Ripple/ILP勉強会資料

BITPOINT

※このページの資料はリップラー座談会で Ripple/ILP について意見を交換するために私が独自に作ったもので、リップル社の公式見解ではありません。説明の内容が正しいかどうかも分かりません。


リップル社CEO「主要銀行が2018年中にxRapidを利用する。」

ヨーロッパで開催されたMoney2020で、リップル社CEOのブラッド・ガーリングハウスが CNBC のインタビューに対して主要な銀行が2018年中に xRapid の利用を開始すると述べました。

ブラッド・ガーリングハウス:
「私は主要な銀行が2018年末までに xRapid を流動性ツールとして利用するのを確信していると公に述べてきました。そして来年末までに、その規模が数十行に達するのを我々が目の当たりにすることを願っています。」

ここでは xRapid と XRP Ledger が国際送金にどのように利用されるのかを考察してみたいと思います。

 

どらさんのILP解説

どらさんがILPの詳しい解説を公開してくれました。大変分かりやすい解説なので、まだ読んでいない方はご一読することをお勧めします。

私はエンジニアではないので、どらさんの解説をもとに技術的な細かい話は省いて ILP の簡単な原理とRippleソリューションによる国際送金の流れを予想してみます。

 

ILPレジャー

ILPレジャーは暗号エスクローという機能を使って同じILPレジャー上の2つのアカウント間の残高の移動を安全に行います。

図1.ILPレジャー

エスクロー(第三者預託)とは:
エスクロー(第三者預託)とは、互いに信用ができない2者間で取引が行われる際に、取引の橋渡しを行う仲介人です。例えば Yahoo!オークションでは、出品者と落札者との代金のやりとりを安全に行なうためのエスクローサービスが提供されています。これにより、商品を送ったのに入金されない、入金したのに商品が送られてこないといったトラブルを防いでいます。

 

コネクター

コネクターは複数の異なるILPレジャー間の残高の移動を仲介します。コネクターは複数のILPレジャー上にアカウントを保有しており、送金先のレジャー上で資産を相手に渡す代わりに送金元のレジャー上で資産を受け取ります。レジャー間の送金を仲介する代わりにコネクターは手数料を得ます。RippleNetではコルレス銀行外為ブローカーなどの流動性プロバイダーがコネクターの役割を担います。

図2.コネクター

 

ILP送金の流れ

インターレジャーでの支払いは、送金元からILPレジャーの暗号エスクローを介したコネクターへの入金と、コネクターから暗号エスクローを介した受取人への出金の2つのステップで成り立ちます。つまり、コネクターへの入金コネクターからの出金の2ステップです。

  1. 送金元=>暗号エスクロー=>コネクター
  2. コネクター=>暗号エスクロー=>受取人

1のステップで送金元から送られた資産は暗号エスクローに保管され、2のステップでコネクターが暗号エスクローに資産を移動しない限り、全体の資金移動が起こらない仕組みになっています。

次の図はボブからアリスへの送金の流れを表しています。

図3.ILP送金の流れ

コネクターは Bank B の USD Ledger上で Alice に USD を支払う代わりに、Bank A の JPY Ledger上で Bob から JPY を受け取ります。コネクターは送金を仲介する代わりに手数料を受け取ります。

 

Rippleソリューション

ここで上の図とリップル社の公式資料の図を比較してみます。(若干古いですが、図がシンプルなのでこの図を使いました。)

図4.Ripple Connect(現xCurrent)とILP送金のイメージ 出典:ripple.com

ILP送金はILPレジャーとコネクターによって行われるため、それ以外のものを省略します。すると、図3と同じ構図になります。

図5.図4からILPレジャーとコネクターを抜き出したもの

 

RippleソリューションとILP送金の流れの対応

リップル社の説明では、流動性プロバイダーがコネクターの役割を果たし、複数のILPレジャー間の残高の移動が行われます。そこで、ILP送金の流れとRippleソリューションの説明を対応させてみました。(xCurrent や xVia はざっくりとしたイメージです。)

図6.ILP送金の流れとRippleソリューションを対応させてみる

これは xCurrent を利用して日本円から米ドルの口座に送金するシンプルな図です。コネクターは Bank A の口座で日本円を受け取り、Bank B の口座で米ドルを受け渡しています。

それではこのコネクター(流動性プロバイダー)とは何者なのでしょうか? 答えはノストロ口座に大量の米ドル資金(流動性)を保有しているコルレス銀行です。図6ではコネクターの役割をしているのが Bank A 自身ということになります。つまり図中の右側の C1’s Account は Bank A が Bank B に保有するノストロ口座ということになります。

ですから、xVia を利用する実際の送金者は Airbnb などの企業だけではなく、コルレス銀行を利用して国際送金を行っている銀行や送金業者であっても矛盾しません。

 

XRP Ledgerを利用するパターン

それではコネクター(流動性プロバイダー)が xRapid と XRP Ledger を利用するパターンを考えてみます。

図7.コネクターがxRapid/XRPを利用する場合

xCurrent の送金モデルとの違いはコネクターとなる流動性プロバイダーが XRP Ledger を統合していることです。これまでの発表によると複数の外為ブローカーが XRP Ledger を送金に活用する xRapid を統合しています。総合的に考えると、xRapid(XRP Ledger)を利用する流動性プロバイダーは外為ブローカーだと考えるのが妥当です。

外為ブローカーは銀行間外国為替取引市場(インターバンク)の仲介取引業者のことで、銀行が外国為替を取引する際には直接銀行同士が取引するのではなく、間に外為ブローカーが介在して外国為替市場で外国為替の取引が行われます。

このモデルを利用する利点は、送金先の通貨がフィリピンペソやタイバーツのようなマイナー通貨であった場合に、銀行がノストロ口座に大量のリスク資産を保有する必要がなくなることです。コネクター(流動性プロバイダー)は市場でXRPをリアルタイムで調達し送金先の通貨に両替することで送金が完了します。

 

その他の国に送金をルーティングする

これは Connector 1 が他のコネクターにトランザクションをルーティングする様子を図にしたものです。

図8.Connector 1がトランザクションをルーティングする様子

Connector 1 はルーティングテーブルを持っており、送金先のアドレスを参照して XRP Ledger 上のどのアカウントに XRP の残高を支払うのかを決定します。

ILPのアドレスの形式は次のようなものです。(簡略化しています。)

g.uk.banks.bank-c.reuters

g はグローバル、uk は国(イギリス)、banks は銀行であることを表します。

 

USDを基軸にしてみる

これは XRP Ledger の代わりにコルレス銀行の USD を基軸通貨にして xCurrent ですべての送金を行うことを前提にしたイメージです。

図9.USDを基軸通貨にしてみる

一見これですべてが上手くいきそうな感じがしますが、送金先の通貨がマイナー通貨だった場合に Bank Z は送金先(Bank B、Bank C)に大量のリスク資産を保有しなくてはなりません。現実的にそれは不可能でしょう。

また、IoV(価値のインターネット)の観点から見れば、中心のレジャーが銀行の場合には送金手数料の問題からマイクロペイメントに対応できません。ILPとの親和性など技術的な観点と現実的な問題から XRP Ledger が中心に利用される合理性があるとも言えます。

 

Rippleの仕組み

それではリップル社が公開している Ripple の仕組みを解説した動画を見てみましょう。

この動画の説明の中で、図9のようなコルレス銀行を含む3つのILPレジャーと2つのコネクターを介した送金モデルを見つけることができます。

図10.コルレス銀行と流動性プロバイダーを介した送金

この図の中で仕向銀行(Originating Bank)から真ん中のコルレス銀行(Correspondent Bank)までの送金がノストロ口座を利用して行われているのがわかります。そしてコルレス銀行(Correspondent Bank)から被仕向銀行(Beneficiary Bank)への送金にはサードパーティーの流動性プロバイダー(Liquidity Provider)が利用されています。

ここに銀行が xRapid/XRP を利用する最大のメリットがあります。xRapid を利用することで銀行は送金先の銀行にリスク資産を大量に保有する必要が無くなります。また、世界のノストロ口座には27兆ドルの資産が死蔵されていると言われており、それらを開放して運用することで銀行は大きな利益を得ることが出来ます。

 

xRapidの公式な説明

xRapidに関するリップル社による詳細な解説はほとんどありません。しかし、XRPミートアップ東京で次のスライドによる解説が行われました。

図11.XRPミートアップ東京で使われたスライド

これは米国からメキシコへの xRapid/XRP を利用した送金を説明したものですが、下記の流れで2つのコネクターと XRP Ledger を介して送金が行われることが説明されました。

金融機関(米国)=> 取引所A => XRP Ledger => 取引所B => 金融機関(メキシコ)

つまり、図7の Connector 1、Connector 2 は、各国の取引所に統合されている xRapid である可能性があります。そのような仕組みにすることで、金融機関などの送金者は xRapid に支払いを行うだけで国際送金が出来るようになるからです。

また、デイビッド・シュワルツは xRapid と XRP の仕組みを次のように説明しています。

送金をするために xRapid を利用する人たちは、裏でXRPが使われていることを知る必要はありません。しかし、両替を伴うすべての送金に XRP が中間で使われます。

出典:xRapidのXRPブリッジングに関する発言

 

RippleNet:送金のための分散型ネットワーク

リップル社は公式ドキュメントの中で RippleNet の概観を次のように示しました。

図12.Rippleソリューションで構成されたRippleNet 出典:ripple.com

この RippleNet の中で XRP Ledger がどのように利用されるのかを予想して描いたものが次の図です。

図13.xCurrentとxRapidで構成されたRippleNet

RippleNet は xCurrent と xRapid を統合した2種類のコネクター(銀行、流動性プロバイダー)から構成された国際送金のためのネットワークです。送金をしたいクライアントは xVia と呼ばれる製品を利用して RippleNet に接続します。クライアントは xCurrent または xRapid を統合したコネクターのどちらにも接続することが出来ます。

ILPでは送金を仲介するコネクターは送金手数料を受け取ることができます。そのため、リップル社は同社のエンタープライズ製品を統合した流動性プロバイダーに対してインセンティブ(報奨金)を支払っているのではないかという予想が立てられます。一方で xRapid を統合したそれぞれの流動性プロバイダーが個別に手数料を得ている可能性もあります。

 

ILPの未来

ILPはスマートコントラクトを実現する Codius の開発の中から生まれました。CodiusによりAPIコールに対して課金を行えるようになったり、まさにウェブペイメントで実現したかったことが可能になります。Codius と XRP Ledger を分離することで XRP 以外の通貨で支払いをすることが可能になり、両替を伴う支払い(クロスボーダー取引)には ILP を統合した RippleNet を利用すれば良いというわけです。

このように Ripple が実現したいことは単に既存の銀行間送金の効率化だけではありません。XRP Ledger に ILP を統合したことでマイクロペイメントが可能になり、今はまだ存在しないマイクロペイメントを利用した沢山の新しいサービスが世界中で登場することになるでしょう。

これを単に銀行送金を便利にするだけのシステムと考えているのであれば、今すぐにその考えを改めるべきだと思います。Ripple の ILP は経済のグローバル化を急激に加速させ、私達の生活や働き方を激変させてしまうほどのインパクトを持つものです。まさにインターネットの次のイノベーションと言っても過言ではありません。

私が皆とここで ILP と『価値のインターネット』について勉強しているのは単に投資のリターンを目的としているからではありません。これから起こるイノベーションから日本人が取り残されてほしくないという思いで情報を共有しています。コンピュータとインターネットが一般に普及し始めた90年代後半から2000年代初頭にかけて、多くの人がそのイノベーションから取り残されて大変な思いをしました。

このような変化が技術革新によってある日突然起こってしまうことがあります。AI(人工知能)や量子コンピュータなどもその典型でしょう。今私たちが身近に触れることができる Ripple や ILP は、そうした技術革新がもたらす社会と経済の変化に私たちがどのように対応して行けば良いのかを考える一つの機会なのではないかと思います。

BITPOINT