控訴がRippleに与える影響は!?
2024年8月7日に最終判決が下されたSEC対Ripple訴訟で、SECが裁判所に控訴通知を提出しました。これについて、Ripple社が行っている XRP を利用したクロスボーダー決済のビジネスについて心配する声があります。そこで、今回の SEC の控訴が XRP を利用したクロスボーダー決済にどのような影響を与えるのか考えてみようと思います。
結論から言うと、Ripple社が提供する現在の Ripple Payments では、従来のように送金会社が Ripple社から XRP を購入しなくても XRP を利用した送金が行えるように改良されているので、控訴審の結果がどうなろうと Ripple社のビジネスには影響を与えないでしょう。また、控訴審は2026年まで結論が出ないと思われるので、皆さんの大切な時間を無意味な訴訟結果を待つために使うのはもったいないと思います。
より詳しいことが知りたい人は、Ripple Payments Direct のドキュメントがあるので読んでみると面白いです。
Ripple Payments Direct を利用すると、決済プロバイダーとして Ripple に接続できます。Ripple Payments Direct を利用することで、あなたは国境を越えたフィアット決済サービスのために Ripple と直接的な金融取引の取り決めを行います。Ripple は、受益者への支払い、支払いパートナーの管理、支払いパートナーへの資金提供、および受益者への支払いの対価としての手数料の支払いを担当します。Ripple を決済プロバイダーとして設定することで、XRP を購入、売却、または保有する必要がなくなります。
また、Ripple社は最近、ラテンアメリカ最大の取引所 Mercado Bitcoin が、この Ripple Payments Direct を採用したことを発表しています。
Ripple’s end-to-end payments solution is now live in Brazil!
Learn how our new partnership with @MercadoBitcoin will streamline treasury operations between Brazil & Portugal, boosting cross-border payment efficiency via Ripple’s managed payments solution.https://t.co/wQqHRkd9wf— Ripple (@Ripple) October 3, 2024
どうやら Ripple社の事業は、私たちが考える10歩も20歩も先に進んでしまっているようです。
判決自体の影響範囲
これまでSEC対Ripple訴訟の判決が、今後のRipple社のビジネスや他のクリプト訴訟に大きな影響を与えるといった様々なFUDが流されてきました。しかし、実際には裁判所は次のようにRipple訴訟の判決が他のクリプト訴訟に影響を与えるものではないことを公式にSECに伝えています。
連邦地裁:
SECは、今回の命令が他のデジタル資産に関する裁判の「判例的価値」を有すると主張していますが、当裁判所の裁定を誤って解釈しています。例えば、SECは、「暗号資産取引プラットフォームにおける発行者の募集と販売は、第三者の努力に基づく利益に対する合理的な期待を生じさせることができるか」という問題について控訴しようとしています。しかし、裁判所は、デジタル資産取引所における募集や販売が、第三者の努力に基づく利益に対する合理的な期待を生じさせることはできないとは裁定していません。裁判所は、取引の事実、状況、経済的実態の検証を含む本件の状況を総合すると、リップル社のプログラム販売により、投資家がリップル社の努力による利益を合理的に期待することはできないと裁定しました。
つまり、この訴訟の判決は、Ripple社が過去に行った特定の販売に対してのみ有効なものであり、その他のクリプト訴訟に対する判例的価値は無いというのが裁判所の公式見解です。また、Ripple社はこの訴訟で問題となっているプログラム販売を2019年Q3までで終了しており、それ以降はプログラム販売を行っていません。このプログラム販売が投資契約を構成しない理由を裁判所は次のように説明していました。
例えば、プログラム購入者がデジタル資産取引所を閲覧中に、XRPの価格が劇的に上昇するのを見たけれど、リップル社の存在を知らなかったとします。そのプログラム購入者が、後にXRPを売却して利益を得ることを意図して取引所からXRPを購入した場合、彼女は「利益を期待して」XRPを購入したことになりますが、その動機はHoweyの要件である「第三者の起業家的または経営的努力に由来する」ものではありません。
そして、前述したようにRipple社のクロスボーダー決済製品は、パートナーの送金会社が XRP を購入することなく XRP を利用した送金が行えるように改良されているため(Ripple社が決済プロバイダーとして顧客の代わりに XRP を売買するため)、もはやこの訴訟で争われている問題がRipple社のビジネスにとって致命的な影響を与えることはありません。実際、Ripple社は最終判決後にすみやかに罰金を支払う意思を表明し、SECが控訴しない限り、その判決に対してとくに控訴の必要性がないことを明らかにしていました。
Ripple社は、ドバイ金融サービス局(DFSA)からも、ドバイ国際金融センター(DIFC)での Ripple Payments Direct の利用に関する原則承認を取得しています。
We’re delighted to have secured in-principle approval of a financial services license from Dubai Financial Services Authority, unlocking our end-to-end managed payments services in the UAE. https://t.co/4zq8YPlgaG
— Ripple (@Ripple) October 1, 2024
このように、Ripple社は既に裁判所の判決が定めたルールに適合する Ripple Payments Direct をグローバルに展開し始めており、従来の決済プロバイダーへの決済ソリューションの提供だけではなく、国際的な決済プロバイダーとしてこれから急成長することが予想されます。