独立系政府監視機関が利益相反の疑いでSECを提訴
さて、今日も界隈が静かなのでニュースをお伝えすることにしました。12月10日、独立系政府監視機関である Empower Oversight が、米証券取引委員会(SEC)を暗号通貨に関する利益相反の疑いで提訴しました。
海外ではかなり話題になっていますが、日本では真面目に伝える人達がいないためか知らない人が多いようです。以下に全文の和訳を掲載します。
ワシントン― Empower Oversightは、証券取引委員会(SEC)に対し、元高官による潜在的な利益相反と暗号通貨の規制に関する複数の情報公開法(FOIA)請求にSECが応じることを強制することを求める訴訟を提起しました。
8月、Empower Oversightは、SECの高官とその現在および以前の雇用主との暗号通貨に関するあらゆるコミュニケーションを求める詳細な情報公開請求書をSECに提出しました。元SEC高官のウィリアム・ヒンマンは、SECの暗号通貨規制の指導に携わりながら、元雇用主のSimpson Thacherから数百万ドルの報酬を受け取っていました。Simpson Thacherは、暗号通貨のエンタープライズ・イーサリアムを推進するグループの一員です。ヒンマンは、イーサリアムは証券ではないと発言し、それによってイーサリアムの価値を急上昇させました。
XRPとして知られる別の暗号通貨のクリエイターは、後にそれが証券であるという主張でSECに訴えられたため、XRPはその価値の4分の1を失うことになりました。XRPに対する訴訟を起こしたマーク・バーガーは、ヒンマンが行ったのと同じように訴訟を起こした直後にSimpson Thacherに移籍しました。
最後に、元SEC委員長のジェイ・クレイトンは、ビットコインは証券ではないと宣言したときに利益相反があったかもしれません。クレイトンは、SECに在籍した後、ビットコインとイーサのみを扱う暗号通貨ヘッジファンド「ワンリバー・アセット・マネジメント」に参加しました。
現在までにSECは、Empower Oversightの情報公開請求にあった8つのカテゴリーのうち6つの文書に応じていません。SECは、8つのカテゴリーのうち2つのカテゴリーを検索したところ、クレイトンやバーガーとSECの倫理相談室との間で行われた、彼らの将来の雇用先や潜在的な忌避についてのコミュニケーションに関する記録が見つからなかったと主張しています。他の6つの要求には完全に無回答のままです。
その結果、Empower Oversightは、SECが情報公開請求の他の6項目に従うことを強制するために、バージニア州東部地区の米国地方裁判所にSECを提訴しました。これまでの訴訟と同様に、Empower OversightはHusch Blackwellが代理人を務め、SECを、情報公開法(5 U.S.C. § 552(a)(6))に違反して法定期限を遵守しなかったこと、および情報公開法(5 U.S.C. § 552(a)(3))に違反して機関記録を不法に保留したことで提訴しました。これは、Empower Oversightが今年の7月に設立して以来、2件目の情報公開訴訟です。
SECが情報公開義務を遵守するのを待つ間、Empower Oversightは以前、情報公開請求に余分な費用を課したSECの誤った決定を訴え、最終的には「メディアリクエスター」であることを理由に請求の手数料免除を勝ち取っていました。
これらの調査でEmpower Oversightを助けるために開示したい一次情報をお持ちの方は、こちらから内密にご連絡ください。
「一次情報をお持ちの方は内密にご連絡ください」というところが面白いですね。内部告発はあるのでしょうか。「イーサリアムは証券ではない」というフリーパススピーチをしたウィリアム・ヒンマン元局長が、SEC在任中にイーサリアム・アライアンスのメンバーであるSimpson Thacherから数百万ドルを受け取っていたことはもはや有名な話ですが、「XRPに対する訴訟を起こしたマーク・バーガーは、ヒンマンが行ったのと同じように訴訟を起こした直後にSimpson Thacherに移籍しました」という話もとても興味深いです。
記事に書かれているとおり、Empower OversightはSECに対して情報公開法(FOIA)に基づき、SEC元高官たちと天下り先との間の暗号通貨に関するコミュニケーションを開示するように求めていますが、どうやらSECはこれを拒否しているようです。どのような結末になるのか目が離せませんね。