価値のインターネットとは

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価値のインターネットとは

今回はリップル社が提唱する『価値のインターネット』について解説してみようと思います。価値のインターネットは、英語では Internet of Value (IoV) と呼ばれています。もしかしたら、多くの方々が Ripple が単にビットコインを発展させたものだと考えているかもしれませんが、それは完全に間違った認識です。

私たちが現在利用している情報のインターネットは、1990年に World Wide Web(ワールド・ワイド・ウェブ)としてティム・バーナーズ=リーによって考案されました。この1990年に同氏から出された提案は『WorldWideWeb: Proposal for a HyperText Project』というホワイトペーパーで知られています。このティム・バーナーズ=リーが、2017年10月にリップル社によって主催された SWELLカンファレンスに登壇したことは、皆さんの記憶にも新しいと思います。

画像1.SWELLに登壇したティム・バーナーズ=リー 出典:ripple.com

インターネットが一般的に利用され始めた当初は、電子メールで文字を送る用途がほとんどで、パソコンで画像を取り扱うためには特別なハードウェアを取り付ける必要がありました。当時、ブラウン管モニターの黒い背景に白い文字が表示されているのを見たことがある人も多いでしょう。それが技術革新により、現在では動画や3次元の情報すら取り扱うことが出来るようになりました。

しかし現在に至ってもインターネットには欠落した機能があります。それは送金機能です。私たちが普段情報を送るために利用している HTTP と呼ばれるシステムには、じつはお金を送るためのステータスコードが予約されたままになっています。リップル社がその欠落した機能をインターネット上で実現しようとしているのが『価値のインターネット』と呼ばれるものです。

 

Rippleプロトコル

Rippleプロトコルは、2004年にライアン・フッガーというカナダの技術者によって考案されました。これは IOU と呼ばれる負債に紐づけられた手形を交換することで送金と支払いを実現するためのプロトコルで、『Money as IOUs in Social Trust Networks & A Proposal for a Decentralized Currency Network Protocol』というホワイトペーパーとして同氏によって提案されました。

図1.ライアン・フッガーのRippleプロトコル

 

ビットコインの誕生

ビットコインは2008年にサトシ・ナカモトを名乗る匿名の人物によって『Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System』として提案されました。これは Proof of Work という認証アルゴリズムとブロックチェーンと呼ばれる台帳技術を組み合わせ、分散型台帳技術(DLT/Distributed Ledger Technology)の先駆けとして登場しました。

分散型台帳とは、簡単に言うとデータを保存するためのデータベースです。これまでの台帳と異なるのは、ユーザーが手元の台帳を書き換えると世界中で同じネットワークに接続している全てのユーザーの台帳も書き換わるという点です。これまで同一の台帳を共有するためには、中央のサーバーで世界中の人達が利用する台帳を集中管理する必要がありましたが、ビットコインは分散型台帳というアイデアでこの問題を克服しました。ビットコインのシステムでは、台帳(ブロックチェーン)に BTC と呼ばれる電子ポイントの取引履歴が書き込まれており、世界中のユーザーがこの取引履歴を共有しています。

その後、ビットコインの性能問題が明るみになり、サトシ・ナカモトはギャビン・アンドレセンにビットコイン・プロジェクトの指揮権を譲り姿をくらませました。プロジェクトを引き継いだギャビン・アンドレセンは、2015年8月にGoogle出身のコア開発者であるマイク・ハーンとともにブロックサイズを拡張するための Bitcoin XT をリリースしました。これにより、ビットコインの性能問題は一定の解決を見ると思われましたが、ビットコイン・ネットワークのハッシュパワーを独占する中国人マイナーとのコンセンサスを取ることが出来ず現在に至ります。

画像2.20万件の送金詰まりを起こすビットコイン(2017年12月)

しかし、ビットコインが提案した分散型台帳というアイデアは世界中の技術者の注目を集めることになりました。

 

Ripple Consensus Ledgerの登場

世界一のビットコイン取引所 Mt.Gox の創業者 ジェド・マケーレブは、2011年にビットコインの性能問題を克服した新しい分散型台帳技術である Consensus Ledger(コンセンサス・レジャー)を考案し、デイビッド・シュワルツ、アーサー・ブリット、ステファン・トーマス等と共に開発を始めました。プロジェクトはリップル社の創業者であるクリス・ラーセンを迎え入れ、Rippleプロトコルの考案者であるライアン・フッガーからRippleプロジェクトの指揮権を引き継ぎ、最新の分散型台帳技術とRippleプロトコルの統合が行われました。Ripple Consensus Ledger(RCL)の誕生です。

RCLはビットコインと同様に XRP と呼ばれる内部通貨のようなデジタル資産を有しますが、この XRP は支払い通貨としての利用を想定したものではなく、Rippleプロトコルの IOU(つまり負債)を交換するためのブリッジ通貨として機能するように設計されました。IOU は BTC、JPY、USDなどの預かり資産に対する残高として発行される仕組みで、Ripple Consensus Ledgerで構築されたRippleネットワーク内で IOU を交換することで国際送金を実現しました。

図2.Ripple Consensus Ledgerで国際送金を実現したRipple 出典:ripple.com

 

インターレジャーが実現する『価値のインターネット』

リップル社CTOのステファン・トーマスは、2015年10月にRippleの国際送金の仕組みを更に発展させたインターレジャー・プロトコル(ILP)を発表しました。これは『A Protocol for Interledger Payments』というホワイトペーパーによって提案された、インターネットと国際送金を融合する革新的な仕組みです。

ビットコインと Ripple Consensus Ledger がそれぞれ個別の台帳上で支払いを行うのに対し、インターレジャー・プロトコル(ILP)では異なる複数の台帳を横断した支払いを暗号エスクロー(Cryptographic Escrow)と呼ばれる技術を用いて実現します。つまり、インターレジャー・プロトコル(ILP)では、ビットコインの台帳上で管理されている BTC の残高を利用して、他の台帳の通貨(例えばUSD)建ての支払いが可能になります。そして、2017年3月にリップル社は Ripple Consensus Ledger にインターレジャー・プロトコル(ILP)を統合し、XRP Ledger に改名しました。

図3.複数の台帳を横断したILPの送金の仕組み

同社が開発している ILP を統合したエンタープライズ製品では、高速な XRP Ledger を利用することで、わずか3秒で国際送金が完了します。この技術に目を付けたのが世界中の100を超える金融機関です。バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチカナダロイヤル銀行サンタンデール銀行スタンダードチャータード銀行ウニクレーディト・イタリアーノウエストパック銀行は、Global Payments Steering Group(GPSG)と呼ばれる Ripple を利用した銀行間送金を実現するためのインターバンクグループを設立しました。この動きに賛同した世界中の金融機関は、RippleXRP を国際送金に利用するために銀行の基幹システムにリップル社の製品を統合しました。

 

日本の金融機関の動き

日本では SBI Ripple Asia が主導する内外為替一元化コンソーシアムにメガバンク3行を含む61行が参加し、2018年春から銀行のスマホアプリを利用した24時間365日のリアルタイム送金サービスを開始する予定です。

この来春から開始されるスマホを利用した新送金サービスでは、口座番号での入力のほか、電話番号QRコードによる送金が可能になります。また、Rippleを統合したことで僅かな手数料で少額の送金が行えるようになりました。これにより、都内に出かけている友達にちょっと買い物を頼みたいときなどに、気軽に少額のリアルタイム送金をすることが出来るようになります。

 

インターオペラビリティ(相互運用性)

リップル社の製品は、国際送金のためのインフラを構築する金融機関や企業が利用することを目的に開発が行われています。xVia と呼ばれる製品は、リップル社の製品を統合している金融機関や企業の送金システムに決済事業者やその他の企業がシームレスにアクセスすることを可能にします。これにより、Paypal や Alipay などの決済サービスを提供する会社や Amazon、Airbnb などの国際送金を行いたい会社が RippleNet と呼ばれるインターレジャー・ネットワークを利用して瞬時に国際送金が出来るようになります。

図4.XRP Ledgerを統合したRippleNetの予想図

 

価値のインターネットが実現する未来

約30年前にインターネットが空っぽだったように、現在リップル社によって構築が始められたばかりのインターレジャーもまだ中身は空っぽです。インターネット送金のためのインフラだけが構築されても、その上で動くサービスがまだ構築されていないからです。黒い背景に白文字で電子メールを送っていた頃に、まさかスマホで動画が見られるようになるとは殆どの人は考えていなかったでしょう。

Ripple の XRP に投資する人達が現在の国際送金時価総額から XRP の適正価格を計算しようとしていますが、それはまったく意味のないことです。電子メールが登場したばかりの頃、郵便(手紙)のシェアの何パーセントを電子メールが奪うかが議論された時代がありました。しかし、Line などの SNS サービスを利用したメッセージと手紙の量を比較するほど愚かなことはありません。Ripple/XRP は100円や200円のマイクロペイメント(国際送金)を実現する技術です。

まだこの世に存在しないマイクロペイメントの需要や送金時価総額を予想することは、現時点では誰にも出来ないのです。予想が不可能な未来の時価総額の計算をするよりも、『価値のインターネット』が実現する未来がいったいどのようなものになるのかを空想した方が、きっと楽しいに違いありません。そこから新しいモノやサービスが生まれてくるからです。

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