翻訳にあたって
『Rippleプロトコル入門』は、リップル社がかつて公式サイトで公開していた『The Ripple Protocol Primer』を私が独自に翻訳したものです。既に原文の公開は中止されており、誤訳などの間違いがあるかもしれないため、ご利用は自己責任でお願いします。
概要
Rippleとは?
Rippleは金融取引を行うためのインターネット・プロトコルです。Rippleを使うことで世界中のどこにでも、あらゆる通貨で瞬時に無料でお金を送ることができます。
インターネット・プロトコルとは?
インターネット・プロトコルは、コンピューターを相互にインターネットに接続し、通信するためにデザインされた一連のルールです。
インターネット・プロトコルの実例
- HTTP(Hypertext Transfer Protocol)は、ウェブサイトを構築して共有するための一連のルールです。HTTPの発明は World Wide Web をもたらしました。
- SMTP(Simple Mail Transfer Protocol)は、インターネット上でメッセージを送信するための一連のルールです。SMTPの発明は、分散ネットワークを横断して電子メールを送信することを可能にしました。
- RTXP(Ripple Transaction Protocol)は、インターネット上で取引を行うための一連のルールです。RTXPの発明は、分散ネットワークを横断して価値を移動することを可能にします。まるでお金を電子メールのように。
誰がインターネット・プロトコルを所有しますか?
誰もプロトコルを所有しません。それは便利な規格として発明されるものです。誰もが自分のソフトウェアやビジネスでプロトコルを選択することができます。同様に、Rippleは価値の交換のために発明された無料でオープンソースのプロトコルです。電子メールのように、誰もそれを所有せず、セントラル・オペレーターは存在しません。
金融取引にRippleを使用する利点は何ですか?
金融取引のためのオープンで分散型のインターネット・プロトコルは、多くの利点を提供します。
- 安価な決済。Rippleは誰にも所有されていないため、支払いをするためのコストは減少します。Rippleを通じて支払いを受け取る小売事業者は、数十億ドルの費用を節約することができます。
- 高速な決済。なぜならRippleの取引は自動で、決済は数秒以内に完了します。迅速なお金のやりとりを可能にすることで、Rippleは経済活動を促進します。
- 簡単な両替。Rippleは、追加費用なしで両替を可能にします。これは国際取引をより簡単に、より採算性の高いものにします。
- 金融が身近に。Rippleはインターネット接続のみを必要とするため、世界のアンダーバンクトな地域に住む数十億人の人々に金融サービスを提供できます。
- 金融の相互接続。価値交換のための分散型プロトコルを作ることで、Rippleは独立したビジネス間の取引を容易にします。これによって、金融システムの摩擦や非効率を軽減します。
Rippleプロトコル:入門
決済テクノロジーは通信技術より数十年遅れている
インターネット の初期には、人々は限られ閉ざされたネットワークの中で、メッセージを送信することだけしかできませんでした。あなたが1989年より以前の CompuServeユーザーであったならば、あなたは他の CompuServeユーザーにしか電子メールを送ることができませんでした。もし、あなたが GEnieユーザーであったならば、あなたは他のGEnieユーザーにしかメッセージを送信することができませんでした。Eメールはまだ作られておらず、 個別のインターネット・サービス・プロバイダーによって運営されるメッセージング・システムを繋ぐための標準プロトコルは存在しませんでした。
一般的に email として知られるSMTP(Simple Mail Transfer Protocol)が作られたとき、たくさんの異なるメッセージシステムを単一の相互接続されたシステムと連携することを可能にしました。SMTPの特質 は、ちょうどインターネットがそのようにデザインされたように、独立したシステムを接続することでした。相互接続された電子メールシステムの優位性は明らかで強力だったため、SMTPはすぐに電子メールの標準になりました。今日、連邦制の電子メールシステムの利益は一般的に理解され、広く受け入れられてい ます。
現在の決済システムは、1980年代の閉ざされ分離された電子メールに非常によく似ています。
もし、 あなたが Wells Fargo の顧客であるならば、あなたが簡単に無料で送金ができるのは他の Wells Fargo の顧客に対してだけです。あなたがアメリカン・エキスプレスを使っているのなら、アメリカン・エキスプレス・カードを受け入れるお店でしか物を買うことが できません。
分離された決済システムをリンクするために、私たちは更により多くのクリアリングハウスを追加します。顧客はどのようにして Wells Fargo のネットワークから Chase や Paypal のネットワークに送金するのでしょうか? ある人は SWIFT または電信送金を利用するかもしれません。これらは送金のために第三者機関、複雑なレイヤー、さらに追加の費用を必要とします。
ほとんどの情報伝達が無料になった現在も、送金に関しては未だに大きな摩擦があります。電信送金にはまだ15ドルかかります。送金手数料の平均は約7%です。クレジットカードは、インターネット上で発生するすべての取引に~2%の手数料を取ります。Amazon.com は、年間数十億ドルを支払い処理手数料に費やしています。
インターネットの登場後、40年間で情報伝達と金融の間に大きなギャップができました。現在、情報伝達はピアツーピアの分散型ネットワークによって平坦化されました。しかしながら、清算と決済取引の中央集権化された性質は、大部分がインターネット以前の1950年代~1970年代に設計されたインフラ上で金融システムを動かし続けています。
お金は、デジタル時代において、 実際に単なるもう一つのタイプの情報にすぎません。それは、デジタル台帳上に記録されたクレジットとデビットに関する情報です。コンピューターがお金を送る方法とその他の情報を送る方法の間に、なぜこのような大きなギャップが存在するのでしょうか?
送金が遅く、高価で、複雑なプロセスであるのは、中央集権化されたプロプライエタリなソフトウェア上に非常に多くの独立したネットワークと決済システムが存在するからです。中央集権化されたネットワークは、運用コストと大抵は更に利益を上げるための費用が発生するため高価です。
Ripple:分散型の清算と決済
Ripple は、独立した決済システムが電子メールシステムと同じぐらい簡単に通信をすることを可能にする送金のための世界共通プロトコルです。ちょうど SMTP が電子メールに共有化された標準を作ったように、Rippleは決済に共有化された標準を提供します。電子メールと同様に、Rippleは誰にも所有され ず、セントラル・オペレーターが存在しません。Rippleは、世界中のサーバー同士がピアツーピアの金融取引のコミュニケーションを行うことを可能するオープンソースのソフトウェアです。
Rippleプロトコルが送金の標準プロトコルになれば、決済は電子メールのように早く、安く、簡単になります。ネットワーク利用料もなく、支払いは瞬時に行われます。
Rippleの仕組み
Rippleネットワークのコアは、共有されたパブリック・データベースです。そのデータベースの中身は、アカウントと残高を記録する台帳です。いつでも誰もがその台帳を閲覧でき、Rippleネットワーク上のすべての取引履歴を見ることができます。
ネットワーク上のコンピューターは、コンセンサスと呼ばれるプロセスを通じて相互に台帳への変更に合意します。ネットワークは数秒以内にグローバルにコンセンサスを取ります。このコンセンサス発見プロセスは、Rippleネットワーク上で高速で安全な分散型の取引の決済を可能にしたエンジニアリングの飛躍的な発明です。
分散型ネットワークは、中央集権化されたネットワークよりも多くの効率性を提供します。なぜなら、ネットワークは自律しており、セントラル・ネットワーク・オペレーター(とそれに関連した手数料が発生するレイヤー)の必要性を排除します。単一障害点がない分散型ネットワークは、より信頼性が高いからです。そして、それらがオープンソースであることにより、より安全性が高まる傾向があるのです。
ユニバーサル・トランスレーター:世界初の分散型為替
Rippleはどんな通貨もサポートします。いえ、それ以上に先進的なものです。Rippleは、ユーザーにいずれの通貨でも取引をすることができる完全な自由を提供します。ユーザーは、ある一つの通貨で残高を保有し、他の通貨で送金を行うことができます。
例えば、あるユーザーがRipple上で USD の残高を保有すると、JPY、EUR、ビットコイン、ゴールド、またはその他のあらゆる通貨や資産価値で支払いを行うことができます。Rippleネットワークは、Btd/Ask のスプレッドを得ようと競い合うマーケットメーカーを通じてオーダーをルーティングすることにより通貨を『変換』します。
下の図では、USD残高を保有するあるユーザーが、JPYでしか支払いを受け付けない小売店に送金を行います。マーケットメーカーは、USDを買いJPYを売ることでその送金を媒介します。
Ripple の分散型為替は、ブローカーやサードパーティーの両替所を必要とすることなく、ユーザーがトレードすることを可能にします。誰もが集約されたグローバル・ オーダーブックに買いまたは売り注文を入れることができ、Rippleネットワークは取引にマッチする最も効率的なパスを見つけます。ネットワーク手数料も最小取引サイズもありません。
数十年にわたり、経済学者たちはグローバル通貨の利点について議論してきました。ノーベル賞受賞者のフリードリッヒ・ハイエクは、テクノロジーが多通貨モデルをより効率的にするであろうと予測し、「電子計算機が、最新の為替レートで全ての通貨の全ての価格の等価値を数秒ではじき出すだろう」と書き記しました。
Rippleの分散型為替は、ハイエクが予測したその『電子計算機』です。もっとも、おそらく彼が想像したものを遥かに超えるスケールのものです。Rippleはグローバルです。それは世界初のお金のためのユニバーサル・トランスレーターです。
今、すべての通貨がグローバル通貨としての円滑な取引のための性質を手に入れました。あなたはゴールドやビットコインで残高を保有し、米ドルやユーロで簡単に送金をすることができます。Rippleは、すべての人に通貨の選択を超えて、取引における完全な自由を提供します。
電子マネー、カウンターパーティー・リスク、ゲートウェイ
伝統的な法定通貨は、電子的な形態をとるときに、それらに関連するカウンターパーティー・リスクがあります。これは一見したところ明白でないかもしれませんが、デジタルネットワーク上で法定通貨100ドルの手形を取得するために、あなたは伝統的に(例えば銀行や Paypal といった)ネットワーク・オペレータに法定通貨を渡すでしょう。その見返りとして、口座残高を示す IOU(借用書)を取得します。
その時点で、あなたはもはや法定通貨を持っていないのです。あなたは法定通貨を事実上、オペレーターが支払いを約束しただけの電子的なUSD残高に交換したこと になります。それは、あなたが必要に応じて換金できるという銀行からの約束です。そして、ここ数年で実証されているように、シティバンクのUSD預金は必ずしもキプロスやアイスランドの銀行のUSD預金と価値が等しいわけではありません。従って、デジタル形式の法定通貨には、カウンターパーティー・リスク があるのです。
これはRippleネットワーク内であっても同様です。Rippleネットワーク内で取引されるUSD残高は、特定の『ゲートウェイ』で換金できます。ゲートウェイは、法定通貨がRippleネットワークを出入りする場所なのです。
実際のところ、ゲートウェイは伝統的な銀行に非常に良く似たものと見ることが出来ます。しかし、ゲートウェイはRippleネットワークへのアクセスを提供する様々なビジネスに成り得ます。ゲートウェイは、銀行、マネーサービス事業、市場(マーケットプレース)、その他どんな金融機関にも成り得ます。ゲートウェイとなるビジネスは、彼らの顧客のための高度な金融機能を作り上げ、新たな収益の流れを生み出します。
電子的な形式の法定通貨とまったく同様に、Rippleネットワーク上でもあなたの残高を換金するゲートウェイの能力を信頼することが非常に重要です。
数学に基づく通貨
暗号通貨とも呼ばれる数学に基づく通貨は、私たちがゴールドを原子番号79番の元素として確実に検証できるのと同様に、数学的特性によって検証可能な電子的な資産です。数学に基づく通貨は、それ自体が電子的な資産として存在し、セントラル・ネットワーク・オペレータを介することなく、ユーザー間で(法定通貨 と同じように)直接交換することができます。
数学に基づく通貨の供給は、数学の法則に則ったものです。プロトコル規則の作成を超える人間の介入はありません。これが、企業や人によって無制限に発行できる(航空会社のマイル、報酬ポイント、 Facebookクレジットなどの)他の多くの仮想通貨と大きく異なる点です。
ビットコインは、数学に基づく通貨の最初の実例でした。ビッ トコインは電子的な資産としてネイティブに存在しています。それはどこかで換金可能な残高ではなく、前述した『電子的な法定通貨』のような、いかなるカウ ンターパーティー・リスクも有しません。ビットコインをサムドライブに入れて人に渡すこともできるし、そうすることで、あなたは借用書や誰かの支払いの契約を譲渡するのではなく、現金を手渡すのと同じように資産そのものを譲渡します。それには、いかなるサードパーティの信用も必要としません。
Rippleネットワークには XRP(リップルと発音する)と呼ばれる数学に基づくネイティブな通貨が存在します。ちょうどブロックチェーン上のビットコインと同様に、 XRPはカウンターパーティ・フリーなネイティブな通貨としてRippleネットワーク上に存在しています。なぜなら、XRPは換金可能な残高ではなく、取引や両替のためにユーザーがいかなる金融機関の信用も必要としない資産であるからです。
Rippleネットワークのユーザーは、両替や価値の保存のための中間媒体として XRP を使用する必要はありません。Rippleネットワークは通貨に依存しません。ユーザーは、USD、BTC、XRP、またはその他の好きな通貨を使用することができます。
XRPは、以下で取り上げるネットワーク・セキュリティと通貨ブリッジとしての2つの主要なネットワーク機能を目的として存在しています。
XRP:不正からネットワークを保護する
Rippleネットワークはアカウントの共有台帳に基づいているため、悪意のある攻撃者がネットワークを過負荷状態するために、(偽装アカウントのような)『レジャー・スパム』や(偽装取引のような)トランザクション・スパムを大量に作成するかもしれません。これは台帳を管理不能なサイズにする原因となり、正当な取引を迅速に処理するためのネットワークの機能を妨げる可能性があります。
台帳への過剰な不正入力からネットワークを保護するために、各Rippleアカウントはレジャー・エントリーを作成するための少額のXRPの予約金を保有することを要求されます。この準備金は現在のところ50XRP必要で、この資料を書いている時点で約0.50ドルに相当します。この要求は、潜在的な攻撃者がネットワークを攻撃するための大量の不正アカウントを収集することを防ぎますが、正規ユーザーとっては無視できる金額となるように意図されています。
各トランザクションが処理されるごとに 0.00001XRP(米ドル換算でおよそ10万分の1セント)が破棄されます。これは誰かによって徴収される手数料ではなく、XRPは破棄されて存在しなくなります。このトランザクション手数料もまた、ユーザーにとっては無視できる程度であるように設計されています。しかし、攻撃時のようにネットワークが高負荷になる状況においては、この手数料は急速に上昇します。
この設計の目的は、攻撃者を瞬時に破産させ、ネットワークが円滑に機能のを維持することです。Rippleネットワークに対する攻撃はすぐに高価な代償となりますが、正規ユーザーにとってのコストは事実上無料であり続けます。
XRP:ブリッジ通貨
XRPは、ブリッジ通貨としても非常に有用です。もし、二つのカウンターパーティーが、共有された通貨/ゲートウェイの組み合わせを見つけることが出来ない場合、XRPはカウンターパーティー・リスクがない中間通貨として振る舞います。例えば、アリスがUSDを好み、ボブがEURを好む場合です。もし、彼らが彼らの取引を仲介する適当な EUR/USD のマーケットメーカーを見つけることができない場合、彼らが好む通貨をXRPに、またはXRPから両替することで、彼らは互いの取引を成立させることができます。
下の図で、XRPへの(またはXRPからの)両替がトランザクションの不和を解消するいくつかの実例を示します。XRPは必須のブリッジ通貨ではなく、単に有用なものです。
3つの要因が、Rippleネットワーク上で XRP を理想的なブリッジ通貨にしています。
- XRPには摩擦がほとんどありません。無料でどのアカウントにも直接送ることができます。
- XRPにはカウンターパーティー・リスクがありません。Rippleネットワーク上の唯一のネイティブ通貨であるため、いかなるゲートウェイや第三者機関の信用も必要としません。
- XRPは限られた数量しか存在せず、劣化することがありません。プロトコルが作成された際に 1000億XRPが定義されることによって『鋳造』され、それ以上が作成されることはありません。
少額な準備金を除いて、RippleユーザーがXRPを保有したり両替することは求められません。Rippleは特定の通貨に依存しません。小売業者は、Rippleを利用するためにXRPを受け入れる必要はありません。買い手と売り手の両者は、彼らが好む通貨を使い続けることができます。
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