Ripple(リップル)がシリーズBで5500万ドルを調達

海外メディアの動き

米リップル社が投資ラウンドのシリーズBで5500万ドル(約56億円)を調達したことが9月15日付で発表されました。その調達額の大きさもさることながら、リップル社によって発表された衝撃的な内容から海外の主要メディアが一斉に報じました。

リップル社による発表:
Ripple Raises $55 Million in Series B Funding

Several Global Banks Join Ripple’s Growing Network

 

ニュースを伝えた主要なメディア

Big Banks Invest $55 Million in Blockchain Startup Ripple’s Series B“. CoinDesk

Bitcoin Firm Ripple Gets $55 Million In Funding“. The Wall Street Journal

Ripple Just Raised $55 Million and Signed on These Major Bank Partners“. Fortune

Google-backed blockchain start-up Ripple raises $55 million from big banks“. CNBC

Ripple Raises $55 Million, Adds Seven More Banks to Its Network“. Bloomberg

米リップルの決済ネットワーク、みずほFGなどが新たに参加“. Bloomberg

StanChart invests in blockchain startup Ripple“. Financial Times

Blockchain firm Ripple raises $55 mln, investors include StanChart“. Reuters

Ripple raises $55 million in second funding round, adds several banks to network“. Reuters

NAB, Westpac part of Ripple’s new global payments network“. Australian Financial Review.

以下にこれらの記事が伝えた内容を簡単に書きます。

 

シリーズBで5500万ドルを調達

今回、リップル社に出資を行ったのは次の8社です。

  • Accenture Technology Ventures
  • CME Ventures
  • Santander InnoVentures
  • SBI Holdings
  • SCB Digital Ventures
  • Seagate Technology LLC
  • Standard Chartered Bank
  • Venture51

これまでシードラウンドやシリーズAで出資を行ってきた数社に加え、Accenture Technology Ventures と Standard Chartered Bank が新たにリップル社の株主に加わりました。SBIホールディングスは2016年1月にも約30億円を出資し17%の発行済み株式を取得していますが、今回は追加投資になります。

米国のFinTechベンチャー企業Ripple Labs Inc.への追加出資に関するお知らせ

投資はその目的によっていくつかの投資ラウンドに分類されますが、今回はシリーズBであることが注目されています。では、シリーズBとはどのようなフェーズなのでしょうか。Uberを含む60社以上に出資したことがあるエンジェル投資家の Jason Calacanis氏によれば、投資ラウンドは次のように定義されます。

  • 一切の出資を受ける前:アイディアについて議論し、プロトタイプを作ってMVPをリリース
  • シード投資:プロダクトにユーザーやトラフィックを集めるために必要な資金
  • シリーズA:プロダクトをスケールするために必要な資金
  • シリーズB:ファウンダーによる株式の現金化、イケてる本部を設ける、競合スタートアップを諦めさせる

 

複数の銀行が新たにリップルの決済ネットワークに参加

今回、新たにリップルの決済ネットワークへの参加が発表されたのは以下の銀行です。

  • National Australia Bank(ナショナルオーストラリア銀行)
  • Westpac Bank(ウエストパック銀行)
  • BMO Financial Group(モントリオール銀行)
  • Siam Commercial Bank(サイアム商業銀行)
  • Shanghai Huarui Bank(上海華瑞銀行)
  • Standard Chartered Bank(スタンダードチャータード銀行)
  • Mizuho Financial Group(みずほフィナンシャルグループ)

ご覧の通りイギリス、オーストラリア、カナダ、タイ、日本のメガバンクが名を連ねています。海外の大手メディアが一斉に報じた理由もまさにここだと言えます。逆に日本の国内メディアが何も報道していないのが異様に感じるほどです。各銀行の簡単な説明は『Rippleを利用する企業・団体』を参照してください。

 

サンフランシスコ本社オフィスの拡大

投資ラウンドの説明にあった『イケてる本部を設ける』に該当するといったところでしょうか。リップル社の最高運営責任者(COO)の Brad Garlinghouse によれば、リップル社は半年以内に現在の2倍の広さの新しいオフィスに移転するとのことです。

 

25人の従業員の増員

今回の出資を受けてリップル社は新たに25人を採用することを決定したようです。過去3カ月間でリップル社が雇った従業員の半数はエンジニアでした。また、銀行市場をターゲットとしているため、コンプライアンス部門での採用が競合他社と比較して2倍の規模であると Brad Garlinghouse は述べています。また、SBIグループとのジョイントベンチャーの設立に関連して、日本でのリップル製品の拡販にむけての新規採用を行うとのことです。

人事に関しての記事の内容はここまでですが、リップル社の採用ページを見ると新たに Director, Market Structure & XRP Sales のポジションが追加されています。シリーズBで得た資金をいよいよ本格的にマーケティングに回していくというリップル社の意気込みがうかがえます。職務内容を見る限り、XRPの販売計画の構築、XRPインセンティブプログラムの立案、XRPを既存の市場や暗号通貨取引所へ上場するための調整業務など、ほとんどがXRPの拡販に関わる業務であることが分かります。

 

年内に30を超える銀行がリップルを統合したシステムを稼働

リップル社によれば、現在10の顧客が既にリップルの統合を完了しており、30の顧客がリップルの統合作業を行っているそうです。リップル社最高経営責任者(CEO)の Chris Larsen は、ここで発表されている以上の銀行が2016年中にリップルを統合したシステムの稼働を始め、2017年にそれらのシステムのマーケティングを始めるだろうとのことです。これまで公表されている数字が30なのになぜ30以上の銀行がリップルを統合したシステムを稼働できるのでしょうか。これには2つの可能性がありそうです。

1つはリップルを統合中の30のプロジェクト(顧客)という数字の中にこれまでに発表された SAP のように金融機関に決済システムを提供している企業が含まれている可能性です。そのシステムへのリップルの統合が完了すれば、必然的にそれを利用する金融機関のシステムでリップルが稼働し始めます。

もう1つは日本の SBI Ripple Asia が主導するコンソーシアムの動きです。同コンソーシアムは日本国内の15行が参加して10月に発足する予定で、それらの銀行がリップルを利用したRCクラウドに接続すれば、リップルネットワークに接続する銀行が一気に増えることになります。

個人的にはその両方なのではないかと思っています。

 

ILPを利用した Ripple Connect の稼働

Australian Financial Review のインタビューに応えた Ripple Apac ディレクターの Dilip Rao は次のように答えています。

Ripple has created Ripple Connect, new technology to allow banks to talk to each other, and is developing its “interledger protocol”, which will go live on October 1 and provide the foundation for banks to directly connect their ledgers with each other without an intermediary.

簡潔に言うとILP技術を利用した Ripple Connect が10月1日に稼働し、銀行間のレジャーが接続されるということでしょう。ILPネットワークがいよいよ稼働するのかと思いましたが、どうやらそういった意図での発言ではないようです。というのは、これまでの開発の経緯などを見ていると ILP(インターレジャー・プロトコル)というものは、Ripple Connect が利用するプロトコルを標準化したものと捉えることが出来るからです。いづれにしても Ripple Connect が動き出すことは間違いなさそうです。

 

Sibos 2016 では更に多くの発表がある

9月26日から開催される Sibos 2016 での大きな発表を待っていたユーザーは、よりによってイベントの10日も前になぜリップル社がこれらの情報を公開してしまったのかと思っているかもしれません。これに関してはリップル社が今回のブレスリリースの最後に次のようにつけ加えています。

but we’ve only just begun. Stay tuned for even more news from Sibos 2016.

「これは始まりにすぎません。Sibos 2016 で発表される更なるニュースをお待ちください。」とのことです。

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