英国王立造幣局が分散型台帳を利用したデジタルゴールドを発行
今年11月末に The Royal Mint(英国王立造幣局)が分散型台帳技術を利用したデジタルゴールドを発行すると発表しました。発表によると、英国王立造幣局は CMEグループとの提携によりデリバティブ市場で取引を行う Royal Mint Gold(RMG)と呼ばれるデジタルゴールドを作るとのことです。こうなると気になってくるのが Ripple(リップル)との関係です。なぜなら英国王立造幣局が提携したCMEグループはリップル社の株主でもあるからです。しかしながら、これまでに発表されたのはブロックチェーン技術が使われるということだけで、実際に使用される特定の技術に関しては言及されていません。では、なぜリップルが関係している可能性があると言えるのでしょうか。ここからはすべて私の推察ですが、これまでの英国王立造幣局とリップル社に関連する動向を順に振り返ってみたいと思います。
Gold Bullion International が金取引プラットフォームにリップルを採用
今から遡ること2年以上前の2014年7月に Gold Bullion International が金取引プラットフォームとして Ripple(リップル)を採用すると発表しました。このニュースは当ブログの『Rippleの歴史』をご覧になっている方は既にご存知だったと思います。Gold Bullion International は、アメリカに本拠を置く世界有数の金流通会社で、貴金属ディーラー等との独自のマーケットを通じて投資家が最適な価格で貴金属の現物資産を取引することができるプラットフォームを提供しています。その他にも、金の保管や配送、保険や監査までも一貫して提供しており、英国王立造幣局や世界の大手金融機関から金取引のプラットフォームとして利用されています。
英国王立造幣局がオンライン金取引に Gold Bullion International を採用
上記のニュースが流れた3カ月後の2014年10月に英国王立造幣局はオンライン金取引サービスの www.royalmintbullion.com の運営に Gold Bullion International を選定すると発表しました。この時点で私は英国王立造幣局の金取引サービスにリップルが使われる可能性について考え始めていました。しかし、英国王立造幣局からの発表には分散型台帳技術を利用するという文言は一切なかったため、取引プラットフォームにどのような技術が使われるのかについては完全にブラックボックスのままでした。そして、ここにきて本記事の冒頭で述べたように、今年の11月に英国王立造幣局が金の取引プラットフォームに分散型台帳とデジタルゴールドを利用すると発表をしたわけです。これにCMEグループが関わっていることにも私は非常に注目しています。
CMEの貴金属部門トップがリップル社に移籍
CMEグループが関わっていることに注目している理由は、同じく今年11月にCMEグループの貴金属部門の重役がリップル社に移籍したからです。リップル社の発表によれば、CMEから移籍した Miguel Vias は Head of XRP Markets に就任しました。つまり、CMEグループの元貴金属部門トップがXRPのマーケティングを担当することになりました。CMEグループがリップル社に出資していること、CMEグループの元貴金属部門トップがリップル社の重役に就任したこと、CMEグループが英国王立造幣局のデジタルゴールドの取り扱いを開始すること、これらが偶然だと思えば偶然なのかもしれません。いえ、むしろ偶然と思う方が自然かもしれません。しかし、私は個人的にこうした企業間の人事と戦略は無関係ではないと以前から思っています。もちろん、それだけではありません。
SBIグループ が Gold Bullion International と合弁会社を設立
少し時期が前後しますが、リップル社の大株主であるSBIグループも今年6月に Gold Bullion International と合弁会社を設立することを発表しています。合弁会社を設立するのは SBIグループ傘下の SBI Global Asset Management で、出資比率は SBI Global Asset Management が60%、Gold Bullion International が40%を予定していると発表されています。ここで注目したいのは、合弁会社設立の目的が「国内で金の現物取引が24時間リアルタイムで可能なプラットフォーム機能を提供する」とされていることです。SBI、Gold Bullion International、金、24時間リアルタイムというキーワードは、この記事の冒頭から述べてきたこととも繋がるような気がします。
英国とリップル社の関係
英国王立造幣局と呼ばれていることからも分かるように The Royal Mint は Her Majesty’s Treasury(女王陛下の大蔵省)によって所有されています。そのため、英国とリップル社の動きも頭の片隅に入れておいた方が良いと思っています。私が思いつく限りで初めて英国とリップル社の関係が公式に述べられたのは、2016年1月の『Bank of England: How Our Modern Payment System Began at a Bar』という記事においてです。これはイングランド銀行(イギリスの中央銀行)が RTGSイニシアティブを発足する際に催した晩餐会にリップル社が出席したときに書かれた記事です。世界初のインターバンクの台帳(写真)も気になりますが、記事にはこのようなことが書かれています。
This RTGS system—real-time gross settlement—will be the system that underpins UK payments as the final database of record for all interbank transactions
要約すると「このRTGSシステムは、全てのインターバンク取引を記録する最終的なデータベースとして英国の決済の基礎となる」と書かれています。では、このRTGSシステムとはいったい何を指しているのでしょうか。イギリスの資金決済システムとして真っ先に思いつくのはイングランド銀行が運営する大口取引向け RTGSシステムの CHAPS(The Clearing House Automated Payment System)です。そして、リップル社の Marcus Treacher は今年9月に CHAPS の取締役に就任しています。これらの動きには何か繋がりがあるのでしょうか? ロイターによればイングランド銀行は2020年までにインターバンクシステムを刷新するとしていますが、その全容はまだベールに包まれたままです。
クリス・ラーセンに聞いてみよう
英国王立造幣局がリップルを採用するのではないかという私の推察をコミュニティサイトの XRP CHAT に投稿してみたところ、リップル社CEOの Chris Larsen とも面識のある Tiffany Haydenさんが Quora で直接質問してくださいました。
クリス・ラーセンは「何でも聞いてください。」と言っていましたが、今のところ回答はないようです。残念です。嘘でも良いので「エリザベス女王からコマンドゥールを授与された。」とか言ってほしいものです。
英国王立造幣局はリップルを使うのか
残念ながら今回はシンガポール中銀の国際送金プロジェクトのときのように「リップルです。」という神の声は聞こえてきませんでした。しかし、これまでに集めた客観的な情報から、英国王立造幣局がリップルを利用する可能性は十分にあるのではないかと思います。もちろん、これは私の個人的な推察でしかありませんから本当のところは分かりません。そうかもしれませんし、そうではないかもしれません。信じるか信じないかはあなた次第です。(^_-)-☆
追記(2016年12月29日):
本件に関して、SBIホールディングスの北尾社長の公式ツイッターアカウントからリツイートして頂きました。特にコメントは頂けませんでしたが、連続して7件ものリツイートがありました。1件は9月のツイートなので、わざわざ検索してリツイートして頂いたようです。これが何を意味するのかは私にもわかりません。
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