Rippleの概要

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Rippleプロトコルの起源

Ripple(リップル)は、2004年にカナダのエンジニアであるライアン・フッガーによって考案された決済プロトコルです。オリジナルのRippleプロトコルのコンセプトは、個人が発行したIOUと呼ばれるクレジット(負債)を個人間で取引することで、誰もが自らの通貨やクレジットを所有して支払いを実現するものでした。このコンセプトは、『Money as IOUs in Social Trust Networks & A Proposal for a Decentralized Currency Network Protocol』というホワイトペーパーで提案されました。

図1.ライアン・フッガーのRippleプロトコル

ライアン・フッガーはこの綿密に考えられたシステムを長年かけて開発し、一人で非営利に運営していました。しかし、時期が早すぎたためか、このシステムとコンセプトが広く世に浸透することはありませんでした。

ビットコインの誕生

2008年11月1日、サトシ・ナカモトを名乗る匿名の人物によって『Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System』という論文が発表されました。この論文には、プルーフ・オブ・ワーク(Proof of Work:PoW)という認証アルゴリズムとブロックチェーンと呼ばれる分散型台帳技術(Distributed Ledger Technology:DLT)を組み合わせて、ビットコインという新しい電子通貨システムを実現するためのコンセプトが書かれていました。2009年1月9日、この提案に賛同した有志によってビットコインの最初の実装となる Bitcoin V0.1 がリリースされ、最初のビットコインが発行されました。

分散型台帳とは、簡単に言うとデータを保存するためのデータベースです。これまでの台帳と異なるのは、ユーザーが手元の台帳を書き換えると世界中で同じネットワークに接続している全てのユーザーの台帳も書き換わるという点です。これまで同一の台帳を共有するためには、中央のサーバーで世界中の人達が利用する台帳を集中管理する必要がありましたが、ビットコインは分散型台帳というアイデアでこの問題を克服しました。ビットコインは、台帳(ブロックチェーン)に BTC と呼ばれる電子ポイントの取引履歴が書き込まれており、世界中のユーザーがこの取引履歴を共有する仕組みです。

画像1.20万件の送金詰まりを起こすビットコイン(2017年12月)

しかし、ビットコインには PoW という認証アルゴリズムに起因する取引時間の長さと、1秒間に処理できる取引回数の上限が理論上たったの数回(3~7回)という性能の問題がありました。これは現在支払いに使われているVISAネットワークの取引回数が毎秒1万回に達することを考えるとあまりにも小さな数字です。そして、実際にシステムを稼働させたところ、本来は分散しなければいけないブロックチェーンの承認者となるマイナー(採掘者)が、電気代の安い中国に集中してしまう問題が発生しました。そして、サトシ・ナカモトはビットコインの黎明期に100万BTCほどを採掘し、2010年にネットワーク・アラート・キーとビットコイン・コアのリポジトリを同氏が絶対的な信頼を置くギャビン・アンドレセンに譲渡して姿をくらませました。

プロジェクトを引き継いだギャビン・アンドレセンは、2015年8月にGoogle出身のコア開発者であるマイク・ハーンとともにブロックサイズを拡張するための Bitcoin XT をリリースしました。これにより、ビットコインの性能問題は一定の解決を見ると思われましたが、ビットコイン・ネットワークのハッシュパワーを独占する中国人マイナーとのコンセンサスを取ることが出来ず、システムのアップグレードに失敗してしまいました。しかし、ビットコインが提案した分散型台帳というアイデアは世界中の技術者の注目を集めることになりました。

コンセンサス・アルゴリズムの登場

2011年3月頃、世界初のビットコイン取引所『マウントゴックス』の創業者でP2Pの分散型ファイル共有ネットワークの eDonkey の創設者としても知られるジェド・マケーレブは、ビットコインの仕組みを応用したコンセンサス(Consensus)と呼ばれる二重支払いを防止するアルゴリズムを考案しました。そして、デイビッド・シュワルツ、アーサー・ブリットの2人の天才エンジニアと共に、ビットコインの様々な問題を克服する新しい分散型台帳の実装を開始しました。

このシステムは、ビットコインのように無駄な電力を消費することなく、さらにビットコインよりも処理速度と効率性に優れたものでした。ジェド・マケーレブがこのコンセプトを考案した当初、彼は経路探索アルゴリズムによって個人や企業が発行したクレジットを第三者が発行したクレジットと交換する仕組みを思い付きましたが、後にこれと同様のコンセプトが既にライアン・フッガーによって考案され運用されていることを知りました。ジェド達の目標は、この仕組みにコンセンサス・アルゴリズムによって実現されたカウンターパーティーリスクの無いデジタルアセットを組み合わせることでした。

※ネット上でしばしばコンセンサス・アルゴリズムのことを PoC や Proof of Consensus と記載している記事を見かけますが、これは誤りです。PoC は Proof of Concept の略語で、本来は概念実証を意味する言葉です。

Ripple Labsの誕生

2012年8月、アメリカ初のP2Pレンディング・サービス(現在はクラウドファンディングとしても知られる)を提供するプロスパーの創業者でフィンテック業界のイノベーターとして知られるクリス・ラーセンは、3人が推し進めるプロジェクトに強い関心を示し彼らのチームに合流しました。クリス・ラーセン等は2012年9月に XRP のコンセプトを世に広めるため、現在のリップル社(Ripple, Inc.)の前身であるオープンコイン社(OpenCoin, Inc.)を設立し、発行された XRP の8割をオープンコイン社に譲渡しました。そして、ライアン・フッガーとの話し合いの結果、Rippleプロジェクトを株式交換で買収し、XRPと分散型台帳技術を開発する彼らのプロジェクトとRippleプロジェクトを統合することに成功しました。その後、ビットコインコミュニティのリーダーの一人で BitcoinJS を開発したステファン・トーマスを開発チームに迎え入れることで、彼らが手掛ける分散型台帳技術は更に洗練されたものになりました。こうして現在の XRP Ledger の原型であるリップル・コンセンサス・レジャー(Ripple Consensus Ledger:RCL)が誕生しました。

公式動画(日本語字幕あり)

2013年4月、世界初のウェブブラウザを開発したことで知られるマーク・アンドリーセンが創業したベンチャーキャピタルのアンドリーセン・ホロウィッツはオープンコイン社(現在のリップル社)への出資を決定し、翌月にはインターネット界の巨人であるグーグルも同社への出資を行いました。同社の最高経営責任者(CEO)に就任したクリス・ラーセンは銀行市場に参入することを決定しましたが、よりオープンな仕組みの構築を目指す共同創設者のジェド・マケーレブは2013年7月に同社を去ることになりました。同月、暗号技術の第一人者でリップル・コンセンサス・レジャーの共同創設者の一人であるデイビッド・シュワルツは、オープンコイン社の取締役に就任、ステファン・トーマスは同社の最高技術責任者(CTO)に就任しました。2013年9月、新たなスタートを切ったオープンコイン社は、社名をリップルラボ(Ripple Labs, Inc.)に変更し、共同創業者のクリス・ラーセンはこの技術を応用して『価値のインターネット』を構築することを提案しました。これが現在のリップル社(Ripple, Inc.)の前身です。

リップル・コンセンサス・レジャーとは

リップル・コンセンサス・レジャー(以下RCL)は、ISCライセンスに基づくオープンソースの分散型台帳として開発・公開されました(この分散型台帳は現在 XRP Ledger と呼ばれています)。RCLでは、二重支払いの防止をサトシ・ナカモトによって考案されたプルーフ・オブ・ワーク(Proof-of-Work:PoW)ではなく、独自に開発されたコンセンサス・アルゴリズムを使って行うため、ビットコインの致命的な弱点であるスケーラビリティや消費電力といった問題を克服しました。

RCLの最大の特徴はスピードで、承認時間はビットコインの1000倍以上高速です。ビットコインの承認時間はランダムであり、最短でも約10分、長い場合は10日以上を要するのに対し、RCLでは全てのレジャー(台帳)が約3秒毎にクローズします。つまり、支払いにビットコインを利用する場合には支払いが完了するまでに非常に大きな価格変動のリスクに晒されますが、XRPを利用する場合には価格変動のリスクは限定的です。また、ビットコインやイーサリアムのようなPoWのシステムでは取引コストが数ドルから数十ドルに跳ね上がる可能性がありますが、RCLでは1回の取引にかかるコストは10分の1セント程度です。

図2.RCLを利用した送金の仕組み 出典:ripple.com

RCLでは、XRPと呼ばれる内部通貨のような暗号資産を有しますが、ビットコインのように日本円や米ドルといった法定通貨に取って代わる電子マネーを生み出すことを目的とせず、Rippleネットワーク上で金融機関が預かり資産に対して発行する『イシュアンス』と呼ばれる電子的なクレジット(負債)を XRP を介して交換することでクロスボーダー決済を行う技術を確立しました。こうした功績から、Rippleプロトコルの開発を主導するリップルラボ社(現リップル社)は、2015年8月に世界経済フォーラムテクノロジーパイオニアに選出されました。同年10月、同社は金融機関向けのクロスボーダー決済のためのエンタープライズ製品である Ripple Connect と Ripple Stream を発表しました。

世界経済フォーラム テクノロジーパイオニア

インターレジャー・プロトコルの誕生

2015年10月、当時リップルラボ社のCTOを務めていたステファン・トーマスとイヴァン・シュワルツは、ブロックチェーンなどの複数の異なる種類の台帳を横断して価値の移動を可能にするインターレジャー・プロトコル(Interledger Protocol:ILP)を発表しました。このインターレジャー・プロトコルは、リップルラボ社(Ripple Labs, Inc.)が主導して開発が行われていたRippleプロトコルを更に発展させたもので、インターネットで利用されているTCP/IPをモデルにしたクロスボーダー決済のためのプロトコルです。略してILPとも呼ばれます。

ビットコインとリップル・コンセンサス・レジャー(RCL)がそれぞれ個別の台帳上で支払いを行うのに対し、インターレジャー・プロトコルでは暗号エスクロー(Cryptographic Escrow)と呼ばれる技術を用いて複数の異なる台帳を横断した支払いを実現します。この技術では、特定の台帳上で発行されたイシュアンスの価値をコネクターと呼ばれる仲介人を介することで他の台帳上で受け取ることが出来ます。これは簡単に言えば、送金人がビットコインのブロックチェーン上に保有する資産であるBTCを送り、受取人が銀行の台帳上で米ドルを受け取ること出来る画期的な技術です。

図3.複数の台帳を横断したILPの送金の仕組み

インターネット技術の標準化に取り組む団体のワールド・ワイド・ウェブ・コンソーシアム(W3C)は、この技術が発表されると同時にインターレジャー・ペイメント・コミュニティ・グループを発足し、リップル社のエイドリアン・ホープ=ベイリーを議長にインターレジャー・プロトコルの標準化作業に取り組み始めました。

Ripple LabsからRippleへ

インターレジャー・プロトコルが発表された2015年10月、リップルラボ社は社名を現在のリップル社(Ripple, Inc.)に変更しました。そして、リップル社は同社が開発する金融機関向けのエンタープライズ製品にインターレジャー・プロトコルを統合することを発表しました。そして、銀行システムの中核を担うコアバンキング(勘定系システム)を開発する CGI、アクセンチュア、DHコーポレーション、Volante Technologies、IntellectEUなどが一斉に同社のエンタープライズ製品の採用を決定しました。それと同時に、バンク・オブ・アメリカ(米国)、サンタンデール銀行(スペイン)、ウエストパック銀行(オーストラリア)、ラボバンク(オランダ)、トロント・ドミニオン銀行(カナダ)、カナダロイヤル銀行(カナダ)などの世界を代表する大手金融機関がリップル社の製品を採用することが発表されました。

Ripple製品の採用を発表したCGI

2017年3月、リップル・コンセンサス・レジャー(RCL)はインターレジャー・プロトコルを統合し、名称をXRP Ledgerに改名されました。同年8月、リップル社はインターレジャー・プロトコルを利用した金融機機関向けのクロスボーダー決済を実現するための xCurrent、xRapid、xVia と呼ばれる3つのエンタープライズ製品と、それらの製品によって構築されるクラウド型の資金決済ネットワークである RippleNet を発表しました。FRBは、米国の次世代決済システムの選定を行うファスター・ペイメント・タスク・フォース(Faster Payments Task Force)の活動報告において、インターレジャー・プロトコルを統合したリップル社のエンタープライズ製品が次世代国際送金の土台となることができると言及しました。

 FedPayments Improvement(FRB)による Ripple の紹介

価値のインターネットとは

クリス・ラーセンによって提唱された『価値のインターネット』は、英語ではインターネット・オブ・バリュー(Internet of Value:IoV)と呼ばれています。もしかしたら、これを読んでいる既にビットコインなどの仮想通貨に投資している多くの人が、RippleNet や ILP が単にビットコインを発展させたものだと考えているかもしれませんが、それは完全に間違った認識です。

私たちが現在利用している情報のインターネットは、1990年にワールド・ワイド・ウェブ(World Wide Web:WWW)としてティム・バーナーズ=リーによって考案されました。この1990年に同氏から出された提案は『WorldWideWeb: Proposal for a HyperText Project』というホワイトペーパーで知られています。このティム・バーナーズ=リーは、2017年10月にリップル社によって主催された SWELLカンファレンスに登壇しました。

画像2.SWELLに登壇したティム・バーナーズ=リー 出典:ripple.com

インターネットが一般的に利用され始めた当初は、電子メールで文字を送る用途がほとんどで、パソコンで画像を取り扱うためには特別なハードウェアを取り付ける必要がありました。当時、ブラウン管モニターの黒い背景に白い文字が表示されているのを見たことがある人も多いでしょう。それが技術革新により、現在では動画や3次元の情報すら取り扱うことが出来るようになりました。

しかし現在に至ってもインターネットには欠落した機能があります。それは送金機能です。私たちが普段情報を送るために利用している HTTP と呼ばれるシステムには、じつはお金を送るためのステータスコードが予約されたままになっています。リップル社がそのインターネットに欠落した機能を実現しようとしているのが『価値のインターネット』と呼ばれる構想です。

SBI Ripple Asiaと内外為替一元化コンソーシアム

2016年1月、日本のSBIグループはリップル社への出資を決定し、同社の発行済み株式の17%を取得しました。更に同年5月、SBIグループとリップル社によって合弁会社の SBI Ripple Asia が日本に設立されました。そして同年10月には、りそな銀行を会長行とする数十の国内銀行により『内外為替一元化コンソーシアム』が SBI Ripple Asia を事務局として発足されました。内外為替一元化コンソーシアムは、リップル社のエンタープライズ製品を利用する『RCクラウド』と呼ばれる内国為替(国内送金)と外国為替(国際送金)を統合する決済ネットワークの構築を目的に設立されました。三菱東京UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行、ゆうちょ銀行を含む国内の大手金融機関と地方銀行も同コンソーシアムへの参加を表明し、2017年8月までに日本の全銀行の総資産の8割を占める61の国内金融機関が SBI Ripple Asia が主導する内外為替一元化コンソーシアムに参加しました。

RCクラウド – 内外為替一元化コンソーシアム

2017年12月、SBI Ripple Asiaの沖田貴史社長はBSデジタルの日経モーニングプラスに出演し、世界で初めてリップル社のエンタープライズ製品を統合した送金アプリケーションのデモンストレーションを行いました。そして2018年3月、SBI Ripple Asiaと内外為替一元化コンソーシアムは、銀行間で24時間365日の即時送金サービスを実現するスマホアプリの Money Tap を正式に発表しました。このスマホアプリを利用すると、利用者は送金相手の電話番号やQRコードを指定するだけで、自分の銀行口座から相手の銀行口座に無料または極僅かな手数料で24時間365日の送金が可能になります。2018年10月、SBI Ripple Asia から Money Tap の稼働が公式に発表され、住信SBIネット銀行、りそな銀行、スルガ銀行の3行が他の金融機関に先行して同スマホアプリによる即時送金サービスの提供を開始しました。

“新技術”でいつでも送金OK 地銀などが新サービス – ANN NEWS

RippleNetの稼働と国際的な情勢

2016年9月、リップル社ロンドン支部のジェネラルマネージャーを務めるマーカス・トリーチャー(元SWIFT取締役)は、英国の決済ネットワークの CHAPS の取締役に就任しました。また、リップル社の会長を務めるクリス・ラーセンは、2017年3月に IMF(国際通貨基金)のフィンテックアドバイザーに就任しました。リップル社はイングランド銀行やサウジアラビア金融局などの各国中央銀行との協業を発表し、IMFによれば2017年11月にリップル社は数十ヶ国の中央銀行が参加する中央銀行サミットを開催しました。リップル社で政府および規制当局との業務に取り組むアジア太平洋地域の責任者のセイガー・サーバイ氏は、2018年3月にバンコクで開催された Fintech Fair 2018 の壇上で、40~50の中央銀行が同社と協業していることを明かしました。

CNBCでXRPについて解説するリップル社のCEO

2017年までに、日本ータイ、米国ーメキシコ、シンガポールーインド、インドーアラブ首長国連邦の間で RippleNet を利用した国際送金のパイロット(試運転)が開始されました。また、クレジットカード大手のアメリカン・エキスプレスも、2017年11月に米国ー英国間で RippleNet を利用した事業者向け国際送金サービスを開始することを発表しました。金融機関による Ripple の採用が進むにつれて、RippleNet で利用される内部通貨の XRP への関心が高まり、2018年1月には XRP の時価総額がビットコインに次ぐ世界第2位に躍り出ました。

ブルームバーグでXRPに関する質問に答えるリップル社のCEO

突如現れたゲームチェンジャーに、世界中の大手メディアからリップル社への取材が殺到しています。これらの問い合わせに対し、リップル社CEOのブラッド・ガーリングハウスは、国際的な送金事業者5社のうち3社が2018年中に XRP を利用した国際送金を開始することを明かしました。

フォックス・ビジネスが世界第2位の暗号通貨としてXRPを紹介


関連項目

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