、分離課税というのは一部の特例であるため暗号資産には適用されないだろうと考えられていました。この場合には暗号資産取引による所得には総合課税が適用されるため、最大で所得税45%と住民税10%の合計55%が雑所得に対する税金として課税されることになります。暗号資産はボラティリティが非常に大きいため、ある暗号資産が百倍になりもう一つの暗号資産でさらに百倍の利益を出すことが出来れば1万倍のリターンを得ることが出来ます。しかし、これは逆に短期間で資産を百分の一に減らしてしまうリスクにもなります。例えば50万円からトレードを始めて、ある年に1万倍の50億円を利益確定したものの翌年すぐに百分の一に減らしてしまった場合、前年分の税金25億円以上が払えなくなる可能性があります。

更に暗号資産で大きな利益を出して株式投資やFXで逆に大きな損失を出した場合であっても損益通算がされず、暗号資産の利益分だけ課税されてしまうという悲惨なケースも考えられます。

暗号資産は他の投資と異なり税率がとても高いのですね。そういえばFXも以前は申告分離課税ではなかったため「億万長者だと思っていたらじつは破産していた」という人達がたくさん出たと聞いたことがあります。

暗号資産投資の場合、最大税率55%のリスクはそれだけではありません。XRPのような長期的に有望な銘柄を運良く0・5円ほどの安値で100万円分仕込むことができ、利益確定をせずに数百倍になったままホールドし続けていたとしましょう。その場合、含み益は数億円になっています。そこで百万円分だけXRPをトレードして遊んでみたいと考える人がいますが、ここに大きな落とし穴があります。XRPが200円のときに百万円分追加で買った場合、多くの人がその取得単価が200円だと錯覚します。その人が0・5円で最初に百万円分を仕込んでいたとすれば4億円分のXRPを取得単価0・5円で保有しているので、新たに追加購入したXRPの取得単価も計算上1円以下ということになります。それを知らずに百万円で追加購入した分のXRPを売れば、計算上は90%以上が利益になってしまいます。

この売買を数十回繰り返してしまったら、大量の利益確定をしたと見なされ相当な額を課税されることになります。実際には暗号資産の中には数千倍になった銘柄もあり、それらをプログラムで自動売買していて大変なことになったケースもあるようです。ですから、XRPのように長期的にも有望な銘柄で大きな含み益を出している場合には、それをあえてトレードするのはあまり現実的ではありません。ある程度の含み益を抱えてただ待っているのが暇ということであれば、他の銘柄をトレードする方が安全かもしれません。

投資の出口戦略について

XRP投資の出口戦略はどのようなものですか?やっぱり海外移住ですか?

ガチホ投資をしている人が税金対策で海外移住をするメリットはほとんど無いと思います。現在の日本の税制だと、トレードで利益確定を繰り返している人達は毎年巨額の税金を払うことになりますが、ガチホしている人達は利確するまで税金を支払う必要がないからです。

「儲かったから何か買いたい」という人も結構いるんじゃないですか?

高級外車やマンションを一括で購入するのでもなければ、XRPを一気に売る必要はないでしょう。実際、リップラーには高級外車を購入している人達もいますが、皆さんローンで購入されていて月々の支払いはそれほど大きなものではありません。他に収入があれば、おそらく年間百万円もあれば足りてしまうと思います。

確かに冷静に考えてみれば普通に車や家を買う分にはそれで十分かもしれませんね。

単純計算で195万円以下の雑所得にかかる税金は所得税5%+住民税10%ですから30万円にも満たないです。多くの人は15%程度の税率には納得するでしょうし、195万円を超えても雑所得が330万円以下なら住民税を含めても税率は20%です。他人に贈与する場合は1年間あたり110万円まで贈与税は非課税です。ただし仮想通貨を贈与された人は利確時にキャピタルゲインは引き継がれるようなので注意が必要です。

なるほど。すぐに売らない場合、XRPはどのように運用される予定ですか?

国内外のいくつかの取引所が貸仮想通貨サービスを提供しています。このサービスを利用して取引所にXRPを預けておくと、年率5%程度の手数料を受け取ることが出来ます。

そんなサービスがあるんですか?

貸株サービスのようなものですね。貸仮想通貨サービスは貸株に比べて利率が高いため、仕込むタイミングさえ間違えなければとても利回りが良い運用方法です。私はXRPに投資を始めた当初から将来的にこういうサービスが登場してインカムゲインを得られるようになると予想していました。現在はまだ高額の資産を安心して預けておける取引所は少ないですが、将来的には暗号資産の先物取引市場やカストディサービスの登場によって安心して暗号資産を預けておける環境が整うのではないでしょうか。

(※暗号資産投資の所得にかかる税金の詳細については税務署や税理士などの専門家に確認をしてください。)

投資の目標額について

投資の目標額の話をしましたが実際はいくらになったら良いと思いますか?

1億円になれば十分ではないでしょうか。

1億円ですか?それはちょっと少ないのでは?

少ないですか?

だって首都圏で家を買えば3000万円ぐらいはするでしょうし、それに車を買って、子供の学費を払って…

いやいや、それは典型的な失敗パターンじゃないですか。アメリカで一番稼ぐスポーツ選手はアメリカンフットボールの選手で年間数十億円を稼ぐそうです。でも、統計ではアメフトのプロ選手たちの70%が引退後5年以内に破産するそうです。メジャーリーグの選手たちも60パーセント以上が同じように5年以内に破産するそうです。

そんなにたくさんの選手が破産しているんですか?

原因は単純で稼いだお金を全部使ってしまうからです。

でも、生活のためには使わないといけませんよね?

2013年あたりにビットコイン長者がたくさん誕生して、よくテレビで見かけたのは儲かったお金で家を一括で買ったとかそういう話でした。

確かにそういう人の話を聞きました。3000万円儲かったから家を買ったとかそういう話だったと思います。だから1億円ではちょっと少ないのかなと思いました。

簡単な計算ですが、1億円を預けるか不動産などに投資して毎年5%の利回りがあるとします。不動産投資なら平均6〜7%の利回りが見込めるはずですが、税金の問題もありますし切りが良い数字なのでここでは5%としましょう。それでも1億円の5%ということは毎年500万円の収入になります。年間500万円ということは10年間で5000万円になりますから、使わないで運用していれば10年ローンで5000万円の家を買えるんですよ。

なるほど!20年ローンなら1億円の家が買えますね。そう考えると高額な年俸を受け取っていたプロスポーツ選手たちが破産してしまうケースが逆に異常に感じられますね。

税金とか金利とか、そういう簡単な計算すらしないでお金を使ってしまうからでしょうね。生活費なんて今どきウーバー・イーツ(Uber Eats)やアマゾン・フレックス(Amazon Flex)などでも簡単に稼げますし、ちゃんと資産運用さえしていれば、それこそ牛丼屋のバイトをしていても5000万円の家でゆったり暮らすことが出来ますよ。アメリカでロナルド・リードさんというガソリンスタンドの店員や百貨店の清掃の仕事しかしていなかった人が、92歳で亡くなったときに10億円近い遺産を残して何も知らなかった家族が驚いたという話を聞いたことがあります。彼は毎日ウォールストリート・ジャーナルを読み、働いて稼いだお金で少しずつ株を買って運用に回していたそうです。長い間に株式の分割や値上がりと複利で資産がどんどん増えて亡くなったときには10億円近くに達していたそうです。

投資の複利で10億ですか。凄い話ですね。

はい、複利はかなり重要な要素ですね。先ほどは元金1億円で年利5%を受け取るという凄く単純な話でしたが、複利計算をすればもっと上手に運用できることが分かります。試しに複利計算をしてみてください。多くの人が家を30年ローンなどで買うと思いますが、既に1億円の元手がある人が30年間複利で運用し続けると、複利周期を1年として年利5%で計算すると30年後には資産は4億3000万円を越えます。もっと上手に運用して7%の利回りで運用すれば7億6000万円以上になります。つまり、元金5000万円でも上手に運用すれば30年後には3億8000万円にはなるので、それなりの家を買ってゆったりとした生活をすることは出来るということです。

儲かったらランボルギーニを買うことしか考えていませんでした。

5000万円のランボルギーニを買っても利回りはありませんよね。でも、利回り5%以上の5000万円の不動産を一括で買って貸せば、少なくとも年間250万円の利益が出ます。その利益で、購入した不動産を担保にもう一軒の不動産をローンで購入すれば、5000万円の元手で1億円分の不動産を手に入れることが出来ます。2件分の不動産収入は500万円以上になりますから、短期間でローンの返済ができます。不動産投資に限らず、このような資産運用を繰り返せば、お金がお金を稼いでくれるようになります。この手の資産運用の話では、ロバート・キヨサキの『金持ち父さん貧乏父さん』という本が有名です。

2016年のこと

2016年はどのような年でしたか?

2016年はXRPが1円以下の価格帯に留まる最後の年になりました。

XRPの価格が1円以下に停滞した原因は何だったのでしょうか?

一つはリップル社がリップル・トレードと呼ばれるXRPの取引サービスの提供を3月で終了したことです。これは前年にリップル社が規制当局から指導を受けたことが影響しており、取引ツールを同社から提供し続けることが難しくなったからです。リップル・トレードは、もともとXRPレジャーを活用するためのウェブウォレットや取引ツールのサンプルとしてリップル社が公開していたものですが、アメリカの規制当局が2015年5月から暗号資産取引業者の監査を開始したことから規制に引っかかったようです。これによりリップル社から提供されていた全ての取引ツールの配布が停止されました。リップル・トレードの停止後は任意でゲートハブ(GateHub)という取引所にアカウントを移行することが出来ましたが、取引ツールが日本語に対応していなかったことや日本円の入出金に国内の別の業者を利用しなくてはならず使いにくかったことから日本のユーザーには定着しませんでした。

XRPの取引自体が一般の人にとってはハードルの高いものになってしまったわけですね。

はい。でも、このとき私にとって重要だったのはXRPの取引が難しくなったということではなく、銀行市場に参入したリップル社の事業が計画通りに進んでいるかどうかを知ることでした。国内の取引所の問題は他の業者が参入することで、いずれ解決することが予想できたからです。

具体的にはどのような進捗があったのですか?

2016年は世界中のメジャーな銀行がリップル・ソリューションの実証実験を開始しました。具体的には2月にバンクオブアメリカ、スタンダードチャータード銀行、DBS銀行の3行が、そして6月にATBフィナンシャル、サンタンデール銀行、ウニクレーディト・イタリアーノ、UBS、ライゼバンク、カナダ帝国商業銀行、アブダビ国立銀行の7行が共同実証実験の開始を発表しました。そして11月にはシンガポールの中央銀行にあたるシンガポール金融管理局が主導する国際送金実験プロジェクトにバンクオブアメリカ・メリルリンチ、三菱UFJ銀行、クレディ・スイス、DBS銀行、HSBC、JPモルガン、オーバーシー・チャイニーズ銀行、ユナイテッド・オーバーシーズ銀行などが参加することが発表され、SBIホールディングスの北尾社長が同プロジェクトにリップルが利用されるとツイッターでコメントしたことから様々な憶測が流れました。

また、9月にはGPSG(Global Payments Steering Group)と呼ばれるリップルネットを利用する世界初のインターバンク・グループがバンクオブアメリカ・メリルリンチ、カナダロイヤル銀行、サンタンデール銀行、スタンダードチャータード銀行、ウニクレーディト・イタリアーノ、ウエストパック銀行の6行により設立され、DTCCの元CEOでリップル社のアドバイザーを務めるドナルド・ドナヒューが会長に就任しました。そして、同じく11月にカナダ帝国商業銀行も同グループへの参加を表明しました。その他にも11月にスカンジナビスカ・エンスキルダ銀行がリップルの採用を発表し、銀行以外では6月に国際送金サービス大手のマネーグラムがリップル・ソリューションを利用した国際送金でアースポート社との提携を発表しました。

2016年には各国の四大銀行やバンクオブアメリカ・メリルリンチ、UBS、クレディ・スイスなどのバルジ・ブラケットまでもがリップルネットの利用に向けて取り組み始めていたことが分かりますね。

もう一つの大きな出来事は、1月にSBIホールディングスがリップル社の発行済み株式の17%を取得し、5月に両社が出資する合弁会社のSBIリップルアジアが日本に設立されたことです。SBIホールディングスとSBIリップルアジアは10月にリップル・ソリューションを活用する『内外為替一元化コンソーシアム』を発足し、みずほフィナンシャルグループ、三井住友信託銀行、りそな銀行、新生銀行、広島銀行などを含む邦銀42行がこれに参加することが発表されました。

日本の金融機関にも大きな動きがあったのですね。それにしてもコンソーシアムの発足時に既に42行が参加していたとは驚きです。リップル総合まとめの年表を見ると他にもたくさんの出来事が記されていますが、他にはどのような動きがあったのでしょうか?

2015年にリップルの採用を発表していたCGIやヴォランテ・テクノロジーズに続き、エキスパータス、デロイト、テメノスなどが開発するコアバンキング(勘定系システム)へもリップルが統合されることが発表されました。11月にはリップル社のクリス・ラーセンがCEO(最高経営責任者)を退任して2017年1月から取締役会長に就任し、2015年4月から同社のCOO(最高運営責任者)を務めてきたブラッド・ガーリングハウスがラーセンの後任としてCEOに就任することが発表されました。この時点で銀行市場に参入したリップル社の事業が完全に軌道に乗ったことを確信しました。そして、リップル社は6月にXRPの販売・管理に関してニューヨーク州金融サービス局(NYDFS)からビットライセンスを取得し、日本でも5月に仮想通貨の規制が盛り込まれた改正資金決済法が参院本会議で可決されたことから、XRPのような暗号資産を取り扱うための法的な環境も整いつつあることが分かりました。

更に11月に暗号資産取引所のコインチェックがXRPの取り扱いを開始したことで、日本国内でのXRPの取引環境に関する問題は解消しました。

いずれ解決すると読んでいたXRPの取引環境の問題が解決したわけですね。でも、クリス・ラーセンがリップル社のCEOを退任することに関して悲観する人もいたのではないですか?

これにはリップル社の事業の好調さを裏付ける興味深い事情がありました。先ほどリップル社がSBIグループと共同でアジア地域を管轄するSBIリップルアジアを日本に設立した話をしましたが、3月にはイギリスのロンドンに、そして6月にはユーロ圏の金融センターとして知られるルクセンブルクにもオフィスが設立されました。これによりリップル社は本社があるアメリカのサンフランシスコとニューヨーク以外にオセアニア地域を管轄するオーストラリア、アジアを管轄する日本、ヨーロッパを管轄するイギリス、欧州連合の金融関連機関が集中するルクセンブルクにそれぞれの地域の本部を持つことになりました。クリス・ラーセンはCEOを退く理由を7才と9才になる2人の子供達と長い時間を過ごしたいけれども、多国籍企業となったリップル社のCEOとしてそれを両立することが難しいからだと説明しました。

私がXRPに投資を始めた頃はリップル社は従業員30人程度の小さな会社でしたが、クリス・ラーセンはこの短期間に同社を世界中の金融機関を顧客に持つ多国籍企業に成長させたことになります。

これだけの材料が出ながらまだXRPの価格が上がらなかったのは何故なのでしょうか?

2016年頃は仮想通貨に関する情報交換は主に2ちゃんねるを中心に行われていました。XRPを購入する人達も2ちゃんねるの『リップル総合』というスレッドで質問や情報交換を行っていました。しかし、リップル社やXRP関係者に対する違法な業務妨害が日に日に酷くなり、この頃になると荒らしを目的とした投稿が多すぎて正しい情報交換を行うことが出来なくなってしまいました。そこで私は2ちゃんねるでの情報交換を諦めてツイッターで仲間たちと情報共有を始めることにしました。最初は5人ほどで『リップラー座談会』というプライベートのグループを作り、6月頃にはメンバーが10人ほどに増えていました。

リップラー座談会でのゴックスさんの役割のようなものはあったのですか?

座談会ではメンバーが主にここで話したような情報を持ち寄って、技術や投資などに関する話をしていました。私は現役のエンジニアではありませんから、ブロックチェーンや分散型台帳技術に関する専門的な話は出来ませんでした。代わりに私は皆が持ち寄った情報を収集・分析して、技術とは別の観点から個人的な考察や予想を皆に伝えていました。そのような活動をしている中でメンバーの一人から私が収集・分析している情報をブログにまとめて欲しいという要望があったため、それまで2ちゃんねるのウィキに書き留めていた一部の情報とあわせて『リップル総合まとめ』というブログにまとめました。6月末から書き始めて、1週間程度で現在のブログの原型が出来上がりました。

なるほど。『リップル総合まとめ』というのは、2ちゃんねるのリップル総合スレッドのまとめという意味だったんですね。

正確にはリップル総合スレッドからの避難民が作ったまとめですけどね。

XRPの分配について

リップル社は2018年8月1日時点で約600億XRPを保有しています。XRPを否定する人達の中にはXRPの分配の偏りを指摘する人がいますが、それらの意見についてはどう思いますか?

これは本当に馬鹿げた話です。私が知る限りリップル社は2014年から2017年にかけて、かなりの長期間に渡ってXRPをタダ同然で直接販売してきました。ですから3年もの間、誰もが公平に単価1円以下でXRPを手に入れることが可能だったわけです。しかし、XRPは中央集権的にコントロール可能で価値が無いという悪質な風説が複数の業界関係者から組織的に流されたことで、多くの人がXRPを購入することに消極的になりました。つまり、XRPの分配に偏りを生じさせた最大の原因はXRPを貶している人達が流した風説だったんです。

それは酷い。リップル社がXRPの分配を行えないように邪魔をしていたわけですね。

しかし、リップル社はXRPの分配の問題を解決するために、2018年5月にスプリング(Xpring)と呼ばれるイニシアチブを立ち上げました。これにより、XRPを活用するスタートアップは、無償でXRPによる出資を受けることが出来るようになりました。スプリングの発足に先立ち、オンデマンド貸し倉庫サービスを手掛けるオムニ社やブロックチェーン・キャピタル傘下のベンチャーファンドがリップル社や同社の共同創業者等から2500万ドル相当のXRPによる出資を受けました。その他にもSBプロジェクトの創始者でジャスティン・ビーバーのマネージャーとして知られるスクーター・ブラウンへの出資も発表されています。また、リップル社はXRPの分配により得た収益を慈善団体を通じて世界中の貧困に苦しむ人々に寄付する活動を行っています。

例えば2018年5月には、映画『スティーブ・ジョブズ』でスティーブ・ジョブズを演じた俳優で投資家としても有名なアシュトン・カッチャーとの協力のもと、アメリカの国民的な人気トーク番組『エレンの部屋』の放送中に同番組を主催するエレン・デジェネレスが運営する自然保護基金にリップルネットを通じて400万ドルが寄付されました。同年6月にはリップル社がユニバーシティ・ブロックチェーン・リサーチ・イニシアチブを設立し、世界トップ17の大学に5000万ドルを寄付しました。

リップル社はXRPを無償で配布するだけでなく販売による利益も慈善団体に寄付しているわけですね。それにしても凄い金額です。

このような慈善団体との協力を通じた同社の活動はスプリング・イニシアチブが発足した2018年に突発的に始まったものではなく、同社は2017年10月に発展途上国の銀行口座を持てない貧困層を支援するためのモバイル決済プラットフォームのモジャループ(Mojaloop)の開発でビル&メリンダ・ゲイツ財団と提携することを発表していました。また、2018年7月にはポップスの女王として知られる歌手のマドンナが、アフリカ・マラウイ共和国の孤児のための基金を募るためにリップル社との提携を発表しています。このようにXRPの分配による利益がそれに携わる当事者だけではなく、世界中の貧困層に分配される仕組み作りがリップル社を中心に行われています。

リップル社がXRPを一度に大量に売ることで価格が暴落すると指摘する人達もいますが、それについてはどう思われますか?

XRPに投資を始めた当初から毎月配布されるXRPの数量を記録し続けていますが、リップル社が説明している通り価格に影響を与えるような大量のXRPが一度に配布されたことはありません。具体的には一月あたりのXRPの平均配布数量は2014年が約3億9千万XRP、2015年が約1億6800万XRP、2016年が約2億XRP、2017年が約2億2000万XRP、2018年が約1億7000万XRPです。1億XRPと聞くと多いように感じますが、10万XRPを保有する人が世界中で1000人と考えれば大した数字ではないことが分かると思います。また、リップル社は暗号エスクローという機能を使って全発行数量の半数以上のXRPをロックアップし、同社が1ヶ月間に取り扱えるXRPの数量に制限をかけています。この暗号エスクローによるXRPのロックアップはリップル社にも解除することはできません。

それではリップル社から売却されるXRPが市場価格に大きな影響を与えることは考えにくいわけですね。

リップル社CTOのデイビッド・シュワルツは「非現実的なほど悪い仮定に基づいて簡単な計算をしたが、リップル社からのXRPの配布速度による価格の下落圧力は一月あたり0・2セントに満たない。」と言っています。

2017年のこと

2017年はXRPが年末に400円を超えたことでも大きな話題になった年ですが、ゴックスさんにとってはどのような年でしたか?

この年はリップル社のエンタープライズ製品の実用化が始まった印象的な年でした。まず、3月にSBIグループとリップル社の合弁会社のSBIリップルアジアが主導する内外為替一元化コンソーシアムが、リップル・ソリューションを統合した外国為替と内国為替を一元的に扱う決済プラットフォームの『RCクラウド』の構築完了と実証実験を実施したことを発表しました。更に、同コンソーシアムは4月に暗号資産を利用した送金実験の開始を発表し、6月にはSBIグループで国際送金サービスを提供するSBIレミットが日本とタイの間でリップル・ソリューションを利用した国際送金を開始しました。そして7月までに三菱UFJ銀行、ゆうちょ銀行、三井住友銀行、スルガ銀行、東京スター銀行、三菱UFJ信託銀行、商工組合中央金庫、農林中央金庫などが内外為替一元化コンソーシアムに参加し、同コンソーシアムの参加銀行は60行を超えました。

2016年10月にコンソーシアムを発足してから翌年6月までに国際送金での実用化まで行われていたとは驚きですね。

これらのニュースの一部は新聞やテレビなどでも報道され、5月までにXRPの価格は45円になりました。そして、リップル社は8月にエックスカレント、エックスラピッド、エックスビアという金融機関向けの3つのエンタープライズ製品を発表し、これらの製品を統合して構築された国際送金ネットワークをリップルネットと名付けました。エックスカレントは既存の銀行間送金の仕組みにインターレジャー・プロトコルを統合して効率的な国際送金を実現する製品で、エックスラピッドは暗号資産のXRPを利用することで更なる送金の効率化を実現する製品です。エックスビアはこれら2つの製品を利用するネットワークメンバーによって構築されたリップルネットを通じて国際送金を行いたいネットワークユーザーに提供される製品です。リップル社の試算によれば、金融機関は国際送金にかかるコストをエックスカレントを利用することで30%削減でき、さらにエックスラピッドを利用することで最大で60%削減することが可能になります。

最大60%ですか。国際送金市場の規模を考えると年間数兆円のコストをリップルネットを利用することで削減できることになりますね。

9月には韓国のデイリーフィナンシャル・グループがSBIリップルアジアとの提携を発表し、日本と韓国の間で暗号資産を利用した国際送金実験の開始を発表し、10月にはアメリカとメキシコで国際送金サービスを提供するクアリックス社が、アメリカとメキシコ間でXRPを利用した実送金のパイロットを開始しました。さらに11月にはシンガポールのスタンダード・チャータード銀行、インドのアクシス銀行、アラブ首長国連邦のラス・アル・ハイマ国立銀行との間でリップルネットを利用した国際送金が開始され、12月には内外為替一元化コンソーシアムの参加銀行と韓国のウリィ銀行、新韓銀行がリップルネットを利用した国際送金のパイロットを開始しました。

2017年10月にはXRPを使った実送金まで始まっていたのですね。

リップル社は10月にSWELLと呼ばれるリップルネットを利用する世界中の金融機関と企業が集まる最初のカンファレンスも開催しました。世界中の銀行がSBIリップルアジアやリップル社との提携を発表し、11月にはリップルネットの参加行が100行を超えたことがリップル社から発表されました。そして、12月15日に放送されたBSジャパンの日経モーニングプラスという番組で、SBIリップルアジアの沖田社長によってRCクラウドが統合されたスマホアプリを使った送金のデモンストレーションが行われました。この放送の翌日からXRPの価格が徐々に上がり始め、12月27日にリップル社CEOのブラッド・ガーリングハウスがCNBCとブルームバーグの生放送に出演してXRPについての同社の戦略を語ったことで、年末までにXRPの価格は280円を付けました。

なるほど。送金アプリのデモンストレーションやリップル社CEOのテレビ出演といった複数のファンダメンタル的な要因が12月後半に重なったことが、2017年末のXRP価格の高騰を招いたわけですね。

はい。この年のXRP価格の高騰にはXRPを上場していた暗号資産取引所のコインチェックが、12月から人気お笑い芸人の出川哲朗さんを起用したテレビCMの放映を開始したことも大きく関係していたと思います。また、4月に改正資金決済法が施行されたことで暗号資産の法的な扱いが明確になっていたことも一つの要因だったと思います。そういう意味では、2017年は暗号資産が合法化された年だったとも言えるかもしれません。11月にはビットライセンスを策定したニューヨーク州金融局初代局長のベンジャミン・ロースキーがリップル社の取締役に就任しています。そしてこの年、リップル社はインドとシンガポールにも新たにオフィスを開設しました。

年表には中央銀行のことについても記載がありますね?

イングランド銀行は3月にグローバルRTGS(即時グロス決済システム)向けのブロックチェーンの実証実験にリップル・ソリューションを採用することを発表し、7月にリップル社との共同実験の結果と次世代RTGSの計画概要を発表しました。リップル社は2016年1月に開催されたイングランド銀行が主催するRTGSイニシアチブの発足を祝う晩餐会にも出席しており、個人的にはその頃からイギリスの中央銀行と協業を始めていたのではないかと予想していました。また、11月にはリップル社が世界の24ヵ国を超える中央銀行が参加する中央銀行サミットを開催したことがIMF(国際通貨基金)とリップル社から発表されました。一方で、これらの中央銀行の動きは2017年のXRP価格の動きとは関係がなかったように感じています。

これほど大きなニュースがXRP価格の動きとは関係がなかったのですか?むしろ2017年で一番大きなニュースだったのではないですか?

数年間、毎日XRPという一つの銘柄に張り付いて調べ続けてきたことで、相場の動きに関して一つだけはっきり分かったことがあります。それは、どんなに大きなニュースであろうとも新聞やテレビなどに取り上げられなければ価格には殆ど影響しないということです。実際、中央銀行サミットに関するニュースが流れたときにもXRPの価格は微動だにしませんでした。新聞やテレビが価格に大きく影響するというのは株式投資などでは一般的に知られていることですが、これは暗号資産投資に関しても同様のようです。逆に言えば、大きな材料があってもテレビや新聞にまったく取り上げられない有望な暗号資産に投資しておけば、将来的に大きなリターンを得られるチャンスがあるということかもしれません。実際の価値と世間の評価の間に大きな乖離があるときが投資のチャンスだからです。

エックスラピッドの仕組み

送金にXRPを利用するというエックスラピッドの仕組みについて、リップル社からはまだ詳細な情報が出ていません。仮想通貨に投資する人の中にはエックスラピッドが利用されるようになってもXRPの価格は上がらないと言っている人達もいます。エックスラピッドではXRPを使ってどのように送金が行われるのでしょうか?

基本的な仕組みはとても単純です。例えば金融機関が100万円を送金する場合、取引所で100万円分のXRPが買われて送られるだけです。

え!?それだけですか?

はい、基本的にはそういうことです。もう少し詳しい説明が必要な場合は金融庁のウェブサイトでリップル社の公式ドキュメントが公開されているので、そちらの資料にエックスラピッドとXRPを利用した国際送金の流れが解説されています。

なるほど、この図はとても分かり易いですね。

この説明ではエックスラピッドを介した送金は次の3つのステップで行われると説明されています①金融機関の法定通貨がXRPに両替される②デジタル資産の取引所間でXRPが送付される③XRPが受取人側の法定通貨に両替される

驚くほどシンプルですね。この仕組みなら送金によってXRPの流動性と価格が上がるという理屈が分かります。

「XRPの価格は上がらない仕組み」という風説の流布により多くの人が「上がらないのだから、きっとこういう仕組みなんだ。」という誤解を抱いてしまっているようです。

なるほど。風説の流布によって刷り込まれた「XRPの価格は上がらない」という先入観があるために本来の仕組みを知ることが出来ないわけですね。

他にも「XRPは買われて売られるからプラスマイナスゼロで上がらない」なんていう風説も流されていますね。

でも、どうしてこんなに簡単な仕組みなのに「買われて売られるからプラスマイナスゼロ」なんて話を信じてしまうのでしょうか?

あれは典型的な「アキレスと亀」の論法を利用した話術なんですよ。

「アキレスと亀」というのはどういう話なのですか?

足の速いアキレスと亀が競争する話です。ハンデとしてアキレスは亀より後方からスタートします。アキレスが亀のスタート位置まで走る間に亀は数メートル先に進んでいます。その亀の位置までアキレスが走る間に亀はさらに前へ進んでいます。これを繰り返すのでアキレスは亀に永遠に追いつけないという話です。

そんな馬鹿馬鹿しい話は誰も信じませんよ。だって1秒間にアキレスと亀がそれぞれ進む距離を考えたら、あっという間にアキレスが亀を追い抜くことは明白じゃないですか。

そうなのですが実際にはこの話に騙されてしまう人がいるんです。騙されてしまう人は、その「1秒間に」という大事な要素が抜けていることに気付かないんです。もっとも、「アキレスと亀」の話は一般的なかけっこの話なので流石に騙される人は殆どいませんが、実際にはいろいろな詐欺でこうした論法が使われていて多くの人が騙されてしまうんです。

リップルに関する風説を流している人達もその論法を利用しているのですね。

彼らはA取引所からB取引所へのたった一つだけの一方通行の送金の話を持ち出して、XRPは買われても売られるからプラマイゼロで上がらない仕組みだと言っているんです。

それは本当に馬鹿げた話ですね。

実際には送金は双方向からされますし、XRPが1秒間に1500回の取引が出来るように設計されていることを考えれば、1秒間の送金回数がたったの1回という前提がおかしいことには普通は気付きます。金融機関による実際の送金ではXRPの性能はそれでもまだ足りないので、オフレジャー技術を使って1秒間に5万回の取引が出来るように設計されているんです。

1秒間に5万回ですか!世界各国からの国際送金の需要を考えたら、それぐらいの性能が必要なのですね。

現在のビザネットワークが繁忙期に毎秒1万回の取引を処理しているそうです。そこまで大きな話ではなくても、A取引所とB取引所の両方向から1秒間にそれぞれ100万円の送金が10回発生しただけでも、両方の取引所でそれぞれ1000万円分のXRPが買われることになります。でも、この話にしたって送金先がA取引所とB取引所のたった2つしか存在しないという現実にはあり得ない前提なので、送金先が仮に10カ所に増えただけでも各取引所からの送金ボリュームは単純計算で10倍ぐらいに増えることになるのですけどね。

国際送金の仕組みが複雑なので、そういう怪しい話に引っかかってしまう人も多いのですね。

リップル社が各国の規制当局との話し合いなどを通じて暗号資産の実用化への取り組みを進める中、風説の流布によってXRPの実用化が妨げられている現状は本当に残念です。

ブログを書き続ける理由

以前に伺った話では、『リップル総合まとめ』は2016年6月頃に座談会メンバーと情報共有のために始めたということでしたね?

はい、そうです。私が集めていたリップル社の動向に関する情報や投資のために必要となる最低限の技術的な資料をまとめました。

『リップル総合まとめ』には既に十分過ぎるほどの情報がまとめられていると思います。

確かに当初私が作った10人から20人程度が参加する座談会の仲間が参照するには十分な情報が集まったと思います。これは一緒に情報収集をしてくれた皆さんの協力があってこそ出来たことです。『リップル総合まとめ』を見ればリップル社とXRPに関する過去から現在に至るまでの経緯が把握できます。そして、2017年以降は世界各国の主要なメディアがリップルのニュースを報道するようになったので、これまでのように私たちが自力で情報を集める必要もなくなりました。それで座談会のメンバーも一度解散して、2017年になってからは個人での情報発信をやめる人達もいました。

ゴックスさんは何故それ以降もリップル総合まとめで情報発信を続けたのですか?

2017年の初め頃に旧座談会のメンバーの一人からある相談を受けたんです。その方は重い病気を患っていて医師から余命宣告を受けられたそうです。

投資をしている人達にもいろいろな方がいらっしゃるのですね。

それで、その方が自分が生きているうちにご家族に何とかして資産を残したいのだけど、XRPはそれまでに上がると思うかと聞かれました。私にも妻子がいるので、これは他人事ではないと思いました。

それで何と答えたのですか?

「きっと上がると思う」と言いました。もちろん投資は自己責任ですが、それからリップルとXRPの情報発信に関して私には一定の道徳的な責任があると考えるようになりました。

2017年初め頃と言うとXRPの価格は0・5円近くまで低迷していましたから、大変な時期だったのではないですか?

とても大変でしたね。とくに価格低迷の原因が取引所などの業界関係者が結託して流している風説に起因するものだったので、私はそれと徹底的に戦うことにしました。個人が発信する情報なのでどれだけのことが出来るかは分かりませんでしたが、流されている風説が嘘である証拠を一つ一つ突きつければ、それを信じていた人達も彼らの流す情報に少なからず疑問を持ち始めるだろうと思いました。

新聞や雑誌などのメディアから情報を得られない時期に、さまざまな証拠を積み上げる作業は大変だったのではないでしょうか。

リップルとXRPの情報を共有しているのは我々数人ぐらいしかいませんでしたし、当時の状況では私が一人でやるしかありませんでした。そもそも暗号資産の業界自体がとても小さく、彼らを敵に回すこと自体がリスクでしたから誰かが協力してくれることも期待できませんでした。取引所の関係者ですらそういう犯罪行為に手を染めている人達とヘラヘラして付き合っている状況でしたが、幸運にも2017年3月末からXRPは予想通りに高騰してくれました。それで一緒にXRP投資をしていた病気の方からもお礼の連絡を頂きました。

本当に良かったですね。そうした活動のおかげで最近は徐々にリップルとXRPに関する誤解が解けてきているのではないでしょうか。

暗号資産に限らず投資をしている人というのは様々ですよね。とくに日本は大きな自然災害を経験したばかりで、まだまだ経済的にも大変な状況の人達が沢山いると思います。災害や事故が原因で重い病気や障害を負ったり、一家の大黒柱の旦那さんが亡くなられたり、そういう状況でも暗号資産への投資で何とかしようと頑張っている人達も沢山いるはずです。だから大変ではあったけれども、今はそういう活動を続けてきたことにはそれなりに意味があったのではないかと思っています。

風説の流布はどうにかならないのでしょうか?この業界を見るとXRPだけをターゲットにしてかなり悪質な風説の流布が行われているように思います。

風説の流布をしている連中には怒りを覚えます。風説の流布は業務妨害罪や信用毀損罪にあたり、刑法の第233条に触れる犯罪なんです。それで、ツイッターなどを見ていると「業務妨害は親告罪だから被害者が動かなければ大丈夫」といったことを言っている人達がいますが、これはとんでもないことです。業務妨害は親告罪ではなく『非親告罪』なので、警察の目に触れれば即捕まる可能性があります。ツイッターやユーチューブにお店の商品にいたずらをする動画をアップして逮捕されるケースがありますが、あれがまさに偽計業務妨害罪や威力業務妨害罪にあたるものです。ネット上で特定の資産に投資している見ず知らずの他人に対して執拗に嫌がらせをしている人達がいますが、絶対に真似をしてはいけません。また、暗号資産交換業者や取引に関する規制強化策を盛り込んだ改正資金決済法と改正金融商品取引法が2019年5月31日に成立しました。

これにより、暗号資産に関する風説の流布、偽計、暴行または脅迫といった行為が禁止され、違反に対して10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金(またはその両方)、それが財産上の利益を目的としたものである場合には10年以下の懲役及び3000万円以下の罰金という罰則が規定されました。さらに、法人に対する両罰規定も定められ、法人の代表者や従業員が違反に関与した場合には7億円以下の罰金が科されることになります。

「虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」(刑法第233条)ぎょうむぼうがいざい【業務妨害罪】虚偽の風説を流布し、または偽計を用い、あるいは威力を用いて人の業務を妨害することによって成立する罪。(大辞林第三版より)

しんようきそんざい【信用毀損罪】虚偽の風説を流布したり偽計を用いたりして、人の経済活動に関する信用を失墜させる恐れのある行為をする犯罪。(大辞林第三版より)

価値のインターネットとニューエコノミー

2018年10月に開催されるリップル社主催のSWELLで、ビル・クリントン元アメリカ大統領が基調講演を行うと発表されました。SWELLはリップルネットに参加する世界中の金融機関が集まるカンファレンスですが、同氏がSWELLに登壇するのは楽しみですね。

若い人にはあまり馴染みがないかもしれませんが、ビル・クリントンの大統領任期は1993年から2001年までで、ビル・クリントン政権の副大統領は2007年にノーベル平和賞を受賞したアル・ゴアが務めました。ビル・クリントンは私たち最初のインターネット世代にとっては最も親しみのあるアメリカ大統領で、マイクロソフトのビル・ゲイツらと共に90年代に提唱されたニューエコノミー論を支持した人物です。ビル・クリントン政権で副大統領として活躍したアル・ゴアは、上院議員だった1991年に『High Performance Computing and Communication Act of 1991』という法案を上程しました。この法案が1991年12月9日に可決されナショナル・インフォメーション・インフラストラクチャ(NII)が生まれました。

このときアル・ゴアは『情報スーパーハイウェイ』と呼ばれる構想を掲げ、ハイパフォーマンス・コンピューティング&コミュニケーション・イニシアチブ(HPCCI)からNCSAのモザイク(Mosaic)に財政支援が行われました。モザイクはマーク・アンドリーセンによって1993年に開発されたウェブブラウザで、後にネットスケープ・ナビゲーターへと発展しました。アル・ゴアは2003年にグーグルのシニアアドバイザーとアップルの取締役に就任し、現在もアップルの取締役として活躍しています。

ビル・クリントン政権とインターネットの歴史にそのような繋がりがあったとは驚きです。

ビル・クリントン元アメリカ大統領とともにSWELLで登壇するリップル社取締役のジーン・スパーリングも1993年から2001年までアメリカ合衆国国家経済会議(NEC)の副議長と議長を務め、彼らと共に90年代のニューエコノミーの時代を支えてきた人物の一人です。同氏はオバマ政権で2011年から2014年まで再びNEC議長を務め、2015年にリップル社の取締役に就任しました。おそらく同氏ほどインターネットと経済の関係に詳しく同社の取締役に相応しい人物はいないでしょう。つまり、90年代からニューエコノミー論を支持してきた2人が2018年のSWELLで再び顔を合わせることになりました。2人が「ニューエコノミーはこれから始まる」とでも言うのではないかとワクワクしています。2017年10月に開催された最初のSWELLでは、ワールド・ワイド・ウェブの考案者であるティム・バーナーズ=リーとFRB前議長のベン・バーナンキが登壇したことで世界中の注目を集め、年末から年始にかけてXRPは400円の最高値を付けました。

2017年末のXRP価格の高騰は注目を集めましたね。騒ぎに乗じて理由もなくXRP投資に参入してきた人達も多かったのではないでしょうか。

ニューエコノミーと価値のインターネットの繋がりはそれだけではありません。先ほどご紹介したマイクロソフト創業者のビル・ゲイツが設立した慈善団体のビル&メリンダ・ゲイツ財団も2017年10月に発展途上国の銀行口座を持てない貧困層を支援するためのモジャループ(Mojaloop)と呼ばれるモバイル決済プラットフォームの開発でリップル社と提携しています。そして、モザイクやネットスケープ・ナビゲータの開発者としても知られるマーク・アンドリーセンが設立したベンチャーファンドのアンドリーセン・ホロウィッツは、2013年4月に既にリップル社に出資していました。アル・ゴアが参画するアップルも既に同社の製品にILPを統合し、サンタンデール銀行がアップル・ペイとリップルを統合したアイフォン(iPhone)の国際送金アプリを2018年第一四半期に実用化しています。

確かにこうしてお話を伺っていると90年代のインターネット黎明期とITバブルの立役者が続々とリップルのもとに集結しているように見えますね。

ニューエコノミーというのは需要が供給を上回るとインフレになり供給が需要を上回ると失業率が上がるという従来の経済(オールドエコノミー)に対し、コンピュータとインターネットを使う産業が発達した社会では企業が顧客の需要に一致する適切な供給ができるようになり、インフレと失業が起きない経済構造を作り出すことができるとする経済理論です。しかし、実際には2000年代初頭のITバブルの崩壊とともに景気後退が始まり、ニューエコノミーにより景気循環が消滅するという説は事実上否定されることになりました。私はその一つの要因が支払い機能を持たない現在のインターネットの不完全性であり、リップル社が提唱している『価値のインターネット』がそれを克服する鍵になるのではないかと考えています。

インターネットと世界の経済構造にはそれほど強い結びつきがあるのですね。

私は経済の専門家ではないので難しいことは分かりませんが、アメリカの経済学者で女性として史上初のジョン・ベイツ・クラーク賞受賞者のスーザン・アティがリップル社のアドバイザーを経て2014年4月に同社の取締役に就任しています。彼女は現在もスタンフォード大学経営大学院の教授を務めており、リップルのような暗号資産が経済に及ぼす影響について専門家の視点で解説しています。『Susan Athey: The Economics of Bitcoin & Virtual Currency』というタイトルの動画がチューチューブでも公開されています。

経済学の世界ではジョン・ベイツ・クラーク賞はノーベル経済学賞より受賞が難しいと言われていますね。その受賞者の言葉であれば説得力があります。

スーザン・アティは世界的な経済学の権威で、彼女に関しては凄い逸話があります。1995年に彼女が24歳でスタンフォード大学経営大学院で博士号を取得したとき、バークレイ、ハーバード、MIT、プリンストン、スタンフォード、エールなどを含む全米20以上の大学が彼女を奪い合い、ニューヨーク・タイムズに大きく取り上げられました。1995年4月21日のニューヨーク・タイムズの記事は彼女を次のように評しています。

「彼女は若干24歳だが、世界の経済学会の誰もが彼女のことを知っている。」(ニューヨーク・タイムズ『The Top Draft Pick in Economics;A Professor to Be Coveted by Two Dozen Universities』1995年4月21日より)

経済の専門家でリップル社が提唱する『価値のインターネット』に注目しているのは彼女だけではありません。先ほども述べたように2017年10月に開催された第一回のSWELLでは、FRB前議長のベン・バーナンキが基調講演を行いました。これはリップル社が主導する『価値のインターネット』が金融と経済に与える影響の大きさを専門家が認識していることの表れだと思います。

XRPの価格予想

XRPの価格は将来的にいくらぐらいまで上がると予想していますか?

XRPを送金に利用するリップル社のエンタープライズ製品のエックスラピッドが本格的に稼働すれば、理論上は数千円になると予想しています。

数千円というのはさすがに夢物語のようにも聞こえますが、何か根拠はあるのですか?

XRPの知名度がまだ低くリップル社からエンタープライズ製品が発表される以前、当時CEOだったクリス・ラーセンは日本のある取引所に「まずは1ドルを目指したい。」と語ったそうです。それはスタートラインがその程度の価格になるというのが当時のリップル社の目標だったのだろうと私は捉えています。ですから、私も当初は数百円を目標にしてXRPへの投資を始めました。

その目標が一桁上がった理由は何ですか?

リップル社が目標通り銀行市場に参入することに成功し、XRPを国際送金に活用するためのエンタープライズ製品の実用化が実際に始まったことです。以前、レディット(Reddit)で「数学的に言うと、潜在的にリップルの最高値はいくらに達する可能性があるか?」という質問が投げられたことがあります。この質問にリップル社のデイビッド・シュワルツは「リップルが現在起こっている高摩擦の国際送金の価値を捕らえた場合、将来的に送金やその促進のためにXRPを保有する人々からの追加の需要を考慮すれば20ドルからその数倍になるだろう。」と回答しました。

それは夢のある話ですね!

XRPを保有している私が「XRPは○○円になる」なんて話をすれば、それはただのポジショントークになってしまいます。だから、あくまでも目標や夢の話ですが、デイビッド・シュワルツは同じ質問に対して「リップルが摩擦の減少によって増加する国際送金ボリュームの価値を捕らえた場合、120ドルからその数倍になるかもしれない。」と答えています。もっともこれは「もしも〜なら」というまだ起こっていない仮定の話で、他にも「もし世界の経済規模が3倍になって国際送金のボリュームが増大して、リップルがその全てを捕らえたら…」とか「人々がその他のことにもリップルを使い始めたら…」とか「私たちが他の惑星に経済を拡大して、そこでXRPが使われたら…」といったユニークな話もありました。

それはかなりユニークですね。でも、前半の話は凄く現実味のある話にも聞こえました。

この手の話でよくあるのは「現在の国際送金の時価総額が〇〇だから、それを基準に計算すると…」というものですが、そういう話をするのは本当にナンセンスなことです。90年代のインターネット黎明期に「電子メールが郵便の手紙のシェアの〇〇%を取得すると…」みたいな話がありましたが、まさにそれと同じようなことを言っているように聞こえます。

確かに数百円の国際送金ができない現在はその送金需要自体が存在しないので、そうした少額の国際送金が行われるようになった未来と現在の国際送金の時価総額を単純に比較することには意味が無さそうですね。

リップルネットが普及してLINEやフェイスブックのようなアプリで簡単に国際送金が出来るようになれば、国際送金の需要自体が増加することは明らかです。新興国の一般的な人の月収は数千円ですが、現在は出稼ぎの外国人労働者が母国に小額のお金を送りたくても一回あたり5000円を超える高額な手数料のせいで気軽に国際送金が出来ません。XRPはまさにそのような今は存在しない国際送金の需要を取り込もうとしているんです。

なるほど。既にそうした少額の送金需要というのは存在しているんですね。

それと価格予想に関しては、2018年6月にスタンフォード大学経営大学院の経済学者でジョン・ベイツ・クラーク賞受賞者のスーザン・アティ教授と、同じくスタンフォード大学経営大学院のMBA候補生のロバート・ミッチニックが『暗号資産のためのファンダメンタル的な評価フレームワーク』(A Fundamental Valuation Framework for Cryptoassets)と題する論文を発表しています。2人は現在の1日当たりのビットコインの取引量(30億ドル)と取引量の平均増加率(3・5〜5・5%)から、2030年までに1日当たりの取引量が56億〜282億ドルに達すると見積もった上で、XRPのファンダメンタル的な価値が6・37〜32・91ドルに達すると試算しました。また、2018年時点の成功率を25%とした場合、現在のXRPには1・59〜8・23ドルの潜在的な価値があり、BTCとともにXRPが市場から過小評価されている傾向があることを示しました。

両通貨の長期的な価値の上昇は安定的な需要が持続することに依存するとした上で、潜在的な需要とのギャップから長期的には異常に高いリターンを得られる可能性もあると結論付けています。

2018年のこと

2018年は年初から大変でしたね。

年末から年始にかけてXRPは400円超まで急騰しましたが、急激に騰がった反動で200円近くまで調整が入りました。そして、1月26日の深夜0時頃に日本の大手暗号資産取引所のコインチェックがハッキング被害に遭い、顧客の預かり資産の約580億円相当のNEM(XEM)が盗まれました。当時、国内の仮想通貨取引の大半がビットフライヤーとコインチェックという2つの大手取引所で行われており、XRPを取り扱っていた大手取引所がコインチェックだけであったため、XRPの価格は急激に下がりました。海外でもXRPを積極的に取り扱っている取引所がほとんど無かったことも1つの原因だと思います。

大きな下げで驚きました。

XRP価格は100円を割り込み2月に再び120円台まで戻しましたが、3月にまた100円を割りました。この下げはBTC価格に連動したもので、他の通貨も同様に下がりました。後に判明したことですが、2014年に盗難事件で顧客資産を失ったマウントゴックスの管財人が2017年末から430億円相当のビットコインを売却し、3月以降にも更に260億円相当のビットコインを売却していたそうです。

それでは約690億円の売りが断続的に続いたわけですね。

その後、SWELL開催前の9月後半から若干値を戻しましたがコインチェック事件の傷跡は深く、金融庁が他の取引所も含めて業務改善命令を出すなど規制に動いたため、テレビCMの放映停止などの影響で長期間に渡って市場は閑散としたムードになりました。

価格のこと以外では何かニュースはありましたか?

2018年は10月に予定通り第2回目のSWELLが開催されました。カンファレンスには予定通りビル・クリントン元アメリカ大統領が登壇し、ブロックチェーンのような革新的な技術が社会に与える影響や規制に向き合うことの重要性について語りました。更にXRPを送金に利用するエックスラピッドの商業利用が開始されたことがリップル社CEOのブラッド・ガーリングハウスから発表され大きな話題になりました。

パイロット(試運転)の発表から僅か1年で商業利用が実現したんですね!

前年の10月にパイロットの開始を発表したクアリックス社以外にも、イギリスのマーキュリーFXやアメリカのカタリスト・コーポレート・フェデラル・クレジットユニオンを含む複数の機関がエックスラピッドの商業利用を開始することが発表されました。

どのような企業なのですか?

クアリックス社はアメリカとメキシコ間で国際送金サービスを提供するアメリカの会社で、マーキュリーFXもイギリスで個人や法人向けに国際送金サービスを提供しています。

カタリスト・コーポレート・フェデラル・クレジットユニオンというのは随分長い名前ですがどういった金融機関なのでしょうか?

クレジットユニオンというのは日本で言うと信用金庫のような共同組織形態の金融機関です。中でもコーポレート・クレジットユニオンというのはクレジットユニオンを組合員とするクレジットユニオンで、一般のクレジットユニオンの余剰資金の運用、クレジットユニオンの資金決済の取り次ぎ、流動性の供給などを含む中核的な金融サービスとバックオフィス支援を組合員と顧客に提供しています。アメリカのクレジットユニオンには州免許と連邦免許のものがあり、連邦免許の組織はフェデラル・クレジットユニオンや連邦クレジットユニオンと呼ばれています。カタリスト・コーポレート・フェデラル・クレジットユニオンは全米に1400以上の会員を有する連邦免許のコーポレート・クレジットユニオンです。

エックスラピッドは小さな会社にしか使われないというFUDが流されていましたが、どうやらそんなことはないみたいですね。

馬鹿馬鹿しい話です。2018年だけ見ても1月に国際送金サービス大手のマネーグラム、2月に同じく国際送金サービス大手のウエスタンユニオン、3月にカナダのケンブリッジ・グローバル・ペイメンツ、5月にイギリスのカレンシーズ・ダイレクトがエックスラピッドのパイロットを発表しています。そして、ニューヨーク証券取引所に上場しているIDTコーポレーションも1月にエックスラピッドの採用を発表しています。

他にも大手の国際送金業者などが商業利用の準備を進めているのですね。

エックスラピッドの商業利用開始以外では、イタウ・ウニバンコ(ブラジル)、インダスインド銀行(インド)、ドファール銀行(オマーン)、クウェート・ファイナンス・ハウス(クウェート)、クウェート国営銀行(クウェート)、コタック・マヒンドラ銀行(インド)、カーギルズ銀行(スリランカ)、PNC銀行(アメリカ)、セイロン商業銀行(スリランカ)、ブラデスコ銀行(ブラジル)、商業国際貿易商銀行(マレーシア)、サウジ・ブリティッシュ銀行(サウジアラビア)などの銀行が新たにリップルネットに参加することが分かりました。銀行以外では中国の決済サービス大手の連連、世界最大の国際送金業者のUAEエクスチェンジ、シンガポールのインスタレム、ブラジルのビーテック、カナダのジップ・レミット、マレーシアのマネーマッチ、イギリスのマネーネット・イント、イスラエル最大の金融サービス企業のGMT、韓国の暗号資産取引所のコインワン・トランスファーなどがリップルネットへの参加を表明したほか、サウジアラビアの中央銀行にあたるサウジアラビア金融局(SAMA)もエックスカレントのパイロットを開始しました。

各国の国際送金サービス大手だけでなく中央銀行もリップルネットへの参加を表明しているのですね。

はい、リップル社のCEOや関係者からイングランド銀行やサウジアラビア金融局を含む数十の中央銀行と既に協業していることが明かされています。

XRPの分配は順調そうですか?

リップル社は5月にスプリング・イニシアチブというプロジェクトを発足し、XRPレジャーを活用するスタートアップ企業に対してXRPの無償配布を開始しました。そして、これまで同社の最高技術責任者(CTO)を務めてきたステファン・トーマスは、リップル社とは完全に独立したILPとXRPレジャーを活用するスタートアップのコイル社(Coil)を設立しました。このリップル社からスピンアウトしたコイル社にはステファン・トーマスの他に、リップル社共同創業者のクリス・ラーセン、インターレジャー・プロトコルの共同考案者であるエヴァン・シュワルツ、XRPレジャーのための新しいコンセンサス・アルゴリズムの『コバルト』を考案したイーサン・マクブロー、ステファン・トーマスと共にILPに取り組むベン・シャラファンも参画しています。

リップル社からのスピンアウトですか。これは楽しみですね!

スピンアウトといえば、これまで気付かなかったのですがXRPレジャーを開発したアーサー・ブリットとデイビッド・シュワルツが2017年にポリサイン社(PolySign)というデジタル資産のための機関向けカストディ・ソリューションを提供する会社の取締役に就任しています。同社のCEOには、資産運用業界向けのプライムブローカー業務および取引執行業務を提供するコニファー・フィナンシャル・サービス(Conifer Financial Services)の社長兼CEOを務めたジャック・マクドナルドが就任しています。更に2015年2月から2018年4月までリップル社の最高コンプライアンス責任者(CCO)を務めたアントワネット・オゴーマンが同社のCCOに就任し、2013年10月から2015年12月までリップル社のプロダクト・マネージャーを務めていたアンナ・トンもプロダクト副社長として参画しています。

ポリサイン社とはどんな会社なのですか?

デジタル資産のためのカストディ・ソリューションを提供する会社ということ以外は分かりません。デイビッド・シュワルツも同社の事業については「ステルス戦略なので話せない」と言っています。ただ、ポリサイン社のウェブサイトには、世界最大の信託銀行グループであるバンク・オブ・ニューヨーク・メロンの副会長として世界の投資可能資産の25%を管理する投資サービス事業の監督を行っていたティム・キーニーがシニアアドバイザー兼取締役を務めると書いてありますから、水面下で何か大きなプロジェクトが進んでいるのではないかと期待しています。

お金の正体

私達が使っているお金とは何なのでしょうか?

ライアン・フッガーは、「お金にはIOU(借用証書)としての性質がある」ということに着目してリップル・プロトコルを考案しました。

お金が借用証書であるとはどういうことなのですか?

一番分かり易いのは私達が普段お金として使っている民間銀行が発行する預金残高です。この預金残高には、私達が銀行に貸した現金に対して民間銀行が発行する借用証書としての性質があります。証書と言っても実際には通帳に書き込まれる数字や銀行のコンピュータ・データベース上の数字ですが、それ自体が借用証書としての性質を持っていることは疑いようがありません。

なるほど。じゃあ、お金の起源も借用証書なのですか?

その通りです。今日、私達が暮らすこの世界にお金が無かったと仮定します。私が八百屋さんでキャベツ3つを買い物かごに入れると、私にはそれを弁済する債務が発生します。でも、お金が無い世界ですから私は紙に「キャベツ3つを受け取りました」と書いてお店に渡します。つまり、借用証書を発行して相手に渡すわけです。これを何度か繰り返し、1ヶ月ほどすると八百屋さんが私のところに来て弁済を求めます。この仮想の世界で私は床屋だったので、八百屋さんの髪を切ることでキャベツを買った代金を弁済しました。

つまり借用証書をお金として使って買い物をしたわけですね。

はい。じつは人類史の研究結果から紀元前のメソポタミア文明でこれと同じことが経済活動として行われていたことが分かっています。しかし、当時はまだ文字が存在しませんから、土で作ったトークンが借用証書として利用されていました。やがてメソポタミア文明で楔形文字(くさびがたもじ)が誕生し、この債権と債務の記録が粘土板に文字として記録されるようになりました。これと同様の支払いの方法は、企業が支払いに利用する約束手形などとして現在でも私達の経済活動に利用されています。

それが現代のような「通貨」にどのように発展したのでしょうか?

この借用証書を利用した物々交換には一つの問題がありました。物と物の組み合わせの数は膨大で、その全ての交換レートを管理することは事実上不可能でした。そのため、メソポタミアの人々は大麦を『シラ』と呼ばれる単位に分けてブリッジ資産として使い始めたのです。しかし、大麦は作物であるため保存や運搬が不便でした。そこで、『シェケル』と呼ばれる重さ(8・33グラム)の単位で管理される本質的には価値の無い銀をブリッジ資産として利用するようになったのです。これはハンムラビ法典や旧約聖書にも記されている通りです。計量の手間から、これは後に数字を刻んだ硬貨に発展しました。

それでは本質的には価値の無いブリッジ資産が通貨に発展したのですか?

もともと私達が交換しようとしている物自体が負債の手形である借用証書なわけですから、本質的にはそれは「債務を履行してくれる」という信用で成り立っているということです。銀行でローンを組むときに、実質的に銀行は私達が発行する借用証書を手数料を取って銀行が発行する借用証書(つまり預金残高)に交換して支払いを行います。つまり信用創造です。これが成り立つのは、個人の資産よりも銀行が保有する資産の方が圧倒的に多いため、債務不履行になる可能性が圧倒的に低いからです。同様に国が発行する法定通貨にも借用証書としての性質がありますが、国民は生まれながらにして国に対して租税債務を負っており、その弁済は国が発行する法定通貨でしか行えないため法定通貨は価値を持つのです。

でも、なぜ政府ではなく中央銀行が通貨を発行するのでしょう?

それは通貨の発行には通貨発行益(シニョリッジ)が発生するからです。もし、1万円を発行して9990円の通貨発行益が得られたら、時の権力者が通貨発行権を悪用して通貨を乱発してしまう可能性があります。これは歴史的に何度も繰り返されてきたことです。人々が金や銀をブリッジ資産として利用し始めると、時の権力者が額面価値よりも実質価値の低い金貨や銀貨を発行して通貨発行益を稼ぐようになってしまったのです。

1万1千円の金で1万円金貨を発行してくれる善良な王様がいれば良いのに。

でも、それは成り立たないんです。もし日本が1万1千円の金を使って1万円金貨を本当に発行したらどうなるでしょうか?外国人が日本に押し寄せて、1万円金貨を持って行ってしまうのではないでしょうか。これは金以外の金属にも言えることですし、仮に硬貨の額面価値よりも実質価値の方が若干低かったとしても同様のことが起こるでしょう。そのため、私達が通貨として利用するものには実質的な価値が低いものが利用され、国の絶対的な信用を裏付けとして紙幣が発行されているわけです。だから、私達が日常的にお金として使っている法定通貨、預金残高、クレジット、手形、小切手、電子マネーなどは本質的には借用証書なのです。つまり負債です。

「お金=負債」という話の根拠はそこにあったんですね。

誤解を恐れずに言えば、お金には本質的に価値はありません。大事なのはその負債であるお金が、個人や法人が発行する借用証書の交換を効率化し、消費と生産を促すための道具だということです。私達の経済活動が借用証書の交換によって成り立っているというお金の起源に立ち返れば、金や銀のように普遍的かつ私達が絶対的な信用を与えられるブリッジ資産の存在こそが重要だからです。これはまさにリップル社の取り組みとも重なります。

お金の正体が借用証書で経済を活性化するための道具だということは理解できました。でも、お金の正体が借用証書だとしたら、お金を作っているのは私達ということですか?

民間の需要に応じて銀行によってお金が供給されるとする理論は『内生的貨幣供給理論』と呼ばれています。これは、私達が借金をするときに(つまり借用証書を発行するときに)お金が作られることを意味します。でも、お金を借りるには信用が必要です。そして、それはお金を借りる人の経済力に依存するものです。

「経済力」とは具体的に言うとどういうものですか?

ここで言う経済力とは、サービスや物を生産して提供する能力のことです。例えば5000万円の家を購入するケースを考えると、ただ借金をして住む家を買うだけの人と買った家を誰かに貸す人とでは経済力に差が出ます。なぜなら、前者では家は住宅ローンの返済や税金、保険料、その他の維持費を支出するだけの負債であるのに対し、後者では家は家賃収入を生み出してくれる資産だからです。後者のような資産を持ち経済力のある人に対しては銀行はお金を貸してくれるでしょう。金持ち(資産家)がますます金持ちになると言われる所以です。しかし、私達が使っているお金が借用証書であるという本質を知れば、それが経済を回している仕組みだということが分かります。

学校ではそういうことは教えてもらえないのが残念です。お金や経済の本当の仕組みが学べる教材は身近にあるんですか?

現代のお金と経済の仕組みの解説としては、レイ・ダリオの『30分で判る経済の仕組み』(How The Economic Machine Works)という動画が有名です。もっとお金の仕組みについて詳しく知りたければ三橋貴明さんの『日本人が本当は知らないお金の話』や中野剛志さんの『目からウロコが落ちる奇跡の経済教室』がお勧めです。お金と資産が持つ性質とその増やし方を知りたければロバート・キヨサキの『金持ち父さん貧乏父さん』が鉄板です。ユヴァル・ノア・ハラリの『サピエンス全史』は人類史とお金の関係を含め、私達が暮らす現代社会がどのように形成されたのかを説明しています。うちの子供達には学校を卒業するまでに全部読んでもらいたいと思っています。